幸薄な私達の幸せな在処

こん

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今日も薬草摘み。

「遅くなった」

お礼を言った日から私が薬草採取のたびに彼は来て話してくれるようになった。

「今日は何をするんだ?」

私達は、薬草摘みが終わった後に一緒に遊ぶ。
この前は二人かくれんぼをしたが、この森を熟知している彼には無謀過ぎた。

「…じゃあ、遊びに行かない?」
「遊びに?」
「そう、近くの街へ」

その提案をするのも訳があり、私は丁度この間魔法で髪と目の色を変えれるようになったのだ。

「でも…」
「大丈夫!私が魔法をかけるから!」

そう言って彼の目と髪の色を、私と同じ茶色と緑に変えた。

「ほら、これで大丈夫だよ」

彼は恐る恐る私の差し出した鏡を確認する。
そこに映っていた変わった自分に驚く。

「す…凄い!」
「でしょ?」

彼の手を取る。

「ほら、行こう!」

そう言って、魔法で街へと飛んだ。

今日の街は、いつもと変わらず賑わっていた。飛び交う人の声、活気あふれる空気。

「どう?この街は」

ずっとキョロキョロと見渡しては驚いている彼に話しかける。

「凄い…思っていた10倍凄いよ」
「なら良かった」

まずは手始めに、飴屋のおっちゃんの所に連れて行く。

「おっちゃん!いつもの飴2個ちょーだい!!」
「お!いつもの嬢ちゃんじゃねーか、今日はお友達と一緒か?」

彼の手を引く。この空気にまだ馴染めてないのか、もじもじしている。

「うん!」
「じゃあ、今日の飴は2個おまけしとくよ」

お礼を言って、私のお気に入りの飴を近くの噴水に縁に座って食べた。
その後、かき氷も食べに行った。
書店に行って、気に入った本をプレゼントした。
古着屋で合いそうな服を選びあった。

私のお小遣い袋はすっかり空になってしまったが、心は満たされていた。
今まで、こんなに一緒にいて楽しい友達がいなかったからだろう。

夕暮れが近づいてきたので、また森に帰る。

「ありがとう、こんな体験初めてだったんだ」

彼は両手いっぱいに今日の戦利品を抱えながら言った。

「楽しかった?」

そう聞くと、おもいっきり首を縦に振る。

「じゃあ、また行こうね!約束」
「うん、約束」

そう言って別れたのが彼との最後だった。

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