僕の初体験

septembersong

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僕の初体験

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 僕は真性ゲイの中年男です。若かった頃自分が同性愛に目覚めた体験を書いてみようと思います。それは天啓のような体験でした。

 10代終わりの学生時代のある夏の日、前日にイオン (当時はジャスコ) で躊躇しながら勇気を奮って初めて買った男性用のTバックの派手な小さい下着1枚だけを着けて、それ以前からよく泳いだり日焼けをしに行っていた、大学があった町の郊外のあまり人けのない海岸で、独りドキドキしながら暑い昼下がりの日光浴を楽しんでいました。そこはゲイやレズビアンの人が三々五々集まって際どい格好で日光浴をしたり、エッチなことをしたりする場所として、知る人ぞ知る海岸でした。平日の昼下がりでしたから、初めは僕の他は誰もいませんでした。海岸の高い護岸堤の上に大きなバスタオルを敷いて下着1枚でいると、大きな青空も眼前の海も独り占めでとても開放的な気分でした。夏の強烈な日の光に全身を焼かれる気持ちよさ。そして一方では、自分のひどくエロい下半身に興奮して、手はついつい自分の股間やお尻に向かうのでした。
 そんなふうにしてしばらくそこで寝そべっていると、やがて1人の男性が護岸堤の上を遠くから小走りに近づいてくるのが見えました。僕に興味を持っているのは明らかでした。敢えて反応せずにそのまま目を閉じて仰向けになっていると、その男性は僕が寝ているすぐ横に腰を下ろして、僕のひどく小さくて薄い、あまりに無防備な下着の上から指で僕の股間を無言でさわさわとまさぐってきたのでした。そういうことは生まれて初めてだったので、最初はひどく戸惑いました。「やめて‥‥ください‥‥」と、まるですっかり腰が引けてしまった小娘のような弱々しい声を絞り出すのがやっとでした。 でも、少しはそういうことを期待して寝そべっていたのも確かでした。「やめてください」は「もっとしてください」の意味でもあることを、一瞬躊躇してから男性は察したらしく、しばらくそのまま下着の上から優しく僕の股間をまさぐり続けました。「きれいな水着だね」とか「よく焼けているね」とか「ここはこういう場所だと知ってるよね?」とか言いながら。僕は初めこそとても狼狽しましたが、触られているうちにだんだんその気になってきていました。すでに十分硬く大きくなっていたペニスを下着越しに自分から突き出すようなことをしたり、うつ伏せになったり四つん這いになったりしてTバックのお尻を男性に見せつけたりさえしました。その間も男性の執拗なタッチは続いていました。股間からお尻へ。Tバックの上からアナルを。それから乳首へ。女体を扱うような優しさで。
 30分ほどもそんなふうにしていたでしょうか。目を上げてみると、少し遠くのほうで、同じようなことをしている全身真っ黒に日焼けした男性カップルが目に入りました。2人ともGストリングの下着か水着を着けてはいるもののそれも脱げかけていてほぼ全裸でした。2人とも硬くなったペニスが丸見えになっていました。白昼堂々護岸堤の上で裸で絡んでいるあまりに刺激的な光景でした。ドキドキしました。そのうち僕の体をまさぐっていた、僕よりだいぶん年上らしいその男性が、僕の下着の中に手を入れて僕のペニスや睾丸を直に触りながら、近くにラブホテルがあるから行かないかと誘ってきました。そのときには僕の気持ちはもう決まっていました。物心がつくかつかないかくらいの頃から、自分にはそういう気持ちがあるのを感じてきました。小学生の頃、病弱でやせていた僕は、女みたいだと同級生にからかわれることがたびたびでした。そのときはそれがいやで、男らしくなりたいと思ったものです。でもすぐにまたそれとは違う何かが体の奥深くでうごめくのでした。ひどく戸惑いました。自分の人生ではずっと、それを許さないという気持ちが勝っていたと思います。自分は男であって男らしくなければいけないという気持ちが。でもそうではない気持ち、それとは正反対の欲求があって、それが衰えることもなくそれまで生きてきた中で折に触れてずっと己を主張し続けていたのです。そのときはこの気持ちが勝りました。男性の誘いをいくらか嫌がりつつも喜んで受け入れました。体の奥のほうにいる自分が、目の前にいる逞しい男性に、すぐにも抱いてもらうこと、犯してもらうこと、滅茶滅茶にしてもらうことを望んだのでした。
 海岸から歩いて行ける距離に少し寂れたような古い不思議な雰囲気のラブホテルはありました。同性カップル歓迎を看板に掲げるラブホテルでした。当時も今もそういう所は珍しいのかもしれません。通路では女性同士のカップルとすれ違いました。2人とも物凄い短さで露出の非常に多い、ボディコンシャスなミニワンピース姿だったのを思い出します。当時はバブルの残り火がまだありました。熱いひとときを過ごしてきたばかりだったのでしょう。グラマーな後姿からはっきりと、2人とも下着を着けていないことが分かりました。お尻の割れ目がはっきり分かるほど、生地の薄いワンピースが汗ばんだ肌にぴっちりと張りついていたのです。僕ら男2人も彼女たちからよく見られていただろうと思います。僕はTバックの下着の上に下尻が出るような小さなぴっちりしたホットパンツをはいて、上はいくらか肌が透けて見える薄いタンクトップが肌に貼りついていました。いかにもという格好です。部屋に入り、シャワーを浴びて、そこで生まれて初めてアナル洗浄ということをしました。というか、すっかりしてもらいました。男性は経験豊富なのか、専用の器具を持ってきていました。それを使ってすっかり僕のアナルの中をきれいにした後、2人で浴室を出て、濡れた裸の体のまま激しく絡み合いながらベッドインしました。そのときもそうでしたが、いつもながらラブホテルのダブルベッドの洗い立ての白いシーツには興奮します。男性は全身黒々と日焼けしていて、しかも筋肉質の引き締まったいい体をしていました。まさに抱かれたいと思わせるようなタイプでした。下半身もよく焼けていて、お尻の細いTバックの痕がセクシーでした。僕のほうは今でもそうですが、やせ型で筋肉もほどほどにありながら、皮下脂肪もわりと多いムチムチした体でした。向こうが男ならこちらはやはり女だなと思いました。もともとその気(け)がありましたから、女になろう、女にしてもらおうと思いました。僕はそれまで女性経験がなく、そのときの男性体験がそのまま初体験でした。

 魅力的でテクニシャンの男性に導かれるまま、ドキドキの初セックスが始まりました。まずはキスから。彼はなぜか口紅を持ってきていて、当時流行ったショッキングピンクのそれを僕の唇に上手に塗った上でキスをしてきました。「可愛いよ」とかなんとか囁きながら。優しいキス、濃厚なキス。キスにもいろいろな種類がありますが、彼は濃厚なキスが好みでした。2人の舌が柔らかくまた強く絡み合い、2人の唾液が混ざり合って、やがて口の中がねっとりした液体で一杯になってそれが口の端からダラダラ垂れる、そういうキスでした。キスをしたのが初めてなら、他人の唾液を飲んだのも初めてでした。それから男性に促されてフェラチオをしました。ペニスを口に含むことは当時も今も、何の抵抗もなく、むしろ好き、大好きです。彼の勃起しきったペニスはとても大きくて、僕のものの比ではありませんでした。その後の人生で多くの男性のペニスを口に含みましたし、自分のアナルに受け入れてきましたが、最初に口に含んだものがいちばん大きかったような気がします。男性には一般に、自分のペニスを他人に見せたがる、自慢したがる傾向があるのかもしれませんが、僕にはそれはまったくありません。昔から僕にはそのことで強いコンプレックスがあって、自分の女性化願望と何か関係があるのかもしれないと思ったりもします。とにかくそのときは頭を上から押さえつけられたまま太くて硬いペニスを口一杯に精一杯頑張って頬張り、喉の奥を突かれる稀有な感覚とペニスの味を楽しみました。味といっても石鹸の味しかしませんでしたが。
 それから男性は器用な舌で僕の全身を舐め回し、僕も同じようにすることを求められました。シックスナインに得も言われぬほど興奮し (アナルを舐めてもらったときのほうがより興奮しました)、そしていよいよ本番、アナルに彼はペニスをズッポリ挿入して‥と書きたいところですが、こちらは男性が相手の初セックスです。いきなり入るわけがありませんでした。彼が用意してきたアナルセックス用のローションをたっぷり使っても、せいぜいが指2本でした。でもこの指が凄かった。アナルから前立腺か何かを上手に刺激したのでしょう、不安になるくらい気持ちよくなって、「あ~ん、あ~ん」という泣き声のような喘ぎ声が自然と出ました。もう何も恥ずかしくなかった。「女にして~!」、「中に挿れて~!」、「中に出して~!」と口走りました。そしてまったく見たこともないくらい大量の精液が僕のペニスの先からビュビューッと噴き出しました。それまで散々してきたオナニーではまったく経験したことがなかった強烈な快感でした。絶頂感と言ってもよいのではないかと思います。それからいろいろ体位を変えて疑似セックスをした上で、最後に彼は正常位で、僕の脚を自分史上なかったくらいに大きく開きローションでぐちょぐちょになったアナルの入り口にビンビンの生のペニスの先端を少し挿れた状態で思い切り突き、そのまま思い切り射精しました。大量のローションと大量の精液が混ざり合って、お尻の割れ目を伝って滴りました。シーツはびっしょり。おねしょした後のように。彼は奥まで挿れたくて堪らなかったでしょう。僕も奥までずっぽり挿れてほしかった。いろいろな体位で力強く突いてもらいたかった。ピストン運動を子宮で受け止めるような感覚を心ゆくまで楽しんでみたかった。
 そのときしたことはアナル本番とほぼ同じことでした。コンドームなしで生挿入、生中出しを許したわけです。本格的なアナルセックスはその後別のときに、彼の導きでめでたくできるようになりました。彼に促されて、彼の射精後のまだいくらか硬さの残っているペニスを口に含み、精液を残らず舐め取りました。精液は美味いものではありませんが、飲めないものでもありません。試しに自分の精液を飲んでみたらよいと思います。僕はオナニーのとき自分の精液を舐めてみます。少ししょっぱい味がします。僕の初体験にして同時に初男性体験はこういうふうでした。余韻を楽しむように、しばらく大量の汗と唾液とローションと精液で濡れた体のまま手をつないで抱き合っていました。男と女のように。
 この後この男性とは頻繁に会うようになりました。愛人関係になり、3年くらい肉体関係を続けました。会うのはだいたい休日の午後でした。その日は彼が、その頃僕が住んでいたアパートまで車で迎えに来ました。彼が迎えに来る前にいつも僕はお風呂に入り、間もなく味わうことになる快楽に胸躍らせながら首から下の毛をゆっくりとすべてきれいに剃り上げ、スキンクリームを剃毛跡にくまなく塗り込みました。彼に贈られたパンティを着け、同じく贈られたテロテロした感触の丈の短いエッチなバスローブをまとって車に乗り込むのが常でした。乗り込むや舌を絡めたキスをたっぷりして、それから車が動き出しました。運転中も彼の片方の手はハンドルを握り、もう片方の手は僕の股間や乳首、それからアナルをまさぐりました。そして独身で独り暮らしをしていた彼のマンションのベッドの上で、午後早くから夜になるまで、互いの体を貪るように、狂ったようにセックスしました。ときにはそのまま翌朝まで、何度も何度もしました。生でするのが普通で、いつも中出しされました。最初に彼と出会った海岸で、白昼複数のギャラリーに見てもらいながらセックスしたこともあります。ギャラリーの中には僕たちの行為を見ながらオナニーをする人もいました。当時の僕はエロいことに貪欲でした。気持ちさえよければ何でもしました。その頃の僕はセックスするために生きていたようなものです。後から振り返ってみて、海岸での出会いとその日ラブホテルで初体験をしたことが自分のその後の人生に及ぼした影響は大きかったと思います。当時は、子どもの頃から内に秘めていた、子どもの頃からずっと強くあった性的願望が、全部一気にかなえられた喜びでいっぱいで、このために地獄に堕ちてもいいとまで思ったものです。僕は、全裸になって母親の小さなエロいパンティをこっそりはき、男性に抱かれるのを想像しながらオナニーをするような子どもでした。この体験の数年後、彼と別れた後、僕は性風俗の世界に入りました。同性を相手に本番行為をするソープランドで2年ほど働き、そこで多くの男性に抱かれました。縁あって企画もののゲイAVに出演するようにもなりました。そういう生活が30代半ばまで続き、その後まったく違う仕事をするようになり、今に至っています。今でもときどき体が疼きます。男が欲しくなります。地獄に堕ちてもいいという気持ちは今も変わりません。今も誰かの腕の中で踊るのは楽しいです。
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