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雲一つなく晴れ上がった11月のある日曜日。
今私の目の前には、室内なのにまるで庭園にいるような感覚に陥る自然光と緑溢れる陽だまりの空間が広がっている。
その場にいる人達はみんな明るい笑顔を浮かべていて、揃って私の方を振り返っていた。
視線が一斉に集まる中、私は緊張でやや体を強張らせながら隣にいる父の腕に手を添えて、前に向かって一歩一歩ゆっくり進む。
歩く度に目に飛び込んでくるのは、若菜や藤沢くん、降谷部長、中津さんなど親しい人達の顔だ。
オルガン演奏に合わせて賛美歌を斉唱しながら、手を振ったり、写真のレンズを向けたりしてくれている。
私はそれににっこりと笑顔で応えていく。
そうしているうちに、少しずつ緊張が解けていくのを感じた。
だけど、私が本当の意味でホッと肩から力が抜けたのは、父と共に歩みを進めた先にいる大好きな人の手を取った瞬間だ。
彼の手に触れた途端、上質な毛布ですっぽり包まれたような安心感に満たされ、さっきまでの体の強張りが嘘のようにほどけていく。
……ああ、やっぱり私にはこの人しかいない。すっごくすっごく大好きだなぁ。
いつもならば、感じたままに想いを口走りながら彼に抱きついていることだろう。
この大好きな気持ちを伝えたくて堪らない。
でも、今は我慢だ。
なぜなら今は……
「これより新郎・航さん、新婦・志穂さんの結婚式を執り行います」
開式宣言を告げる神父のおごそかな声がチャペル内に静かに響く。
そう、今日は私たちの結婚式の日なのだ。
◇◇◇
遡ること今から約8ヶ月前。
あのプロポーズをし合った夜に結婚の意思を固めた私たちは、それからすぐに行動に移した。
お互いの両親へ挨拶をするため休みの日に実家へ行き、その際に結婚の意向も報告したのだ。
私はもともと両親に自分の恋愛事を話す方ではなく、恋人を紹介するのも初めて。
うちの両親は航さんの登場にものすごく驚いていた。
私のやりたいようにやりなさいという方針のため、もちろん反対されることはなかった。
それどころか航さんの落ち着いた言動に父は感心しきりだったし、母は航さんのイケメンぶりに興奮しきり。
つまり、さすがの営業力というか、一度の面会だけで航さんはうちの両親のハートをガッチリ掴んで行った。
一方の私はというと、実はこちらも拍子抜けするぐらいアッサリ航さんのご両親から結婚を認めてもらうに至った。
冷たくあしらわれて追い返されたらどうしよう……と多少不安を抱えながら実家に伺ったところ、諸手を挙げて歓迎されたのだ。
航さんは2歳年上のお兄さんと3歳年下の弟さんがいて男3人兄弟なのだが、ご両親はずっと娘が欲しかったらしい。
お兄さんも弟さんもまだ独身らしく、だからか「待望の可愛い義娘ができる!」と喜ばれたのだ。
特にお義母さんとはご挨拶に行った日をきっかけに、それから二人でお茶しに行くような仲になった。
結果的に、義理の家族との付き合いという不安は、関係が「恋人」から「夫婦」に変わる前に解消されることになって、私の結婚に対するハードルはますます低くなった。
その勢いで入籍や結婚式の日取りを11月と決め、親しい人だけを招ぶ少人数のアットホームなウエディングにすることにした。
航さんとの不思議な関係が始まった時から数えると2年3ヶ月が経つタイミングだ。
あの頃は25歳と30歳だった私たちは、いつの間にか27歳と32歳になっている。
◇◇◇
「それでは指輪の交換をお願いします」
神父からの問いにお互いに誓いを述べると、続いて向かい合うように促され、横並びだった私たちは列席者の前で見つめ合う。
指輪を受け取った航さんは私が差し出した左手を下から支えるようにそっと持った。
そして左手の薬指の付け根まで指輪を滑らせて行き、私の指には輝くシルバーの結婚指輪がはまった。
今度は交代して私が指輪を航さんの左手薬指に通す。
長らくこの指にフェイクの指輪がはまっていたことを思い出すと、今この瞬間がなんだかとても感慨深い。
今度は正真正銘、本物の結婚指輪なのだから。
フェイクの指輪の存在によって、上司として異動してきた航さんのことを私はずっと既婚者だと思っていた。
だからあの台風の夜、事実を知ってすごく驚いたことは今でも鮮明に覚えている。
そうして、ただイチャイチャするだけの、ハフレ&ソフレとしての関係が始まったのだ。
それがいつしか本当の恋人となり、秘密の関係が露呈しないようデザインの違う指輪をそれぞれ右手にはめ、そして今、左手の薬指にお揃いの指輪するに至っている。
指輪をつける場所やデザインも、私たちの関係の移り変わりと共に変わってきたのだ。
お揃いの指輪を堂々と左手薬指につける今の私たちは、もう関係を隠す必要はない。
これまでずっと隠してきた秘密の関係から正式な夫婦になるべく、親しい人達の前で誓い合っているのだから。
「では、誓いのキスを」
神父の言葉で航さんが私の顔を覆うベールをゆっくりと上げる。
遮るものがなくなり、向かい合う私たちの視線が重なった。
航さんの目が優しく細まり、その表情を見ているだけで「ああ、やっぱり航さんのことが大好きだなぁ」という想いが溢れてくる。
肩に手を添えられ、少し傾けた航さんの顔が近づいてくると、私はそっと目を閉じた。
唇にふわりと柔らかさが落ちてきて、その刹那、私の脳裏にはこの2年のことが駆け巡る。
私たちは決してお互いが初めての恋人というわけではなく、それぞれに過去がある。
その過去によってトラウマを抱え、デキナイふたりだった。
結婚に至るまでも過去のトラウマが私を不安にさせ、踏み切るまでに時間が必要だった。
でも、過去があるからこそその経験を教訓にここまで2人で乗り越えこの関係を築いてきた。
過去があるから今がある。
上司と部下の関係は、
イチャイチャするだけの不思議な関係を経て、
秘密の恋人関係へ、
そして今、人前でキスを交わし、
みんなに認められた関係へと移り変わる。
結婚はゴールじゃない。
だから夫婦になる私たちにはこれからも多くの問題や悩みに面することになるのかもしれない。
でも今まで通り、話し合い、支え合い、乗り越え、この夫婦という関係を航さんと一緒に築いていきたい。
航さんとならそれができると実感しているから。
「お二人の結婚が成立したことを宣言いたします。お二人が今わたしたち一同の前で交わされた誓約を神が固めてくださり、祝福で満たしてくださいますように」
誓いのキスを終え、神父による結婚成立宣言が告げられる。
「夫婦」という新しい関係になった今、
私は隣にいる大好きな人をそっと見上げた。
良き時も悪き時も、
富める時も貧しき時も、
病める時も健やかなる時も、
彼と共に歩み、生きていく。
子供ができても、
お爺ちゃんとお婆ちゃんになっても、
ずっとイチャイチャしているような
そんな二人でありたい、そう願って――。
~END~
今私の目の前には、室内なのにまるで庭園にいるような感覚に陥る自然光と緑溢れる陽だまりの空間が広がっている。
その場にいる人達はみんな明るい笑顔を浮かべていて、揃って私の方を振り返っていた。
視線が一斉に集まる中、私は緊張でやや体を強張らせながら隣にいる父の腕に手を添えて、前に向かって一歩一歩ゆっくり進む。
歩く度に目に飛び込んでくるのは、若菜や藤沢くん、降谷部長、中津さんなど親しい人達の顔だ。
オルガン演奏に合わせて賛美歌を斉唱しながら、手を振ったり、写真のレンズを向けたりしてくれている。
私はそれににっこりと笑顔で応えていく。
そうしているうちに、少しずつ緊張が解けていくのを感じた。
だけど、私が本当の意味でホッと肩から力が抜けたのは、父と共に歩みを進めた先にいる大好きな人の手を取った瞬間だ。
彼の手に触れた途端、上質な毛布ですっぽり包まれたような安心感に満たされ、さっきまでの体の強張りが嘘のようにほどけていく。
……ああ、やっぱり私にはこの人しかいない。すっごくすっごく大好きだなぁ。
いつもならば、感じたままに想いを口走りながら彼に抱きついていることだろう。
この大好きな気持ちを伝えたくて堪らない。
でも、今は我慢だ。
なぜなら今は……
「これより新郎・航さん、新婦・志穂さんの結婚式を執り行います」
開式宣言を告げる神父のおごそかな声がチャペル内に静かに響く。
そう、今日は私たちの結婚式の日なのだ。
◇◇◇
遡ること今から約8ヶ月前。
あのプロポーズをし合った夜に結婚の意思を固めた私たちは、それからすぐに行動に移した。
お互いの両親へ挨拶をするため休みの日に実家へ行き、その際に結婚の意向も報告したのだ。
私はもともと両親に自分の恋愛事を話す方ではなく、恋人を紹介するのも初めて。
うちの両親は航さんの登場にものすごく驚いていた。
私のやりたいようにやりなさいという方針のため、もちろん反対されることはなかった。
それどころか航さんの落ち着いた言動に父は感心しきりだったし、母は航さんのイケメンぶりに興奮しきり。
つまり、さすがの営業力というか、一度の面会だけで航さんはうちの両親のハートをガッチリ掴んで行った。
一方の私はというと、実はこちらも拍子抜けするぐらいアッサリ航さんのご両親から結婚を認めてもらうに至った。
冷たくあしらわれて追い返されたらどうしよう……と多少不安を抱えながら実家に伺ったところ、諸手を挙げて歓迎されたのだ。
航さんは2歳年上のお兄さんと3歳年下の弟さんがいて男3人兄弟なのだが、ご両親はずっと娘が欲しかったらしい。
お兄さんも弟さんもまだ独身らしく、だからか「待望の可愛い義娘ができる!」と喜ばれたのだ。
特にお義母さんとはご挨拶に行った日をきっかけに、それから二人でお茶しに行くような仲になった。
結果的に、義理の家族との付き合いという不安は、関係が「恋人」から「夫婦」に変わる前に解消されることになって、私の結婚に対するハードルはますます低くなった。
その勢いで入籍や結婚式の日取りを11月と決め、親しい人だけを招ぶ少人数のアットホームなウエディングにすることにした。
航さんとの不思議な関係が始まった時から数えると2年3ヶ月が経つタイミングだ。
あの頃は25歳と30歳だった私たちは、いつの間にか27歳と32歳になっている。
◇◇◇
「それでは指輪の交換をお願いします」
神父からの問いにお互いに誓いを述べると、続いて向かい合うように促され、横並びだった私たちは列席者の前で見つめ合う。
指輪を受け取った航さんは私が差し出した左手を下から支えるようにそっと持った。
そして左手の薬指の付け根まで指輪を滑らせて行き、私の指には輝くシルバーの結婚指輪がはまった。
今度は交代して私が指輪を航さんの左手薬指に通す。
長らくこの指にフェイクの指輪がはまっていたことを思い出すと、今この瞬間がなんだかとても感慨深い。
今度は正真正銘、本物の結婚指輪なのだから。
フェイクの指輪の存在によって、上司として異動してきた航さんのことを私はずっと既婚者だと思っていた。
だからあの台風の夜、事実を知ってすごく驚いたことは今でも鮮明に覚えている。
そうして、ただイチャイチャするだけの、ハフレ&ソフレとしての関係が始まったのだ。
それがいつしか本当の恋人となり、秘密の関係が露呈しないようデザインの違う指輪をそれぞれ右手にはめ、そして今、左手の薬指にお揃いの指輪するに至っている。
指輪をつける場所やデザインも、私たちの関係の移り変わりと共に変わってきたのだ。
お揃いの指輪を堂々と左手薬指につける今の私たちは、もう関係を隠す必要はない。
これまでずっと隠してきた秘密の関係から正式な夫婦になるべく、親しい人達の前で誓い合っているのだから。
「では、誓いのキスを」
神父の言葉で航さんが私の顔を覆うベールをゆっくりと上げる。
遮るものがなくなり、向かい合う私たちの視線が重なった。
航さんの目が優しく細まり、その表情を見ているだけで「ああ、やっぱり航さんのことが大好きだなぁ」という想いが溢れてくる。
肩に手を添えられ、少し傾けた航さんの顔が近づいてくると、私はそっと目を閉じた。
唇にふわりと柔らかさが落ちてきて、その刹那、私の脳裏にはこの2年のことが駆け巡る。
私たちは決してお互いが初めての恋人というわけではなく、それぞれに過去がある。
その過去によってトラウマを抱え、デキナイふたりだった。
結婚に至るまでも過去のトラウマが私を不安にさせ、踏み切るまでに時間が必要だった。
でも、過去があるからこそその経験を教訓にここまで2人で乗り越えこの関係を築いてきた。
過去があるから今がある。
上司と部下の関係は、
イチャイチャするだけの不思議な関係を経て、
秘密の恋人関係へ、
そして今、人前でキスを交わし、
みんなに認められた関係へと移り変わる。
結婚はゴールじゃない。
だから夫婦になる私たちにはこれからも多くの問題や悩みに面することになるのかもしれない。
でも今まで通り、話し合い、支え合い、乗り越え、この夫婦という関係を航さんと一緒に築いていきたい。
航さんとならそれができると実感しているから。
「お二人の結婚が成立したことを宣言いたします。お二人が今わたしたち一同の前で交わされた誓約を神が固めてくださり、祝福で満たしてくださいますように」
誓いのキスを終え、神父による結婚成立宣言が告げられる。
「夫婦」という新しい関係になった今、
私は隣にいる大好きな人をそっと見上げた。
良き時も悪き時も、
富める時も貧しき時も、
病める時も健やかなる時も、
彼と共に歩み、生きていく。
子供ができても、
お爺ちゃんとお婆ちゃんになっても、
ずっとイチャイチャしているような
そんな二人でありたい、そう願って――。
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