23 / 30
20. 開いた距離
しおりを挟む
――「シェイラ、あなたは必ず身の丈に合った結婚をして幸せになってね。身分違いの結婚は不幸なだけだわ。絶対私のようになってはダメよ?」
最近やけに母のこの言葉を思い出す。
何度も何度も私に語り聞かせてくれた教訓だ。
こうして改めて母の言葉を反芻しているのは、きっとフェリクス様を想うようになったからだろう。
母の教えに反して、どう考えても身の丈に合わない人を好きになってしまった。
どうしたらいいのだろうかと自分と向き合うたびに自然と脳裏に浮かんでくる。
……でももう自分と向き合う必要はないのかもしれないわ。そんなことをしたって手遅れなのよ……。
そう、もうフェリクス様に気持ちを伝えるかどうかを悩むことは意味がない。
なにしろフェリクス様と言葉を交わすような機会すらないのだから。
学園の庭でフェリクス様に抱きしめられて涙を流してしまったあの日からもう数週間が経つ。
だが、その間私は一度としてフェリクス様と顔を合わていなかった。
それによって心底実感した。
これまではフェリクス様の方から私に会おうとしてくれていたから会えていたのだと。
逆に言えば、フェリクス様が私から距離を取った場合、私から会う手段がないのだ。
相手はこの国の王太子殿下である。
一子爵令嬢ごときが簡単に会える相手ではない。
学園としての正式な依頼であったセイゲル語授業の件も終わってしまった今、会うどころか顔を見る機会さえなかった。
……私が嫌がって泣いたと思われている以上、フェリクス様が私と距離を置くのは当然よね……。会いに来てくださることなんてきっとないわ……。
あの時ちゃんと誤解を解いていれば、と今になって深く後悔している。
今思えば私には甘えがあった。
次に会った時に上手く説明して誤解を解けばいいと心のどこかで思っていたのだ。
その「次」がないことなんてつゆほども思わずに。
フェリクス様が会いに来てくれることに慣れきってしまっていた私の怠慢だ。
いつの間にか私の日々にフェリクス様がいることが当たり前になってしまっていた。
そしてその日々が自業自得により突然終わり、フェリクス様のいない日々が始まって早数週間。
そんな頃に久しぶりに学園へ登校することになった。
卒業を間近に控えた3年のこの時期になると、もう授業もなく学園に行くことはほとんどない。
寮の部屋も引き払い、今は邸宅で生活をしている。
今回学園に赴くのは、来たるべき卒業パーティーについての事前説明会があるからだった。
当日の流れや注意事項などの説明があるのだ。
3年生全員に一度に説明を行うらしく、今日は各教室ではなく、大人数が収容できる大教室への集合となっている。
「シェイラ、なんだか久しぶりね」
大教室に入るなり声を掛けてきてくれたのはマルグリット様だった。
今日も今日とて優雅で美しく、まるでその場に大輪の華が咲き誇るような存在感だ。
自由席だったこともあり、私はマルグリット様と談笑しながら隣の席に腰掛けた。
大教室内は多くの生徒でザワザワと騒ついている。
久しぶりに会う者同士、会話に花を咲かせているようだ。
この時期の話題といえば、もっぱら卒業パーティーに関することである。
「エスコートの相手は決まった?」
「ドレスは何色にするの?」
そんな会話が次々耳に飛び込んでくる。
特に一緒に出席するパートナーが誰かという点は最注目事項であり、皆が口々に探りを入れているのが感じられた。
もちろん推測の域をでないような噂話も飛び交う。
「ねぇ、カトリーヌ様のパートナーを王太子殿下がされるって噂は本当?」
「それ私も聞いたわ! でもカトリーヌ様ってギルバート様という婚約者がいらっしゃるわよね?」
「でもカトリーヌ様ったら王太子殿下に会うためにお父上に帯同してほぼ毎日登城されているらしいわよ。もちろん殿下もお忙しい方だから会えない日も多いみたいだけど、たまにお二人が親しげに話しているのを目にするって王城勤めの私の兄が言っていたわ」
「まあ! そうなの!? 王太子殿下はてっきりマルグリット様のパートナーを務められると思っていたけれど、その話が事実なら分からないわね」
「でもただの噂でしょう? 王太子殿下の噂といえば、シェイラ様とのデートの話もあったじゃない。だからわたくしは結局のところやっぱりマルグリット様が最有力だと思うわ」
少し離れた席に座っている噂好きの令嬢達のおしゃべりがまさにそれだ。
聞き齧った噂話を各々が持ち寄り、楽しそうに騒いでいる。
こんな聞くに値しない噂は聞き流すに限るのだが、今に至ってはつい聞き耳を立ててしまった。
フェリクス様とカトリーヌ様が親しげに話しているという部分がどうしても気になってしまう。
……私がフェリクス様と顔を合わせていないこの数週間もカトリーヌ様は王城に会いに行かれていたのね。しかも親しげ……。
フェリクス様がカトリーヌ様に笑いかける姿をつい想像してしまい、気持ちがズンと重くなった。
皮肉なことにちょうど昨年の今頃なのだ。
カトリーヌ様がギルバート様の心を掴み、私が婚約破棄をすることになったのは。
あの時と同じようなことが今度はフェリクス様を相手としてまたこの時期に起こるのではないかとつい考えてしまう。
……フェリクス様もカトリーヌ様と……。ダメ! 想像するだけで胸が張り裂けそうなくらい苦しいわ……!
「ちょっと、シェイラ? なんだか顔色が悪いけど大丈夫なの?」
私の異変を敏感に感じ取ったらしいマルグリット様が隣から心配そうに声を掛けてくれる。
どうやら同じ噂話がマルグリット様の耳にも届いていたようで、周りには聞こえないようにコソッと耳打ちしてきた。
「あんな噂話、気にしてはダメよ? あの男がストラーテン侯爵令嬢をパートナーにすることなんてあり得ないことだわ。今のところ一応わたくしのパートナーの予定だけど、もちろん卒業パーティーまでにシェイラとあの男が結ばれたというのならわたくしのことは気にしなくても大丈夫よ? お父様にパートナーをお願いするから」
上品な笑顔で笑いかけてくれるマルグリット様は、私とフェリクス様が上手くいくと信じきっている様子だ。
それは今の状況を知らないからだろう。
「……いえ、その可能性は全くないのでマルグリット様はフェリクス様とご出席なさってください。ただ、あの噂のようにもしかしたらカトリーヌ様とフェリクス様がということはあるかもしれません」
「……どういう、ことかしら?」
私の言葉を聞いて、途端に圧を強めて顔をずいっと寄せてくるマルグリットに、私は状況をかいつまんで説明する。
この数週間フェリクス様と顔を合わせていないこと、カトリーヌ様が王城に日参してフェリクス様と親しくしているのは事実であることなどだ。
私自身もカトリーヌ様とフェリクス様が二人で応接室へ消えていく場面を目撃したことがあるため、信憑性のないただの噂話ではないことも付け加えた。
「…………」
聞き終わったマルグリット様は何かを思考するように黙り込む。
ちょうどその時先生方が大教室に入って来て、私とマルグリット様のコソコソ話はそこで中断されてしまった。
まもなくして説明会が始まる。
卒業パーティーについての説明を聞きながら、私はついあることが気になって周囲を見回してみた。
あること――カトリーヌ様のことだ。
カトリーヌ様も3年なので、本来ならばこの説明会に出席しているはずだが、今のところ姿を見ていない。
大教室内をぐるりと見回すも、目に入ってくるのは真面目な表情で注意事項に耳を傾ける生徒達のみで、どこにもカトリーヌ様の姿は見つけられなかった。
今日もフェリクス様に会うべくきっと王城に登城しているに違いない。
今頃また応接室に籠り、二人だけで逢瀬を楽しんでいるのだろうか。
フェリクス様は私にしたように、カトリーヌ様の手を握ったり、抱きしめたりしているのかもしれない。
カトリーヌ様もギルバート様に自分から口づけをしていた時のように、フェリクス様にも積極的に迫っていそうだ。
……ああ、やっぱりダメ……。
想像しなければいいものを、私はまたしても二人の姿を脳裏に思い描いてしまった。
やきもきする気持ちが胸いっぱいに広がる。
嫉妬というものがこれほど苦しいだなんて知らなかった。
妬みや嫉みの感情が人を破滅に向かわせることがあると以前聞いたことがあるが、今なら「なるほどそうかもしれない」と頷ける。
これは危険な感情だ。
……私には何も言う権利も資格もない。なのに自分勝手にもフェリクス様をカトリーヌ様に渡したくないって思っているのだもの。
王太子であるフェリクス様を渡したくないと子爵令嬢ごときが思うなどなんたる不敬だろうか。
日を追うごとに、フェリクス様へ向けた自分の想いが強くなっていることを私は実感せずにはいられなかった。
最近やけに母のこの言葉を思い出す。
何度も何度も私に語り聞かせてくれた教訓だ。
こうして改めて母の言葉を反芻しているのは、きっとフェリクス様を想うようになったからだろう。
母の教えに反して、どう考えても身の丈に合わない人を好きになってしまった。
どうしたらいいのだろうかと自分と向き合うたびに自然と脳裏に浮かんでくる。
……でももう自分と向き合う必要はないのかもしれないわ。そんなことをしたって手遅れなのよ……。
そう、もうフェリクス様に気持ちを伝えるかどうかを悩むことは意味がない。
なにしろフェリクス様と言葉を交わすような機会すらないのだから。
学園の庭でフェリクス様に抱きしめられて涙を流してしまったあの日からもう数週間が経つ。
だが、その間私は一度としてフェリクス様と顔を合わていなかった。
それによって心底実感した。
これまではフェリクス様の方から私に会おうとしてくれていたから会えていたのだと。
逆に言えば、フェリクス様が私から距離を取った場合、私から会う手段がないのだ。
相手はこの国の王太子殿下である。
一子爵令嬢ごときが簡単に会える相手ではない。
学園としての正式な依頼であったセイゲル語授業の件も終わってしまった今、会うどころか顔を見る機会さえなかった。
……私が嫌がって泣いたと思われている以上、フェリクス様が私と距離を置くのは当然よね……。会いに来てくださることなんてきっとないわ……。
あの時ちゃんと誤解を解いていれば、と今になって深く後悔している。
今思えば私には甘えがあった。
次に会った時に上手く説明して誤解を解けばいいと心のどこかで思っていたのだ。
その「次」がないことなんてつゆほども思わずに。
フェリクス様が会いに来てくれることに慣れきってしまっていた私の怠慢だ。
いつの間にか私の日々にフェリクス様がいることが当たり前になってしまっていた。
そしてその日々が自業自得により突然終わり、フェリクス様のいない日々が始まって早数週間。
そんな頃に久しぶりに学園へ登校することになった。
卒業を間近に控えた3年のこの時期になると、もう授業もなく学園に行くことはほとんどない。
寮の部屋も引き払い、今は邸宅で生活をしている。
今回学園に赴くのは、来たるべき卒業パーティーについての事前説明会があるからだった。
当日の流れや注意事項などの説明があるのだ。
3年生全員に一度に説明を行うらしく、今日は各教室ではなく、大人数が収容できる大教室への集合となっている。
「シェイラ、なんだか久しぶりね」
大教室に入るなり声を掛けてきてくれたのはマルグリット様だった。
今日も今日とて優雅で美しく、まるでその場に大輪の華が咲き誇るような存在感だ。
自由席だったこともあり、私はマルグリット様と談笑しながら隣の席に腰掛けた。
大教室内は多くの生徒でザワザワと騒ついている。
久しぶりに会う者同士、会話に花を咲かせているようだ。
この時期の話題といえば、もっぱら卒業パーティーに関することである。
「エスコートの相手は決まった?」
「ドレスは何色にするの?」
そんな会話が次々耳に飛び込んでくる。
特に一緒に出席するパートナーが誰かという点は最注目事項であり、皆が口々に探りを入れているのが感じられた。
もちろん推測の域をでないような噂話も飛び交う。
「ねぇ、カトリーヌ様のパートナーを王太子殿下がされるって噂は本当?」
「それ私も聞いたわ! でもカトリーヌ様ってギルバート様という婚約者がいらっしゃるわよね?」
「でもカトリーヌ様ったら王太子殿下に会うためにお父上に帯同してほぼ毎日登城されているらしいわよ。もちろん殿下もお忙しい方だから会えない日も多いみたいだけど、たまにお二人が親しげに話しているのを目にするって王城勤めの私の兄が言っていたわ」
「まあ! そうなの!? 王太子殿下はてっきりマルグリット様のパートナーを務められると思っていたけれど、その話が事実なら分からないわね」
「でもただの噂でしょう? 王太子殿下の噂といえば、シェイラ様とのデートの話もあったじゃない。だからわたくしは結局のところやっぱりマルグリット様が最有力だと思うわ」
少し離れた席に座っている噂好きの令嬢達のおしゃべりがまさにそれだ。
聞き齧った噂話を各々が持ち寄り、楽しそうに騒いでいる。
こんな聞くに値しない噂は聞き流すに限るのだが、今に至ってはつい聞き耳を立ててしまった。
フェリクス様とカトリーヌ様が親しげに話しているという部分がどうしても気になってしまう。
……私がフェリクス様と顔を合わせていないこの数週間もカトリーヌ様は王城に会いに行かれていたのね。しかも親しげ……。
フェリクス様がカトリーヌ様に笑いかける姿をつい想像してしまい、気持ちがズンと重くなった。
皮肉なことにちょうど昨年の今頃なのだ。
カトリーヌ様がギルバート様の心を掴み、私が婚約破棄をすることになったのは。
あの時と同じようなことが今度はフェリクス様を相手としてまたこの時期に起こるのではないかとつい考えてしまう。
……フェリクス様もカトリーヌ様と……。ダメ! 想像するだけで胸が張り裂けそうなくらい苦しいわ……!
「ちょっと、シェイラ? なんだか顔色が悪いけど大丈夫なの?」
私の異変を敏感に感じ取ったらしいマルグリット様が隣から心配そうに声を掛けてくれる。
どうやら同じ噂話がマルグリット様の耳にも届いていたようで、周りには聞こえないようにコソッと耳打ちしてきた。
「あんな噂話、気にしてはダメよ? あの男がストラーテン侯爵令嬢をパートナーにすることなんてあり得ないことだわ。今のところ一応わたくしのパートナーの予定だけど、もちろん卒業パーティーまでにシェイラとあの男が結ばれたというのならわたくしのことは気にしなくても大丈夫よ? お父様にパートナーをお願いするから」
上品な笑顔で笑いかけてくれるマルグリット様は、私とフェリクス様が上手くいくと信じきっている様子だ。
それは今の状況を知らないからだろう。
「……いえ、その可能性は全くないのでマルグリット様はフェリクス様とご出席なさってください。ただ、あの噂のようにもしかしたらカトリーヌ様とフェリクス様がということはあるかもしれません」
「……どういう、ことかしら?」
私の言葉を聞いて、途端に圧を強めて顔をずいっと寄せてくるマルグリットに、私は状況をかいつまんで説明する。
この数週間フェリクス様と顔を合わせていないこと、カトリーヌ様が王城に日参してフェリクス様と親しくしているのは事実であることなどだ。
私自身もカトリーヌ様とフェリクス様が二人で応接室へ消えていく場面を目撃したことがあるため、信憑性のないただの噂話ではないことも付け加えた。
「…………」
聞き終わったマルグリット様は何かを思考するように黙り込む。
ちょうどその時先生方が大教室に入って来て、私とマルグリット様のコソコソ話はそこで中断されてしまった。
まもなくして説明会が始まる。
卒業パーティーについての説明を聞きながら、私はついあることが気になって周囲を見回してみた。
あること――カトリーヌ様のことだ。
カトリーヌ様も3年なので、本来ならばこの説明会に出席しているはずだが、今のところ姿を見ていない。
大教室内をぐるりと見回すも、目に入ってくるのは真面目な表情で注意事項に耳を傾ける生徒達のみで、どこにもカトリーヌ様の姿は見つけられなかった。
今日もフェリクス様に会うべくきっと王城に登城しているに違いない。
今頃また応接室に籠り、二人だけで逢瀬を楽しんでいるのだろうか。
フェリクス様は私にしたように、カトリーヌ様の手を握ったり、抱きしめたりしているのかもしれない。
カトリーヌ様もギルバート様に自分から口づけをしていた時のように、フェリクス様にも積極的に迫っていそうだ。
……ああ、やっぱりダメ……。
想像しなければいいものを、私はまたしても二人の姿を脳裏に思い描いてしまった。
やきもきする気持ちが胸いっぱいに広がる。
嫉妬というものがこれほど苦しいだなんて知らなかった。
妬みや嫉みの感情が人を破滅に向かわせることがあると以前聞いたことがあるが、今なら「なるほどそうかもしれない」と頷ける。
これは危険な感情だ。
……私には何も言う権利も資格もない。なのに自分勝手にもフェリクス様をカトリーヌ様に渡したくないって思っているのだもの。
王太子であるフェリクス様を渡したくないと子爵令嬢ごときが思うなどなんたる不敬だろうか。
日を追うごとに、フェリクス様へ向けた自分の想いが強くなっていることを私は実感せずにはいられなかった。
441
あなたにおすすめの小説
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました
Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。
そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。
「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」
そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。
荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。
「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」
行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に
※他サイトにも投稿しています
よろしくお願いします
さよなら、悪女に夢中な王子様〜婚約破棄された令嬢は、真の聖女として平和な学園生活を謳歌する〜
平山和人
恋愛
公爵令嬢アイリス・ヴェスペリアは、婚約者である第二王子レオンハルトから、王女のエステルのために理不尽な糾弾を受け、婚約破棄と社交界からの追放を言い渡される。
心身を蝕まれ憔悴しきったその時、アイリスは前世の記憶と、自らの家系が代々受け継いできた『浄化の聖女』の真の力を覚醒させる。自分が陥れられた原因が、エステルの持つ邪悪な魔力に触発されたレオンハルトの歪んだ欲望だったことを知ったアイリスは、力を隠し、追放先の辺境の学園へ進学。
そこで出会ったのは、学園の異端児でありながら、彼女の真の力を見抜く魔術師クライヴと、彼女の過去を知り静かに見守る優秀な生徒会長アシェル。
一方、アイリスを失った王都では、エステルの影響力が増し、国政が混乱を極め始める。アイリスは、愛と権力を失った代わりに手に入れた静かな幸せと、聖女としての使命の間で揺れ動く。
これは、真実の愛と自己肯定を見つけた令嬢が、元婚約者の愚かさに裁きを下し、やがて来る国の危機を救うまでの物語。
元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
お妃候補を辞退したら、初恋の相手に溺愛されました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のフランソアは、王太子殿下でもあるジェーンの為、お妃候補に名乗りを上げ、5年もの間、親元を離れ王宮で生活してきた。同じくお妃候補の令嬢からは嫌味を言われ、厳しい王妃教育にも耐えてきた。他のお妃候補と楽しく過ごすジェーンを見て、胸を痛める事も日常茶飯事だ。
それでもフランソアは
“僕が愛しているのはフランソアただ1人だ。だからどうか今は耐えてくれ”
というジェーンの言葉を糧に、必死に日々を過ごしていた。婚約者が正式に決まれば、ジェーン様は私だけを愛してくれる!そう信じて。
そんな中、急遽一夫多妻制にするとの発表があったのだ。
聞けばジェーンの強い希望で実現されたらしい。自分だけを愛してくれていると信じていたフランソアは、その言葉に絶望し、お妃候補を辞退する事を決意。
父親に連れられ、5年ぶりに戻った懐かしい我が家。そこで待っていたのは、初恋の相手でもある侯爵令息のデイズだった。
聞けば1年ほど前に、フランソアの家の養子になったとの事。戸惑うフランソアに対し、デイズは…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる