上 下
3 / 37

第三話 「魔物使い」が役にたったみたいです

しおりを挟む
「な、なに?姉さま…!」
私は、この異世界に転生して初めて見る「魔物」という存在に恐怖を覚えていた。
怖い、怖い!
「あれは魔物よ…!ライナ!下がってなさい!」
姉さまは叫んだ。
母さまは私をかばうように、私の周りにバリアをはった。
「いくわよ!聖霊たち!」
姉さまは光の粒を手の中にぎゅっと集めた。
「スレイサー!!」
ばっと光の刃が魔物に向かって飛んでいった。
だが、
「グオオオオオオオッ!」
その咆哮で、光の刃はかき消されてしまった。
「ならば、私が…!いけ!ウィンディブロウ!」
母さまは風の刃を作り出し、魔物に向かって投げた。
ザシュッ
魔物に少しばかり命中する。
だが、
「ギュアアアアアアアッ!」
と、魔物が爪を振りかざし、母さまと姉さまに襲いかかった!!
「!!」
どうしよう!私、戦えない!
私は、ただその光景を呆然と見つめた。
爪が、振り下ろされようとした、瞬間だった。
「やめてーーーーっっ!!」
私は叫び、ギュッと目と耳を塞いだ。



「…………」



だが、いつまでたっても悲鳴は聞こえてこなかった。
「……あれ?」
私は、恐る恐る目を開けた。
魔物が、静止している。
それも、私のほうを見て、釈然と。
「え、え?」
母さまと姉さまに答えを求めるように、私は、2人を見たが、2人も呆然と私を見ていた。
「…あ」
私は、自分のスキルの存在、「魔物使い」を思い出した。
「…………」
大きく、息を吸う。
「帰って!自分の森に、帰って!」
魔物は私の叫び声を聞いて、ビクッと震えたが、やがてくるりと向きを変え、立ち去っていった。
「…………」
「…姉さ」
「すごいわライナ!!」
姉さまが私に向かって抱きついてきた。
「??」
ぎゃ、逆にしまりすぎてキツい………
「あなたの才能……「魔物使い」なんてね」
あ、やっぱりこれ「魔物使い」なんだ。
「本当に……本当に珍しい能力なのよ、これ。なんせ、ランクSの能力だもの」
「ランクS?」
「後で、話すわ」
姉さまは私を解放すると、母さまと話し始めた。
一体、この能力は、ランクSとはなんなんだろう。
しおりを挟む

処理中です...