6 / 16
6
買い物の途中でパーシヴァルさんを見かけた。声をかけようと思ってそうしなかったのはパーシヴァルさんが人と一緒にいたからだった。すらりと背の高いビキニアーマーを着たスタイルのいい女の人が隣に立っている。マゼンタの髪が印象的な綺麗な人だった。彼女は親し気にパーシヴァルさんの腕に絡みついている。デート、だろうか。邪魔をしてはいけないと思った私は見なかったふりをして肉屋に向かった。
お似合いだったな。そんな感想を抱きながらも心が沈んでいくのはなぜだろう。気にしないようにしても二人が寄り添っていた姿が脳裏を過る。その度私はため息を吐くのだ。あの人は背が高くて出るところの出た肉感的な体つきで。女としての魅力で私に勝ち目なんて万に一つもなかった。
それからしばらくして帰って来たパーシヴァルさんをいつものように出迎えた。
「おかえりなさい」
「はい、帰りました」
「今日は生姜焼きですよ」
「それは楽しみです」
パーシヴァルさんもいつもと変わらなかった。いつもと違うのは私の心境だけだ。でもなにもかもに気が付かないふりをした。だって気付いてしまっても私が傷付くだけなのだから。
野菜スープを温めなおして食卓に並べる。できるだけ平然として見えるように気を遣いながら私は問いかけた。
「今日一緒にいた女の人、綺麗な人でしたね。彼女さんですか?」
「一緒にいた女の人? ああ、マライアですか。彼女はただの知り合いです。特に親しいわけではありません」
「それにしては随分親密そうでしたけど」
「彼女は恐らく俺に気があるんですよ。ただそれだけです」
パーシヴァルさんは平然とそう言った。それこそ今日の天気でも語るような気軽さと自然さで、さも当然のことを語るように。
この人にだけは私が抱きつつある感情を知られたくはないと心底思った。それがどうしたのだと、自分にとっては価値のないものだと言われてしまったらきっと耐えられないから。
お似合いだったな。そんな感想を抱きながらも心が沈んでいくのはなぜだろう。気にしないようにしても二人が寄り添っていた姿が脳裏を過る。その度私はため息を吐くのだ。あの人は背が高くて出るところの出た肉感的な体つきで。女としての魅力で私に勝ち目なんて万に一つもなかった。
それからしばらくして帰って来たパーシヴァルさんをいつものように出迎えた。
「おかえりなさい」
「はい、帰りました」
「今日は生姜焼きですよ」
「それは楽しみです」
パーシヴァルさんもいつもと変わらなかった。いつもと違うのは私の心境だけだ。でもなにもかもに気が付かないふりをした。だって気付いてしまっても私が傷付くだけなのだから。
野菜スープを温めなおして食卓に並べる。できるだけ平然として見えるように気を遣いながら私は問いかけた。
「今日一緒にいた女の人、綺麗な人でしたね。彼女さんですか?」
「一緒にいた女の人? ああ、マライアですか。彼女はただの知り合いです。特に親しいわけではありません」
「それにしては随分親密そうでしたけど」
「彼女は恐らく俺に気があるんですよ。ただそれだけです」
パーシヴァルさんは平然とそう言った。それこそ今日の天気でも語るような気軽さと自然さで、さも当然のことを語るように。
この人にだけは私が抱きつつある感情を知られたくはないと心底思った。それがどうしたのだと、自分にとっては価値のないものだと言われてしまったらきっと耐えられないから。
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
完璧な政略結婚のはずでしたが、宰相閣下の“私の妻”扱いが甘すぎます
星乃和花
恋愛
政略結婚のはずでした。
家同士の利も、立場の釣り合いも、全部きちんと整った、完璧に合理的な結婚。
……なのに、夫となった冷徹宰相は、なぜか人前で私を「最高の妻」と紹介し、暮らしを完璧に整え、他人に近づかれると不機嫌になってしまいます。
“天使”と噂される穏やかな令嬢フィオナもまた、
そんな不器用な優しさに少しずつ心をほどかれて――。
これは、条件で選ばれたはずの夫婦が、
いつの間にかお互いを“ただ一人”として欲しくなるまでの、甘くてやさしい政略結婚物語。
(毎日21:50更新ー全8話)
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
取り巻き令嬢Fの婚活
キマイラ
恋愛
前世の記憶を取り戻し自分が乙女ゲームの攻略対象の取り巻きFだと気付いた私は取り巻きをやめ婚活を始める。そんなある日うっかり婚活仲間に既成事実を作っていかないかと言ってしまった。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
虚弱姫はコワモテ将軍の筋肉に触りたい
隙間ちほ
恋愛
◼︎無骨な英雄×病弱な筋肉フェチ姫
◼︎辺境伯の末娘エルナは、領軍の英雄マテウスとの結婚が決まった。政略結婚――のはずが、実は姫は将軍の熱烈なファン。姫がノリノリで嫁ぐ一方、当のマテウスは「か弱い姫君に嫌われている」と思い込み、距離を取ってしまう……。
◼︎筋肉と鼻血とすれ違いラブコメ。
◼︎超高速展開、サクッと読めます。