不思議な黒石(ケンタ編・京子編)

當宮秀樹

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一占い師シリパ

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1占い師シリパ

 画家を辞め小説家をめざした京子だったが思うように筆が進まず、そろそろ嫌気がさしてきた。 
ソファーで横になりまどろみながらテレビを見てる時携帯がなった。 

「京子ちゃんケンタだけど」 

「な~に」  

「京子ちゃんテンション低っ。 どうして京子ちゃんの電話応対はいつもテンション低いの?」

「なに、あ~らケンタくん久しぶり、お元気にしてましたか? とかなんとか言ってほしいわけ?」  

「いや、今、言ったこと忘れて」  

「忘れる。 で、何?」

「今日ボーナス入ったからマッチママの処で、僕のおごりで一杯どうかなと思って……」 

「ケンタくんボーナス出たの…… 正社員になったんだ…… ごちになる」

小料理屋リンちゃんでおち合った。

ケンタが「京子ちゃん久しぶり。元気だった?」
 
「それが、そうでもないのよ……」 

にやけながら「また行きずまり?」

「私さっ、小説って本当は好きじゃないのよね。 ついノリと勢いで始めたけどよく考えたら
小学校の頃から小説って読んだことないのよね……」 

「京子ちゃんそれで小説家になろうとしたの?」 

「つい、ノリで、アハッ。 わたしって変かな?」 

「変。 でも、例の石のおかげで題材はたくさんあるでしょうが」 

「もう決めたからいいの」 

「そっか、でも次の仕事のあてでも?」 

「今、ケンタくんの顔見て思い浮かんだよ」 

「前に小説家になる時もここでそんな言い方されたような……」 

「ケンタくんは切っ掛けをくれる天才だね」 

「僕はそんなつもりはないけど……」  

マチコママがビールを持ってやってきた。 

「京子ちゃんお久しぶり。 相変わらずお綺麗だこと」 

「いや~私なんて……マチコママこそお綺麗で」 

「なに、二人で何やってるの?」ケンタは下を向いたまま呟いた。 

すかさず京子は「なにが!」語気を強めた。 

「ゴメン、で、話し戻すけどなにか思い浮かんだの?」 

「占い師!」 

ケンタは京子の突飛な言葉にビールを吹き出しそうになった。 
ケンタとマチコママはもう一度京子に確かめた。

ケンタが「占い師って言った?」 

「そう、今ケンタの顔見て決めたんだけどさ。 私あの石のおかげで何年も食べさせてもらってるんだけど、
芸術家の意識に重なる方法が最良の方法だと思ってたのね。 でも、たった今それ以外の方法ひらめいたの! 
相談相手の過去・現在・未来を視ながら話してあげることが相談者にとって、
一番必要な言葉で生きた言葉をかけてあげられるような気がするの! どう思う?」  

ケンタは「確かにそれは云えるけどどういう方法で? 狸小路にでも座る?」 

「そこよね」  

「ネットは?」 

「ネットは駄目よ、生きた言葉は本人を目の前にしないと正確な判断出来にくいと思わない?」 

ママが「チョットごめんね! ケンタくんと京子ちゃんなにか食べます?」

「とりあえず、枝豆とフライドポテトとバターコーン」二人の三種の神器だった。  

二人はとりあえず無言で食事をした。 
ひと通り客がひき始めたころマチコママが「あのさっ、こういうのはどう? 
例えば喫茶店とかレストランで占いをするというのはどう? 
そこの店で働きながら占いもする。 そして占った料金の中から店に所場代をを納めるとか?」

「いい考え」

ケンタは賛成したが京子は「私、今更勤め人出来ないし向いてないよ。 路上にしようかな? 
狸小路あたりで夜テーブルと椅子置いてするあれ」 

ケンタが「それだと時間が夜の短時間に限定されるね。 日中はどうするの?」  

「最初は食べていけないから絵でも描くわよ。 もし食べていけるようになったらまた考える」

こうして京子の占い師デビューは決まった。


  【あなたのガイドさんからの
        言葉を伝言いたします】


と書いた張り紙を掲げ、小さなイスとテーブルを置き、黒い石を手にした京子の姿が夜の狸小路にあった。 

名前をシリパと名乗っていた。  

座り始めて最初の三日間は相談者は無かった。  四日目に来たのはやくざ風の二人組。

「よう、ネエちゃんこんな所でなにやっちゃてんの……?」 

「これ見れば解るっしょ 」 

「解ったら聞かねえよ……」威圧的に言った。

「あんた達に解らなくてもいいの……」  

「おもしれえネエちゃんだ」  

「おい、エイジおめえがネエちゃんになし付けろや」 

エイジは「こ、こ、こんな処でね、ね、ね、ねえちゃん風邪引くぞ」 

「エイジおめえはバカか、ネエちゃんの身体の心配してどうすんだ。 ったく。
よくみとけ、ネエちゃん、こんな所より何十倍も稼げるとこあるから紹介するぜ! 
な~に、酔っぱらいオヤジの相手するだけでいい金になるぜ」

「商売の邪魔だからあっち行ってくんない?」

「解らねえアマだなぁ。いいか、ここは俺たちの島、俺たちに許可無く店広げたら困るの解るよな?」
ミノルが威圧してきた。

「何処に書いてあんのよ?」シリパはミノルを睨んで言った。  

「そんな人を脅す暇があったらあんたら明日医者行きなよ! 
それにエイジさんとやら、あんたは泌尿器科に行きなよ」

ミノルは「なにバカなこと言ってんだコラ」  

「行けば解るわよ。あんた胃痛くない?」
 
「俺が胃が痛いのなんで解るんだ?」ミノルが言った。 

「私の商売なんだと思ってるのよ、ったく」  

「まっ、今日の処は帰る、又来るからな!いくぞ」

そのやり取りを遠くから見ていた路上ライブの数人がシリパを取り囲んだ。

「姉さんすごいっすね! あの二人びびって帰って行きましたよ。 
俺たち昔からあの二人知ってるけど、あんな顔した二人を初めて見ました! 
なんて言ったんですか?」 

「二人に病院を勧めただけよ。 ひとりは胃。 もうひとりは泌尿器」

「姉さん、すんげぇ! あの一瞬でそこまで解るですか?」

「だ、か、ら、私はそれが商売なの」

 集まった数人が拍手した。 

「これからシリパ姉さんと呼ばせてもらっていいですか?」  

「勝手にしな」  

「俺たちシリパ姉さん応援します」その噂はすぐ広まった。

「いらっしゃい、私はシリパです。 あなたのニックネームと生年月日と聞きたいこと言って下さい」  

「ヤマやんです。 ○○生れ三十才。聞きたいことは、自分がなんでこの世に生れ、
何をライフワークにすればいいのか聞きたいです」

「いきなり油っこい質問ね、チョット待ってね……」シリパは石を握った。

「はい、別世界のあなたは和菓子職人で天性の才能を持ち合わせ、将来有望とされています。 
場所は京都のようです。  自分に自信を持って今考えている構想を進めるようにガイドが言っております」 

「はい!自信がつきました! 切っ掛けが欲しかったんです。 ありがとうございます」 

「で、何がしたいのですか?」 

「はい、洋菓子屋です。 上手くいきますかね?」 
 
「上手くいく保証はありません。 どんな人にもね…… 未来はたえず変化しますから。 
自分が未来を作って下さい。 あなたが描いた未来が歪まないように紙に書いて部屋の
目立つところに張って下さい。 心に強く念じて下さい。必ず叶います。 努力して下さいね」

こんな調子だった。

「いらっしゃい! 私はシリパです。 あなたの名前またはニックネームと生年月日と
聞きたいこと言って下さい」  

「私は結婚十年になりますが子宝に恵まれません。 見ていただけますか?」 

簡単なようで難しい質問とシリパは思った。 ん~~ん、そうだ! この相談者の子供は男か女か……? 
シリパには女の子が視えた。

「はい!子供さんが視えます。 今までは身体の準備が出来ていなかっようです。 
身体をとにかく暖めるように、食生活から根菜類を多くとるようにガイドが言ってます」 

「わっ嬉しい! 男ですか? 女の子ですか?」 

「はい、半分は男で半分は女の子です」 

「シリパさん、それってオネエ? ですか?」

シリパは大笑いし「どちらが生まれるか楽しみを出産までとっておきましょうね」

 店終いしようとしたシリパの前にあの二人組がやってきた。 

ミノルが「おうネエちゃん。 お前のいったとおり病院に行ってやったぜ。 
胃に大きい潰瘍が二つ見つかって内視鏡でとったぜ。 悪性だったとよ。 
早期発見で簡単なオペですんだよ礼をいうぜ。 ありがとうな。 
エイジも淋病だってよ! 笑っちゃうな、ガハハハ……」  

「そう、良かったわね……! で、今日はなにか用?」 

「この前は悪かった。 今日は礼をいいに来たまでよ」 

「あっそ」素っ気なく京子は応えた。 

「これからはネエちゃんのことは俺らが守るから、安心して商売してくれよ。
口出しする奴は俺らが許さんから……」  

「私、そんなこと頼んじゃいないよ」  

「まあいいやね。 これ買ってきたからみんなで喰えや」

大量の焼き鳥とたこ焼きをシリパのテーブルに置いた。 

 その日、路上ダンスやってる者、ストリートミュージシャンなどみんなを集め宴会をやった。

「シリパ姉さんって凄いよね! 俺たち仲間うちでも有名っすよ」 

「なにが……?」

すっかり場を仕切るシリパがいた。
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