TEIZI(パラレルワールドの旅) 全9作

當宮秀樹

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9「フゴッペ村中学生」

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9「フゴッペ村中学生」  
                                                         
 札幌の町で占い師をしている女性がいた。
名前はTeiko。

彼女はは5年前フゴッペ村中学生の要請で占いを
頼まれて引き受けた。それが最初の切っ掛けだった。

フゴッペ村は、札幌の西50キロに位置する
人口千人の小さな村。

フゴッペ村中学校では5年前から極秘の伝統がある。
それは、卒業を控えた3年生の有志が占い師Teikoを招き、
札幌のカラオケ店でフゴッペ中3年生の集団相談会を開催するというもの。

5年間続いた行事で、生徒会長が発起人となり学校や親に知られないよう口伝で受け継がれた。

その札幌の占い師の名前はスピリチュアル
占い師Teikoという女性。

Teikoは5年前からフゴッペ中生徒の要請で
毎年開催された。

会場は札幌駅近くのカラオケBOXのパーティールームひと部屋と個室をひと部屋借り行われた。

時間は人数にもよるが4時間で予約されていた。

最初の2時間は個人の相談、後半の2時間はTeikoとの質疑応答。
後半のギャラはTeikoの好意により無料。

今回の参加者は9名、女生徒4名。男子生徒5名。

前日の放課後9名が最終打合せで教室に集まった。

幹事の生徒会長の三浦祐里子が「いよいよ明日だ、
小樽駅さ各自11時集合ね、ほんで全員で札幌さ向うべ!
たぶん札幌駅には12時前には到着すっからぁ、
札幌駅の地下で昼ご飯食べて1時にカラオケさ向うべし」

ミツオが「おれ、先輩さ聞いたけんど、田舎もんは都会さ出ると
目が泳いでいるからすぐバレルらしい、
んだからおめぇら絶対キョロキョロすんなよ、
ひとりが田舎もんだと解るとみんなそうだと思われるからな」

「一番キョロキョロすんのはミツオお前だんべ!」フゴッペ村の暴れん坊マサが言った。

「言えてる・・・」ハチが手を叩きながら言った。

「ハチ、そんなに笑うところでねぇべ、だから女は・・・」

巨漢ミヨリが「女がどうかしたぁ・・・?」

育代が「おぃ、ミツオ・・祐里子は今そんな話しでねぇべ!
おめぇ・・話し最後まで聞け!・・・ったくもう」

「ゴメンな祐里子」ミツオは下を向いて頭を下げた。

祐里子が「以上です!」話はそれで終わった全員こけた。


 札幌駅地下街で軽く昼食を済ませることにした。

9名は田舎から出て来たことを悟られまいと容姿や言葉遣いに注意した。

だが男子生徒全員がジーンズの下に革の紳士靴という目立つスタイルだった。

どう見ても集団で田舎から来ている集団にしか見えなかった。誰が見てもひと目でわかる。

駅の地下のフードコートに全員座った。10分しても
注文を採りに誰も来ない・・・??
全員の目は完全に泳いでいた。

マサハルが「オイ、もしかしてここはセルフでねぇのか?」

全員、ほぼ同時に気が付いて各売り場に向った。

エイジが「普通メニューさ持ってオーダー捕りに来るのが当たり前ぇでねえのか?
ここの責任者はなにやってんだべな?」

トッチが「こんな店、長く続かねぇぞ・・・
そっだらこと俺でも解るべや」

ブツブツ言いながら昼食を食べた9人はカラオケ
に向った。

「でっけえビルいっぱいあるな~~や、小樽とも
違うな。都会ってこういう街を言うんだぞミツオ」

「ば~~か、オラは2回目だから知ってらべ・・・」

特別室に9人全員通された。

「なんか緊張するな・・・」マサハルが言った。

「Teikoってどんな人なんだろうね?綺麗って言うよりも味があるって
聞いたことあるけど」育代は期待と不安でいっぱいだった。

ドアがノックされた時計の針はちょうど一時。

「こんにちは、Teikoと申します・・・」

全員に緊張が走った。

「今年で6回目ね、私毎年楽しみにしております。
お招きいただきありがとうね。私もあれから6年
すっかり年を重ねました」

エイジが「もう、立派なオバサンさんだな~~や」

がははは、全員爆笑した。

「君なまえなんて言うの?」

「はい!エイジです」

「そう、エイジくんねあとで顔貸せ・・・」

が・・ははは、全員爆笑した。

「まっ、そう言うことで三浦さんに話しておいたけど、最初の2時間は個人セッション。
今日は9人だから、そこのエイジ・・・120分割る9はひとり何分?」

「チョット待って下さい」エイジは指を使い始めた。

「いまどき指使う生徒いるんだ・・・もういいよ。 三浦さん何分?」

「はい、ひとり13分です」

「じゃあひとり15分目安だから・・・一問一答って
とこかな?複数聞きたいことある人は無駄を省くため
質問内容を簡単に言えるようにしてね。
エイジくん解った?・・・」

応答がない。

「おい、エイジ!」

「あっ、はい・・・なにか?」

「なにかじゃないよ、指使って何やってるの?」

「ひとり15分だから9人で何分かなと思って・・・」

「まだそこかい・・・」

全員が笑った。

「三浦さん後で彼に教えといてね」

「そのあとの約100分は全員で質疑応答とします。
いいね?だから誰もが思うような質問は、個人の時に
聞かないようにね持ち時間の15分もったいないから、
あくまでも個人的な質問にしたほうが良いよ」

「はい!」全員が答えた。

「じゃあ最初の人から別ルームに来てくれる。エイジくん解りましたか」

「なにが・・・?」

「おまえねっ、3回ぶっ飛ばしてやる」

全員爆笑した。

「じゃあ、最初の人、私と行きましょう!
最初は誰ですか?」

「はい」

ミツオとTeikoは別室に向った。ほぼ予定通り13~5分で全員の
個別相談は終わり、最後の三浦とTeikoは大部屋に戻ってきた。


「はい、今日はどうもお疲れ様でした。
エイジ・・・私の話きいてるかい?」

「聞いてま~~す」

「ハイ、良い返事です。エイジも人並みに悩みがあってTeiko嬉しいです。
でも、あとで必ずぶっ飛ばすから逃げないように。
逃げてもフゴッペ村まで追っかけるからね」  

エイジは頭をかいていた。

また、全員爆笑した。 

「え~~、Teikoも今年でここに来るのは6回目になります。
合計で約60人前後の生徒とお話しさせてもらいました。

そこで、相談内容にある共通する事があるの、それは依存なの、小中高生はまだ親の
保護下にあるから仕方ない部分はあるけど、これから社会に出て自立したら
基本自分のことは自分で責任を負うわけだからね。

まずは自分で解決しようとする癖を付けるのよ。
自分の目の前に出て来た障害は自分の為にあるの。
これ私というよりも商売上の経験なの。

そこから目を背けても、形を変えて何度でも君たちの
前に現われるからね、逃げないで正面からぶち当たって下さい。

私はこの商売やってて何人も視てきたの。

あと多いのが、他人のせいにする癖をつけないこと。

自分が失敗してもすぐ誰かのせいにする人、
結構いるでしょそういうタイプの人。

これだけは覚えておいてよ・・・他人のせいはひとつもありません、
全ては自分のせいなの、ここは重要なポイント。エイジ解った?」

「はい」

「なにが解ったの?」

「他人のせいにするな、全ては自分のせいだっぺ・・・」

「ちゃんと他人の話し聞いてるんだ・・・」

「Teikoさん、オラを馬鹿にしたら駄目だ、ひとの
こと馬鹿にしたら自分も馬鹿にされっど・・・」

全員爆笑した。

「解ったけど・・あんたの訛りすげえな・・・
話し戻すけど自分で解決できる癖つけなさいね。

自分に解決できない障害は目の前に現われないの、
目の前にある障害は自分で解決できるだけのパワーが
既に備わってるともいえるの。

解決できる時期が来たの、それと解決できるパワーがあるから目の前に現われたの。

現われた時が解決のチャンスです。言い方を変えるなら自分のためにだけある障害なの。
これは覚えておいて邪魔にならないと思います。

私の商売上の経験です。

え~~次はみんなの疑問に答えたいと思います。
但し私の占い師としての経験上のね」

マサハルが手を挙げた。

「ハイ、どうぞ」

「僕は空手をやってます、一生懸命練習をしてるけんど、どうしても勝てない人がいます、
どしたらもっど強くなれますか?」

「武道のことあまりよく解らないの、でも、ひとつ解ることあるよ。
芯を自分の中心に置くこと、芯がぶれると身体や技にもブレが出てしまうのね。

合気道創始者の植芝盛平って人を視たことがあるの。
あの人は凄いよ。芯がぶれてないから絶対に負けないと思った。

細かいことはあの人の本を読んだ方がいいわ。
武道をする人は必見です。他は・・・?」

育代が「はい、Teikoさんはなに占いですか?どうしたらTeikoさんみたいになれるんですか!」

「私は波長解読とガイドからの伝言。誰でもなれるよ、コツさえ覚えたら
簡単、後は、数(経験)をこなす事。
それと基本は人を好きになることよ」

ハチが「好きになることとどう関係あるんですか?」

「好きっていう好意は、肯定的?否定的?どうですか?育代さん」

「肯定・・・」

「そうね、つまり肯定は理解する又は理解しようとする好意。
それに比べて否定はずばり拒否または無視。

肯定は発展性あるけど、否定はなにも産まない
そこで終わり。

この商売は相談者に来た客をまず先に理解する必要があるのね、つまり、
相談者を肯定しなくちゃ次進まないのよ。
悩みや問題が何処(原因)から来てるかを知らないと相談できないの。
人を好きになれば、だんだんと色んな物が見えてくるよ。

色んな物が見えたら、あとは相談者と照らし合わせるの、
そしたら解決策も徐々に見えてくるの。それを瞬時に
判断し解決策を考えるの。

今日もそう、みんなが部屋に入ってき時、まず先に私が
したことなにか解る?三浦さん」

「生年月日と名前と好きなこと」

「そう、生年月日と名前と好きなこと、これはある意味自分だけのことでしょ。
自分のことを云うっていう好意は、自分の中にいちど意識を入れる必要があるの。

名前を聞くだけだと聞かれ慣れてるから表面だけで答えちゃうでしょ、
でも生年月日は答え慣れてないから
意識をもっと深く持っていくの。

その時に私も一緒に中に入るの一瞬でね、だからある
程度君達を知ることが出来るの。

あとは相談内容に応じて君達に一番良い方法を言葉にするの。

場合によっては君達のガイドに聞くこともあるけど。

これは難しいことでないの。みんな出来る能力よ。
ただし、人が好きな人はね・・・

人が嫌いな人は出来ません。ハッキリ言います。
これは、君達が社会に出てから死ぬまで人の世の中で
生活するの。

人との対話の基本は人の話を聞くことからなの、
一方的に自分の話しや主張をする人いるけど・・・

あれは会話とはいえない、たんなる自己主張だけよ。

恋愛でも結婚でもそう・・・これも私の所に来る相談者が多いの。
彼が、主人が、私のこと全然解ってくれません・・・てね。

私は逆に相談者に聞くの、あなたはどうなの?って
恋人やご主人のこと解ってあげてますか?って。
多くの人は『私なりに考えてます』とか云うの・・・

じゃあどういう風に接したら相手があなたのこと理解してくれるか解るのでは?って聞き返すの。
そこで相談者の言葉は止まるんだけどね。

いいですか、恋愛は相手を理解することが大事だと私は思います。
理解してあげることが大事、この商売を通じて私が思うことなの。

当然三者三様あるでしょう。それをこれから皆さんは社会に出て
学ぶことなのね、障害から逃げずにガチで勝負して下さい。

障害から逃げる人は逃げる癖が付きます。
他人に頼る人も頼り癖が付きます。
自分の目の前に出て来た障害は自分のためにある
障害なの、既にその障害を乗り越えるパワーがあるから
目の前に現われたの。今が乗り越えるチャンス。

逃げても違う形で何度でも何度でもやってくるわよ。
向き合う姿勢が出来た人は、まわりも必ず変わるよ、
もう一度言います。今がチャンス」

エイジが言った「だったらTeikoさんの商売いらねえべ!」

全員がエイジはTeikoさんに向かって、
なんという質問をするの?・・・

「エイジ好いこというね・・・今日一番のヒットよ。
いい、今言ったことが解らないから私の所に来るの。
社会に出てから簡単に私のところに相談に来るんじゃないよ、
来る時は最後の最後にしなさいね。

遊びに来るならいくらでも来て下さい。

フゴッペ村中学生ですってね。そしたら私が言います。
それがどうしたの?ってね・・・」

全員こけた。

「今日はお招きありがとう。気をつけて帰ってね、
それとエイジ表に出たらぶっ飛ばすからね・・・逃げるなよ」

フゴッペ村中学生9人は深く頭を下げ別れた。

渡辺敏郎は小説を書き終わった。体調もよくなり、
大空を舞う小鳥を眺めながら呟いた「な~~んだ」

    THE END
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