小説家HisaeとSizu 全10作

當宮秀樹

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5「HisaとeSizu」

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5「HisaとeSizu」

 Sizuは毎日Hisaeの家に遊びに来るようになっていた。

「姉さん、Sizu来たよ」

「ハイどうぞ」Hisaeはオートロックを解除した。

「Sizuあんたに、この部屋の鍵預けるよだから今度から黙って入っていいから。 
私が留守の時でも勝手に部屋に入っていいからね」

手の渡されたルームキーを見てSizuは嬉しそうにじっと見てそして呟いた「なのだ!」

Sizuには妹のような感覚を覚えた。 SizuHisaeを姉のように慕っていた。
Hisaeが部屋に籠もって執筆している時は、
Sizuが部屋掃除をするか好きな絵を描くか、
時にはなにかをキーボードで打ち込んでいた。

「Sizu今日はヘアーサロンに行こうか、
KOHEIっていう男の子を少しからかいに行こうよ…… 決定!」

「ハイ、決定なのだ」

二人はヘアーサロンKONAにいた。

「Hisaeさんいらっしゃいませ。 お久しぶりでした」

「こんにちわKOHEIくん。 この娘Sizuちゃん。 
今日はあんたがやってちょうだい。 いいかい綺麗に可愛くネ、頼んだよ」

「はいお任せ下さい。 こちらにどうぞ」

「?なのだ……」

「はい?」

「Sizuちゃんは天才なのだから感覚が私たちと違うの。 
だから話しかけないでほっといてやって」

「どのような感じにしたいのかと思って」

Hisaeが「Sizuどんな頭にしたいの?」

Sizuが壁の写真を指を差して「あれ……」

指の先にあったのはモヒカン頭のモデルの写真。

「Hisaeさん、ああいってますけど宜しいので?」

「チョット待った。 Sizuこんな頭にしたいのかい?」

「したいのだ」

「う~、さすがにモヒカンは…… あんたの場合は親の承認をもらわないと~ 
KOHEIは初めてHisaeの困惑している顔を見た。 うっすらとにやけていた。

「KOHEIなに見てんのよ」

「Sizuその頭は今度にしようよ。 
お前は就職活動中だからその頭はチョットまずいかも面接にいった会社の人がビックリするべ」

Sizuが次に選んだのが黒柳徹子風の写真。

「KOHEIなんでこんな写真ばっか置いてあるのよ。 
ここはモデルさん御用達の店なのかい…… たくもう? 
変な写真撤去撤去。 普通の写真集ちょうだい」

「この中からどうぞ」KOHEIがSizuに渡したのはストレートヘアーの写真集。

「これなのだ」次に選んだのは写真の中では地味系のヘアスタイル。

Hisaeは「これが好いのかい?」

「なのだ」

「じゃ、KOHEIこれで頼む」

KOHEIが「本当にこれで好いですか?」

「なにが?」

「後ろ借り上げですよ」

「なに~。 KOHEIてめえ俺を舐めてるのか」

すかさずSizuは「舐めてる~ 舐めてる~」大はしゃぎしていた。

結局スタイルが決まるまで一時間を要し、決まったのがHisae風カット。 
二人は双子の姉妹のようになった。

「なんで私がSizuと同じカットなのよ」

「これでいいのだ」Sizuは大満足だった。


Hisaeは寝たのが早朝のためSizuが来ても熟睡状態。 
目が醒めたら昼の二時をまわっていた。

「おう、Sizu来てたかい」

「昼グワン(昼ご飯)作ったのだ」

「いつもありがとうね助かるよ」

「助かるのだ」

Sizuはここに通うようになってから料理や洗濯・掃除と何でもこなすようになってきた。 
Hisaeに誉めてもらうのがSizuは嬉しかった。

「ねえ、Sizu今日も忙しいから相手してできないのごめんね。 
もう少しで終わるからそしたらエバのところにでも行こうかね?」

「うん、エバ姉ちゃん兄ちゃんって行く」

「姉ちゃん兄ちゃんか?あんた上手いこというね」

Hisaeはリビングにある古いノートパソコンに
電源が入っていることに気がついた。 何気なくフタを開けてみた。

「なに々?」しばらく見入ってしまった。

「なに? これ?」

そこに書いてあった文章はSizuが書いたであろう小説。 
なぜなら句読点が全くなく、です、ます、なのだ、
の文章の言い回しがSizuそのものだったから。 
原稿用紙で訳約百枚程度の短編小説。 
内容はSizu目線から見た社会の動きをファミリー小説っぽい書き方ものや、
宮沢賢治が書くようなメルヘンチックな動物の物語と、
抽象的なHisaeでも形容しがたい世界の小説になっていた。 
どれも句読点や構成がデタラメだけどそれもまたSizuらしい表現に思えた。

「Sizuこれあんたが書いたのかい?」

無言で首を縦に振った。

「どうしてこれ書こうと思ったの?」当然の疑問だった。

普段Sizuが話す会話は要点だけで、断片的であり会話として成り立っていないのに、
小説ではしっかりと形容詞も心理描写も交えた口話形式になっていたからだ。 
そして、なによりも驚いたのは、絶対にSizuが見たことがないであろう
明治・大正・昭和の背景や当時の人の意識も書かれていたことだった。

何故なら、Sizuはテレビを見ていてもドラマやニュースなどまったく興味を示さないし、
動物が出る番組以外はまったく興味を示さないからで当然本も読まない。

「姉さんが書いてるからSizuも書くのだ」

もしかしてSizuは感能力がずば抜けてるから、私のやり方に感応してる? 
とりあえず仕事を済ませたらエバに相談してこよう。 
数日後、二人は池袋のオネェの髭にやってきた。

「いらっしゃいませ~」

Sizuが「エバ姉さん兄ちゃんSizuきたよ」

エバはすかさず男の声で「兄ちゃんは付けなくていいから」

Sizuも低い声で「兄さん付けなくて好いから」店に居た全員が笑った。

Hisaeはエバに感応能力のことを話した。

「姉さん、Sizuは私達の知らない能力がもっとあるかも知れない。 
チャネリングだって出来るはずよ。 チャネリングで小説執筆させたらどう?」

「チャネリングか…… 面白そう。 アイデアは私が考えるとしてそれをどう伝えるかよね、
とにかく初めての事だからとりあえずやってみようかね」

「カラオケベートーベン第九」をリクエストした。

Sizuと言えば第九よね。

それから二人は飲んで歌って店をあとにした。

「まだ十時か、Sizuお前の家に電話しろ。 今日は姉さんのところに
お泊まりしますって言いな。 なんか言ったら私と替われ」

Sizuが「お母さん、今日姉さんが泊まれって言うのだ。 良いですか? はい、変わるのだ」

「もしもしHisaeです。 ご無沙汰してます。 今晩うちに泊めますので、はい失礼します」

電話を切って「良いのだ。良いのだ」Sizuは嬉しい時には言葉を二度繰り返す癖があった。

「さっ、今度は下北沢で飲むぞ」

「ワーイ、飲むぞ、飲むぞ」

二人は下北沢のスナックに入っていった。

翌朝「Sizuおはよう? あれ? いない?」

家の中からSizuが消えていた。 時計に目をやった。 
まだ八時か…… あいつ何処行った? とりあえずSizuの携帯に電話した。

「只今電話の出来ない地域に……」

……何処行った? その時ドアの鍵の音がしドアが開いた。

「姉さんおはようなのだ……」

「Sizuどこ行ってたの?」

「スズメのご飯買ってきた」そう言い終えるとコンビニの袋から米を出した。

「そっかいスズメね分ったよ。 でも、なんで急にスズメの餌なの?」

「お腹空いたって言うのだ」

「うん、分った。 質問した私が間違ってた。 どうぞ、餌やってください」

二人は朝食を終えてひと息ついた。

「ところでさ、あんたもなんか書いてみない? 例えばスズメの学校なんてどう? 
スズメはいつも群れて生活してるよね。 
その中には私みたいな変わったスズメがいるかもしれない。 
そのスズメの物語なんてどう?」

「Sizuスズメさん好き、書くのだ」

「分った。 じゃあ、そこのパソコン使っていいから書いてみなよ。 
バックアップの取り方は分るかい?」

「分るのだ」

「そっかい、じゃあ書いてみな」

食卓にパソコンを乗せキーボードをたたきだした。 
ここから、奇才Sizuちゃんの小説活動が始まった。


[スズメの学校]

スズメの学校に通う一羽のミミというスズメの物語。 
ミミは、みんなと同じ事をするのが苦手なタイプ。 
ある日、学校でお遊戯の時間に突然空からハヤブサが群れをめがけて急降下してきました。

スズメたちは一斉に避難しました。 が、ミミだけは逃げ出さずにその場にジッと
していました。 ハヤブサは鋭い爪をミミに向けて飛びかかってきました。

ミミはたじろぎもせずに「どうぞ食べて」そう言ってその場に羽を広げて立っていました。
それを見たハヤブサはなにを思ったか、急にミミの前に舞い降り、威厳ある声で「お前は
なんで逃げな……い」と聞いてきました。

ミミは「どうぞ食べて下さい」

「お前は私が怖くないのか?」

「怖いです。 でも私はいいの。 どうぞ食べて下さい」

ハヤブサはこんなスズメと会ったのは初めての経験。 
逃げまどう動物には本能が反応するけど、ジッと死を待つ動物には会ったことがないし、
なにか拍子抜けする。

「なんで? 逃げない?」

「私が逃げたら、あなたは他のスズメを狙うでしょ?」

「うん、当たり前だ」

「だったら私をどうぞ」

「だからそこが分らないのだ。 お前は確実に死ぬんだぞ。 
お前の父さん母さんや兄弟と会えなくなるんだ、それでもいいのか?」

「しかたありません。 さぁ早く、私を食べて下さい」

「お前は頭がおかしい。 又来るからその時は食ってやる」

そう言い残しハヤブサは大空に飛び去って行きました。 
遠くから見ていたお父さんスズメがミミに近寄て「ミミ、お前はどうして逃げなかった?」

「もし、殺されたらそれもミミが選んだこと。 それに、みんなとお遊戯して遊ぶのつまんないもん」

「なにを言ってる。 我々は昔からいやこの先もずっとこうやって生きるんだ。 それがスズメというもの」

「だから、分らないの? ミミはもっと違うところを見てみたい。 みんなと同じ事したくないごめんなさい」

そう言い残してミミは大空に飛んでいきました。 ここからスズメのミミの物語が始まります。

Hisaeは一時間後また見に来た。

「Sizu書いてるかい?」

Sizuはパソコンに向ったまま返事もしなかった。 
Hisaeは後ろに回りモニターを覗いた。 
この娘ったらちゃんと文章になってるし句読点も打ち始めてる。 
これってどういうこと? 
Sizuのチャネリング能力は凄い。 こ
れを書けるのにキーボードから手を離すといつもの
「なのだネェチャン」に戻るんだからなんだろうね……?

Hisaeが「Sizu今日お泊まりしなよ。 吉祥寺に連れてってあげるから。 
家に電話しな」

「吉祥寺ですか?」

「うん吉祥寺だ」

「吉祥寺にエバ姉さんいますか?」

「今日はエバはいないけど花子姉さんがおります」

「花子?」

「そう花子姉さん」

原稿料が振り込まれると、二人で食事に出かけることがすっかり習慣となった。

「今日は、ホームレス花子っていう友達に会いに行くよ。 三人で酒を飲むべし」

「花子・花子・花子なのだ」

「お前は九官鳥か?」
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