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大騒動の週末:土
第3話
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四時を過ぎると、少しだけお客さんの流れも途切れてきた。
酒場ホールもだいぶ落ち着きを取り戻したので、サラは受付の様子を見に行った。
これから夜にかけては、宿泊のお客さんが増える。
さすがにアンリエッタだけでは大変だろう。
「おやおや、こんな場末の酒場でも、少しは客が入る日もあるんだな」
アンリエッタが「いらっしゃいませ」を言うよりも先に文句を言いながら人が入ってきたので、少しだけ戸惑っていた。
「そんな場末の酒場に、何の用だら?」
すかさずサラが間に入る。
皮肉たっぷりの言葉と、笑顔を添えて。
「フン。僕はこの町の宿屋協会の会長だぞ? この町の全ての宿屋がまともに営業できているのかどうか、確認に来てやったんだ。感謝するがいい」
ホテル・マクシミリアンのオーナー、ケルヴィンは踏ん反り返った。
今がちょうどお客さんの少ない時間帯で良かった。
こんな馬鹿が受付にいたら、お客さんに迷惑で仕方がない。
ま、プライドの高いケルヴィンが、マリリン亭が混雑しているのを見たがるはずはないから、あえて人の流れが途切れたこの時に現れたんだろうけど。
「見ての通り繁盛してっから問題ねーべ。何なら食事でもしてっだらどうだべ?」
「フン、僕がこんなところで食事なんてするわけ……」
汚いものでも見るような目をさせたかと思ったら、ケルヴィンはアンリエッタを見て固まった。
「……その子は、見たことがないが……新しいルームメイドか?」
「んだべ」
「ここはそんな幼い子まで雇っているのか? 由々しき問題だぞ?」
ケルヴィンの言葉を真に受けたのか、アンリエッタはサラの陰に隠れた。
「そんなこたねーべ。アンリエッタはわだすがここへ来た時と同じ、十四歳だけんね」
「………………」
ケルヴィンは少しだけ口を開けたまま、アンリエッタをよく見て眉をひそめた。
かと思ったら訝しげな表情をさせた。
「あんの……」
サラが呼びかけてもまるで反応無し。
腕組みをしながら、何かに気付いたようにハッとさせた。
そして、薄笑いを浮かべて、後退りした。
「ソ、それでは失礼する」
まるで逃げ出すかのようにケルヴィンは一方的に告げて出て行った。
「何だったんだべな……?」
「さあ……?」
「取り敢えず、塩でも撒いとくか?」
言って、二人で笑い合った。
「何か面白いことでもあったの?」
いきなりリータ先輩が受付に現れた。
「そんな魔物が現れたような顔しないでくれる?」
「いんや、そんなつもりは……それより、酒場ホールはだいじょぶなら?」
「まぁね。一段落したから順番に休憩を取るようにって、マリリンが。もう少しすると夜のお客さんが来てまた忙しくなるしね」
酒場ホールを見ると、確かにお客さんは数人。
レイナ先輩だけでも十分対応できる人数だった。
サラとアンリエッタはお言葉に甘えて休憩をもらうことにした。
リータ先輩に受付を任せて、キッチンへ行く。
どうやら夕食の賄いが用意されているらしい。
夜に備えて、遠慮なくいただく。
メニューはタマゴスープにご飯に牛肉のステーキ。
これでは賄いと言うより、普通にお客さんに出せそうだと思ったら、予想よりも忙しかったからご褒美の意味も込めて特別に用意したのだと、マリリンが言った。
「……あの、サラさん。先ほどの方はいったい何だったんでしょうか?」
「あんなやつを丁寧に呼ぶこたねーよ。あんりゃ、ホテル・マクシミリアンのオーナーで、マリリン亭を目の敵にしてる嫌なやつだっぺ」
夕食を食べながら説明していると、キッチンでジョニーさんの手伝いをしていたマリリンの手が止まった。
「なーに? あいつ、このクソ忙しいのに来たの?」
「ああ、ついさっきだで。でんも、なんか知らんけど、急に帰っちまっただ」
「あたしの店が繁盛してるから恐れをなしたのかしらねえ」
きっとそうだと、みんなで笑った。
夕食を終えると、サラは酒場ホールに出てレイナ先輩に休憩に入ってもらい、アンリエッタは受付に行ってリータ先輩に休憩に入ってもらった。
酒場ホールには二組のお客さんしかいなかった。
どちらも初めて見るお客さん。
二十代前半くらいの若いカップルと、おじいさん。
この辺りの人ではないことは、サラにもわかった。
すでに二組とも料理は食べ終えて、コーヒーを飲みながらゆったりとした時間を過ごしているので、サラはホールの端に立っているだけだった。
何か用があればすぐにいける心構えではいた。
しかし、二組ともそんな様子を見せることもなく、ただ時間だけが過ぎていって、日が傾くとそのまま何も頼むことなくお勘定をして出て行った。
宿泊のお客さんが三組ほどすでに部屋でくつろがれているから完全にお客さんがいないわけではない。
でも、酒場ホールからお客さんがいなくなっただけで閉店しているかのような静けさが訪れた。
まさに、嵐の前の静けさ。
昼間ほどではないにしろ、これから夜にかけてまた忙しくなる。
夜にマリリン亭を訪れるようなお客さんは常連客が多い。
それはこの週末も変わらないはず。
ただ、今日はそれに加えて宿泊客が多い。
後二組ほど訪れることになっているのだ。
ちなみに、その二組はすでに予約をされていた。
マリリン亭の三階。つまりはマリリン亭で一番高い部屋を指定してきたのだから、そこそこのお金持ちだ。
ということは、旅行者ではない。
旅行者ならわざわざマリリン亭の高級部屋には泊まらない。
もっと安い部屋を利用する。
そして、金持ちの旅行者なら、わざわざマリリン亭などには泊まらずマクシミリアン辺りに泊まっていく。
予約をしてまで泊まりに来る二組の目的は、マリリン亭のディナーだろう。
ジョニーさんの料理の腕前は世界最高だとマリリンはよく自慢していた。
世界をよく知らないサラでも、ジョニーさんの作る料理が美味しいことはわかる。
ジョニーさんは、知る人ぞ知る料理人として、一部ではかなり有名なんだそうな。
マリリン亭でディナーを食べるとなると、泊まる以外にない。
なので、週末はそれ目当てのお客さんが何組かは訪れるのであった。
ちなみにディナー自体は安い部屋でも望まれれば用意する。
もちろん、別料金になるのだが。
今日は安い部屋に泊まった三組の内一組もディナーを頼んできたので、計三組の部屋にディナーを運ぶことになる。
……夜も引き続きアンリエッタ一人で受付に入ってもらわなければならないかも。
そんなことを考えている間に、先輩たちも夕食を終えて帰ってきた。
日は半分くらい沈んでいる。
玄関や受付の方が少しずつ騒がしくなってきた。
「さ、こっから気合い入れなおさねーとな」
「サラの場合、余計に力を入れて変なミスをしないように気をつけなさいよ」
「……フフッ……みんなでがんばりましょう」
各々思いを口に……リータ先輩だけはサラに文句を言って、持ち場に戻った。
酒場ホールのカウンターにはマリリンが戻ってきた。
昼間ほどキッチンは忙しくないらしい。
ディナーのための下準備は前日からしていたし、昼間と違って夜は酒を飲む客が多いから、簡単なつまみを頼む人が多い。
それくらいのものはカウンターでマリリンが用意できた。
だからむしろ、キッチンにいるよりはカウンターにマリリンがいた方が仕事をする上でも効率がよかった。
マリリン亭に酒を飲みに来るお客さんは、マリリンのことも見慣れているし。
今のところ酒場ホールにサラの出番は必要なさそうだった。
すると、コンコンと上品に玄関の扉を叩く音が聞こえた。
サラは受付から出て扉を開ける。
そこには、見るからに上等なドレスを着たご婦人と伯爵のような出で立ちの紳士がいた。
「い、いらっしゃいまし」
「こちらに宿泊の予約をしているものだが……、ここはマリリン亭で間違いなのかね?」
不思議なものでも見るような目で、紳士がサラを見ていた。
「ええ、まちげーねえです。どんぞ」
そういって、受付まで案内する。
「いらっしゃいませ、マリリン亭へようこそ。ご予約されているお客様でしょうか?」
「あら、ずいぶん可愛らしい受付さんね」
マリリン亭に泊まるお客さんとしては珍しいくらいに身なりの整ったお客さんだというのに、アンリエッタは物怖じせずに接客をしていた。
ドレスを着たご婦人に笑顔でお世辞を言われても、軽く受け流す。
「ありがとうございます。お名前とご予約されている部屋の番号を確認させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ。ゴルドーの名で予約している。部屋は三〇一号室だ」
「かしこまりました。確認できましたので、ご案内いたします」
アンリエッタは予約専用の宿帳をしまって、受付から出た。
ご婦人の持っていたバッグを持ち、紳士のバッグも持とうとしたら断られてしまったので、そのまま三階へと案内した。
気難しそうな紳士に対しても、いつもと同じように仕事ができていた。
自信は人を大きく成長させるけど、アンリエッタのそれは成長といっていいものかどうか……。
仕事を仕事として割り切って考えているのだとしたら、たいしたものだ。
アンリエッタに接客をされたお客さんは、あの子が人見知りだとはとても思わないだろうな。
将来、大物になるかも。
「あの、すみません」
「へ?」
ボケッと突っ立っていたら、玄関の扉を開けてお客さんが入ってきていた。
三十代くらいの夫婦、に見える。
身なりはさっきのお客さんほどではなかったが、ゆったりとした布の服で小綺麗にしている感じのお客さんだった。
「あ、い、いらっしゃいまし。えと、今日は宿泊で?」
「ええ。僕たちは予約をしているエンツォというものですが」
「ただいま確認すっぺ」
さっきアンリエッタがしまった宿帳を開き、名前を確認する。三〇二号室のお客さんだ。
「ほんじゃ、ご案内すっぺ」
「え? 確か受付で名前と予約している部屋番号を確認するって聞いていたんだけど?」
「あ、あーあー。そんだ。すんません、どーも忘れっぽくって……」
頭をポリポリと搔きながら改めて部屋番号を聞いてから、三階へと案内した。
……この場にアンリエッタがいなくてよかった。
掃除であれだけ尊敬されたのに、この姿を見せたら先輩としての威厳なんて一気になくなっちまうところだ。
案内する途中、階段でアンリエッタとすれ違った時は、少し苦笑いしてしまった。
とにかくこれで予約していた宿泊客は無事に揃った。
後はディナーの時間になるのを待つばかり。
ディナーの配膳はルームメイドであるリータ先輩とレイナ先輩とサラに任されることになった。
もちろん、高級な部屋に泊まっているお客様への配膳は先輩たちの仕事だ。
サラは二階の安い部屋に泊まったお客さんに配膳することになった。
――六時。酒場のお客さんはまだまばらだった。
酒場という場所柄、もっと遅い時間の方が混むのだ。
今日は忙しいのでその方が助かる。
サラはキッチンから前菜のサラダとコーンスープを持って二階のお客さんの部屋に運んだ。
次はメインの料理。
軽快な足取りで階段に向かったら二階の踊り場で先輩たちが窓の外を見ていた。
「なーにしてっぺ?」
今はディナーを運ぶ大事な仕事をしている最中なのに、珍しく先輩たちはサボっているのだろうか。
――一瞬でもそう思うことはできなかった。
二人の深刻そうな顔が、何か異変を意味していたから。
「あれ。何かと思って」
リータ先輩が窓の外を指したので、サラもそっちに視線を動かす。
すでに日は落ちているので、目を凝らさないとよく見えない。
おまけにここら辺は町外れだから街灯だって一つしかない……。
「おんやぁ……」
なんだかマリリン亭の表通り側にいくつも明かりが見える。
もちろん街灯が増えたわけではない。照明弾(ライトボール)の明かりだ。
それも、いくつも。
いったい何事かというのか。
これではまるで、マリリン亭が街灯に取り囲まれてしまったような……。
「……あの服、どこかで見たことがあるわ」
そう言われても、サラには見覚えのない服装にしか見えなかった。
何となく、整った格好をしているようには見える。
「……馬も何頭かいるみてーだなや」
服装を確認するためによく目を凝らしていたら、明かりに照らされた馬が見えた。
「――あ、あれは……!」
愕然とした表情でレイナ先輩がつぶやいた。
「こ……国軍の制服です……。し、しかも先頭にいる方は、部隊長の制服を着ています」
「ああ! そりゃ見覚えあるはずだわ」
リータ先輩は納得して相づちを打ったが、すぐに表情を変えた。
「――え? 国軍が部隊長も一緒になって、どうしてこんなところに?」
――まさか、という表情で三人は顔を見合わせた。
マリリン亭には訳ありのお客さんが泊まることがよくある。
宿泊客の誰か、あるいは酒場に来ているお客さんの誰かが、とんでもない犯罪者だったりするのかも。
以前にも、役人に追われている盗賊を泊めてしまったことがあり、その時も国軍が動き出す騒ぎになったことがあった。
……でも、その時でさえここに訪れた軍人さんは三人だけだった。
今回は規模が違う。
おまけに偉い人まで来ているということはよほどの重罪人が泊まっているのか。
「上等じゃない。私がふん捕まえて、突き出してやるわ」
「私も協力します。サラちゃんはどこか安全なところで隠れていてください」
二人とも見ていて頼もしかった。
――が、そこでサラは重大なことに気がついた。
アンリエッタが、今一人でいるということ。
「わだす、受付まで行ってくるだ!」
「――あ、そうね。まずはアンリエッタも安全なところに連れて行かないと」
階段を駆け下りようとしたら、大きな叫び声が聞こえてきて、みんなの足が止まった。
その内容が、あまりに不可解だったから。
立ち止まってもう一度窓から外に耳を向ける。
『――マリリン亭の女将よ!! よく聞け!! 貴様が我ら国軍士官の大切な一人娘を拉致し、あまつさえ監禁して仕事をさせているということはわかっている!!』
よく聞いてもやっぱり理解できない。
あの部隊長さんとやらは、いったい何の話をしているのか。
『無駄な抵抗は止めて投降するというのなら、命だけは助けてやらんこともない!!』
『――何わけわかんないこと言ってんのよ!! 営業妨害するってんなら、こっちも実力行使するわよ!!』
ドスドスと、二階の踊り場にいるサラたちにも伝わる勢いで、マリリン亭からマリリンが飛び出した。
その声と威圧感に、国軍の人たちは気押されていた。
「うわ~。マリリンマジギレしてるけど、ほっといて大丈夫かな」
苦笑いと冷や汗を垂らしながら、リータ先輩はマリリンの心配ではなく、国軍の心配をしていた。
「止めた方がいいっぺ」
レイナ先輩にも手を貸してもらおうとしたら、すでにレイナ先輩の姿は階下にあった。
慌ててサラたちも階段を降りる。
「ちょっと待ちなさいよ」
リータ先輩がそう呼びかけるが、レイナ先輩は見向きもしない。
何か明確な目的があって、そこへ向かっているかのよう。
後を追うと、そこはマリリン亭の玄関――受付カウンターのところだった。
なんだ。アンリエッタをいち早く迎えに行きたかっただけか。
しかし、肝心のアンリエッタの姿が見えなかった。
怖くなって逃げてしまった?
わからなくはない。
「アンリエッタちゃん!」
レイナ先輩がカウンターに向かって呼びかけた。
すると、カウンターの中からゆっくりとアンリエッタが立ち上がった。
逃げたんじゃなくて、隠れていただけだった。
少しだけホッとする。
でも、一番にここへ駆けつけるほど心配していたと思っていたレイナ先輩の表情は、険しいままだった。
隠れてしまったことを怒ることもあるまい。
「とにかく、わだすだちはみんなの迷惑になんねーよーに隠れでっから」
「そうね、後は私たちに任せなさい」
「待ってください、サラちゃん。私は、アンリエッタちゃんにどうしても聞かなければならないことがあります」
それはいつも優しく穏やかなレイナ先輩の言葉とは思えないほど強い口調だった。
「……彼らが言っている〝国軍士官の娘〟というのはあなたですね」
「え…………?」
――一瞬、レイナ先輩が何を言っているのか理解できなかった。
空気が凍りつくような感覚が伝わってきた。
アンリエッタは目を逸らして口を強く結んでいただけだったが、その沈黙だけでレイナ先輩の言葉が正しかったことを証明してしまった。
「何ですって? じゃあ、あいつらはあんたが呼んだの!?」
リータ先輩が詰め寄ると、キッと睨みつけて逃げ出した。
「ちょっ……待つだよ! アンリエッタ!」
サラたちは酒場ホールへ向かったアンリエッタを追った。
にわかに騒めく酒場ホール。
酒場ホールにいるのが常連客ばかりの時間帯で良かった。
彼らはマリリン亭がどんな宿屋か知っている。
ここではトラブルなんて日常茶飯事。常連客の中にはそういう退屈しのぎでここを気に入っているものまでいるのだから。
アンリエッタはキッチンを通り過ぎ裏庭へ、いや、裏口から外へ向かう気だ。
「見ろ! アンリエッタ様だ!! 逃げ出せたのだ!! 直ちに保護しろっ!!」
裏口から外に出るや否や、国軍の叫び声が飛び交った。
国軍の馬が駆け出す。
「――はっ!!」
黒い大きな影が馬たちに近づいたかと思ったら、大きく吹き飛ばされて倒れた。
あろうことか、マリリンは素手でその馬たちを蹴散らしたのだ。
「き、貴様!! 何をする!?」
「あのねぇ、まだあたしたちの話は終わってないでしょ? 勝手に逃げないでくれる?」
軍人を踏みつけながら、薄ら笑いを浮かべるマリリン。
その圧倒的なまでの迫力に、完全に国軍は飲み込まれていた。
「な、何をやっているっ! こいつらは国軍士官の娘を拉致監禁した大罪人だぞ!! 全員引っ捕らえんか!!」
国軍の部隊長が檄を飛ばす。
それに押されてか、仕方なくといった表情で国軍はジリジリとマリリンに詰め寄った。
「……いくら何でも、マリリン一人じゃあの数を相手にするのはきついわね。加勢してくるわ」
「私も、協力いたします」
「でも、そんじゃアンリエッタは?」
「あの子はあんたが連れてきた、あんたの後輩でしょ。あんたが何とかしなさい!」
そりゃそうだ。
聞くまでもなかった。
サラは頷く間さえも惜しかったので、すぐに振り返ってアンリエッタの向かった先へと駆け出した。
酒場ホールもだいぶ落ち着きを取り戻したので、サラは受付の様子を見に行った。
これから夜にかけては、宿泊のお客さんが増える。
さすがにアンリエッタだけでは大変だろう。
「おやおや、こんな場末の酒場でも、少しは客が入る日もあるんだな」
アンリエッタが「いらっしゃいませ」を言うよりも先に文句を言いながら人が入ってきたので、少しだけ戸惑っていた。
「そんな場末の酒場に、何の用だら?」
すかさずサラが間に入る。
皮肉たっぷりの言葉と、笑顔を添えて。
「フン。僕はこの町の宿屋協会の会長だぞ? この町の全ての宿屋がまともに営業できているのかどうか、確認に来てやったんだ。感謝するがいい」
ホテル・マクシミリアンのオーナー、ケルヴィンは踏ん反り返った。
今がちょうどお客さんの少ない時間帯で良かった。
こんな馬鹿が受付にいたら、お客さんに迷惑で仕方がない。
ま、プライドの高いケルヴィンが、マリリン亭が混雑しているのを見たがるはずはないから、あえて人の流れが途切れたこの時に現れたんだろうけど。
「見ての通り繁盛してっから問題ねーべ。何なら食事でもしてっだらどうだべ?」
「フン、僕がこんなところで食事なんてするわけ……」
汚いものでも見るような目をさせたかと思ったら、ケルヴィンはアンリエッタを見て固まった。
「……その子は、見たことがないが……新しいルームメイドか?」
「んだべ」
「ここはそんな幼い子まで雇っているのか? 由々しき問題だぞ?」
ケルヴィンの言葉を真に受けたのか、アンリエッタはサラの陰に隠れた。
「そんなこたねーべ。アンリエッタはわだすがここへ来た時と同じ、十四歳だけんね」
「………………」
ケルヴィンは少しだけ口を開けたまま、アンリエッタをよく見て眉をひそめた。
かと思ったら訝しげな表情をさせた。
「あんの……」
サラが呼びかけてもまるで反応無し。
腕組みをしながら、何かに気付いたようにハッとさせた。
そして、薄笑いを浮かべて、後退りした。
「ソ、それでは失礼する」
まるで逃げ出すかのようにケルヴィンは一方的に告げて出て行った。
「何だったんだべな……?」
「さあ……?」
「取り敢えず、塩でも撒いとくか?」
言って、二人で笑い合った。
「何か面白いことでもあったの?」
いきなりリータ先輩が受付に現れた。
「そんな魔物が現れたような顔しないでくれる?」
「いんや、そんなつもりは……それより、酒場ホールはだいじょぶなら?」
「まぁね。一段落したから順番に休憩を取るようにって、マリリンが。もう少しすると夜のお客さんが来てまた忙しくなるしね」
酒場ホールを見ると、確かにお客さんは数人。
レイナ先輩だけでも十分対応できる人数だった。
サラとアンリエッタはお言葉に甘えて休憩をもらうことにした。
リータ先輩に受付を任せて、キッチンへ行く。
どうやら夕食の賄いが用意されているらしい。
夜に備えて、遠慮なくいただく。
メニューはタマゴスープにご飯に牛肉のステーキ。
これでは賄いと言うより、普通にお客さんに出せそうだと思ったら、予想よりも忙しかったからご褒美の意味も込めて特別に用意したのだと、マリリンが言った。
「……あの、サラさん。先ほどの方はいったい何だったんでしょうか?」
「あんなやつを丁寧に呼ぶこたねーよ。あんりゃ、ホテル・マクシミリアンのオーナーで、マリリン亭を目の敵にしてる嫌なやつだっぺ」
夕食を食べながら説明していると、キッチンでジョニーさんの手伝いをしていたマリリンの手が止まった。
「なーに? あいつ、このクソ忙しいのに来たの?」
「ああ、ついさっきだで。でんも、なんか知らんけど、急に帰っちまっただ」
「あたしの店が繁盛してるから恐れをなしたのかしらねえ」
きっとそうだと、みんなで笑った。
夕食を終えると、サラは酒場ホールに出てレイナ先輩に休憩に入ってもらい、アンリエッタは受付に行ってリータ先輩に休憩に入ってもらった。
酒場ホールには二組のお客さんしかいなかった。
どちらも初めて見るお客さん。
二十代前半くらいの若いカップルと、おじいさん。
この辺りの人ではないことは、サラにもわかった。
すでに二組とも料理は食べ終えて、コーヒーを飲みながらゆったりとした時間を過ごしているので、サラはホールの端に立っているだけだった。
何か用があればすぐにいける心構えではいた。
しかし、二組ともそんな様子を見せることもなく、ただ時間だけが過ぎていって、日が傾くとそのまま何も頼むことなくお勘定をして出て行った。
宿泊のお客さんが三組ほどすでに部屋でくつろがれているから完全にお客さんがいないわけではない。
でも、酒場ホールからお客さんがいなくなっただけで閉店しているかのような静けさが訪れた。
まさに、嵐の前の静けさ。
昼間ほどではないにしろ、これから夜にかけてまた忙しくなる。
夜にマリリン亭を訪れるようなお客さんは常連客が多い。
それはこの週末も変わらないはず。
ただ、今日はそれに加えて宿泊客が多い。
後二組ほど訪れることになっているのだ。
ちなみに、その二組はすでに予約をされていた。
マリリン亭の三階。つまりはマリリン亭で一番高い部屋を指定してきたのだから、そこそこのお金持ちだ。
ということは、旅行者ではない。
旅行者ならわざわざマリリン亭の高級部屋には泊まらない。
もっと安い部屋を利用する。
そして、金持ちの旅行者なら、わざわざマリリン亭などには泊まらずマクシミリアン辺りに泊まっていく。
予約をしてまで泊まりに来る二組の目的は、マリリン亭のディナーだろう。
ジョニーさんの料理の腕前は世界最高だとマリリンはよく自慢していた。
世界をよく知らないサラでも、ジョニーさんの作る料理が美味しいことはわかる。
ジョニーさんは、知る人ぞ知る料理人として、一部ではかなり有名なんだそうな。
マリリン亭でディナーを食べるとなると、泊まる以外にない。
なので、週末はそれ目当てのお客さんが何組かは訪れるのであった。
ちなみにディナー自体は安い部屋でも望まれれば用意する。
もちろん、別料金になるのだが。
今日は安い部屋に泊まった三組の内一組もディナーを頼んできたので、計三組の部屋にディナーを運ぶことになる。
……夜も引き続きアンリエッタ一人で受付に入ってもらわなければならないかも。
そんなことを考えている間に、先輩たちも夕食を終えて帰ってきた。
日は半分くらい沈んでいる。
玄関や受付の方が少しずつ騒がしくなってきた。
「さ、こっから気合い入れなおさねーとな」
「サラの場合、余計に力を入れて変なミスをしないように気をつけなさいよ」
「……フフッ……みんなでがんばりましょう」
各々思いを口に……リータ先輩だけはサラに文句を言って、持ち場に戻った。
酒場ホールのカウンターにはマリリンが戻ってきた。
昼間ほどキッチンは忙しくないらしい。
ディナーのための下準備は前日からしていたし、昼間と違って夜は酒を飲む客が多いから、簡単なつまみを頼む人が多い。
それくらいのものはカウンターでマリリンが用意できた。
だからむしろ、キッチンにいるよりはカウンターにマリリンがいた方が仕事をする上でも効率がよかった。
マリリン亭に酒を飲みに来るお客さんは、マリリンのことも見慣れているし。
今のところ酒場ホールにサラの出番は必要なさそうだった。
すると、コンコンと上品に玄関の扉を叩く音が聞こえた。
サラは受付から出て扉を開ける。
そこには、見るからに上等なドレスを着たご婦人と伯爵のような出で立ちの紳士がいた。
「い、いらっしゃいまし」
「こちらに宿泊の予約をしているものだが……、ここはマリリン亭で間違いなのかね?」
不思議なものでも見るような目で、紳士がサラを見ていた。
「ええ、まちげーねえです。どんぞ」
そういって、受付まで案内する。
「いらっしゃいませ、マリリン亭へようこそ。ご予約されているお客様でしょうか?」
「あら、ずいぶん可愛らしい受付さんね」
マリリン亭に泊まるお客さんとしては珍しいくらいに身なりの整ったお客さんだというのに、アンリエッタは物怖じせずに接客をしていた。
ドレスを着たご婦人に笑顔でお世辞を言われても、軽く受け流す。
「ありがとうございます。お名前とご予約されている部屋の番号を確認させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ。ゴルドーの名で予約している。部屋は三〇一号室だ」
「かしこまりました。確認できましたので、ご案内いたします」
アンリエッタは予約専用の宿帳をしまって、受付から出た。
ご婦人の持っていたバッグを持ち、紳士のバッグも持とうとしたら断られてしまったので、そのまま三階へと案内した。
気難しそうな紳士に対しても、いつもと同じように仕事ができていた。
自信は人を大きく成長させるけど、アンリエッタのそれは成長といっていいものかどうか……。
仕事を仕事として割り切って考えているのだとしたら、たいしたものだ。
アンリエッタに接客をされたお客さんは、あの子が人見知りだとはとても思わないだろうな。
将来、大物になるかも。
「あの、すみません」
「へ?」
ボケッと突っ立っていたら、玄関の扉を開けてお客さんが入ってきていた。
三十代くらいの夫婦、に見える。
身なりはさっきのお客さんほどではなかったが、ゆったりとした布の服で小綺麗にしている感じのお客さんだった。
「あ、い、いらっしゃいまし。えと、今日は宿泊で?」
「ええ。僕たちは予約をしているエンツォというものですが」
「ただいま確認すっぺ」
さっきアンリエッタがしまった宿帳を開き、名前を確認する。三〇二号室のお客さんだ。
「ほんじゃ、ご案内すっぺ」
「え? 確か受付で名前と予約している部屋番号を確認するって聞いていたんだけど?」
「あ、あーあー。そんだ。すんません、どーも忘れっぽくって……」
頭をポリポリと搔きながら改めて部屋番号を聞いてから、三階へと案内した。
……この場にアンリエッタがいなくてよかった。
掃除であれだけ尊敬されたのに、この姿を見せたら先輩としての威厳なんて一気になくなっちまうところだ。
案内する途中、階段でアンリエッタとすれ違った時は、少し苦笑いしてしまった。
とにかくこれで予約していた宿泊客は無事に揃った。
後はディナーの時間になるのを待つばかり。
ディナーの配膳はルームメイドであるリータ先輩とレイナ先輩とサラに任されることになった。
もちろん、高級な部屋に泊まっているお客様への配膳は先輩たちの仕事だ。
サラは二階の安い部屋に泊まったお客さんに配膳することになった。
――六時。酒場のお客さんはまだまばらだった。
酒場という場所柄、もっと遅い時間の方が混むのだ。
今日は忙しいのでその方が助かる。
サラはキッチンから前菜のサラダとコーンスープを持って二階のお客さんの部屋に運んだ。
次はメインの料理。
軽快な足取りで階段に向かったら二階の踊り場で先輩たちが窓の外を見ていた。
「なーにしてっぺ?」
今はディナーを運ぶ大事な仕事をしている最中なのに、珍しく先輩たちはサボっているのだろうか。
――一瞬でもそう思うことはできなかった。
二人の深刻そうな顔が、何か異変を意味していたから。
「あれ。何かと思って」
リータ先輩が窓の外を指したので、サラもそっちに視線を動かす。
すでに日は落ちているので、目を凝らさないとよく見えない。
おまけにここら辺は町外れだから街灯だって一つしかない……。
「おんやぁ……」
なんだかマリリン亭の表通り側にいくつも明かりが見える。
もちろん街灯が増えたわけではない。照明弾(ライトボール)の明かりだ。
それも、いくつも。
いったい何事かというのか。
これではまるで、マリリン亭が街灯に取り囲まれてしまったような……。
「……あの服、どこかで見たことがあるわ」
そう言われても、サラには見覚えのない服装にしか見えなかった。
何となく、整った格好をしているようには見える。
「……馬も何頭かいるみてーだなや」
服装を確認するためによく目を凝らしていたら、明かりに照らされた馬が見えた。
「――あ、あれは……!」
愕然とした表情でレイナ先輩がつぶやいた。
「こ……国軍の制服です……。し、しかも先頭にいる方は、部隊長の制服を着ています」
「ああ! そりゃ見覚えあるはずだわ」
リータ先輩は納得して相づちを打ったが、すぐに表情を変えた。
「――え? 国軍が部隊長も一緒になって、どうしてこんなところに?」
――まさか、という表情で三人は顔を見合わせた。
マリリン亭には訳ありのお客さんが泊まることがよくある。
宿泊客の誰か、あるいは酒場に来ているお客さんの誰かが、とんでもない犯罪者だったりするのかも。
以前にも、役人に追われている盗賊を泊めてしまったことがあり、その時も国軍が動き出す騒ぎになったことがあった。
……でも、その時でさえここに訪れた軍人さんは三人だけだった。
今回は規模が違う。
おまけに偉い人まで来ているということはよほどの重罪人が泊まっているのか。
「上等じゃない。私がふん捕まえて、突き出してやるわ」
「私も協力します。サラちゃんはどこか安全なところで隠れていてください」
二人とも見ていて頼もしかった。
――が、そこでサラは重大なことに気がついた。
アンリエッタが、今一人でいるということ。
「わだす、受付まで行ってくるだ!」
「――あ、そうね。まずはアンリエッタも安全なところに連れて行かないと」
階段を駆け下りようとしたら、大きな叫び声が聞こえてきて、みんなの足が止まった。
その内容が、あまりに不可解だったから。
立ち止まってもう一度窓から外に耳を向ける。
『――マリリン亭の女将よ!! よく聞け!! 貴様が我ら国軍士官の大切な一人娘を拉致し、あまつさえ監禁して仕事をさせているということはわかっている!!』
よく聞いてもやっぱり理解できない。
あの部隊長さんとやらは、いったい何の話をしているのか。
『無駄な抵抗は止めて投降するというのなら、命だけは助けてやらんこともない!!』
『――何わけわかんないこと言ってんのよ!! 営業妨害するってんなら、こっちも実力行使するわよ!!』
ドスドスと、二階の踊り場にいるサラたちにも伝わる勢いで、マリリン亭からマリリンが飛び出した。
その声と威圧感に、国軍の人たちは気押されていた。
「うわ~。マリリンマジギレしてるけど、ほっといて大丈夫かな」
苦笑いと冷や汗を垂らしながら、リータ先輩はマリリンの心配ではなく、国軍の心配をしていた。
「止めた方がいいっぺ」
レイナ先輩にも手を貸してもらおうとしたら、すでにレイナ先輩の姿は階下にあった。
慌ててサラたちも階段を降りる。
「ちょっと待ちなさいよ」
リータ先輩がそう呼びかけるが、レイナ先輩は見向きもしない。
何か明確な目的があって、そこへ向かっているかのよう。
後を追うと、そこはマリリン亭の玄関――受付カウンターのところだった。
なんだ。アンリエッタをいち早く迎えに行きたかっただけか。
しかし、肝心のアンリエッタの姿が見えなかった。
怖くなって逃げてしまった?
わからなくはない。
「アンリエッタちゃん!」
レイナ先輩がカウンターに向かって呼びかけた。
すると、カウンターの中からゆっくりとアンリエッタが立ち上がった。
逃げたんじゃなくて、隠れていただけだった。
少しだけホッとする。
でも、一番にここへ駆けつけるほど心配していたと思っていたレイナ先輩の表情は、険しいままだった。
隠れてしまったことを怒ることもあるまい。
「とにかく、わだすだちはみんなの迷惑になんねーよーに隠れでっから」
「そうね、後は私たちに任せなさい」
「待ってください、サラちゃん。私は、アンリエッタちゃんにどうしても聞かなければならないことがあります」
それはいつも優しく穏やかなレイナ先輩の言葉とは思えないほど強い口調だった。
「……彼らが言っている〝国軍士官の娘〟というのはあなたですね」
「え…………?」
――一瞬、レイナ先輩が何を言っているのか理解できなかった。
空気が凍りつくような感覚が伝わってきた。
アンリエッタは目を逸らして口を強く結んでいただけだったが、その沈黙だけでレイナ先輩の言葉が正しかったことを証明してしまった。
「何ですって? じゃあ、あいつらはあんたが呼んだの!?」
リータ先輩が詰め寄ると、キッと睨みつけて逃げ出した。
「ちょっ……待つだよ! アンリエッタ!」
サラたちは酒場ホールへ向かったアンリエッタを追った。
にわかに騒めく酒場ホール。
酒場ホールにいるのが常連客ばかりの時間帯で良かった。
彼らはマリリン亭がどんな宿屋か知っている。
ここではトラブルなんて日常茶飯事。常連客の中にはそういう退屈しのぎでここを気に入っているものまでいるのだから。
アンリエッタはキッチンを通り過ぎ裏庭へ、いや、裏口から外へ向かう気だ。
「見ろ! アンリエッタ様だ!! 逃げ出せたのだ!! 直ちに保護しろっ!!」
裏口から外に出るや否や、国軍の叫び声が飛び交った。
国軍の馬が駆け出す。
「――はっ!!」
黒い大きな影が馬たちに近づいたかと思ったら、大きく吹き飛ばされて倒れた。
あろうことか、マリリンは素手でその馬たちを蹴散らしたのだ。
「き、貴様!! 何をする!?」
「あのねぇ、まだあたしたちの話は終わってないでしょ? 勝手に逃げないでくれる?」
軍人を踏みつけながら、薄ら笑いを浮かべるマリリン。
その圧倒的なまでの迫力に、完全に国軍は飲み込まれていた。
「な、何をやっているっ! こいつらは国軍士官の娘を拉致監禁した大罪人だぞ!! 全員引っ捕らえんか!!」
国軍の部隊長が檄を飛ばす。
それに押されてか、仕方なくといった表情で国軍はジリジリとマリリンに詰め寄った。
「……いくら何でも、マリリン一人じゃあの数を相手にするのはきついわね。加勢してくるわ」
「私も、協力いたします」
「でも、そんじゃアンリエッタは?」
「あの子はあんたが連れてきた、あんたの後輩でしょ。あんたが何とかしなさい!」
そりゃそうだ。
聞くまでもなかった。
サラは頷く間さえも惜しかったので、すぐに振り返ってアンリエッタの向かった先へと駆け出した。
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