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変身ヒーローと異世界の戦争 後編
ルオリスタでの緒戦
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クリームヒルトも森の中に町があったが、ルオリスタも負けていないらしい。
馬車が通るための道の部分だけ木が切られて整備されているが、周囲は深い森に囲まれていた。
こういう所に来ると、必然的に警戒してしまう。
森の中で魔物に遭遇したことが多いからな。
そう言えば、クィンタスの町は山脈の麓に作られた町だったが、森はなかった。
木々はあったがせいぜい林くらい。
魔物が少ないといっていたし、魔物と森の関係は深いのだろうか。
「アキラ。そろそろルオリスタの町に着くわ」
「そうか……」
このまま馬車で行くって言うのは間抜けだよな。
「よし。ここからは歩いて行こう」
馬車を道のすぐ脇の森に駐める。
「一応聞いておきたいんだけど、この辺りの森にケルベロスのようなやばい魔物っていないよな」
「当たり前でしょ。あんな魔物がゴロゴロいたら私たちの国なんてとっくになくなってるわよ」
「普通の魔物はいるよな」
「それは、仕方ないわね。この辺りは、クィンタスほど整備が進んでいないし」
『私のセンサーが捉えている反応はそれほど強い魔物ではありませんよ。木の魔物のトレントやワイルドファング程度しかいないと思われます』
それでも、馬をここに置いていくのは、気が引ける。
食料もまだ少し残ってるし、野生動物にだって狙われるかも知れない。
「誰か、馬車の見張りが必要だな」
俺が三人を見回して、誰を指名しようか迷っていたら、突然地面が揺れた。
地震かと思ったが、爆発音も聞こえてきた。少し離れた場所から火の手が上がるのも見える。
木に止まっていた鳥たちが一斉に羽ばたいた。
「何だ?」
「わからないわ、でも」
キャリーは今にも駆け出しそう。
迷ってる場合じゃないか。
「俺とキャリーが先行する。エリーネは後方支援。ヨミは馬車を守っていてくれ」
「え? 私だけ置いてけぼりですか?」
「馬車がなくなったらみんなが困るだろ」
かといって、エリーネを一人で置いていくのは無理だ。
今のヨミならケルベロスクラスが相手じゃなければ、一人でも何とか出来るはずだ。
「わかりました。すぐに戻ってきてくださいね」
「ああ」
言うが早いか俺は走り出した。
慌ててキャリーも付いてくる。
「ちょ、アキラ! 待ちなさい!」
そう言われても速度を緩めるつもりはない。
俺の身体機能は変身していなくても普通の人間より優れている。
男女の差に関係なく、キャリーが俺と一緒に走って向かうのは不可能だった。
「風の神の名において、我が命ずる! 疾風のごとき翼よ、我が足に宿りなさい。ゲイルブーツ!」
後ろから突風が吹いたと思ったら、キャリーが俺に並んで走っていた。
「それも、魔法か?」
「速度強化よ。もっとスピードも上げられるんだけど、この森の中じゃ無理ね。木に激突するわ」
「便利な魔法だ」
「そんなことよりも、この魔法を使わないと追いつけない速度で走ってるアキラの方がおかしいのよ」
「そうか?」
「まったく、本当に何者なの?」
『おしゃべりはそこまでにしてください、センサーに反応があります。魔力パターンからして、敵はブラッドファングが二十頭ほど。それから、オークデーモンが二体、でしょうか。人間が襲われているようです』
「キャリー、魔物の群れに人間が襲われているみたいだ。俺が敵の真ん中に斬り込む。援護を頼めるか」
「……確かに、魔力を複数感じるわ。でも、アキラには魔力はないのに、どうして……?」
「今、その説明が必要か?」
「ごめん。援護は任せて」
『接触まで、二十メートル』
AIに言われるまでもなく、すでに敵は俺の視界に入っていた。
走りながら、認証コードを言う。
「な、何? どうして、何もないところから剣が」
俺の後ろで変身する姿を間近に見ていたキャリーが驚いていた。今はそれにいちいち返答をするつもりはない。
襲われている人たちを助けるのが先だ。
ソードギアフォームの展開と同時に俺は木々の間をくぐり抜けて、魔物たちに囲まれている人間の前に割り込んだ。
ちょうど飛びかかろうとしていたブラッドファングを斬り伏せる。
「嘘!? ブラッドファングを一撃で!?」
キャリーには一応援護を頼んだのに、俺の戦いを見ているだけで魔法を使うそぶりも見せない。
「な……」
「あなたは……一体……」
驚きの声を上げたのは人間だけだったが、魔物たちも同じだったようで、動きが止まっていた。
俺たちを囲みながら、唸りを上げて威嚇しているだけ。
「何だお前は!?」
そう叫んだのは、狼男のような姿の魔物。
オークデーモンじゃなくて、こいつの魔力反応だったのだ。
「世界を救った変身ヒーロー、だ」
「ふざけるな! ブラッドファングども! びびってんじゃねえ!! 全員で食い殺せ!!」
狼男の一人がそう叫ぶと、俺の近くにいた五頭が俺に向かってくる。
『チャージアタックワン、クレセントスラッシュ!』
三日月に煌めく斬撃の中で、ブラッドファングの体は消滅してクリスタルだけが地面に転がった。
「ま、また!? 今度は五頭同時!? な、何なのその剣は!?」
どうやら、キャリーはこの場においては戦力になりそうにない。
「おい、負傷者はいるか?」
「あ、ああ」
魔物たちは全てセンサーが捉えている。
俺は注意を払いながらも、振り返った。
そこにいたのは、戦士の格好や魔道士の格好をした人間だった。
年齢も性別もバラバラ。
「あんたたちは?」
「ルオリスタの生き残りよ。あの町を取り戻すために、戦っているわ」
「俺たちに背を向けるとは……死んでから後悔しやがれ!」
「アキラ! 危ない! ワーウルフが!」
狼男じゃなくて、ワーウルフと呼ぶのか。
ワーウルフの一体が大きな半月刀を引き抜いて向かってきたが、
『チャージアタックスリー、レイストームスラッシュ!』
振り向きざまに斬り下ろす。
無数の斬撃が振りかぶった半月刀を砕き、そのままワーウルフも斬撃の雨に沈んだ。
「ば、馬鹿な……」
「話の邪魔をするなよ。ってことは、こいつらはルオリスタを襲った連中の仲間ってことか?」
「え、ええ」
「それなら、このまま逃がすわけにはいかないな」
「くそっ! 死ぬ気でかかれ!」
もう一体のワーウルフは残ったブラッドファングを俺にけしかけると、逃げ出した。
「風の神の名において、我が命ずる! 真空の刃よ、斬り刻め! ブラストカッター!」
キャリーの魔法が俺の前を塞ごうとしたブラッドファングの手足を切り落とす。
まだ生きているようだが、キャリーの魔法で片付けられそうだ。
俺は逃げたワーウルフを追いかける。
「よう、遅かったな」
「え? お前、誰だ? さっきの奴に似ているが……」
「同じだ」
「馬鹿な!? 俺の後ろを走っていて、どうして先に前にいるんだ!! それに、その姿もさっきと色が違う」
「違うのは、色だけじゃない」
一瞬で間合いを詰める。
『チャージアタックワン、メテオライトブロー!』
「うおりゃあ!」
ワーウルフの上半身は爆発と共に吹き飛んだ。
下半身は、倒れると同時にクリスタルだけになった。
俺はワーウルフのクリスタルを持ってキャリーたちの所へ戻ると、そちらもすでに戦闘は終了していた。
「あれ? もう変身は終わり?」
「あのなあ、意味もなく変身する必要ないだろ。あれだってただじゃないんだから」
ネムスギアの展開にはナノマシンのエネルギーを使う。
それは決して無限ではない。
日の光や俺の細胞のエネルギーを使って回復させている。
その構造に関しては、博士に教えてもらったが詳しい部分は俺には理解できなかった。
とにかく、使えば減るし。休めば回復する。
それだけはっきりしていれば俺には十分だった。
「……女王陛下!!」
俺たちが助けた人たちの一人。魔道士姿の女が跪いた。
「え? あ、あなたはオリヴィエ=ルオリスタさん!」
「知り合いか?」
「名前で気付きなさい。ルオリスタの町を任せている子爵よ」
「ああ、そういう……え!? ってことは?」
「申し訳ありません! ルオリスタの町を金華国などに奪われてしまい、女王陛下に合わせる顔もないのに、このような生き恥をさらしてしまって。今回の失態。私の命を捧げることでどうかお許しを――」
突然ナイフを取り出して腹を刺そうとしたので、俺はそのナイフを蹴り飛ばした。
「……あのなあ、目の前で切腹なんてやめてくれ。せっかく助けたのに、命を何だと思ってるんだ」
「そ、そうです。生きているならまた取り戻せばよいのです」
「ああ、何というありがたいお言葉。女王陛下の寛大なお心に感謝いたします」
このままじゃ、落ち着いて話も出来ない。
それに、ヨミと馬車を置いたままってのも気になるし。
俺はその場にキャリーとエリーネだけを残してヨミと馬車を呼びに戻った。
俺たちが全員合流したときには、エリーネが怪我の治療を終えていた。
ルオリスタの生き残りは、全部で八人。
子爵のオリヴィエと、残りは彼女が養子にして育てた子供たちらしい。
年は上が二十歳から下は十歳まで。
全員が冒険者だった。
元々は孤児だったのを、子供のいないオリヴィエが引き取って、生きる術を身につけさせるために冒険者の勉強をさせたのだと教えてくれた。
オリヴィエはいくつなんだろうと思ったら、本人が四十五歳だと教えてくれた。
とてもそうは思えない。
せいぜい三十代半ばくらいかと思っていた。
黒髪で首のところで切りそろえられたボブカット。切れ長の目が特徴的。
背も俺と同じくらい高く、スタイルも崩れていない。
子爵ってことは、元々それなりに活躍した冒険者だったのだろうか。
俺は馬車から食料と水を出して全員に配った。
それでようやく落ち着きを取り戻したのか、オリヴィエがぽつりぽつりと話し始めた。
「私が雇っていた騎士団は、私を逃がして最後まで戦ってくれました。私はなんとか生き延びて、魔力の回復を待って町を取り戻そうと動き出したのですが……」
「一つはっきりさせておきたい」
「何でしょう」
「今、アイレーリス王国はクーデターに揺れている。女王は複合戦略魔法を自国民に使った罪で告発され、俺たちは金華国のスパイ扱いを受けているんだ。その事は知らないのか?」
「クーデター……?」
オリヴィエは目を丸くしていた。これは、演技をしているような表情じゃない。純粋な驚きだ。
知らなかったのだろうか。だとしたら、あの新聞を見られなかったとか。
「ルオリスタの町が襲われたのはいつだ?」
「先週くらいでしょうか。森の中で逃亡生活を送りながら魔力の回復を図っていたので、正確な日時はちょっと」
「だったら、ギルドの新聞は見ることができただろう。そこに書いてあったはずだけど」
「ハハハッ! あんなもの私は信じないわ。私は私の目で直接見てこの耳で聞いたことしか信用しないのよ」
……それは、嬉しい反面嫌な予感がした。
「町を襲ったのは、魔物だけだったか? 人間はいなかった?」
「いいえ。いたわ。見覚えのない鎧を着ていたから、多分金華国の連中だと思う」
「それじゃ、金華国が魔物と手を組んだって言うのも本当だってことだな」
「そうでしょうね。さっきあなたたちが倒してくれた魔物は、ルオリスタの見張りをしていたのよ」
「……何!?」
しれっと重要なことを言った。
俺たちは見張りの兵士を全滅させたのか?
……普通、見張りって言うのは本部に情報を送るよな。
定期的に連絡を取り合って、情報を共有しなかったら見張りの意味なんてない。
ってことは、早晩ここには敵が押し寄せることに……。
逃げるか?
……いや、取り戻すか。
クリームヒルトの手前に拠点があれば動きやすくなる。
「町に駐留してる部隊がどれくらいの規模か調べは付いているか?」
「ええ。確か、ワーウルフとオークデーモンが合わせて十体。それから、クロービーストが一体。人間の兵士は武器を持った戦士が百人に魔道士が同じく百人。この辺りは正確な数字ではないわね。それくらいいるってことよ。あと、ブラッドファングもかなりいるわ」
「クロービーストってのは?」
「大きな熊の魔物です。オークデーモンより遥に強い。きっと、魔物たちのリーダーでしょうね」
俺の質問にスラスラ答えたのはヨミだった。
さすがに魔物には詳しいな。
「ケルベロスと比べて、どうだ?」
「アキラ、ケルベロスは魔物ではなく魔獣でしたから比べるのはさすがに可哀想ですよ」
「じゃあ、俺の敵にはならなそうだな」
「へ? あの、何を言ってるんですか? 私の説明を聞いていましたか?」
オリヴィエは驚きというよりは、どちらかというと哀れなものを見るような目を向けた。
「キャリーはワーウルフかオークデーモンを倒せるか?」
「一対一なら倒せると思う。でも、複数となると、戦闘経験が少ないわね」
だとすると、ブラッドファングたちを任せた方が良いか。
人間の兵士がどう動くかだけ読めないが、魔物たちを殲滅しても戦う意志があるなら応えるしかないだろうな。
「キャリー、敵国とはいえ人間と戦うことになるかも知れない。覚悟が出来ないなら、馬車でこの人たちと一緒に隠れていてくれ。俺たちが倒した連中が見張りなら、いずれここに敵兵がやってくる。俺はそうなる前に一気に町を取り戻そうと思ってる」
「馬鹿にしないで欲しいわ。何のためにアキラと一緒にいると思ってるのよ」
「決まりだな」
「あの、皆さんだけでルオリスタの町を本当に取り戻すつもりなんですか?」
「つもりではない。数時間後にはそうなってる」
「……フフフ……アハハハ……」
オリヴィエが声を上げて笑うが、オリヴィエの仲間たちはオロオロしているばかりだった。
「では、私も一緒に行きましょう」
「いや、俺たちだけで十分だ。それよりも、馬と馬車を頼みたい。俺たちの目的はクリームヒルトだからな」
「それは、私の子供たちがしっかり守ります。ですから、私は一緒に行かせていただきたい」
「アキラ。オリヴィエさんも一緒に連れていってあげて」
エリーネが俺の服の裾を掴んでそう言った。
その瞳からは強い決意が窺えた。
同じように戦争で町を失った者同士。何か通じるものがあるのかも知れない。
「考えてる時間が惜しい。一緒に来てもいいが、あまり活躍の場はないぞ」
「それならそれで構いませんよ。自分の町が取り戻せるのであれば、その瞬間をしっかりこの目で見届けたいのです」
「わかった、行こう」
俺たちはオリヴィエの子供たちに馬車を預け、その場を散開した。
馬車は森の中で隠れられそうな所を探しに、俺たちは真っ直ぐルオリスタの町へ向かう。
馬車が通るための道の部分だけ木が切られて整備されているが、周囲は深い森に囲まれていた。
こういう所に来ると、必然的に警戒してしまう。
森の中で魔物に遭遇したことが多いからな。
そう言えば、クィンタスの町は山脈の麓に作られた町だったが、森はなかった。
木々はあったがせいぜい林くらい。
魔物が少ないといっていたし、魔物と森の関係は深いのだろうか。
「アキラ。そろそろルオリスタの町に着くわ」
「そうか……」
このまま馬車で行くって言うのは間抜けだよな。
「よし。ここからは歩いて行こう」
馬車を道のすぐ脇の森に駐める。
「一応聞いておきたいんだけど、この辺りの森にケルベロスのようなやばい魔物っていないよな」
「当たり前でしょ。あんな魔物がゴロゴロいたら私たちの国なんてとっくになくなってるわよ」
「普通の魔物はいるよな」
「それは、仕方ないわね。この辺りは、クィンタスほど整備が進んでいないし」
『私のセンサーが捉えている反応はそれほど強い魔物ではありませんよ。木の魔物のトレントやワイルドファング程度しかいないと思われます』
それでも、馬をここに置いていくのは、気が引ける。
食料もまだ少し残ってるし、野生動物にだって狙われるかも知れない。
「誰か、馬車の見張りが必要だな」
俺が三人を見回して、誰を指名しようか迷っていたら、突然地面が揺れた。
地震かと思ったが、爆発音も聞こえてきた。少し離れた場所から火の手が上がるのも見える。
木に止まっていた鳥たちが一斉に羽ばたいた。
「何だ?」
「わからないわ、でも」
キャリーは今にも駆け出しそう。
迷ってる場合じゃないか。
「俺とキャリーが先行する。エリーネは後方支援。ヨミは馬車を守っていてくれ」
「え? 私だけ置いてけぼりですか?」
「馬車がなくなったらみんなが困るだろ」
かといって、エリーネを一人で置いていくのは無理だ。
今のヨミならケルベロスクラスが相手じゃなければ、一人でも何とか出来るはずだ。
「わかりました。すぐに戻ってきてくださいね」
「ああ」
言うが早いか俺は走り出した。
慌ててキャリーも付いてくる。
「ちょ、アキラ! 待ちなさい!」
そう言われても速度を緩めるつもりはない。
俺の身体機能は変身していなくても普通の人間より優れている。
男女の差に関係なく、キャリーが俺と一緒に走って向かうのは不可能だった。
「風の神の名において、我が命ずる! 疾風のごとき翼よ、我が足に宿りなさい。ゲイルブーツ!」
後ろから突風が吹いたと思ったら、キャリーが俺に並んで走っていた。
「それも、魔法か?」
「速度強化よ。もっとスピードも上げられるんだけど、この森の中じゃ無理ね。木に激突するわ」
「便利な魔法だ」
「そんなことよりも、この魔法を使わないと追いつけない速度で走ってるアキラの方がおかしいのよ」
「そうか?」
「まったく、本当に何者なの?」
『おしゃべりはそこまでにしてください、センサーに反応があります。魔力パターンからして、敵はブラッドファングが二十頭ほど。それから、オークデーモンが二体、でしょうか。人間が襲われているようです』
「キャリー、魔物の群れに人間が襲われているみたいだ。俺が敵の真ん中に斬り込む。援護を頼めるか」
「……確かに、魔力を複数感じるわ。でも、アキラには魔力はないのに、どうして……?」
「今、その説明が必要か?」
「ごめん。援護は任せて」
『接触まで、二十メートル』
AIに言われるまでもなく、すでに敵は俺の視界に入っていた。
走りながら、認証コードを言う。
「な、何? どうして、何もないところから剣が」
俺の後ろで変身する姿を間近に見ていたキャリーが驚いていた。今はそれにいちいち返答をするつもりはない。
襲われている人たちを助けるのが先だ。
ソードギアフォームの展開と同時に俺は木々の間をくぐり抜けて、魔物たちに囲まれている人間の前に割り込んだ。
ちょうど飛びかかろうとしていたブラッドファングを斬り伏せる。
「嘘!? ブラッドファングを一撃で!?」
キャリーには一応援護を頼んだのに、俺の戦いを見ているだけで魔法を使うそぶりも見せない。
「な……」
「あなたは……一体……」
驚きの声を上げたのは人間だけだったが、魔物たちも同じだったようで、動きが止まっていた。
俺たちを囲みながら、唸りを上げて威嚇しているだけ。
「何だお前は!?」
そう叫んだのは、狼男のような姿の魔物。
オークデーモンじゃなくて、こいつの魔力反応だったのだ。
「世界を救った変身ヒーロー、だ」
「ふざけるな! ブラッドファングども! びびってんじゃねえ!! 全員で食い殺せ!!」
狼男の一人がそう叫ぶと、俺の近くにいた五頭が俺に向かってくる。
『チャージアタックワン、クレセントスラッシュ!』
三日月に煌めく斬撃の中で、ブラッドファングの体は消滅してクリスタルだけが地面に転がった。
「ま、また!? 今度は五頭同時!? な、何なのその剣は!?」
どうやら、キャリーはこの場においては戦力になりそうにない。
「おい、負傷者はいるか?」
「あ、ああ」
魔物たちは全てセンサーが捉えている。
俺は注意を払いながらも、振り返った。
そこにいたのは、戦士の格好や魔道士の格好をした人間だった。
年齢も性別もバラバラ。
「あんたたちは?」
「ルオリスタの生き残りよ。あの町を取り戻すために、戦っているわ」
「俺たちに背を向けるとは……死んでから後悔しやがれ!」
「アキラ! 危ない! ワーウルフが!」
狼男じゃなくて、ワーウルフと呼ぶのか。
ワーウルフの一体が大きな半月刀を引き抜いて向かってきたが、
『チャージアタックスリー、レイストームスラッシュ!』
振り向きざまに斬り下ろす。
無数の斬撃が振りかぶった半月刀を砕き、そのままワーウルフも斬撃の雨に沈んだ。
「ば、馬鹿な……」
「話の邪魔をするなよ。ってことは、こいつらはルオリスタを襲った連中の仲間ってことか?」
「え、ええ」
「それなら、このまま逃がすわけにはいかないな」
「くそっ! 死ぬ気でかかれ!」
もう一体のワーウルフは残ったブラッドファングを俺にけしかけると、逃げ出した。
「風の神の名において、我が命ずる! 真空の刃よ、斬り刻め! ブラストカッター!」
キャリーの魔法が俺の前を塞ごうとしたブラッドファングの手足を切り落とす。
まだ生きているようだが、キャリーの魔法で片付けられそうだ。
俺は逃げたワーウルフを追いかける。
「よう、遅かったな」
「え? お前、誰だ? さっきの奴に似ているが……」
「同じだ」
「馬鹿な!? 俺の後ろを走っていて、どうして先に前にいるんだ!! それに、その姿もさっきと色が違う」
「違うのは、色だけじゃない」
一瞬で間合いを詰める。
『チャージアタックワン、メテオライトブロー!』
「うおりゃあ!」
ワーウルフの上半身は爆発と共に吹き飛んだ。
下半身は、倒れると同時にクリスタルだけになった。
俺はワーウルフのクリスタルを持ってキャリーたちの所へ戻ると、そちらもすでに戦闘は終了していた。
「あれ? もう変身は終わり?」
「あのなあ、意味もなく変身する必要ないだろ。あれだってただじゃないんだから」
ネムスギアの展開にはナノマシンのエネルギーを使う。
それは決して無限ではない。
日の光や俺の細胞のエネルギーを使って回復させている。
その構造に関しては、博士に教えてもらったが詳しい部分は俺には理解できなかった。
とにかく、使えば減るし。休めば回復する。
それだけはっきりしていれば俺には十分だった。
「……女王陛下!!」
俺たちが助けた人たちの一人。魔道士姿の女が跪いた。
「え? あ、あなたはオリヴィエ=ルオリスタさん!」
「知り合いか?」
「名前で気付きなさい。ルオリスタの町を任せている子爵よ」
「ああ、そういう……え!? ってことは?」
「申し訳ありません! ルオリスタの町を金華国などに奪われてしまい、女王陛下に合わせる顔もないのに、このような生き恥をさらしてしまって。今回の失態。私の命を捧げることでどうかお許しを――」
突然ナイフを取り出して腹を刺そうとしたので、俺はそのナイフを蹴り飛ばした。
「……あのなあ、目の前で切腹なんてやめてくれ。せっかく助けたのに、命を何だと思ってるんだ」
「そ、そうです。生きているならまた取り戻せばよいのです」
「ああ、何というありがたいお言葉。女王陛下の寛大なお心に感謝いたします」
このままじゃ、落ち着いて話も出来ない。
それに、ヨミと馬車を置いたままってのも気になるし。
俺はその場にキャリーとエリーネだけを残してヨミと馬車を呼びに戻った。
俺たちが全員合流したときには、エリーネが怪我の治療を終えていた。
ルオリスタの生き残りは、全部で八人。
子爵のオリヴィエと、残りは彼女が養子にして育てた子供たちらしい。
年は上が二十歳から下は十歳まで。
全員が冒険者だった。
元々は孤児だったのを、子供のいないオリヴィエが引き取って、生きる術を身につけさせるために冒険者の勉強をさせたのだと教えてくれた。
オリヴィエはいくつなんだろうと思ったら、本人が四十五歳だと教えてくれた。
とてもそうは思えない。
せいぜい三十代半ばくらいかと思っていた。
黒髪で首のところで切りそろえられたボブカット。切れ長の目が特徴的。
背も俺と同じくらい高く、スタイルも崩れていない。
子爵ってことは、元々それなりに活躍した冒険者だったのだろうか。
俺は馬車から食料と水を出して全員に配った。
それでようやく落ち着きを取り戻したのか、オリヴィエがぽつりぽつりと話し始めた。
「私が雇っていた騎士団は、私を逃がして最後まで戦ってくれました。私はなんとか生き延びて、魔力の回復を待って町を取り戻そうと動き出したのですが……」
「一つはっきりさせておきたい」
「何でしょう」
「今、アイレーリス王国はクーデターに揺れている。女王は複合戦略魔法を自国民に使った罪で告発され、俺たちは金華国のスパイ扱いを受けているんだ。その事は知らないのか?」
「クーデター……?」
オリヴィエは目を丸くしていた。これは、演技をしているような表情じゃない。純粋な驚きだ。
知らなかったのだろうか。だとしたら、あの新聞を見られなかったとか。
「ルオリスタの町が襲われたのはいつだ?」
「先週くらいでしょうか。森の中で逃亡生活を送りながら魔力の回復を図っていたので、正確な日時はちょっと」
「だったら、ギルドの新聞は見ることができただろう。そこに書いてあったはずだけど」
「ハハハッ! あんなもの私は信じないわ。私は私の目で直接見てこの耳で聞いたことしか信用しないのよ」
……それは、嬉しい反面嫌な予感がした。
「町を襲ったのは、魔物だけだったか? 人間はいなかった?」
「いいえ。いたわ。見覚えのない鎧を着ていたから、多分金華国の連中だと思う」
「それじゃ、金華国が魔物と手を組んだって言うのも本当だってことだな」
「そうでしょうね。さっきあなたたちが倒してくれた魔物は、ルオリスタの見張りをしていたのよ」
「……何!?」
しれっと重要なことを言った。
俺たちは見張りの兵士を全滅させたのか?
……普通、見張りって言うのは本部に情報を送るよな。
定期的に連絡を取り合って、情報を共有しなかったら見張りの意味なんてない。
ってことは、早晩ここには敵が押し寄せることに……。
逃げるか?
……いや、取り戻すか。
クリームヒルトの手前に拠点があれば動きやすくなる。
「町に駐留してる部隊がどれくらいの規模か調べは付いているか?」
「ええ。確か、ワーウルフとオークデーモンが合わせて十体。それから、クロービーストが一体。人間の兵士は武器を持った戦士が百人に魔道士が同じく百人。この辺りは正確な数字ではないわね。それくらいいるってことよ。あと、ブラッドファングもかなりいるわ」
「クロービーストってのは?」
「大きな熊の魔物です。オークデーモンより遥に強い。きっと、魔物たちのリーダーでしょうね」
俺の質問にスラスラ答えたのはヨミだった。
さすがに魔物には詳しいな。
「ケルベロスと比べて、どうだ?」
「アキラ、ケルベロスは魔物ではなく魔獣でしたから比べるのはさすがに可哀想ですよ」
「じゃあ、俺の敵にはならなそうだな」
「へ? あの、何を言ってるんですか? 私の説明を聞いていましたか?」
オリヴィエは驚きというよりは、どちらかというと哀れなものを見るような目を向けた。
「キャリーはワーウルフかオークデーモンを倒せるか?」
「一対一なら倒せると思う。でも、複数となると、戦闘経験が少ないわね」
だとすると、ブラッドファングたちを任せた方が良いか。
人間の兵士がどう動くかだけ読めないが、魔物たちを殲滅しても戦う意志があるなら応えるしかないだろうな。
「キャリー、敵国とはいえ人間と戦うことになるかも知れない。覚悟が出来ないなら、馬車でこの人たちと一緒に隠れていてくれ。俺たちが倒した連中が見張りなら、いずれここに敵兵がやってくる。俺はそうなる前に一気に町を取り戻そうと思ってる」
「馬鹿にしないで欲しいわ。何のためにアキラと一緒にいると思ってるのよ」
「決まりだな」
「あの、皆さんだけでルオリスタの町を本当に取り戻すつもりなんですか?」
「つもりではない。数時間後にはそうなってる」
「……フフフ……アハハハ……」
オリヴィエが声を上げて笑うが、オリヴィエの仲間たちはオロオロしているばかりだった。
「では、私も一緒に行きましょう」
「いや、俺たちだけで十分だ。それよりも、馬と馬車を頼みたい。俺たちの目的はクリームヒルトだからな」
「それは、私の子供たちがしっかり守ります。ですから、私は一緒に行かせていただきたい」
「アキラ。オリヴィエさんも一緒に連れていってあげて」
エリーネが俺の服の裾を掴んでそう言った。
その瞳からは強い決意が窺えた。
同じように戦争で町を失った者同士。何か通じるものがあるのかも知れない。
「考えてる時間が惜しい。一緒に来てもいいが、あまり活躍の場はないぞ」
「それならそれで構いませんよ。自分の町が取り戻せるのであれば、その瞬間をしっかりこの目で見届けたいのです」
「わかった、行こう」
俺たちはオリヴィエの子供たちに馬車を預け、その場を散開した。
馬車は森の中で隠れられそうな所を探しに、俺たちは真っ直ぐルオリスタの町へ向かう。
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領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
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ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
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突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
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追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
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追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
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貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
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王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
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【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
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アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
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