それからの日々

佐倉 蘭

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それからの日々

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   洋史の妻は当時、大手百貨店で催事場の衣料品アパレル部門で買い付けバイヤーの仕事をしており、全国を飛び回っていた。

   中間管理職として部下を率いる身では、「子どもがいるから」という理由なんかでは定時に帰れないし、彼女自身もそんなことくらいで帰りたくなかった。

   部下の中には、自分よりも学歴の高い男性社員がいる。「だから、子どものいる女は……」とは、絶対に言われたくなかった。
   百貨店デパートは女性社員が圧倒的に多い職場だが、管理する側の役職のある人間は圧倒的に男なのだ。

   だが、男女雇用機会均等法が施行されて数年が経ち、百貨店内社内がようやく女が男と肩を並べられる仕事ができるかもしれない空気になってきた。

   幸いなことに、息子はもう小学生になっていた。

『おかあさんなぁ、忙しくて夕飯の時間に帰って来られへんのよ。おとうさんも、研究所に篭ったらなかなか帰って来はらへんし。せやから……悪いけど、ほか弁でも買って食べててくれへん?お金は渡しとくから』

   彼女は息子の前で手を合わせた。

『頼むわ……お願い、智史。「もう小学生」やねんから、できるやろ?』


   洋史の息子は、みどりの上の娘と同じ学年で同じクラスだった。
   母親同士が親しくしていたこともあって、二人は建売住宅の同じ並びに住む互いの家を、まるで我が家のように行き来していた。

   だが、みどりがリビングの奥のダイニングキッチンで夕飯の支度をしていると、
『……お邪魔しました』 
   そう言って、彼は家に帰ろうとした。

『さとくんっ、帰ったらあかんっ!』
   娘が、必死の形相で引き留めた。

『うちで一緒に晩ごはん食べよ?どうせ独りで食べるからって、またコンビニのおにぎりとかパンとかで済ませようって思っとうやろ?』

『智史くん……まさか、いつも晩ごはんにそんなん食べてるの?』

   びっくりしたみどりが、ボールの中で挽肉を捏ねていた手を止めて尋ねた。

『別に……なに食べても一緒やから』

   みどりは膨らんだお腹を撫でた。この秋に生まれる予定だ。
   医者から聞いたところによると、今度も女の子のようだ。


   目の前の子どもたち、どちらにとっても……

——「妹」になる。

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