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Chapter 3
共寝 ⑥
しおりを挟む——どこで、どうなって、そんな話になった?
神宮寺は、またため息を吐きそうになった。
——しかも『不義の子』って、時代劇か?
だが、そんなことを言っても仕方ない。相手は「ど天然記念物」の栞なのだ。
「たっくん、聞いてください」
栞は神妙な面持ちそのものだ。
なのに、神宮寺にはそれすら滑稽に見えて、おかしくて堪らない。
——もし今、その言葉を遮って、そのぷるっとしたくちびるを啄んだりしたら、こいつ、すっげぇ怒るかな?
つい、そんな不埒なことを考えてしまう。
「ん?……どうした、栞?」
声はますます甘くなり、とうとう湧き上がってくる衝動が抑えられなって、その手触りのよい髪を撫で撫でしてしまった。
——あぁ、ダメだ。こんなんじゃ足りない。そのくちびるに、キスしてぇ。
しかし、そこでふと我に返った。
——あれ?おれ、ヤッたあとのオンナに対して、今までこんな気持ちになったことあったっけ?
記憶をたどっても、そもそもオンナと後朝なんてろくに迎えてやしないのだ。
行為が終わると、さっさとシャワーを浴びてホテルの部屋から出て行くか、相手を出て行かせるか、の二者択一だった。
——栞に対して、こんな甘々になるおれって、いったい、どこのだれだよ?
「たっくん……あたし、本当は生まれてきたらあかんかった子なんです」
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