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あなたの運命の人に逢わせてあげます
Prologue ①
しおりを挟む高校時代の友人からひさしぶりにかかってくる電話なんて同窓会の知らせか、たいていこれだ。
「……おまえもとうとう年貢の納め時か」
おれは苦笑しながらつぶやいた。
『和哉おまえ、古いなー。オヤジじゃねえんだからさ』
スマホの向こうで新田 佳祐がバカ笑いをした。幸せなヤツは、なにを言われてもおもしろいらしい。
「で、相手は?」
まったく興味が沸かなかったが、一応訊いてみた。
『実はさ……』
佳祐が告げた結婚相手の名はヤツが一度別れた女だった。しかも、原因はヤツの浮気だったはず……
接待で知り合ったキャバクラ嬢とのことが彼女にバレて、逆鱗に触れたのだ。
「確か、向こうを相当怒らせて、別れたんじゃなかったっけ?よくヨリを戻せたな」
おれが思わず言うと、
『それなんだけどさ。……でも……おまえはこんな話信じるようなヤツじゃないからなー』
佳祐は急に口ごもった。
「なんだよ、それ」
おれは鼻白んだ。
『ちょっと……「あるところ」に頼んでさ……』
佳祐は言いにくそうにつぶやいた。
「『あるところ』って興信所か⁉︎」
おれはびっくりして訊いた。元カノのことを引きずっていたのは知っていたが、そこまで思いつめていたとは——
『違うって!』
佳祐はあわてて否定した。
『……「運命の相手」に会えるっていうところに、だよ』
「はぁ?」
おれは間抜けた声を出した。
ステーショナリーに特化したネット通販に勤務するおれは、新商品に向けての販促に関する企画書を仕上げるために、一人会社で残業していた。PCを操っていたにもかかわらず、手にしていたコンビニで買ったスタバのコーヒーを、危うくキーの上に落っことすところだった。
「おまえ、頭大丈夫か?幸せボケでどうにかなっちまったんじゃねえのか⁉︎」
思わず大声を上げていた。
しかし、直後にあることに気づき、一転して声を下げた。
「おまえがあの子のことを忘れられないのはよくわかる。……けどさ、悪いことは言わないからさ……」
おれは諭すように我が友に語りかけた。
「……ヘンな宗教に入ってる女だけはやめとけ」
スマホの向こうから深ーいため息が聞こえてきた。
『……だから、おまえには言いたくなかったんだよ』
不貞腐れた声だった。
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