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Chapter 1
①
しおりを挟む麻琴はせっかくの晴れやかな高揚感がしぼんでいくのを感じながら、魚住部長の執務室を出て、ロハスライフの階へ向かった。
ロハスライフのオフィスがあるのは、ステーショナリーネットのすぐ下のフロアだ。
エレベーターで一つ階下に降りて、セキュリティゲートを通過する。
今までの所属先のIDカードを返却したのと引き換えに、魚住部長から人事部で発行された新しい配属先のIDカードをもらっていた。
しばらく歩いて行くと、新設されたMD課のスペースがあった。
ステーショナリーネットと同じく、オフィスというよりもまるでカフェみたいな雰囲気なのは変わらない。準備のために何度となく訪れたスペースだが、今日からはここが「麻琴の居場所」となるのだ。
麻琴は……意を決して、足を踏み入れた。
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
「……渡辺さん……ですよね?」
カフェのテーブルのようなデスクから、二〇代半ばくらいの、明るい栗色の髪でミディアムボブの小柄な女が立ち上がった。
なかなか、かわいらしい顔立ちをしている。
「ああっ、やっぱ、素敵っ!おウワサはかねがね人事にいる同期の小林から聞いていましたっ。あ、あのっ、あたし、今度渡辺さんのチームでお世話になる岡本 紗英って言います。渡辺さんのチームでは販促を担当させていただきます。どうぞ、よろしくお願いしますっ!」
彼女はそう自己紹介して、がばっと頭を下げた。
「あら、そうなのね。チームリーダーを仰せつかった渡辺 麻琴です。今までステーショナリー一本で来たから、こちらのことは右も左もわからないの」
麻琴は彼女に向かって、大輪の花が綻ぶように笑った。
「それから、わたしのことは『麻琴』って呼んでちょうだい。向こうでもそう呼ばれていたから」
「ええっ、いいんですかっ⁉︎……じゃあ、麻琴さん、あたしのことも名字じゃなく『紗英』って呼んでくださいっ!」
——こんな素直そうな子がメンバーでよかった。
ほんの少しだけ、守永に感謝した。とりあえずは彼が選んだメンバーでやっていかなければならないからだ。
「紗英ちゃん、これからなにかと頼ることになると思うけど、こちらこそよろしくね」
「あ、上林さんっ!チームリーダーが来られましたよっ!」
紗英が声をあげて手招きする先へ、麻琴は視線を送った。
紗英と同じくらいの年頃の男が椅子から立ち上がる。
ダークブラウンの髪をした彼の身長は、ヒールを履いた麻琴とさほど変わらないから、一七〇センチ代前半だろう。
イマドキの若い男子によく見られる、表情の変化の乏しい、なにを考えているのかよくわからない感じの青年だった。
「……上林 俊太です。商品企画の担当になりました」
彼はぼそり、とつぶやいた。
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