真実(まこと)の愛

佐倉 蘭

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Chapter 1

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『智史、別れるなんて言わないで。本当はわたし……あなたのことが好きだったの』

   麻琴は生まれて初めて、男にすがって泣いた。

『幼なじみと結婚なんかしないで。わたしの方がずっとあなたの傍にいたじゃない。どうして、そのひとなの?わたしをちゃんと見て!わたしとちゃんとつき合って‼︎』

   想いを込め、麻琴は渾身の力を振り搾って、彼に訴えた。


   だが、それを境に青山がすっぱり会ってくれなくなった。運悪く、GWの大型連休に差しかかったところで、頼みの綱の会社でも見ることができない。

   それでも麻琴は、しつこく彼のスマホに通話したりして追いかけた。


   けれど、結局……

『おまえ……そんな面倒な女だったっけ?』

   青山からは一蹴されただけだった。GWに故郷の神戸に帰った彼は、その幼なじみと入籍していた。

   麻琴はまた、突然目の前に現れたひとに、愛する人をかっ攫われてしまったのだ。


   プライベートはおろか、オフィスでも互いに元の部署から異動となった今、もう青山の姿は滅多に見られなくなった。

   奇しくも麻琴自身が、今までは彼の意思決定に沿って「商品のデザインだけを担当していればいい」という立場から、チーム全体を見渡して管理する、これまで青山が担っていた立場に変わった。

   これからは、ロハスライフの自分のチームで商品開発に掛かる費用を、彼女が上の管理職からもぎ取って来なくてはいけない。
   そのためには、上の者を納得させることのできる「強力な企画力」が不可欠だ。

   そうでなくてもMD課は、今までにない斬新な商品をつくるための部署である。
   今回新たに発足したチームは五チームだと聞いている。もう「競争」は始まっているだろう。


゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


「……上林くん、初めまして。チームリーダーの渡辺 麻琴です。わたしの専門はプロダクトデザインだから、うちのチームが軌道に乗るかどうかは、あなたの『企画力』にかかっているの。期待してるわよ」

「今までステーショナリーにいたあなたが、ロハスにやってきて、これからどういう路線でどういった商品をつくっていこうと思ってるんすか?」

   上林から、いきなり「核心」を突かれた。

「そうね、『生活雑貨』って文具よりずっと幅広いものね」

   麻琴は苦笑する。早速、試されているのだ、と思った。

「わたしは美大時代の恩師の影響で、北欧のインテリアに興味があるの。特にスウェーデンには学生時代から訪れていて、現地では英語が通じるからスウェーデン語は挨拶程度しかしゃべれないけれど、日本にいても学べる読み書きの方は一応できるわ。ロハスのわたしのチームでは、それを活かしてなにか形にしたいと思ってるの」

「えっ、すごーいっ!スウェーデン語ですかっ⁉︎」

   紗英が目を丸くして驚いている。

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