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Plié
しおりを挟む賑やかな六本木の繁華街を抜けて裏通りに入ると、迷路のように入り組んだ細い坂道を進んでいく。
そして見つけた古い雑居ビルに、その「店」はあった。
階段を下りた先の半地下にある入り口で、壊れかけたインターフォンに向かって、ロ◯ベのトート型の籠バッグから取り出したスマホを翳す。
すると、古ぼけた重い木の扉がゆっくりと開き、わたしはその中へ身を滑らせた。
「いらっしゃい、オディール」
スウェーデンの血を引くという、ゴージャスな美女が妖艶な笑顔で迎えてくれた。
一八〇センチの長身のボディに沿ってぴったりと張り付くようにフィットしたシルバーのマーメイドラインドレスを纏ったその人は、今夜も一五センチのピンヒールを優雅に履きこなしている。
「おはようございます、ルシファ」
バレエやダンスの世界では、たとえ子どもを相手にしている町の「お教室」であれ、朝昼晩を問わず「おはようございます」と挨拶するのだ。
「じゃあ……今夜もお願いね」
そう言って、ルシファがわたしに白いバックルを渡す。これを受け取ったら、わたしはもう「斎藤 いづみ」ではない。
——黒鳥だ。
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