2 / 5
ふしぎな友達 ~社会人
しおりを挟む
私は社会人になった。仕事はハードだったけれど、周りの人達と上手く人間関係を築くことができて充実した毎日だった。何より、会社に好きな人がいるということが私の活力だった。彼は違う部署のリーダーで長年勤めているベテランだった。話をしたことは全くなかった。でも、誰かと話しているのを見て一目惚れした。見た目は強面なのに笑顔がとても優しくて可愛いのだ。私は何とか彼と接点を持とうと必死になった。彼と知り合いの人に飲み会のセッティングを頼んだり、自分でも社内で彼と接触を図った。まるでストーカーのようだった。
しかし、私の恋は呆気なく終わってしまった。私は恋をすると相手の反応などそっちのけで全力アピールをするタイプ。猪突猛進というやつだ。どうやらそれが彼を怒らせてしまったらしい。共通の知り合いを通して「やめてほしい」と言われてしまったのだ。私はショックだった。彼を怒らせてしまったこともだったが、何よりも「相手の気持ちを汲まずに行動してしまった」そのことを恥じた。
「またやってしまった……私は誰とも恋愛できない。知らない間に相手を怒らせて嫌われて、このまま人生が終わるんだきっと」
気づいたら海にいた。職場からすぐ近くの波止場。仄暗い海面を覗き込む。飛び込めばきっと楽になれる。私は意を決して足を踏み出そうとした。その時だった。
「待って!早まらないで!」
いきなり腕を掴まれた。咄嗟に振り向くと、そこには彼女がいた。今にも泣きそうな顔で私の腕を強い力で掴んでいる。
「またあなたですか……もう放っておいてください!私なんて生きていたって仕方ないんです!」
腕を振り解こうしたが、グッと掴まれて身動きが取れない。
「ちょっ、離してください!」
「いいえ、絶対に離さない!この腕も心だって!例え周りの人があなたを見放したって私は絶対に見放さない!」
「……っ」
私は全身の力を抜いた。彼女は私が落ち着いたのを見てゆっくりと腕から手を離した。
「はぁ~良かった!ねぇ、お腹空いたでしょ?何か食べに行かない?」
「……は?」
あまりに突拍子もない言葉に固まっていると、彼女は私の手を優しく引いて、良い店があるんだから!と、初めて会った時と変わらない笑顔を浮かべた。
「何で私が波止場にいるって分かったんですか?」
「言ったでしょう?私はあなたのこと全部知ってるって」
返答に困って黙り込んでいると、彼女が言葉を続けた。
「私、ヤケ酒してたとこなんだ。実はこれで二軒目なんだよ」
「何かあったんですか?」
「ちょっと旦那と喧嘩しちゃってさ~まぁ私が地雷踏んじゃったからなんだけど」
そう言って彼女は肩をすくめた。
「そうなんですか。なんか大変そうですね……恋愛下手で彼氏いない歴ウン十年の私には分かりませんけど」
「やけに自虐的じゃないの」
彼女の言葉に私は大きくため息を吐き、一部始終を語った。
「私、普段は相手のこと気にし過ぎるぐらい気を遣うんです。なのに、恋愛になると周りが見えなくなっちゃって。相手に引かれるんです。はぁ~ダメだなぁ」
すると、彼女はにこりと笑って言った。
「大丈夫だよ!そういうあなたを受け入れてくれる人、絶対現れるから!」
私は思わず彼女の顔を凝視した。
「……本当なんですか?その根拠は?あるなら教えてください」
「待て待て。そんなにがっつかないの!今は焦る時じゃない。あなたがその相手に出会えるのはまだまだ先の話。それまでに……あと2回ぐらいかな?恋愛を経験するけど、何があっても落ち込んじゃダメだよ」
「その感じだと私はその相手に出会えるまでにまたなんか色々やらかすんですね……」
すると、彼女は少し苦笑いをして言った。
「う~ん。まあね。でも、どっちも縁がない相手だから。終わった後は落ち込むけど、気にすることないよ」
「そうなんですか?」
彼女は確信に満ちた笑みを浮かべると、大きく頷いた。そして、ジョッキで来たビールを豪快に飲んだ。
「あの……何でそんなに私のこと知ってるんですか?」
私は不思議で堪らなかった。きっと教えてはくれないだろうと思いながらも、私は尋ねた。
「それは今は言えないよ。いずれ分かる時が来るよ。私があなたに言えるのはひとつだけ」
そして、あの時と同じ真剣な眼差しで私を見つめると言った。
「私はいつもあなたの幸せを祈っている。いつも見守ってるからね。もしまたあなたが命を絶とうとしたら必ず助けに来るから!」
にこりと笑うと彼女は店を出て行ってしまった。
「なんなんだ一体……」
何が何だか分からないけれど、私の中で確実に彼女に対しての好感度や信頼度は上がっていた。
私はその後、何度か転職をした。その間に2度ほど恋愛を経験した。どちらも相変わらず私からアピールして玉砕。実ることはなかった。またしても彼女の言った通りになった。
「あの人、一体何者なんだろう……?」
考えれば考えるほど気になって仕方がなかった。でも、尋ねたところできっと教えてはくれないだろう。彼女は「いつか分かる時が来る」と言った。その「いつか」は一体いつ訪れるのだろう。
しかし、私の恋は呆気なく終わってしまった。私は恋をすると相手の反応などそっちのけで全力アピールをするタイプ。猪突猛進というやつだ。どうやらそれが彼を怒らせてしまったらしい。共通の知り合いを通して「やめてほしい」と言われてしまったのだ。私はショックだった。彼を怒らせてしまったこともだったが、何よりも「相手の気持ちを汲まずに行動してしまった」そのことを恥じた。
「またやってしまった……私は誰とも恋愛できない。知らない間に相手を怒らせて嫌われて、このまま人生が終わるんだきっと」
気づいたら海にいた。職場からすぐ近くの波止場。仄暗い海面を覗き込む。飛び込めばきっと楽になれる。私は意を決して足を踏み出そうとした。その時だった。
「待って!早まらないで!」
いきなり腕を掴まれた。咄嗟に振り向くと、そこには彼女がいた。今にも泣きそうな顔で私の腕を強い力で掴んでいる。
「またあなたですか……もう放っておいてください!私なんて生きていたって仕方ないんです!」
腕を振り解こうしたが、グッと掴まれて身動きが取れない。
「ちょっ、離してください!」
「いいえ、絶対に離さない!この腕も心だって!例え周りの人があなたを見放したって私は絶対に見放さない!」
「……っ」
私は全身の力を抜いた。彼女は私が落ち着いたのを見てゆっくりと腕から手を離した。
「はぁ~良かった!ねぇ、お腹空いたでしょ?何か食べに行かない?」
「……は?」
あまりに突拍子もない言葉に固まっていると、彼女は私の手を優しく引いて、良い店があるんだから!と、初めて会った時と変わらない笑顔を浮かべた。
「何で私が波止場にいるって分かったんですか?」
「言ったでしょう?私はあなたのこと全部知ってるって」
返答に困って黙り込んでいると、彼女が言葉を続けた。
「私、ヤケ酒してたとこなんだ。実はこれで二軒目なんだよ」
「何かあったんですか?」
「ちょっと旦那と喧嘩しちゃってさ~まぁ私が地雷踏んじゃったからなんだけど」
そう言って彼女は肩をすくめた。
「そうなんですか。なんか大変そうですね……恋愛下手で彼氏いない歴ウン十年の私には分かりませんけど」
「やけに自虐的じゃないの」
彼女の言葉に私は大きくため息を吐き、一部始終を語った。
「私、普段は相手のこと気にし過ぎるぐらい気を遣うんです。なのに、恋愛になると周りが見えなくなっちゃって。相手に引かれるんです。はぁ~ダメだなぁ」
すると、彼女はにこりと笑って言った。
「大丈夫だよ!そういうあなたを受け入れてくれる人、絶対現れるから!」
私は思わず彼女の顔を凝視した。
「……本当なんですか?その根拠は?あるなら教えてください」
「待て待て。そんなにがっつかないの!今は焦る時じゃない。あなたがその相手に出会えるのはまだまだ先の話。それまでに……あと2回ぐらいかな?恋愛を経験するけど、何があっても落ち込んじゃダメだよ」
「その感じだと私はその相手に出会えるまでにまたなんか色々やらかすんですね……」
すると、彼女は少し苦笑いをして言った。
「う~ん。まあね。でも、どっちも縁がない相手だから。終わった後は落ち込むけど、気にすることないよ」
「そうなんですか?」
彼女は確信に満ちた笑みを浮かべると、大きく頷いた。そして、ジョッキで来たビールを豪快に飲んだ。
「あの……何でそんなに私のこと知ってるんですか?」
私は不思議で堪らなかった。きっと教えてはくれないだろうと思いながらも、私は尋ねた。
「それは今は言えないよ。いずれ分かる時が来るよ。私があなたに言えるのはひとつだけ」
そして、あの時と同じ真剣な眼差しで私を見つめると言った。
「私はいつもあなたの幸せを祈っている。いつも見守ってるからね。もしまたあなたが命を絶とうとしたら必ず助けに来るから!」
にこりと笑うと彼女は店を出て行ってしまった。
「なんなんだ一体……」
何が何だか分からないけれど、私の中で確実に彼女に対しての好感度や信頼度は上がっていた。
私はその後、何度か転職をした。その間に2度ほど恋愛を経験した。どちらも相変わらず私からアピールして玉砕。実ることはなかった。またしても彼女の言った通りになった。
「あの人、一体何者なんだろう……?」
考えれば考えるほど気になって仕方がなかった。でも、尋ねたところできっと教えてはくれないだろう。彼女は「いつか分かる時が来る」と言った。その「いつか」は一体いつ訪れるのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる