ザ・ブレックファースト・ウォーズ

星名雪子

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第一話 ここはドコ?アタシはダレ?

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突然、轟音ごうおんが鳴り響き、彼女の住処である「丸くて小さな小屋」はあっという間に破壊されてしまった。

衝撃で外に投げ出され、気がついたら「白い服を着た小人」の集団の中にいた。壁は一面真っ白で、丸みを帯びている。

「どういうこと……?」

訳もわからず辺りをキョロキョロと見回すと、小人達の大半が同じく辺りをキョロキョロと見回していることに気がついた。

「これから何が起こるんだ?」

「僕たちはどうなっちゃうの?」

そこから出ようとしているのか壁をよじ登ろうとしている小人もいた。が、丸みを帯びてツルツルとした壁面になす術もなく、小さな手足を掛けた瞬間に滑り落ちていった。すると、一人の顔の大きい小人が神妙な面持ちで言った。

「これから起こることは私達にとって凄く名誉なことなのよ」

「めいよなこと?っていうかあなたたちダレ?」

彼女が尋ねると、顔の大きな小人は言った。

「私達は『小人のサトウ』よ。これから起こることの為に、私達は作られた……と、言っても過言じゃないわ」

「小人のサトウさん……?」

言っていることがイマイチ理解できずに彼女が返答に困っていると、突然、顔の大きな小人は彼女を指差して声を荒げた。

「特にあなたわね!」

「ア、アタシ?!」

彼女は驚きのあまり素っ頓狂すっとんきょうな声を挙げた。小人のサトウさん達の視線が一気に自分に向けられたのが分かった。

「そうよ!大きくて黄色い『黄身ちゃん』あなたよ!これから起こることの中で、あなたが一番重要な存在なの!だから、そんなポカン顔してちゃ駄目!」

「そ、そんなこと言われても、アタシには何が何だか……これから何がおこるの?」

「まさか知らないの?一番重要なあなたが?……あのね、」

顔の大きな小人が何か言いかけた、その時だった。

「フォッフォッフォッ、お前たち、何を騒いでおるのじゃ?」

小人のサトウさん達を掻き分けて、一人の仙人がやって来た。長くて白い口ひげ、淡いクリーム色の装束と、とぐろを巻いた大きな杖が特徴的だ。顔の大きな小人が目を丸くして叫んだ。

「あ、あなたはあの伝説の……マヨ仙人!」

「えっと……どちらサマ?」

黄身ちゃんが尋ねると、顔の大きな小人は興奮気味に言った。

「さっきも言ったように一番重要なのはあなた。でも、マヨ仙人はまた違う意味で凄く重要なの。この方がいるのといないのとでは仕上がりに大きな差が出るのよ……!」

「しあがり?大きなさ?どういう……」

黄身ちゃんがそう言いかけた途端、頭上から突然長くて大きな柱がニ本降りてきた。近くにいた小人のサトウさん達が驚いて飛び退いた。その瞬間。長くて大きなニ本の柱が、ぐるぐると回り出した。

「キャーー!」

「ウワーー!」

一斉に悲鳴が上がる。

「大丈夫よ!みんな落ち着いて!流れに身を任せるのよ!」

顔の大きな小人がそう叫ぶと小人のサトウさん達は大人しくなり、柱の動きに合わせて自分達も回り始めた。中には柱にしがみついている者もいる。

依然として全てが謎のままだが、顔の大きな小人の言う通り、黄身ちゃんはとりあえず自分も流れに身を任せることにした。ニ本の柱にぐるぐると掻き回され、次第に皆、目が回ってきた。中にはフラフラヨロヨロと千鳥足になっている者もいた。やがて柱の動きが止まった。

すると、近くからカチカチカチ……ボッ、という音がした。

「ん?なんか火が点けられたような音が……」

黄身ちゃんがそう呟くと、顔の大きな小人が興奮を抑え切れない様子で言った。

「ついに来るわよ……メインイベントが!」

それに続き、ニコニコと余裕のある表情を浮かべながらマヨ仙人が言った。

「フォッフォッフォッ。皆、落ち着くのじゃ。ワシらはひたすら、黙って、流れに身を任せる。それだけで良いのじゃ」

次の瞬間、まるで地震のように全体が大きく揺れた。また悲鳴が上がる。

「えっ!?何?!」

体が大きく傾いたかと思うと、空中に放り出された。小人のサトウさん達もマヨ仙人も皆、黄身ちゃんと同じく空中を舞っている。何が起きたのか理解する暇もなく、気づいたら真っ黒い地面に横たわっていた。黄身ちゃんが辺りを見回すと、真っ黒な壁に囲まれていた。

「ここは一体……」

その時、ジューッという音がして一気に周りが熱くなった。

「熱い!」

「ここどこ?!」

「何なの?!」

小人のサトウさん達が口々に叫び、手で顔を仰ぎ出した。

「みんな!大丈夫よ!落ち着いて!この次に来る衝撃に備えるのよ!」

顔の大きな小人が興奮気味に叫んだ次の瞬間、再び体が大きく傾いた。ぐるぐると巻かれるような感覚が二、三度続いたかと思うと、また空中に放り出された。気づいたら白い地面の上に横たわっていた。今度は周りに壁はなく、外の世界がダイレクトに目に飛び込んできた。どこかの大きな家の中のようだ。黄身ちゃんがキョロキョロしていると、どこからか声が聞こえて来た。

「お母さん、おはよう」

「あら、おはよう。今日は早いのね」

「うん。美味しそうな匂いがしたから早く目が覚めちゃったんだ。卵焼き?」

「そうよ」

「わーい!楽しみ!」

黄身ちゃんはその時、ようやく気がついた。自分が何者なのかを。そして、小人のサトウさん達やマヨ仙人のことも。

「そっか。私、卵だったんだ。あなた達は砂糖、マヨ仙人はマヨネーズ……」

すると、顔の大きな小人が誇らしげに言った。

「やっと気づいたの?私はね、この時をずっと待ってたのよ。料理に使われること……それが私の夢だったの」

「そうだったんだ……そういえば、昔、きいたことある。スーパーに行ったら料理に使われるって……アタシたちにとってそれが何より嬉しいことだって」

「フォッフォッフォッ。ワシもじゃ。皆同じじゃな。さて、きっとこれからワシ達は朝食としてこの家の食卓に並ぶじゃろう」

マヨ仙人が長い口ひげを撫でながら言った。が、その時だった。

「見て!母親がまたフライパンを火にかけてるわ!」

「えっ?!」

顔の大きな小人が血相を変えて叫んだ。周りにいる小人のサトウさん達も一斉に顔を上げ、同じく咄嗟にそちらを見た黄身ちゃんは信じられない光景に驚愕きょうがくした。

フライパンの上に「大きくて黄色い」物が、今まさに落とされたのだ。一瞬見えたそれは黄身ちゃん達の方をチラリと見ると、ニヤッと不敵に笑った。黄身ちゃんはそれを見逃さなかった。

母親は崩壊した「丸くて小さな小屋」の残骸をゴミ箱に捨てた。フライパンから湯気が立ち上り、ジューッという音が響く。

「い、今のは……」

「あれはきっと目玉焼きだわ。同じ食卓に卵焼きと目玉焼きが並ぶことはあり得ない」

「それってどういうこと?」

「母親はどっちかを食卓に出して、どっちかを保存食にするかもしれないってこと。いや、もしかしたらお弁当かも……」

顔の大きな小人はそれっきり絶句してしまった。

「えっじゃあ、アタシたちはまだ食べてもらえないの?」

出来てホカホカのまま朝の食卓に並ぶと思っていた。それを楽しみにしていた。それなのにここに来てまさかのライバル登場である。しかも奴はこちらを見てニヤリと笑ったのだ。勝つ自信があるに違いない。黄身ちゃんはショックを隠せなかった。

彼女達の戦いはまだ終わりではなかったのである。


第二話に続く。
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