夜明け前の線香花火

星名雪子

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あとがき

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今日で8月が終わります。

まだまだ暑い日は続きますが、暦上はもう秋。朝晩の気温が下がり、赤トンボが飛び始め、ひぐらしが鳴き、空は心なしか高い。さりげない秋の訪れを感じます。

私は暑さに弱いので夏が苦手です。でも、日本に住んでいると時折、夏の情景の美しさに心を奪われることがあります。海、入道雲、風鈴、蝉の声、など真夏の情景も素敵ですが、ひぐらしの声、線香花火など「夏の終わり」の情景はまた違う美しさがあります。

特に線香花火は燃え方にそれぞれ花の名前が付けられており、日本語の美しさに感動します。何より、古来から日本人には豊かな感性が備わっているんだなと感じ、日本人に生まれて良かったなとも思います。

また「晩夏」という言葉は、響きからも伝わってくるようにどこか物悲しさや切なさを感じます。以前からこの感じを文章で表現してみたいと思っていたので挑戦してみました。

そして今回も若干、ヨルシカの曲にインスピレーションを受けています。最近、ドラマ「魔法のリノベ」の主題歌である「チノカテ」がリリースされました。美しい日本語で彩られた歌詞と「深い喪失感」に胸がぎゅっとなる素敵な曲です。

また、ヨルシカは「夏」をテーマにした曲がわりと多いので、今作はこの「チノカテ」の「深い喪失感」と様々な夏の曲にかなりインスピレーションを受けています。私がよく聴くのは「花に亡霊」「ただ君に晴れ」「夜行」あたりでしょうか。ヨルシカの曲は非常に文学的なので聴くと創作意欲が湧いてきて、どんどんイメージが膨らみます。

今作は「切ない=別れ」をテーマにしているので「君」はもう「私」のそばにはいません。去ってしまった、或いはもうこの世にはいない、とも捉えられます。「私」にとって「君」はとても大切な存在です。それは、恋人であったり、友達であったり、或いは夫婦、両親、きょうだい、子供、家族や、ペットなど人それぞれだと思います。

想像して頂くために、性別や外見など(笑顔の描写はありますが)のはっきりとした直接的な表現をあえて避けたので、ぜひご自身の「大切な人、存在」を思い浮かべて読んでみて頂けたらと思います。

因みに「晩秋ばんしゅう」という言葉も好きなので秋の終わりにまた何か書いてみたいなと思っています。

読んで頂きありがとうございました。
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