短編集 wholesale(十把一絡げ)

よん

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クレーム(文字数794)

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 メールや手紙は論外。

 手軽なのは電話。苦情処理係の女が困り果てるまでさんざん怒鳴り散らして、第一段階終了。

「アンタみたいなバイトじゃわからないわよ。責任者出しなさい!」

 女のすすり泣く声が堪らない。

 次に出るのは、多分窓際オヤジか冴えない中間管理職。

 ああ、気持ちいい。クレーム最高!

 でも、相手が見えないから物足りない。こっちから出向くのが一番だわ。

 

 今日、格好なターゲットを見つけたの。

 坂の上にできたばかりのお握り屋さん。

 町内でも評判であっという間に売り切れちゃう。だけど、味が特別ってわけでもないらしい。

 どうやら握っている女がとびきり美人なんだそう。

 その証拠に客は殆どが男だって。

 ビジネス街でも繁華街でもないのに真っ昼間から男の長蛇ってねえ……燃えるじゃない。

 潰しがいがあるわ。

 私も並んだわよ。汗臭い男に混じって。

 梅雨の真っ最中、傘さしてさ。わざわざクレームつけるために私もよくやるわ。

 ようやく店内に入ると【限定お握り】ってのがあったの。何と一個500円!

 危なかった。まず、そこでクレームつけそうになったもの。

「こちら、今の時期だけの商品ですよ。よろしかったらいかがですか?」 

 店員の若い女はにこやかに対応する。

 ……確かに美人。負けたわ、悔しいけど。

 勧められるままに買ってしまった。

 自宅に戻り、早速食べたわよ、その【限定お握り】を。

 何よ、これ? 具が入ってないじゃない! タダの塩辛いお握り! これで500円ですってぇ!!!

 私、笑いが止まらなったわ。軽やかな足取りで店へと戻ったの。

 早くも売り切れで店を閉めようとしていたの、その女が。

 ……ちょうどいい。これからたっぷり苛めてア・ゲ・ル!

「ちょっとアンタ! 今日買った限定お握り、具が入ってなかったわよ! やたら塩辛いだけじゃない!」

 女は綺麗な顔をクシャクシャにしてこう言ったのよ。


「す、すみません! 塩が多過ぎでナメクジが溶けちゃったんですね」


 ……ですって。

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