16 / 32
GLJ(GREAT・LOLIBBA・JISHINGI)
きざみの学園デヴュー 1
しおりを挟む
「にゃにゃあ(次は何処へ行くの)?」
黒毛がすっかり砂まみれになっている猫目、先行くあたしに早足で追いつきそう問うてきた。
「明確な場所はあたし自身にもわからない。それを導くのはあなたの役目よ」
「にゃあうにゃあうん(具体的に言ってくんないとわかんないね。保育園? それとも幼稚園?)」
「幼児教育ならさっきの公園で十分。次は義務教育の場よ。今すぐ最寄りの中学校へ案内なさい」
「ふぎゃにゃっ!?(どんだけ飛び級すんだよっ!?)」
「そんなに毛を逆立てる程でもなくってよ。繰り返すけれど、このあたしには時間がないのだから。何たって今日だけで、実年齢の29歳に相当する経験を積まなくてはいけないの」
「にゃっ(今日だけ)?」
「そうよ。あたしは時間との戦い、延いてはノルマとなる米齢時をこれ以上増やしてはならないのよ。猫目があんまりにも言うものだから、今日だけはこうしてお外に出てあげたんだから。……小学校なんてもどかしい。ついでに言わせてもらうならば、あなたとのこうした問答さえもが無駄なの。しのごの言うなら、本当に乳首を取ってしまうわよ?」
これで猫目は沈黙した。
そのまま無言で道行くあたし達は、どうってことのない平凡な公立中学校へ辿り着いた。
時間にして昼食前の4時間目ってとこかしらん。
校門前には【学校関係者以外立ち入り禁止】の看板が設置されてある。
無理もないわ。
物騒な世の中だものね。
けれども、これでもかとばかり肝心の校門は全開……。
凶悪犯がこの看板を見て「はい、そうですか」とおとなしく退散すると考えているのなら相当おめでたいわね、日本の教育機関は。
あたしは凶悪犯などでは勿論ないけれども、さりとてこんな看板なんぞでおめおめと引き下がる筈もなく。
堂々と足を踏み入れようとした時だった。
敵もさる者引っ搔く者。どこに隠れていたのか、白髪交じりの腰がひん曲がった用務員がギロリとあたしを睨んできたの。
……油断ならないわ。
でもね。
そんなことなど織り込み済みよ。
このきざみを甘く見ないで頂戴。
見た目は子供、頭脳は大人……ロリババアとして育ったこのハンデを今こそフルに活用させてもらうわ!
「行くのよ、猫目」
あたしがそう呟くと同時に、疾風の如く猫目が校門を通過し用務員の股の下をも潜り抜けていった。
あ、と声も発する間も与えず、これ見よがしにあたしは泣く。
「あ―――ん! あたしの猫ちゃんがぁ―――! 誰か捕まえてぇ―――!!!」
その誰かはオロオロするばかり。
まるで自分が泣かせてしまったかのように狼狽している。
「お、お嬢ちゃん……お願いだからここで泣かんでくれんかな? ワシが叱られちまうから」
恰も、泣くなら余所へ行けと言わんばかりの発言。
大方、ハロワを通じて雇われたクチね。
学校サイドとのパイプがその程度なら、こっちとしては好都合。
「おじちゃん、あたしの猫ちゃん捕まえてよぉ~! あたし、関係者じゃないからここから中に入れないもん!」
「そんなこと言われてもねえ。私も暇じゃないんで」
出た、露骨な迷惑顔。
あたしは泣き声を1オクターブ上げて、用務員の心を更に揺さぶりかける。
「わかったわかった! それじゃ特別に許可してあげるから、今から一緒に猫を捕まえよう!」
「――っ!? 入っていいのね?」
「いいよ。お嬢ちゃんの猫が捕まるまでなら」
うふふ、許可がもらえればこちらのものよ。
「じゃあ、おじさんは校庭に行ってここまで誘き出してくださる? あたし、ここで待ってるから」
「きっとだよ? くれぐれも校舎に入っちゃ駄目だからね?」
「うん」
してやったり。
そうして、おじさんは校庭へ。
嘘をついたあたしは悠然たる態度で校舎の中へとお邪魔する。
その校舎中が突然、騒がしくなった。
授業中、突如として校庭へ迷い込んだ猫とそれをゼエゼエ息を切らして追いかける一人の老いぼれ……馬鹿共にはちょうどいい目くらましだわ。
退屈な授業に飽き飽きしていた中学生にとって、これ以上の余興はないんじゃなくて?
黒毛がすっかり砂まみれになっている猫目、先行くあたしに早足で追いつきそう問うてきた。
「明確な場所はあたし自身にもわからない。それを導くのはあなたの役目よ」
「にゃあうにゃあうん(具体的に言ってくんないとわかんないね。保育園? それとも幼稚園?)」
「幼児教育ならさっきの公園で十分。次は義務教育の場よ。今すぐ最寄りの中学校へ案内なさい」
「ふぎゃにゃっ!?(どんだけ飛び級すんだよっ!?)」
「そんなに毛を逆立てる程でもなくってよ。繰り返すけれど、このあたしには時間がないのだから。何たって今日だけで、実年齢の29歳に相当する経験を積まなくてはいけないの」
「にゃっ(今日だけ)?」
「そうよ。あたしは時間との戦い、延いてはノルマとなる米齢時をこれ以上増やしてはならないのよ。猫目があんまりにも言うものだから、今日だけはこうしてお外に出てあげたんだから。……小学校なんてもどかしい。ついでに言わせてもらうならば、あなたとのこうした問答さえもが無駄なの。しのごの言うなら、本当に乳首を取ってしまうわよ?」
これで猫目は沈黙した。
そのまま無言で道行くあたし達は、どうってことのない平凡な公立中学校へ辿り着いた。
時間にして昼食前の4時間目ってとこかしらん。
校門前には【学校関係者以外立ち入り禁止】の看板が設置されてある。
無理もないわ。
物騒な世の中だものね。
けれども、これでもかとばかり肝心の校門は全開……。
凶悪犯がこの看板を見て「はい、そうですか」とおとなしく退散すると考えているのなら相当おめでたいわね、日本の教育機関は。
あたしは凶悪犯などでは勿論ないけれども、さりとてこんな看板なんぞでおめおめと引き下がる筈もなく。
堂々と足を踏み入れようとした時だった。
敵もさる者引っ搔く者。どこに隠れていたのか、白髪交じりの腰がひん曲がった用務員がギロリとあたしを睨んできたの。
……油断ならないわ。
でもね。
そんなことなど織り込み済みよ。
このきざみを甘く見ないで頂戴。
見た目は子供、頭脳は大人……ロリババアとして育ったこのハンデを今こそフルに活用させてもらうわ!
「行くのよ、猫目」
あたしがそう呟くと同時に、疾風の如く猫目が校門を通過し用務員の股の下をも潜り抜けていった。
あ、と声も発する間も与えず、これ見よがしにあたしは泣く。
「あ―――ん! あたしの猫ちゃんがぁ―――! 誰か捕まえてぇ―――!!!」
その誰かはオロオロするばかり。
まるで自分が泣かせてしまったかのように狼狽している。
「お、お嬢ちゃん……お願いだからここで泣かんでくれんかな? ワシが叱られちまうから」
恰も、泣くなら余所へ行けと言わんばかりの発言。
大方、ハロワを通じて雇われたクチね。
学校サイドとのパイプがその程度なら、こっちとしては好都合。
「おじちゃん、あたしの猫ちゃん捕まえてよぉ~! あたし、関係者じゃないからここから中に入れないもん!」
「そんなこと言われてもねえ。私も暇じゃないんで」
出た、露骨な迷惑顔。
あたしは泣き声を1オクターブ上げて、用務員の心を更に揺さぶりかける。
「わかったわかった! それじゃ特別に許可してあげるから、今から一緒に猫を捕まえよう!」
「――っ!? 入っていいのね?」
「いいよ。お嬢ちゃんの猫が捕まるまでなら」
うふふ、許可がもらえればこちらのものよ。
「じゃあ、おじさんは校庭に行ってここまで誘き出してくださる? あたし、ここで待ってるから」
「きっとだよ? くれぐれも校舎に入っちゃ駄目だからね?」
「うん」
してやったり。
そうして、おじさんは校庭へ。
嘘をついたあたしは悠然たる態度で校舎の中へとお邪魔する。
その校舎中が突然、騒がしくなった。
授業中、突如として校庭へ迷い込んだ猫とそれをゼエゼエ息を切らして追いかける一人の老いぼれ……馬鹿共にはちょうどいい目くらましだわ。
退屈な授業に飽き飽きしていた中学生にとって、これ以上の余興はないんじゃなくて?
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる