魔王と配下の英雄譚(修正版)

るちぇ。

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第一章 英雄の序曲

第17話「魔王の代償4」

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 錬金開始。媒介は土、ランクは王具。形状は剣。そうだな、神無月に持たせているエストックでいくか。

「俺は……狂っているな」

 自嘲とはこういうことか。これから人を殺しに行くというのに、驚くほど面倒くさいと感じている。せめて意味を見出そうと必死に頭が働く。おかしいな、仮にここが夢の世界であったとしてももう少し何か思うことがあるはずなのに。

「さぁ……ゲームの始まりだ」

 そうしてようやく思い至った言葉に失笑しつつ、エストックを強く握り締めた。
 悲鳴が聞こえる方へ行くと、女性がこちらに走って来ているところだった。相手は3人。いずれも鉄の剣を所持している。

「そこの人、俺の後ろに隠れて」

 女性は俺の後ろに倒れ込む。背中には既に斬られた痕が残っていた。致命傷には見えないが、出血が続けば命の危険がありそうだ。

「おいおい、なんだお前は」
「お前たちこそ……いや、くだらない問答か。俺はこの虐殺ショーをひっくり返しに来たんだ。お喋りは後日、ゆっくりとお願いしたい」

 エストックを上段に構える。こいつは鎧の隙間を狙って突く武器だ。本来なら敵の攻撃を回避しながら隙を狙うはずなんだが、

「……え?」

 試しにエストックで兵士の斬撃を受けると、短くなった刃が鼻先をかすめていく。棘突武器なのに、相手の剣の方が切れてしまったというのか。

「ものは試しか」

 あえて鎧の上から突いてみると胸を貫通してしまう。それは明らかな致命傷で、敵は直ちに絶命した。
 王具ランクも不要とは。実験はもう要らないか。

「な……舐めるな!」

 激昂した敵が斬りかかって来る。素手で刃を殴り付けてみると、綺麗に折れてしまった。おいおい、こんなもので十分なのかよ。
 笑ってしまう。こんな雑魚を相手に慎重になっていたのか。ウロボロスとカルマ。そのどちらかはダンジョンに残って貰いたいと。愚かだ。馬鹿だ。

「ふざけるな! 俺は……こんな雑魚に!?」

 かつて最強プレイヤーと言われた俺が、俺たちが、こんな雑魚に臆していたというのか。失態だ。一生の恥だ。そして、そう思ってしまう自分自身がより人間ではないと確信してしまう。

「……錬金開始。振り子時計の斬首刃」

 重さ1トンの巨大な斧の刃が振り子時計のように揺れている。こいつは処刑用の道具だ。忙しい人向けに、次々と人の首をはねてくれる仕様になっている。
こいつのランクは序列7位。武器は序列7位から1位まであり、その上が王具、そして神具とある。つまりこれは最弱。ある程度鍛えたプレイヤーなら生身で受けても無傷。言うなればパーティー道具に過ぎない。
腰が抜けている兵士を掴まえて胴体に刃が当たるようにセットする。

「や……止めろ、止めてくれ……!」

 命乞いを無視する。大丈夫だ。お前が人並みに強ければ無傷だよ。だが刃を動かすと、綺麗に胴体を真っ二つにしてしまった。

「おいおい、嘘だろ」

 あちこちから悲鳴が聞こえてくる。まだ兵士が派手にやっているんだろう。そっちはカルマに任せて、俺は本丸に攻め込むとするか。
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