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一章 地獄の酒場
13話 さあ、復讐をはじめよう!
しおりを挟む「あれ……。ここは……」
俺はあたりを見渡した。またしても俺は、暗くもなく、明るくもない、寒くもなく暑くもない、ひっそりとして朦朧とした世界に呼び出されていた。
「あんた……もう死んだの!?」
目の前では憎き女神アオイが顔を引きつらせている。
「あー、俺死んだんですか」
「いくらなんでも早すぎるわよ!!」
「え、俺、どのくらいで死んだんですか」
「三時間半よ!! ここを出てから三時間半!!」
「いや、消化管が逆なだけなんですから、むしろそんなもんじゃ……」
「そりゃあ、そんなもんかもしれないけどさ、あんただって別世界では一応、二十年間は生き抜いたわけでしょう? もうちょっとなんとか、ならなかったのかしら」
「いや、前世よりも明らかに難易度があがってるんですよ!! 能力はむしろマイナスだし、あそこはならず者ばかりですよ!!」
俺は地獄のような酒場を思い出していた。
「ったく……それでどうして死んだわけ?」
俺は自分が死に至ったいきさつをアオイに聞かせた。
「ハアァッ!!!! 肛門から酒を飲んだって、あんたバッカじゃないの!?」
アオイは俺の話を遮って言った。
「だって……あの場合仕方なかったんですよ……」
「あんたねえ、それはいくらなんでもバカすぎるわよ? アルコールって言うのは、胃でゆっくりと吸収されて、吸収されたものから、すぐに肝臓に運ばれるのよ!? そこで分解されながら、ゆっくりと血液中をめぐっていく。だから、少しずつ飲めば、ほろりとするし、気持ちよくもなれるってものよ? それを直腸から直接吸収して、しかも自慢の蠕動運動を利用して一気に吸い上げたりなんかしたら、どんな酒豪だって死んじゃうわよ……」
「そう言われれば……」
アオイの言う通り、そもそも大腸は便に残った水分を効率よく吸収するためにできている。そこにアルコールを流したりなんかしたら、もの凄い勢いで吸収され、そのまま血液に乗る。俺は己の愚かさを恥じた。あの状況で仕方がなかったとはいえ、ケツから酒を吸い上げたりなんかしたら、バカと言われても仕方がない。
「本当に命を粗末にしてくれたわね!!」
「でも、もとはと言えばアオイさんが消化管を上下逆につけるから……」
「なに!? なんか言った?」
「いえ……すみません」
「あんたねえ……、そうやってウジウジ文句ばっかり言ってたら、勝てる相手にも勝てないわよ? 私、あなたの身体ってあなたが思ってるほど悪くないと思うんだけど」
「いや、最悪ですよ!?」
「そりゃあ、女の子からは嫌われるでしょうけど、冒険者としては良いんじゃないかしら」
「良いですかね……」
どう考えたって良いわけがない。飲み比べでは、ケツから酒を吸い上げることしかできない身体。
敵は武術の達人や、一流の魔法使い。どう考えたって相手にならない。
「まあでも、あなた、少しは才能があるわよ」
「才能ですか……」
「ええ、蠕動運動を逆方向に起こして、急激なバキュームを生み出したところなんかは、中々とんちがきいてるわね」
アオイは半笑いだった。
「とんちじゃ魔王には勝てませんよ」
「まあ、まあ。あとのことはあとで考えるとして、今はそのヴァーギンって男をどうするか考えなさい。どっちにしろその男を倒さなければ、認めてもらえないんだから!!」
「そう言われても……」
「ささ、じゃあ、異世界に送るわよ?」
「ちょっとまてっくださいよ!! もう少しここで!!」
アオイは呆れたようにため息をついた。
「何甘えたこと言ってるのよ。ここは休憩する場所じゃないの!! 休憩なら向こうでしなさい。むにゃむにゃむにゃむにゃ……」
「ちょっと!! せめてあと十分でも……」
俺の頼みは虚しく却下され、俺はまた街の外れにある大樹の前に立っていた。
俺は道を歩きながら、ヴァーギンを倒す方法を必死で考えた。どうであれ、ここまで来たらやるしかない。
第一、俺にだって反骨精神ってものがある。カツアゲにリンチ。俺を散々コケにしたあいつらが今はもう俺のことなんか忘れて、能天気に笑っているのだ。
絶対に許さない。
俺はもうヴァーギンを倒すことしか頭になかった。三つの命を一つ消費してまたここに戻ってこられたのだ。
再び酒場に向かおう。
さあ、復讐をはじめよう!
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