最後の言葉

青葉

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いつかの思い出

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それから、私は学校帰りに病院に寄るようになった。

記憶が消えていくのを感じながら、私は明るい話や、過去にあった楽しい話を毎日し続けた。

坂田くんは、どんどん病気が進行していくのを感じているのか…あまり話さなくなった。
それでも…
私は話し続けた。

そんなある日、ついに恐れていた事態が訪れた。

いつも通り病室に足を運んだ。

「今日はリンゴを持ってきたよ!坂田くん…リンゴ好きでしょ?」

「……?」

坂田くんは、何も言わずにこちらを見た。

「…坂田くん?どうしたの?」

坂田くんは、キョトンとした顔でこう言った。

「俺…リンゴ好きだったっけ?」

私はついつい泣きそうになった。

それでも明るく振る舞い、その場を流した。

すると坂田くんが私の頭を撫でながらこう言った。

「…清久美?俺はもう、限界だ。
きっと明日にはお前のことも忘れてる。
今までありがとな。

……もう、来ないでくれないか。」

私は涙をこらえ、

「…分かった。じゃあね。」

病室を飛び出した。

帰り道、私は公園に立ち寄った。

(…そういえば、坂田くん…悲しくなったらここに来ようって言ってたな。)

椅子に座って、一息つく。

涙が溢れる。

「…っ。さよなら…。坂田くん…。」
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