約束を果たすまで

青葉

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花が咲く

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「私達、ずっと一緒だよ!約束ね!」

昔、幼稚園の頃にした約束。
これが私達の始まりだった。

私は幼い頃から人見知りで、人を避けて過ごしていた。
お気に入りの場所は図書室。
静かで優しい匂いのする空間。

ある日、転校生がやってきた。

「今日から皆のお友達になる空君だよ!
仲良くしてあげてね。」

先生が優しく微笑み、そっとその子の背中を押した。

「空って言います。よろしくお願いします。」

空は緊張した様子で教室全体を見回した。

教室の皆は興味深々な顔で空を見た。

それから休み時間。
空は皆の対応に追われて大変そうだった。

皆は容赦なく、空に質問をぶつける。

すると、

「おい!お前らしつこいぞ!大変そうじゃん!」

一人の男の子がダンっと席を立って
声を張り上げた。

すると、空の周りを取り囲んでいた集団が
ハッとした顔で席に戻って行く。

男の子は、そっと空に近づいて
「大丈夫か?俺は信!よろしくな!」
と一言言って席に戻って行った。

空はホッとしたような顔でこくりとお礼する。

私はそんな様子を他人事の様な目で見ていた。


空はあっという間に人気者になっていった。

空は信と居ることが多く、気が合うようだった。

(…友達のいない私には関係ないな。)

そう思っていた。

ある日、図書室に入り、いつものように
本を読んでいると、隣に空がやってきた。

「お前っていつも一人だよな。
友達とかいないの?」

私は席を立ち無言で図書室を出た。

すると、空は追いかけてきた。

「おい!なんで逃げるんだよ!」

私は腕を掴まれて、咄嗟に振り解こうとしたが無理だった。

「私は…その…えっと…あの…人と喋るの苦手だから…だから…その…。」

もじもじしている私を見て、空は
クスッと笑った。

「俺が友達になってやる。これでお前は一人じゃない。いいだろ?」

私はその言葉に涙した。

初めての友達。

それからは、一緒に遊んで、一緒に家に帰って……。
毎日が全く違うものになっていった。

クラスの友達も増えて、笑うことも増えた。

私は気がつくと空と信と一緒にいた。

信は、気軽に話しかけてくれるし、
空は何より優しかった。

私は…この二人に甘えていたのかもしれない。

私達は同じ小学校に入った。

それからも、毎日三人で隠れ家を作って、
そこで遊んでいた。

楽しい時間が過ぎていく。

それは本当に幸せな事だった。

気がつくと長い6年間を終えようとしていた。

空は心做しか…少しだけ寂しそうな顔をしていた。

それは、まるで切ない未来を見据える
そんな顔だったのを今でも覚えている。


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