上 下
5 / 54

第五話 異世界ププトペ

しおりを挟む

 ガタンゴトン……、ガタンゴトン……

 ガタンゴトン……、ガタンゴトン……

 透き通った線路をシュポポーッと駆けてゆく。窓から眺める空は星で埋め尽くされていた。
「ふあぁ……あ…ぁ。」口を大きく開けてあくびをした。電車は時間がどれだけたっても停留所もなければ一向に目的地に到達せず、ただただ退屈だった。
 その時、電車の前のほうに眩しい光が見えた。白い光のトンネルだった。そこを一気に駆け抜ける、すると、車内は白い光の中にいた。そのあとの記憶はないが気を失ってしまった。

 気が付くとたくみの目の前には、先程まで電車の中だったが、いつの間にか目的地に到着したようだ。「着いたのか?ここが……、ププトペなのか?」と、独り言を言っていると後ろの方から声がした。振り返ると、中年男性に見える人が話しかけてきた。
「君が転送予定のたくみくんか?」
「はい、あなたは?」
「俺は名乗らないが、あえて言うなら神の手足さ。」
「じゃあ、おじさんも神の使いってやつか?」
「ああ、だがおじさんはやめてくれ。容姿は中年のおっちゃんに見えるかもしれないが、まだ20代さ。」
「見えねぇー、こっちの世界では顔がおっさんでも若い人が多いのか。」
「いやっ、俺は特別さ。あと、俺のことは…Kでイイゼ。君の世界で言う苗字のイニシャルさ。」
「苗字のイニシャルがKってことは、か…みぃ……る、か?まさかそんなわけないよな。」
イニシャルK「!?……。」一瞬、Kが動揺したように見えた…、なにか知ってるような。
 しかし、Kは「俺はカミール…ではない。」とハッキリ断言した。気になっていたトルタナ・カミールの手がかりは掴めなかった。

イニシャルK「たくみくん、お喋りはここまでにして本題といこう。君は今、ここ異世界ププトペに着いたわけだが、君が思っていた世界とは全く違うのではないか?」

 この世界は、異世界と言われると違和感を覚えてしまう異様な空間だった。周りを見渡す限り真っ白な空間で一風変わった建造物があったり、珍しい遺跡があったりするようなことはなかった。たくみは地球では考えられないものを心のどこかで期待していたのだ。
 しかし、そこには何もない。ただ、Kとたくみがいるだけ。
「たくみくん、君には今からやってもらうことがある。それは………、試練だ。」
しおりを挟む

処理中です...