【完結】体を代償に魔法の才能を得る俺は、無邪気で嫉妬深い妖精卿に執着されている

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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2-1.妖精卿と魔力を孕む食事編1

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 体を売り渡した夜はあれで終わらず、寝台の上に何度も縫い付けられた。
 朝になるまで行為は続き、魔力酔いと体の痛みで俺は起き上がれなくなっていた。

「しかし異世界転生者が、ここまで魔力に適性がないとは。舐めてましたね」
「体調を崩したのは、あの後も散々されたせいだよ」

 肉体の許容量を超えた魔力は、魔法を使うどころか俺の体を熱っぽく蝕んでいる。
 度重なる行為で動けない俺は、寝台に腰かけたヴァルネラを睨みつけていた。

「いやだって、貴方との行為が想像以上に気持ち良かったものですから」
「……確かに俺も、もっと痛くて苦しいだけだと思ってたけど」

 馴染ませられた魔力と付随する行為のせいで、俺の体は作り替えられてしまった。
 おかげで行為の後半は快楽を追いかけ、自ら求めてしまった部分もある。

(けれど俺が欲しいのは魔法の使い方や魔力であって、行為は代償だ)

 気持ちよかったことは否定しないが、魔力を得る過程に快楽がついてきただけだ。
 あの行為は必要だから受け入れただけであり、それ以上でもそれ以下でもない。

「存外、相性がいいのかもしれませんよ。私たち」
「嬉しくない」

 俺の隣に転がってきたヴァルネラは、昨日の夜と同じように手を伸ばしてくる。
 俺はその手を軽く払ったが、彼は大して気にも留めず言葉を続けた。

「でも利点はあります。快楽があれば、貴方の体に魔力を馴染ませやすいですから」
(まぁ確かに、それは否定しようがない。なにせ当事者だ)

 魔力を引き出されても、そのままでは受け入れられず熱を溜めただけだった。
 だが快楽と結び付けられた後は体を循環しているので、恩恵は認めざるを得ない。

 そんなことを考えているとヴァルネラは起き上がり、机の上に置かれていた箱を俺に見せつけてきた。

「なので性に関する道具を仕入れてきました! 体調が戻ったら試しましょうね!」
「うわ、最悪! こっち来ないで!」

 中身は怪しげな玩具や薬ばかりで、俺は枕を振り回してヴァルネラを追い払う。
 それを彼は楽しそうに避け、まだ使う気ではなかったのか箱を元の場所に戻した。

「まぁ今は体力を回復する為に、食事を取ってください。色々用意しましたから」

 今は休息の時間と考えているのか、ヴァルネラは魔法で豪奢な食卓を出現させた。
 しかし椅子まで抱き上げられて移動した俺は、あまりの品数に困惑する。

「ねぇ、絶対こんなに料理食べきれないんだけど」
「貴方の好みが分からないので、一通り準備しました。好きな物をどうぞ」

 机の上には施設で見知っているものから、希少食材を使った料理まで並んでいた。
 だが彼自身は食事をする気がないのか、頬杖を突きながら様子を見守っている。

「じゃあ、いただきます。……?」

 見慣れない物には手をつけられず、俺は以前食べたことがある果物を摘まんだ。
 咀嚼すると控えめな甘さに懐かしさを覚えるが、同時に違和感にも苛まれた。

「なんか、変な感じがする。腹の辺りがじんじんするというか」
「あぁ、それは果実に含まれた魔力に反応しているせいかと」

 俺が疑問を口にすると、ヴァルネラはあっさりと原因を教えてくれる。
 しかし体に異変が出るものを提供してくるなんて、なにを考えているのだろうか。

「勝手に変なもの混ぜないでよ、異物混入じゃん!」
「元々入っているだけで、混入させてませんよ。食べたことありませんか、それ」

 特段珍しいものではないとヴァルネラは言っているが、それは俺も分かっている。
 けれど舌先から感じた熱は、以前食べた時とは全く異なるものだった。

「施設で食べた時は、体が火照ることはなかった。じゃあ体質が変わったから?」

 自分で言っている途中で、俺は施設でも食事で体調を崩した子を思い出す。
 あの時の俺は魔力を受け入れられなかったが、今の状態を考えれば納得はできる。

「そういえば貴方がいた施設、魔法使いの売買機関でしたね。表向きは恵まれない子を引き取ると言っていましたが」

 俺が思考を巡らせると、ヴァルネラも思い出したように施設の事を聞いてくる。
 あそこは閉塞的な場所だから、彼も内情は詳しく知らないのかもしれない。

「うん。成人した子供に殺し合いや凌辱をさせて、生き残った子を売ってるってさ」
「貴族はそういった方の魔力を使って、家門の血を強化しますからねぇ」

 話してみると彼はやはり施設の売り文句を聞きつけて、施設に訪れていたらしい。
 しかしあの惨状については知らず、施設の壁を破壊したのも善意ではないようだ。

「閉鎖された場所で起きてたから、俺も今まで気づけなかったんだよね。……っう」
「魔力が受け付けないようでしたら、戻してしまって構いませんよ」

 途中まではなんとか話していたが、遂に平衡感覚を失った俺は食卓に突っ伏した。
 ヴァルネラに背中を擦られたが、その感触ですら不快感を生んでいる。

「大丈夫、吐き気じゃないから。それに少しすれば落ち着く、……や、なにして」
「嘔吐じゃないなら、吐精の方が効率的ですよ。ほら、早く脱いで」
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