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美少女の入浴

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 俺達はS等級魔獣を探して数時間が経過したが全く見つからず日が暮れてきた。

 我がパーティの弱点を思い知った。そう、索敵系のスキル持ちがいないのだ。

 結局サバイバル一日目は手掛かりすら見つからなかった。

 俺達は拠点の滝沿いへと引き上げた。

「レオ凄いよ、この滝!温かいよ」

 ソラが声を上ずらせて言った。

「ほんとだ、滝つぼが温泉みたいになってるな」

 ジャングルの中だけに風呂に入れないと思っていたが天然の露天風呂とは運がついている。

「2人で先に入っていいよ。俺が見張りをしているからさ」
「ありがとうレオ、先に入らせてもらうね」

 ソラが笑顔で言った。

「レオ、よからぬ企みをしたらパーティは解散だからな」
「す、するかよ。そんなこと」

 ベルの忠告に答えた。

 ソラとベルが風呂に入る音が聞こえた。

 この状況で全く気にならなかったら男ではないだろう。

 だが俺は腐っても王族、のぞきをするほど落ちぶれてはいない。

 でも万が一、叫び声とか聞こえたら駆け付けよう。この場合は致し方ない。

 そんなラッキーは起こらなかった。

「いい湯だったよレオ!次どうぞ」

 ソラが幸せそうに言った。

「レオ、さっきは済まなかったな」
「いいよ、全然気にしてないから」

 俺はベルの一言に爽やかに答えた。

 
 俺は風呂に入ると今回の試験について考察してみた。

 意外とまずい状況かもな、放たれているS等級魔獣は5体しかいない。遭遇さえすれば勝てると確信していたが、他のパーティに索敵系のスキル持ちがいた場合、先を越される可能性が高い。

 いやまてよ、今回の試験そういえばパーティどうしの抗争を禁じていない。しかも魔石を入手しても一週間はジャングルから出てはいけないという謎ルールがある。
 まるで意図的にパーティの抗争を誘発しているようにすら感じる。

 いずれにしろ焦りは禁物だ。まだ時間はある、好機は必ずくるはずだ。

 俺は自分自身に言い聞かせた。


「キャーッ!」

 その時、ソラの甲高い叫び声が聞こえた。

 まずい、S等級魔獣が現れたのならソラとベルだけでは生き残れない。

 一刻を争う状況であり服を着ている時間はない。

 だが俺は腐っても王族、公序良俗に反するほど落ちぶれてはいない。

 わるいがパンツだけは履かせてもらう。

 俺がすぐさま駆け付けるとソラが青ざめていた。

「どうしたソラ!?」

「大丈夫だ、レオ。私がムカデを駆除しておいた」

 ベルが落ち着いて言った。

 なんだ、そんなことだったか。ジャングルだから普通だと思うが。

「ごめんね、私ムカデが苦手で……」

「いや、全然。俺も苦手だから気持ちがよくわかる」

「レオ、それより服を着てきたらどうだ?」

 ベルが毅然とした態度で言った。

「わかってるよベル!」

 ソラは少し顔を赤らめていた。


 5日目が経過したが魔獣どころか他のパーティとも遭遇しない。

 これはさすがにおかしい。一体何が起きているんだ……

 俺達は日が暮れてから小屋で話し合いをした。

「レオ、もう諦めてもいいよ。私の故郷に行くのが目的なのに2人を巻き込んで申し訳ないよ」

「いや、最後まで諦めずに魔獣を探そう」

 ソラは本音では諦めたくないはずだ。俺とベルに気を遣って言ったのは表情からも見てとれる。

 その時、誰かが小屋の扉をノックした。

「他のパーティだろう。俺が代表してでるよ」

 俺が慎重に扉を開けると兄上が立っていた。

 俺にとっては想定内だが、兄上の方は驚愕している。

 それもそうだ。死んだはずの人間が目の前に現れたら誰でも驚く。

「久しぶりだね、兄上。元気にしてた?」

「レ、レオ……お前どうやって!?」

「そんなことより何の用だい?」

「……頭が回らないお前でも気づいてるだろうが、もう俺達以外に魔獣も冒険者もこの試験場には存在しない。なぜだかわかるか?」

「ま、まさか兄上が?」

「その通りだ、俺が一匹残らず駆逐した。希望に満ちた平民共の死に顔を見ることは至高の愉悦だったよ」

 俺の中で強い怒りが込み上げてきた。

 兄上の人格に問題があることは知っていたが、まさかここまで腐敗してたとは。

「兄上、いやパレス・グリフォン!俺は貴様を許さない!!!」
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