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五章前編 "5人目の怪物"編
5.井の中の蛙は化け物を知らない
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「才能がダンチなんですよ、彼らモンスター4って……彼らが20歳になったら俺ら、もう勝てないってわかるんですよね」
「そこまでですか、以前ブレイキングケイジの地方喧嘩戦線に出てた久島くんは」
都内某所にて、総合格闘技メジャー団体『FUJIN』スター選手にして格闘技団体『ブレイキングケイジ』の主宰、朝原光流は雑色のインタビューを記者から受けていた。
インタビュー内容は……『現役トッププロファイターに聞く!新世代の象徴"モンスター4"に関して!』で、前回のブレイキングケイジに参戦した、久島秀忠の試合を近くで見た朝原光流は、そのインタビューする選手の1人として記者が尋ねて来たのだ。
「久瀬くん筆頭として、BOFユースに集まった去年のファイナル4、その四人をBOFがそう喧伝したのが始まりですね……」
そもそも、そんな呼び方をしたのはBOFの運営や経営陣だった。それ程までの鮮烈な、プロすら食うほどの試合を彼ら四人は、あの大晦日のオープニングファイトである前座の二戦で行った。
「ただ本当、総合格闘技の二人までここに出たのは運命というか、因果でもあったんじゃあないかなと……今後の格闘技界隈を左右する才能、ドル箱になり得る存在として"モンスター4"って喧伝が事実なんですから面白いですよね」
しかもだ、本来ならばアマチュア総合格闘技に出るはずだろう選手まで混ざり合った、混沌の年……であった。
そんな四人が見せた才能は、実際本物だったと朝原は記者に語る。ダイヤの原石が四つ見つかった、そうとしか言えない、その思いをこめてBOF運営は彼ら四人を『モンスター4』と呼称したのであったと。
「で、そのモンスター4を倒すのが俺!学生プロにしてJKBライト級チャンピオンの獅子元博之よ」
「自信がおありのようですね、獅子元選手は?」
関東のあるキックボクシングジムにて、記者を前に彼は笑って答えた。そのモンスター4を倒すのがこの俺だと豪語し、獅子元は記者に続ける。
「所詮はBOFが今後の客を得る為に持ち上げてるだけっすよ、本当に強いなら……俺みたいに早々にプロ行って成績積み上げてるっすからね?あいつらはただの担ぎやすい神輿なだけっすから……それを9月には観客にもPPVやサブスクから見るやつにも見せてやります」
自信満々に記者へ答える獅子元……その様子を見ていた同ジムでプロの選手が、オーナーに耳打ちした。
「……本気っすか、久島とやらせるって……下手したらここで獅子元壊れますよ」
獅子元の自信満々とは裏腹に、プロであった彼は否定的だった。推薦枠を受けた事、そして抽選とは言え久島と戦わせるのかと。オーナーは耳打ちを彼に返す。
「獅子元は井の中の蛙になっている、確かに中堅プロも倒して実力はある、BOFユースでも県大会から出てファイナル8に行ける強さはある……だからこそ、ここで経験を積ませてやりたい……これで負けて腐って辞めるならそれまでだ」
彼はここまで無敗のキャリアを積み上げて来た、実力は確かに本物だ。推薦じゃあなかろうと県大会からファイナル8まで来れる実力はあると、オーナーは疑っていない。
だが……格の違いはすでに見えていた。抽選で決まったとは言え『モンスター4』の一角、久島に……獅子元博之は決して勝てないとオーナーは理解した上で戦わせると、所属プロに言うのだった。
「俺が心配してるのは、再起不能にされないかって事ですよ……久瀬ならまだその辺綺麗に倒しますけど……久島は……あいつは選手生命を断ちかねないっすよ?獅子元の……そもそも久島は、去年のファイナル8でも……」
獅子は我が子を千尋の谷に突き落とすとはいうが、オーナーが獅子元にやろうとしてるのは……地獄まで叩き落とそうとしているとしか見えない。
「今の獅子元に必要なのは……敗北だ、アマチュアもこれまで無敗でここまできた、チャンピオンベルトも……しかし本気で更なる高みへ行くには、大海を知る必要がある……地獄を見せる愛情もあるんだよ」
オーナーの思惑も知らぬままに、獅子元博之は記者に嬉々として語り尽くす。やがて地獄を見た時、彼はどうするのか……まだそんな事も頭に無いままにインタビューは続いた。
「と、まぁ……BOFの運営や、格闘技界隈では……僕は才能の塊なんだと」
「そう言う割には、久島自身は否定的だな?」
「だって、自分から説明するほど恥ずかしいものは無いってば」
僕は、なぜ自分が『モンスター4』と呼ばれているか、三人に語り終えてため息を吐いた。否定的な言い方や態度も、他人から言われて初めて意味があり、自分で語り聞かせるなんて一種の羞恥刑でしかないからだ。
「で、そのモンスター4様から見てよ、外から来たチャンピオンはどないやねん?勝てるんか?」
では、そのモンスター4とやらのキミからして、対戦相手の獅子元くんには勝てるのかと伊佐美くんから問われた僕は、一度目を閉じて息を吸ってから答えた。
「楽勝だよ、これなら反対側の表に居る松原くんや、去年倒して一からやり直して上がって来た……鈴木・スティーヴン・明善くんのが燃えるかな」
「ほー、松原と……え?誰?鈴木……」
「鈴木・スティーヴン・明善くん、第三試合にでる、去年僕がファイナル8で倒した昨年シード選手だった、一昨年準優勝の三年生だよ」
正直、1番戦いたいのは天瀬くんで、彼は上がって来たらファイナル4準決勝で当たる。だから、僕にとって獅子元くんは前哨戦の調整でしかない……と、までは言わなかった。
けど、タイ合宿で教えられた『新しい戦い方』を、彼で試すのが1番いいかもしれない。僕は、ぼろぼろに皮膚が傷付いた右拳を眺めながら、天瀬くんの試合がないかなとYouTubeにて検索をかけるのだった。
「そこまでですか、以前ブレイキングケイジの地方喧嘩戦線に出てた久島くんは」
都内某所にて、総合格闘技メジャー団体『FUJIN』スター選手にして格闘技団体『ブレイキングケイジ』の主宰、朝原光流は雑色のインタビューを記者から受けていた。
インタビュー内容は……『現役トッププロファイターに聞く!新世代の象徴"モンスター4"に関して!』で、前回のブレイキングケイジに参戦した、久島秀忠の試合を近くで見た朝原光流は、そのインタビューする選手の1人として記者が尋ねて来たのだ。
「久瀬くん筆頭として、BOFユースに集まった去年のファイナル4、その四人をBOFがそう喧伝したのが始まりですね……」
そもそも、そんな呼び方をしたのはBOFの運営や経営陣だった。それ程までの鮮烈な、プロすら食うほどの試合を彼ら四人は、あの大晦日のオープニングファイトである前座の二戦で行った。
「ただ本当、総合格闘技の二人までここに出たのは運命というか、因果でもあったんじゃあないかなと……今後の格闘技界隈を左右する才能、ドル箱になり得る存在として"モンスター4"って喧伝が事実なんですから面白いですよね」
しかもだ、本来ならばアマチュア総合格闘技に出るはずだろう選手まで混ざり合った、混沌の年……であった。
そんな四人が見せた才能は、実際本物だったと朝原は記者に語る。ダイヤの原石が四つ見つかった、そうとしか言えない、その思いをこめてBOF運営は彼ら四人を『モンスター4』と呼称したのであったと。
「で、そのモンスター4を倒すのが俺!学生プロにしてJKBライト級チャンピオンの獅子元博之よ」
「自信がおありのようですね、獅子元選手は?」
関東のあるキックボクシングジムにて、記者を前に彼は笑って答えた。そのモンスター4を倒すのがこの俺だと豪語し、獅子元は記者に続ける。
「所詮はBOFが今後の客を得る為に持ち上げてるだけっすよ、本当に強いなら……俺みたいに早々にプロ行って成績積み上げてるっすからね?あいつらはただの担ぎやすい神輿なだけっすから……それを9月には観客にもPPVやサブスクから見るやつにも見せてやります」
自信満々に記者へ答える獅子元……その様子を見ていた同ジムでプロの選手が、オーナーに耳打ちした。
「……本気っすか、久島とやらせるって……下手したらここで獅子元壊れますよ」
獅子元の自信満々とは裏腹に、プロであった彼は否定的だった。推薦枠を受けた事、そして抽選とは言え久島と戦わせるのかと。オーナーは耳打ちを彼に返す。
「獅子元は井の中の蛙になっている、確かに中堅プロも倒して実力はある、BOFユースでも県大会から出てファイナル8に行ける強さはある……だからこそ、ここで経験を積ませてやりたい……これで負けて腐って辞めるならそれまでだ」
彼はここまで無敗のキャリアを積み上げて来た、実力は確かに本物だ。推薦じゃあなかろうと県大会からファイナル8まで来れる実力はあると、オーナーは疑っていない。
だが……格の違いはすでに見えていた。抽選で決まったとは言え『モンスター4』の一角、久島に……獅子元博之は決して勝てないとオーナーは理解した上で戦わせると、所属プロに言うのだった。
「俺が心配してるのは、再起不能にされないかって事ですよ……久瀬ならまだその辺綺麗に倒しますけど……久島は……あいつは選手生命を断ちかねないっすよ?獅子元の……そもそも久島は、去年のファイナル8でも……」
獅子は我が子を千尋の谷に突き落とすとはいうが、オーナーが獅子元にやろうとしてるのは……地獄まで叩き落とそうとしているとしか見えない。
「今の獅子元に必要なのは……敗北だ、アマチュアもこれまで無敗でここまできた、チャンピオンベルトも……しかし本気で更なる高みへ行くには、大海を知る必要がある……地獄を見せる愛情もあるんだよ」
オーナーの思惑も知らぬままに、獅子元博之は記者に嬉々として語り尽くす。やがて地獄を見た時、彼はどうするのか……まだそんな事も頭に無いままにインタビューは続いた。
「と、まぁ……BOFの運営や、格闘技界隈では……僕は才能の塊なんだと」
「そう言う割には、久島自身は否定的だな?」
「だって、自分から説明するほど恥ずかしいものは無いってば」
僕は、なぜ自分が『モンスター4』と呼ばれているか、三人に語り終えてため息を吐いた。否定的な言い方や態度も、他人から言われて初めて意味があり、自分で語り聞かせるなんて一種の羞恥刑でしかないからだ。
「で、そのモンスター4様から見てよ、外から来たチャンピオンはどないやねん?勝てるんか?」
では、そのモンスター4とやらのキミからして、対戦相手の獅子元くんには勝てるのかと伊佐美くんから問われた僕は、一度目を閉じて息を吸ってから答えた。
「楽勝だよ、これなら反対側の表に居る松原くんや、去年倒して一からやり直して上がって来た……鈴木・スティーヴン・明善くんのが燃えるかな」
「ほー、松原と……え?誰?鈴木……」
「鈴木・スティーヴン・明善くん、第三試合にでる、去年僕がファイナル8で倒した昨年シード選手だった、一昨年準優勝の三年生だよ」
正直、1番戦いたいのは天瀬くんで、彼は上がって来たらファイナル4準決勝で当たる。だから、僕にとって獅子元くんは前哨戦の調整でしかない……と、までは言わなかった。
けど、タイ合宿で教えられた『新しい戦い方』を、彼で試すのが1番いいかもしれない。僕は、ぼろぼろに皮膚が傷付いた右拳を眺めながら、天瀬くんの試合がないかなとYouTubeにて検索をかけるのだった。
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