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第3章
お姉ちゃんが帰って来た。
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バタバタバタン!バタバタ、バンバンバン!
立て続けに響く音に、眉をひそめる。カーテンの隙間から、朝日が差し込んでいる。ベッドから起き上がり、ドア開けると、そこには見慣れた顔が立っていた。
「友梨ちゃん! 聞いて! お姉ちゃん、異世界転生してきた!」
ああ、どうやらお姉ちゃんが帰って来たらしい。
外伝は、いくつかあった。エリザベスをただのツンデレと言い出した一部のファンが、不幸な人生からエリたんを救う!と言って書いた2次創作が数作ある中で、絵梨が行った世界はおそらく婚約破棄された場面から始まる「あれ」だろうと友梨は見当をつけていた。なぜならそこに出て来るエリザベスが、あまりにも姉に似ていたからだ。
転生したのは、婚約者に婚約破棄を宣言された瞬間だった。婚約破棄を告げる言葉を聞いたエリザベスは、しばらく状況が飲み込めないと言った表情で固まっていたが、ふと何かに気が付いたかのように目を瞬かせると、「はい!喜んで!」と叫んだのだった。
その後、「おめでとう!幸せになってね!」と目をうるうるとさせながら立ち去っていったエリザベスが、「私はただのツンデレなので!色々ごめんなさいね!」と公言し始めるというバタバタのコメディだ。
そのオチ―――、いやその結末は、皇太子と妹の結婚式で、滂沱の如く涙を流しながら「おめでとう!」と拍手しまくっているエリザベスに、マーガレットが投げたブーケが直球で当たる。そして、倒れたエリザベスに手を差し伸べるのが…。
(―――という、なんともアホな内容だったけど、まさかこんなに早く帰って来るとは。)
二日ぶりに見る姉の奇行に既に面倒臭さを感じながら、友梨は気になっていたことを聞く。
「で? どこまで向こうにいたの? やっぱり予定通り結婚式?」
「友梨たん! 信じてくれるの⁉」
鬱陶しさ全開で、絵梨は祈るようなポーズで目をキラキラとさせながら、眠い目を面倒臭そうに擦る友梨を見た。普段から「異世界転生してきた!」と言い張る姉のお陰で、いつもなら全く信じないのだが、今回は別だ。明らかに別人だったエリザベスが、こちらにいたからだ。
正直言えば、もう少し「中身エリザベス」のままでいて欲しかった。
「ん、もうわかったから、結婚式? ブーケ、刺さったの?」
「刺さった、刺さった。痛ってええなぁああ!!!! っていう自分の声で目が覚めたよ。——って、なんで知ってんの?」
絵梨は、まだ外伝を読んでいない。なぜなら、本の持ち主は友梨で、しかもまだ購入したばかりだったからだ。しかも、内容がドタバタなアレだ。エリザベスに貸したのが、初めてだったのだ。
絵梨は、本編だけは読んだことがあり、本来のエリザベスの状況を打破すべく動いたのだろうことは予想ができた。それが、まさか外伝通りになるとはと、友梨は苦笑する。
絵梨は興奮冷めやらぬ様子で、「めっちゃ、おっぱいタプタプで、でもコルセットがめっちゃ苦しくてさ。でもあのコルセットがあれば、このツルペタだって…あ、鼻血が。」と独り話している。それを無視して、「じゃあ、うまくいったんだね。」と、友梨が笑うと、「ふふん。完璧よ。」と絵梨は鼻をズビッと鳴らしながら、得意気に笑った。
「エリたんも、マーガレットもみ~んな幸せ。ヤンデレ皇太子も、幸せ! お姉ちゃん、頑張ったんだから!」
「ふぅうん。まあ、中身が変わっただけだから、正しくは転生ではなけどね。」
「いいじゃぁん。そんな、細かいこと。」
でへへと笑う絵梨に背を向けて、友梨は1冊の薄い本を手に取った。
『JK異世界転生。~婚約者がヤンデレ皇太子なんて聞いてない。~ 外伝』
そして、「はいっ。」と絵梨の手を取ってそれを乗せた。
「え? 何? これ。」
絵梨は理解できないとでも言うように、その本を手に取りしげしげと見つめる。それが自分が行ってきた世界の外伝であることには、すぐ気が付いたようだ。「え?え? まじ?」と、上から下からその表紙を眺めている。読んでみれば、自分の行動が記されたそれにきっと驚くことだろう。
(夜にまた奇声が聞こえそうだな。)
外伝の最終章を思い出す。まあ帰って来るのは、筆頭魔術師との出会いをほのめかした様な最後の場面だろうと思ってはいたが、案の定だったことに友梨が笑う。魔術師とのこれからは、お姉ちゃんとでは無理だろうけど、エリたんとならもしかしたら…と、思わず期待してしまうのだ。
そこで、友梨はふとあることに気が付いた。
(ということは、お姉ちゃんは婚約破棄から結婚式まで2年ほどの時間を向こうで過ごしてきたはずだ。それがまさか、こちらではたったの1泊2日とは。)
「え? どういうこと? これ、私?」
2年も経ったはずなのに、何ら変わらない姉に友梨は呆れながら、「ねえ、お姉ちゃん。」と声をかけた。既に数ページ読んでいたらしい絵梨は顔を上げて、「ん?」と友梨を見た。
「お姉ちゃんが向こうに行っている間、エリたん、こっちにいたんだよ。で、学校にも行ったんだよ。」
「…は?」
お姉ちゃんが、口を開けたままのアホな顔で絵梨をガン見した。中身が変わると、外側のイメージもここまで変わるものなのだと友梨は呆れ、蟀谷を手で押さえた。
「ギャップが凄すぎて、残念感が半端ない。」
「えええ? じゃあ、こっちも時間が過ぎてるってこと? 2年って言ったら、私、大学生? それとも、もう社会人?」
自分の人生が順風満帆であることになんの疑いの余地もないらしい。そして、いちいちテンションが高い。
「2日。」
「え?」
「ふーつーか! だから、今日もこれから学校だから。皆勤賞でしょ? 早く用意した方が良いよ。」
信じられない言葉を聞かされたかのように目を見開いた絵梨は、「ええええぇぇぇえ?」と絶望の声を上げた。
立て続けに響く音に、眉をひそめる。カーテンの隙間から、朝日が差し込んでいる。ベッドから起き上がり、ドア開けると、そこには見慣れた顔が立っていた。
「友梨ちゃん! 聞いて! お姉ちゃん、異世界転生してきた!」
ああ、どうやらお姉ちゃんが帰って来たらしい。
外伝は、いくつかあった。エリザベスをただのツンデレと言い出した一部のファンが、不幸な人生からエリたんを救う!と言って書いた2次創作が数作ある中で、絵梨が行った世界はおそらく婚約破棄された場面から始まる「あれ」だろうと友梨は見当をつけていた。なぜならそこに出て来るエリザベスが、あまりにも姉に似ていたからだ。
転生したのは、婚約者に婚約破棄を宣言された瞬間だった。婚約破棄を告げる言葉を聞いたエリザベスは、しばらく状況が飲み込めないと言った表情で固まっていたが、ふと何かに気が付いたかのように目を瞬かせると、「はい!喜んで!」と叫んだのだった。
その後、「おめでとう!幸せになってね!」と目をうるうるとさせながら立ち去っていったエリザベスが、「私はただのツンデレなので!色々ごめんなさいね!」と公言し始めるというバタバタのコメディだ。
そのオチ―――、いやその結末は、皇太子と妹の結婚式で、滂沱の如く涙を流しながら「おめでとう!」と拍手しまくっているエリザベスに、マーガレットが投げたブーケが直球で当たる。そして、倒れたエリザベスに手を差し伸べるのが…。
(―――という、なんともアホな内容だったけど、まさかこんなに早く帰って来るとは。)
二日ぶりに見る姉の奇行に既に面倒臭さを感じながら、友梨は気になっていたことを聞く。
「で? どこまで向こうにいたの? やっぱり予定通り結婚式?」
「友梨たん! 信じてくれるの⁉」
鬱陶しさ全開で、絵梨は祈るようなポーズで目をキラキラとさせながら、眠い目を面倒臭そうに擦る友梨を見た。普段から「異世界転生してきた!」と言い張る姉のお陰で、いつもなら全く信じないのだが、今回は別だ。明らかに別人だったエリザベスが、こちらにいたからだ。
正直言えば、もう少し「中身エリザベス」のままでいて欲しかった。
「ん、もうわかったから、結婚式? ブーケ、刺さったの?」
「刺さった、刺さった。痛ってええなぁああ!!!! っていう自分の声で目が覚めたよ。——って、なんで知ってんの?」
絵梨は、まだ外伝を読んでいない。なぜなら、本の持ち主は友梨で、しかもまだ購入したばかりだったからだ。しかも、内容がドタバタなアレだ。エリザベスに貸したのが、初めてだったのだ。
絵梨は、本編だけは読んだことがあり、本来のエリザベスの状況を打破すべく動いたのだろうことは予想ができた。それが、まさか外伝通りになるとはと、友梨は苦笑する。
絵梨は興奮冷めやらぬ様子で、「めっちゃ、おっぱいタプタプで、でもコルセットがめっちゃ苦しくてさ。でもあのコルセットがあれば、このツルペタだって…あ、鼻血が。」と独り話している。それを無視して、「じゃあ、うまくいったんだね。」と、友梨が笑うと、「ふふん。完璧よ。」と絵梨は鼻をズビッと鳴らしながら、得意気に笑った。
「エリたんも、マーガレットもみ~んな幸せ。ヤンデレ皇太子も、幸せ! お姉ちゃん、頑張ったんだから!」
「ふぅうん。まあ、中身が変わっただけだから、正しくは転生ではなけどね。」
「いいじゃぁん。そんな、細かいこと。」
でへへと笑う絵梨に背を向けて、友梨は1冊の薄い本を手に取った。
『JK異世界転生。~婚約者がヤンデレ皇太子なんて聞いてない。~ 外伝』
そして、「はいっ。」と絵梨の手を取ってそれを乗せた。
「え? 何? これ。」
絵梨は理解できないとでも言うように、その本を手に取りしげしげと見つめる。それが自分が行ってきた世界の外伝であることには、すぐ気が付いたようだ。「え?え? まじ?」と、上から下からその表紙を眺めている。読んでみれば、自分の行動が記されたそれにきっと驚くことだろう。
(夜にまた奇声が聞こえそうだな。)
外伝の最終章を思い出す。まあ帰って来るのは、筆頭魔術師との出会いをほのめかした様な最後の場面だろうと思ってはいたが、案の定だったことに友梨が笑う。魔術師とのこれからは、お姉ちゃんとでは無理だろうけど、エリたんとならもしかしたら…と、思わず期待してしまうのだ。
そこで、友梨はふとあることに気が付いた。
(ということは、お姉ちゃんは婚約破棄から結婚式まで2年ほどの時間を向こうで過ごしてきたはずだ。それがまさか、こちらではたったの1泊2日とは。)
「え? どういうこと? これ、私?」
2年も経ったはずなのに、何ら変わらない姉に友梨は呆れながら、「ねえ、お姉ちゃん。」と声をかけた。既に数ページ読んでいたらしい絵梨は顔を上げて、「ん?」と友梨を見た。
「お姉ちゃんが向こうに行っている間、エリたん、こっちにいたんだよ。で、学校にも行ったんだよ。」
「…は?」
お姉ちゃんが、口を開けたままのアホな顔で絵梨をガン見した。中身が変わると、外側のイメージもここまで変わるものなのだと友梨は呆れ、蟀谷を手で押さえた。
「ギャップが凄すぎて、残念感が半端ない。」
「えええ? じゃあ、こっちも時間が過ぎてるってこと? 2年って言ったら、私、大学生? それとも、もう社会人?」
自分の人生が順風満帆であることになんの疑いの余地もないらしい。そして、いちいちテンションが高い。
「2日。」
「え?」
「ふーつーか! だから、今日もこれから学校だから。皆勤賞でしょ? 早く用意した方が良いよ。」
信じられない言葉を聞かされたかのように目を見開いた絵梨は、「ええええぇぇぇえ?」と絶望の声を上げた。
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