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閑古鳥が八羽
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あれからリドが戻らず、五日が経った日。
今日はクエスト見回りの最終日でクエスト先の見回りを終えたティガと街で合流したクランは次の担当ギルド先まで書類などを渡しに行き、帰路についていた。
「ティガさんもついて来てもらったので心強かったです」
「いえ、私は何も。横に立っていただけなので」
いつもは他所のギルドへ顔を出せば底辺を彷徨うギルドだと馬鹿にされるクランなのだが、今日は隣にいるティガのお陰で平穏に事が進んだ。
次の担当ギルド先が街一番の規模を誇るギルド『レイガル』であり、あのリンカの父親がギルドマスターを務めるという地獄の行き先だったがギルドマスターはティガを知っていた。
そのことにより、対応がいつもと全く違う心地よい対応をクランはされた。まあ、正しくはティガへの対応のおこぼれのようなものだが……。
それでも心の安寧は保てたわけであり、ティガには感謝してもしきれない気持ちがクランにはあった。
「そんなことないです! もう僕のギルドにとってティガさんは必要不可欠な方ですよ」
クランは自分にとってどれだけ頼もしい存在だったかと力説するが隣を歩くティガは相変わらずの微笑で軽く頷くのみ。
まあ、あのグラベリスタのギルドマスターなのだ。お褒めの言葉など言われ慣れているのだろうとクランは特に深く考えずにその後もティガを褒めながら歩いていく。
しかし、ふとティガがある酒場の前で足を止め、店内をじっと見た。そして、ある席を指差してクランへ言う。
「マスターがお探しの大型犬では?」
「え?」
クランはティガの指差した方を見るとそこにはリドがいた。それもリンカや多数の冒険者と一緒に机を囲んでいる。
「リドだ!」
早く帰ってこないかと思っていたリドを見つけ、酒場の近くに駆け寄るクランは中をより近くで覗く。後ろからついて来たティガも同じように酒場を覗けば、傍で酒を飲む客はちらりとこちらを見た。
横から覗かれるなど迷惑だと思うが今のクランはせっかく見つけたリドに話しに行くか行かないかで悩むのに忙しかった。
「覗かずとも連れて帰ればいいのではないでしょうか? 見たところ暇そうですよ」
うーん、と悩むクランへ横にいるティガはそう言ってズカズカとリドのもとへ歩いて行ってしまう。
クランは「えっ、そんなっ」と慌てるもののティガの後を急いで付いていく。
今日はクエスト見回りの最終日でクエスト先の見回りを終えたティガと街で合流したクランは次の担当ギルド先まで書類などを渡しに行き、帰路についていた。
「ティガさんもついて来てもらったので心強かったです」
「いえ、私は何も。横に立っていただけなので」
いつもは他所のギルドへ顔を出せば底辺を彷徨うギルドだと馬鹿にされるクランなのだが、今日は隣にいるティガのお陰で平穏に事が進んだ。
次の担当ギルド先が街一番の規模を誇るギルド『レイガル』であり、あのリンカの父親がギルドマスターを務めるという地獄の行き先だったがギルドマスターはティガを知っていた。
そのことにより、対応がいつもと全く違う心地よい対応をクランはされた。まあ、正しくはティガへの対応のおこぼれのようなものだが……。
それでも心の安寧は保てたわけであり、ティガには感謝してもしきれない気持ちがクランにはあった。
「そんなことないです! もう僕のギルドにとってティガさんは必要不可欠な方ですよ」
クランは自分にとってどれだけ頼もしい存在だったかと力説するが隣を歩くティガは相変わらずの微笑で軽く頷くのみ。
まあ、あのグラベリスタのギルドマスターなのだ。お褒めの言葉など言われ慣れているのだろうとクランは特に深く考えずにその後もティガを褒めながら歩いていく。
しかし、ふとティガがある酒場の前で足を止め、店内をじっと見た。そして、ある席を指差してクランへ言う。
「マスターがお探しの大型犬では?」
「え?」
クランはティガの指差した方を見るとそこにはリドがいた。それもリンカや多数の冒険者と一緒に机を囲んでいる。
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早く帰ってこないかと思っていたリドを見つけ、酒場の近くに駆け寄るクランは中をより近くで覗く。後ろからついて来たティガも同じように酒場を覗けば、傍で酒を飲む客はちらりとこちらを見た。
横から覗かれるなど迷惑だと思うが今のクランはせっかく見つけたリドに話しに行くか行かないかで悩むのに忙しかった。
「覗かずとも連れて帰ればいいのではないでしょうか? 見たところ暇そうですよ」
うーん、と悩むクランへ横にいるティガはそう言ってズカズカとリドのもとへ歩いて行ってしまう。
クランは「えっ、そんなっ」と慌てるもののティガの後を急いで付いていく。
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