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離れない彼との共有

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 食堂で食事を終えた俺達は解散となり、俺は部屋に戻ろうとした。しかし、シアが俺の腕を掴み頑なに離さず俺が部屋に戻るのを拒む。いったいどうしたのかと理由を聞けば今日も一緒に寝ようというものだった。俺はもう今日は一人で寝たいなと思ったがどうも今世の俺は前世の自分の行いもありシアに弱く断れなかった。了承する俺はシアの部屋に連れて行かれそうになるが彼に待ったをかける。
 もちろん俺の部屋のベッドでは到底二人で寝るのは無理なため騎士団長で広いはずのシアの部屋にあるベッドになるのは分かった。だがシアの部屋には俺の物や服はないし、今日だって着る服がなく彼のシャツとトラウザーズを借りている。だから明日起きて着る服を持っていきたかった。朝にわざわざ着替えに戻るのは面倒で、ついでに歯磨きなども済ませれば彼の部屋でいちいち用意してもらわなくて済むからいいと思ったのもある。

 そして、今の俺は歯を磨き終わり、明日着る服を用意したのでシアに声をかけようとするが彼はあの硬いベッドに座ってピアスを見ていた。そのピアスはあのカラスとカワセミでシアは分かってくれるかと期待して俺は彼に声をかける。

「お待たせ。行こうか」
「ああ。だが少し聞いてもいいか?」
「いいよ」

 俺は待ってましたと言わんばかりの表情になる。

「これはあの時の話と同じ物か? 黒い鳥と青い鳥」

 シアがピアスの入るケースを俺に見せながら言うので俺はすぐに彼の横に座った。

「そうなんだ! さすが、シアなら気付いてくれると信じていたよ」
「ありがとう。だが本当に凄いな、私達が喋った通りの品があるなんて」

 俺に優しく笑ってから再びシアはピアスを見る。

「うんうん。これ今世の世界から持ってきた物なんだけど別に特注じゃなくてお店にこの黒と青の鳥が隣同士で売ってたんだよ。俺はもう奇跡だと思って買っちゃった」
「確かにそれは奇跡だ」

 そもそもことの始まりは前世で黒い鳥をシアと言った俺にシアがそれなら俺は青い鳥と言ったことだった。そこからシアがもし黒の鳥なら目は彼と同じサファイアのような色じゃないかと俺は言い、シアは俺が青の鳥なら少し自分より小さめの大きさだななどと二人で話し合っていた思い出がある。
 だからこそこの話を覚えていた俺はお店に二つ並んだこれを見つけた時は驚いた、奇跡だと。

「その時、この奇跡をシアと共有したいと思ったけど、出来て嬉しいな」
「私もフィーが覚えていてくれたことと奇跡を共有出来たことに幸せを感じるよ」
「ふふ、それ両方二つずつあるから一つずつ分けてシアにあげようと思ってたんだ。貰ってくれる?」

 こちらに来た時に決めており、あらかじめ分けてケースに入れていた黒と青の鳥のピアスを一度見てからシアを見た。

「もちろん、嬉しいよ。ありがとう」

 シアはとても嬉しそうに笑い、俺もつられて笑った。
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