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第一部 幸せな日々、そして旅立ち
第六章 第二話
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「おはよう、ジェド」
顔を洗うため部屋を出たところで見知った軽業師の姿を見つけ、朗らかに挨拶をする。
青年は口をあんぐり開けて雷砂を見ていた。
雷砂が出てきた部屋はもちろんセイラの部屋だ。
昨晩、どうしても泊って行けと言ってきかないセイラに押し切られ、彼女のベッドの片隅を借りたのだ。
床で良いと言ったのに、彼女がどうしても許してくれなかったので。
まだ朝も早いため、セイラはまだ眠っている。
雷砂も彼女の腕に抱え込まれていたが、起こさないように気をつけながら何とか抜け出して来たのだ。
挨拶に対する返事がないので、雷砂はかなり上にある青年の顔を見上げる。彼はセイラの部屋と雷砂の顔を交互に眺め、何だか複雑な顔をしていた。
「どうかした?」
首を傾げて尋ねれば、返ってくるのは盛大な溜息だ。
「悩みでもあるの?オレで良ければ聞くけど」
「雷砂、お前……あれだけ気をつけろって言ったのに……」
「ん?」
「そんなあどけない顔して、もう大人になっちまったんだな……」
「大人に?まだまだ子供だと思うけど??」
ジェドは、虚ろな眼差しで訳のわからないことを言ってくる。
雷砂は、青年の言っている事の意味が掴めず、戸惑い顔だ。
「いいんだ、分かってる。セイラもなんて鬼畜な。こんな色事のいの字もわかんねぇような子供に無体な事をしやがって」
くぅっと呻き、目頭を押さえる青年。
雷砂には訳が分からない。
ませている子供であれば、ジェドの言っている事の意味が薄ら掴めただろうが、雷砂は良くも悪くも純粋培養だった。
人里離れた所に住み、関わりの深い人間も限定されている。男女の機微にはとことん疎かった。
「えーっと」
「いいんだ!分かってる!!悪いのはセイラだ。お前のせいじゃねぇ」
何の事?と聞こうとした雷砂の言葉を遮るようにジェドが吠える。
その時、後ろでカタンと音がした。
あ、セイラが起きたなーと雷砂がドアの方を振り向くと、案の定、ドアが開いて不機嫌な顔のセイラが出てきた。
「うっさいわねぇ、ジェド。朝っぱらから何の騒ぎ?雷砂に絡むの、止めなさいよ」
眠気の抜けきらない眼で、頭一つ上にある青年の顔を睨み上げる。
菫色の薄手の夜着のまま、上に何も羽織ってない彼女は、何とも気だるげで色っぽい。
ジェドは滅多に拝めない光景に伸びそうになる鼻の下を必死に押しとどめ、
「お前こそ、雷砂が大人しいのをいい事に何て事をしやがった?」
「何って……何よ?」
ジェドの剣幕に、セイラの思考はついて行かない。顔をしかめて聞き返した。
「とぼけるな。寝たんだろ?雷砂と」
「寝たって……そりゃあ、寝たけど。それが?」
やましい事がこれっぽちも無いセイラは普通にそう答える。
昨夜、一緒のベッドで寝た事は確かだし、特に隠すつもりもなかったから。
その返事を聞いて、青年の体がわなわなと震える。
「臆面もなくっっ。この痴女っ!スケベっ!変態っ!恥を知れ、恥を!!」
「恥をって何の事……あっ」
そこまで言われてはじめて、青年が何を問うてるのか察したセイラの顔が一瞬で赤くなる。怒りと、羞恥で。
「ばかっ!!あんたのその発想の方がよっぽど破廉恥よ!!!そんな訳ないでしょっ。私と……その……この子が、なんて」
真っ赤な顔で怒鳴り、否定するセイラに、ジェドは目を丸くする。
「あれ?そうなのか??」
「そうよ!!!」
力強い肯定に、ジェドの中で膨らみ切っていた子供にはとても言えないいやらしい疑惑がシュルシュルとしぼんでいく。
「そうなのかぁ」
ほっとしたような顔でそう言うと、
「そうなの!んもう、なんでそんな発想になる訳?大体、雷砂は女の子なんだから」
まだ怒りが抜けきらない表情で、セイラはさらりと爆弾発言をした。それを聞いたジェドが固まる。
「へ?女の子??」
頭がついて行かず、セイラと雷砂の顔を交互に見る。雷砂は子供の割に凛々しくて、立派に男の子に見えた。
片手でごしごしと目をこすってもう一度見た。短い金色の髪が似合う、颯爽とした少年にしか見えない。
「冗談だろ?」
混乱しきった顔でセイラに問う。
彼女は呆れたようにジェドを見返すのみだ。彼女自身、昨日まで雷砂を少年と思っていた事などおくびにも出さない。
「え?女??」
混乱したまま、今度は雷砂を見る。そんな青年の様子を面白そうに見ながら頷く。
「そうだよ」
「まじかよ……女の子ってのはよ、もうちょっとさ、こう……」
彼は彼なりに、女の子に対するイメージがあるらしい。
ミルみたいな子なら、女の子っていうにふさわしいんだろうけどなーそんな事を思いながら、青年を見上げる。
彼は混乱の極みにいるようだ。気の毒に思って、
「えっと、確かめてみる?」
軽く首を傾げてそんな提案をしてみる。
後ろでセイラが目をむき、止めさせようとしたが一歩遅かった。
「いいのか?じゃあ、遠慮なく」
混乱していた青年は特に深く考えることなく、少女の提案に飛びついた。
無造作に手を伸ばし、ペタリと少女の胸らしき所に触れる。ペタンコだった。柔らかさのかけらもない。
「固いな」
「うん。まだ10歳だし」
「なっ、なっ……」
青年は正直な感想を漏らし、少女はどこまでも冷静に答え、セイラは声にならない悲鳴を上げる。
だが、それだけでは終わらなかった。
「だから、こっち」
少女はそう言って青年の手を取り、今度は下の方へ。彼は吟味するようにしっかり触って、
「あ、こっちも無えな」
「でしょ?」
「―――っっっ!!!」
青年と少女のやり取りは和やかだ。セイラはもう、声すら出ていない。
少女の体から手を離し、青年は納得したように腕を組んで頷いた。
「うーん。不本意だが、納得した。でも、もうちょっと成長したら上の方も再確認な」
「ん?いいけど。いっその事、一緒にお風呂にでも入る?」
「おー、その手もあるな。でも、やっぱり上の確認も……」
ジェドのささやかな下心に、雷砂はあくまで真面目に答えている。
そんなやり取りに、少女の後ろに立ち尽くしたままの女の心に燃えていた怒りが爆発した。
「何が上の確認よ。この、ど変態――――っ!!!」
宿全体に響き渡るほどの大音量の怒声と共に、必殺の右ストレートが繰り出される。女の拳とは思えないほどの威力を乗せたそれは、ジェドの顎にクリーンヒットした。
吹っ飛んでいく青年を見送りながら、目を丸くする雷砂。
そして思った。
セイラを怒らせないように気をつけようーと。
顔を洗うため部屋を出たところで見知った軽業師の姿を見つけ、朗らかに挨拶をする。
青年は口をあんぐり開けて雷砂を見ていた。
雷砂が出てきた部屋はもちろんセイラの部屋だ。
昨晩、どうしても泊って行けと言ってきかないセイラに押し切られ、彼女のベッドの片隅を借りたのだ。
床で良いと言ったのに、彼女がどうしても許してくれなかったので。
まだ朝も早いため、セイラはまだ眠っている。
雷砂も彼女の腕に抱え込まれていたが、起こさないように気をつけながら何とか抜け出して来たのだ。
挨拶に対する返事がないので、雷砂はかなり上にある青年の顔を見上げる。彼はセイラの部屋と雷砂の顔を交互に眺め、何だか複雑な顔をしていた。
「どうかした?」
首を傾げて尋ねれば、返ってくるのは盛大な溜息だ。
「悩みでもあるの?オレで良ければ聞くけど」
「雷砂、お前……あれだけ気をつけろって言ったのに……」
「ん?」
「そんなあどけない顔して、もう大人になっちまったんだな……」
「大人に?まだまだ子供だと思うけど??」
ジェドは、虚ろな眼差しで訳のわからないことを言ってくる。
雷砂は、青年の言っている事の意味が掴めず、戸惑い顔だ。
「いいんだ、分かってる。セイラもなんて鬼畜な。こんな色事のいの字もわかんねぇような子供に無体な事をしやがって」
くぅっと呻き、目頭を押さえる青年。
雷砂には訳が分からない。
ませている子供であれば、ジェドの言っている事の意味が薄ら掴めただろうが、雷砂は良くも悪くも純粋培養だった。
人里離れた所に住み、関わりの深い人間も限定されている。男女の機微にはとことん疎かった。
「えーっと」
「いいんだ!分かってる!!悪いのはセイラだ。お前のせいじゃねぇ」
何の事?と聞こうとした雷砂の言葉を遮るようにジェドが吠える。
その時、後ろでカタンと音がした。
あ、セイラが起きたなーと雷砂がドアの方を振り向くと、案の定、ドアが開いて不機嫌な顔のセイラが出てきた。
「うっさいわねぇ、ジェド。朝っぱらから何の騒ぎ?雷砂に絡むの、止めなさいよ」
眠気の抜けきらない眼で、頭一つ上にある青年の顔を睨み上げる。
菫色の薄手の夜着のまま、上に何も羽織ってない彼女は、何とも気だるげで色っぽい。
ジェドは滅多に拝めない光景に伸びそうになる鼻の下を必死に押しとどめ、
「お前こそ、雷砂が大人しいのをいい事に何て事をしやがった?」
「何って……何よ?」
ジェドの剣幕に、セイラの思考はついて行かない。顔をしかめて聞き返した。
「とぼけるな。寝たんだろ?雷砂と」
「寝たって……そりゃあ、寝たけど。それが?」
やましい事がこれっぽちも無いセイラは普通にそう答える。
昨夜、一緒のベッドで寝た事は確かだし、特に隠すつもりもなかったから。
その返事を聞いて、青年の体がわなわなと震える。
「臆面もなくっっ。この痴女っ!スケベっ!変態っ!恥を知れ、恥を!!」
「恥をって何の事……あっ」
そこまで言われてはじめて、青年が何を問うてるのか察したセイラの顔が一瞬で赤くなる。怒りと、羞恥で。
「ばかっ!!あんたのその発想の方がよっぽど破廉恥よ!!!そんな訳ないでしょっ。私と……その……この子が、なんて」
真っ赤な顔で怒鳴り、否定するセイラに、ジェドは目を丸くする。
「あれ?そうなのか??」
「そうよ!!!」
力強い肯定に、ジェドの中で膨らみ切っていた子供にはとても言えないいやらしい疑惑がシュルシュルとしぼんでいく。
「そうなのかぁ」
ほっとしたような顔でそう言うと、
「そうなの!んもう、なんでそんな発想になる訳?大体、雷砂は女の子なんだから」
まだ怒りが抜けきらない表情で、セイラはさらりと爆弾発言をした。それを聞いたジェドが固まる。
「へ?女の子??」
頭がついて行かず、セイラと雷砂の顔を交互に見る。雷砂は子供の割に凛々しくて、立派に男の子に見えた。
片手でごしごしと目をこすってもう一度見た。短い金色の髪が似合う、颯爽とした少年にしか見えない。
「冗談だろ?」
混乱しきった顔でセイラに問う。
彼女は呆れたようにジェドを見返すのみだ。彼女自身、昨日まで雷砂を少年と思っていた事などおくびにも出さない。
「え?女??」
混乱したまま、今度は雷砂を見る。そんな青年の様子を面白そうに見ながら頷く。
「そうだよ」
「まじかよ……女の子ってのはよ、もうちょっとさ、こう……」
彼は彼なりに、女の子に対するイメージがあるらしい。
ミルみたいな子なら、女の子っていうにふさわしいんだろうけどなーそんな事を思いながら、青年を見上げる。
彼は混乱の極みにいるようだ。気の毒に思って、
「えっと、確かめてみる?」
軽く首を傾げてそんな提案をしてみる。
後ろでセイラが目をむき、止めさせようとしたが一歩遅かった。
「いいのか?じゃあ、遠慮なく」
混乱していた青年は特に深く考えることなく、少女の提案に飛びついた。
無造作に手を伸ばし、ペタリと少女の胸らしき所に触れる。ペタンコだった。柔らかさのかけらもない。
「固いな」
「うん。まだ10歳だし」
「なっ、なっ……」
青年は正直な感想を漏らし、少女はどこまでも冷静に答え、セイラは声にならない悲鳴を上げる。
だが、それだけでは終わらなかった。
「だから、こっち」
少女はそう言って青年の手を取り、今度は下の方へ。彼は吟味するようにしっかり触って、
「あ、こっちも無えな」
「でしょ?」
「―――っっっ!!!」
青年と少女のやり取りは和やかだ。セイラはもう、声すら出ていない。
少女の体から手を離し、青年は納得したように腕を組んで頷いた。
「うーん。不本意だが、納得した。でも、もうちょっと成長したら上の方も再確認な」
「ん?いいけど。いっその事、一緒にお風呂にでも入る?」
「おー、その手もあるな。でも、やっぱり上の確認も……」
ジェドのささやかな下心に、雷砂はあくまで真面目に答えている。
そんなやり取りに、少女の後ろに立ち尽くしたままの女の心に燃えていた怒りが爆発した。
「何が上の確認よ。この、ど変態――――っ!!!」
宿全体に響き渡るほどの大音量の怒声と共に、必殺の右ストレートが繰り出される。女の拳とは思えないほどの威力を乗せたそれは、ジェドの顎にクリーンヒットした。
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