龍は暁に啼く

高嶺 蒼

文字の大きさ
113 / 248
第二部 旅のはじまり~水魔の村編~

水魔の村編 第十話

しおりを挟む
 食事を終えて部屋に戻ると、ベッドに腰掛けていた少女が怯えたようにこちらを見上げた。
 雷砂は安心させるように微笑み、その微笑みをみた少女が再び頬を赤くする。

 雷砂の後ろから入ってきたセイラとリインを見て、慌てて立ち上がろうとする少女を制止し、雷砂は彼女の前に膝を着いてその手をそっと握る。
 少女は狼狽えたように雷砂の顔を見たが、その手を振り払うことはしなかった。


 「大丈夫。無体な事をするつもりはないよ。村長から、何か言われてるの?」


 優しく問われ、少女はわずかに逡巡を見せたが、思いの外素直に口を開いた。


 「あの、求められた事にはすべて応えるように、と」

 「それは、他の人達も?」


 重ねられた問いに、少女は小さく頷いた。


 「あの、でも、私がお世話する相手はまだ小さいので、心配はいらないとも言われました。他の人達は、村長に他の部屋に呼ばれてもっと何か話を聞いていたみたいですけど」

 「そうか。よく話してくれたね。ありがとう」

 「あの、この話、村長には・・・・・・」

 「分かってる。オレ達だけの秘密だ」


 雷砂は優しく目を細め、微笑んだ。
 セイラもリインも、少女を怯えさせないようににこにこしている。
 少女は少しずつ緊張を解き始めていた。
 だが、この先自分がどうなるのか、やはりどうしても気になったのだろう。


 「それで、あの・・・・・・私はなにをしたらいいんでしょうか?」


 おずおずとそんな問いかけを発した。


 「今夜は疲れているし、本当になにをするつもりもないんだけど、うちの舞姫と歌姫が抱き枕代わりに添い寝して欲しいんだって」

 「だっ、抱き枕!?」

 「うん。大丈夫。女同士だし、変な事にはならないよ。この部屋は男子禁制だし。君は、オレ達と朝までぐっすり寝て、それから村長に楽しい夜を過ごしましたって報告してくれればいい」

 「な、なにもしないんですか?」


 少女は赤い顔で雷砂を見ている。
 雷砂はそんな様子にまるで気づかずににこっと笑って、


 「うん。何もしないから安心して」


 そう断じた。
 少女は少しだけ残念そうだったが、やはり安心もしたようでほっと息を付き、やっと愛らしい笑顔を見せてくれた。


 「雷砂、話は決まった?」


 タイミングを見計らって、セイラがそう声をかけてくる。
 雷砂の説明が一通り終わるのを待っていたのだ。


 「雷砂、もう眠い」


 セイラの横で、演技なのか本当なのか、目を擦りながら眠そうにリインが続けて言葉を放つ。
 セイラはそんな妹を愛おしそうに見つめ、


 「リインもこう言ってるし、もう寝ましょう。あなたも良いわね?」

 「ひゃ、ひゃい」


 いきなり話しかけられ、びっくりした少女が素っ頓狂な声で返事をする。
 雷砂はそんな少女を微笑ましく見つめ、


 「はい。じゃあ、準備します」


 と従者らしい口調を心がけながらセイラに向かって返事を返す。
 そしてそのまま服を脱ぎ始めた。
 それを見た少女も、慌てたように雷砂に習う。

 恥ずかしがって中々脱がないかと思っていたのだが、思いの外豪快に脱いでくれた。なぜか下着まで。
 本当は、そこまで脱いでもらう予定じゃなかった。
 今回は特に夜着の用意をしてきてないので、下着で寝ようと考えていただけなのだ。

 だが、少女は全部脱いでしまった。
 恥ずかしそうにしながらも、今やすっかり生まれたままの姿だ。

 雷砂は考える。
 ここで実は下着はつけていても良かったのだと伝えたら彼女は傷つくだろうか、と。
 恐らく傷つく。

 ならば、と雷砂は潔く下着を脱ぎ去った。
 ごくりと背後から唾を飲み込む様な音がして振り返ると、セイラとリインが真っ赤な顔でこっちを見ていた。
 今まで何度も一緒に風呂に入ってるのに、何でそんな反応なんだと思いつつ、


 「さ、舞姫と歌姫もお早く」


 にっこり笑って促した。
 彼女達は恥ずかしそうにもじもじした後、覚悟を決めたように全部脱いだ。
 その光景をもしジェドが見たらこう言うだろう。眼福である、と。
 雷砂も、何度見ても飽きない、変わらぬ美しさの彼女達の裸身に思わず見とれた。
 村の少女もぽーっと見ている。

 セイラは全裸のまま、ただ立っているのはやはり恥ずかしかったようで、リインの手を引きいそいそとベッドに這い上がり、薄い掛け物を掛けた。
 布越しに柔らかな曲線が浮かび上がり、それもまた艶めかしいのだが、セイラもリインも気づいていないようだ。


 「2人とも、早くいらっしゃい。あ、雷砂は明かりを消してから来てね」


 お姉さんらしくそんな指示を飛ばし、雷砂は部屋の明かりを落とすと少女を促してベッドの側へ歩み寄る。


 「はい、じゃああなたはリインの横ね。で、雷砂は私の隣」

 「・・・・・・」

 「夜は恋人の領分、でしょ?リインお姉さん?」


 リインは不満そうだが、仕方ないと諦めたようだ。
 雷砂は苦笑し、だがセイラの指示通りに彼女の隣に滑り込む。
 少女も、おずおずとリインの隣に身を横たえると、


 「あ、あの、よろしくお願いします」


 何がよろしくなのかは分からないが、そう言ってリインに小さく頭を下げた。


 「ん。大丈夫。寝るだけ」


 リインはかすかに微笑み、その言葉の通りに目を閉じた。
 抱き枕代わりの少女にそっと腕を回して。


 「ひゃあっ。あの、胸、胸がぁ」


 小さくそんな悲鳴が聞こえてきたものの、リインはあっという間に寝てしまったようで、少女の声に答える人は居なかった。
 雷砂もかすかに微笑み、目を閉じる。
 そっとセイラの腕が雷砂の背に回り、彼女の胸に抱き寄せられる。

 半ば彼女の胸に顔が埋まってしまったが、なんとか呼吸路だけは確保して、雷砂もセイラも、程なく眠りについた。
 疲れのためか、心地よい人肌の為か、その日は思いの外深く眠ることが出来た一同なのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日ごろに発売となります。 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...