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第二部 旅のはじまり~水魔の村編~
水魔の村編 第十五話
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その泉は森の奥、木々に隠されるようにひっそりと存在していた。
それほど大きな泉ではない。
だが、清浄な水をたたえたそこは、森の中の貴重な水源であり、魔素の霧に包まれてもなお、清廉な空間を保っていた。
そんな泉の水面に、一人の少年が漂うように浮かんでいた。
年の頃は16歳ほど。
不思議な髪の色をした少年だった。
「アスラン」
どこからともなく聞こえてきた自分の名を呼ぶ声に、少年はうっすらと目を開ける。
その瞳の色も、髪と同じ水の色をそのまま映したような光沢のある水色。
人間とは思えない美しい色彩の少年は、体の向きをうつ伏せに代え、ゆったりとした泳ぎで泉のほとりを目指した。
少年がほとりに着くより先に、木々の間から一人の少女が現れる。
こちらもまた、美しい少女だった。
まっすぐな黒髪は艶やかで、背中の中程までを覆っている。
瞳は深い青。一重の切れ長の瞳は涼やかだが、少しきつめの印象も与えた。
少女は泉のほとりに凛と立ち、少年が近づいてくるのを待っていた。
ほとりに近づき、足がつく深さになると、少年は立ち上がりゆったりと歩いて少女の元へと向かう。
少年はほとんど衣類を身につけていなかった。
つけているのは、腰の周りに巻いた申し訳程度の布だけ。
だが、衣類こそ身につけてはいなかったが、腰布以外の場所もあるものに覆われていて、白い肌はさほど見えはしない。
少年の身体は四肢を中心に、透明感のある水色の宝石の様な鱗に覆われていた。
体幹部分の覆われ方はそれほど手足ほど密ではなく、場所によっては白い肌がのぞいている。
そんな状態ではあるが、少年の姿はは虫類めいた印象はなく、ただ美しい。
少年は少女を見つめてにこりと笑った。年相応の、屈託のない笑顔で。
「イーリア、どうしたの?そんな怖い顔して」
小首を傾げ、少女の頬へと手を伸ばす。
ひんやりとした指先で、少女の柔らかな頬に触れ、ゆっくりと身を寄せる。
明らかに人とは違う腕に抱き寄せられても、少女は嫌悪する様子も見せず、むしろ嬉しそうに少年の胸へと身体を寄せた。
「アスラン・・・・・・」
「村で、なにかあった?」
耳元で聞こえる少年の問いに、少女は軽く顎をひいて頷く。
「村に、変な奴らが来たの」
「変なやつら?」
「外の人間よ。村長が霧の外へ出そうとした使者を助けて自分達を売り込んだみたい。村長は、そいつ等に何かをさせるつもりよ」
「ふうん。どんな人達?」
「大人の男が3人と、女が2人。それと何故か10歳くらいにしか見えない子供が1人」
「なんか、変な組み合わせだね?荒事に向いているようには見えないけど」
「私も最初はそう思ったんだけど、以外と子供が強くて。今日森でセアがなり損ないの群に襲われたんだけど……」
「セアが?あの子は無事なの?」
「大丈夫。怪我ひとつしてない。本当は私が助けに入ろうと思ったんだけど、その前に・・・・・・」
「その、外から来た子供がセアを助けてくれたんだね?」
「そう。あっという間に」
「良い人じゃないか」
「悪い人間じゃなさそうだけど、でも村長の奴はきっと、あんたを倒すように依頼するわよ?いくらいい子そうでも子供だもん。大人達が依頼を受けちゃったら言いなりになるしかないだろうし。やっぱり、私とアスランの敵だわ」
「そうかな?」
「そうよ」
きっぱりと言い切る少女の様子にアスランは苦笑を浮かべる。
仕方ないとは思うが、彼女はアスランに対して少々過保護だ。
だが、彼女の世話になっている事実がある為、アスランもその扱いを甘んじて受け入れていた。
まあ、彼女の事が好きだからという純粋な理由もあるのだが。
アスランは、彼女がもたらした情報が妙に気になった。外から来た、変な人達の事が。
中でも、セアを助けてくれたという幼い人物が気になっていた。
会ってみたいと言ったらイーリアは反対するだろうか?ーそんな風に思いながら、幼なじみの少女の顔をそっと伺う。
その目線に気づき、なに?ーと目線を返してくる彼女に微笑みかけ、
「でも、もしかしたら味方になってくれるかもしれないよ?」
そんな言葉を投げかけてみた。
イーリアはちょっと考えて、やっぱり首を横に振る。
「そんな風に都合良くいくとは思えないわ。知らない人間を、そこまで信用できない。村の人でさえ、信用しきれないのに」
「だけど、その子は村長の依頼で僕を殺しに来るかもしれないんだろう?僕の力はまだ弱いし、逃げられないよ?その子が敵なら、僕は死ぬしかない」
「そいつがここに来る前に、私が殺すわ。弓矢で、遠くから。矢に毒を塗ればきっと殺せる」
「イーリアに、そんな事させたくないよ」
アスランは、再び少女のしなやかな肢体を抱きしめた。
少女も彼のひんやりした身体を抱き返し、強い眼差しでアスランを見上げた。
「それでも、やるわ。アスランの為なら、私はなんでも出来るわ」
「僕がそれを望んでいなくても?」
「ええ。たとえあんたが望まなくても」
少女が微笑む。
そんな少女の顔を見つめながら、アスランは哀しそうな顔をした。
「僕は大丈夫だから、イーリアは村に帰りなよ。僕はもう、化け物なんだよ?」
「なにいってんのよ。人一倍寂しがり屋の弱虫のくせに。それに、アスランは化け物なんかじゃないわ」
「でも、人間でもない」
寂しそうに、アスランが笑う。
イーリアは、怒ったような顔でアスランを睨んだ。
そして激情のままに、アスランを引き寄せて唇を奪う。
きつく唇を押し当てるだけのキス。だが、生まれて初めてのキスは甘く甘美だった。
「イーリア・・・・・・」
顔を赤く染めて、少年は少女の名を呼ぶ。
少女は照れくさそうに顔をそらし、
「人間でも人間じゃなくてもアスランは私の幼なじみで、その・・・・・・恋人、なんだから。そ、それでいいじゃない」
だがはっきりとそう宣言する。
「こ、恋人・・・・・・」
更に赤くなった少年がそう呟くと、
「なによ、イヤなの!?」
叫ぶように少女が返す。
アスランは思わず微笑んで、少女を腕の中に引き寄せた。
そしてその耳元でそっとささやく。
「イヤじゃないよ。すごく嬉しい。でも・・・・・・」
「で、でも?」
「出来れば僕から伝えたかったな。イーリアに、恋人になってくださいって。それからキスも」
間近から瞳をのぞき込み、からかうようにそう言うと、
「それはアスランが悪いのよ。中々言ってくれないんだもん。私は待ってたのに」
唇をとがらせて反論してくる。
「待っててくれたの?」
「そ、そうよ」
「待たせてごめんね?」
「べ、別に良いけど」
ぷいっと瞳をそらせる様子が可愛くて、アスランはその頬へちゅっと軽くキスをする。
「なっ!!」
「大好きだよ、イーリア。お願いだから、僕の恋人になって下さい」
びっくりした顔のイーリアに、アスランは真摯な顔で愛を告げる。
イーリアはぽかんとした顔でアスランを見上げた後、言葉の意味がしみこんできたのかじわじわと赤くなり、それから花が綻ぶように微笑んだ。
「いいわ。なってあげる、恋人に」
そう応えた愛しい少女を、アスランはもう一度抱きしめる。そして、
「キス、してもいい?」
「い、いいわ」
2人でそっと微笑みあい、唇を寄せていく。
ゆっくりと2つの影が重なり合い、清らかな泉のほとりで2人は甘くてとろけるようなキスをした。
それほど大きな泉ではない。
だが、清浄な水をたたえたそこは、森の中の貴重な水源であり、魔素の霧に包まれてもなお、清廉な空間を保っていた。
そんな泉の水面に、一人の少年が漂うように浮かんでいた。
年の頃は16歳ほど。
不思議な髪の色をした少年だった。
「アスラン」
どこからともなく聞こえてきた自分の名を呼ぶ声に、少年はうっすらと目を開ける。
その瞳の色も、髪と同じ水の色をそのまま映したような光沢のある水色。
人間とは思えない美しい色彩の少年は、体の向きをうつ伏せに代え、ゆったりとした泳ぎで泉のほとりを目指した。
少年がほとりに着くより先に、木々の間から一人の少女が現れる。
こちらもまた、美しい少女だった。
まっすぐな黒髪は艶やかで、背中の中程までを覆っている。
瞳は深い青。一重の切れ長の瞳は涼やかだが、少しきつめの印象も与えた。
少女は泉のほとりに凛と立ち、少年が近づいてくるのを待っていた。
ほとりに近づき、足がつく深さになると、少年は立ち上がりゆったりと歩いて少女の元へと向かう。
少年はほとんど衣類を身につけていなかった。
つけているのは、腰の周りに巻いた申し訳程度の布だけ。
だが、衣類こそ身につけてはいなかったが、腰布以外の場所もあるものに覆われていて、白い肌はさほど見えはしない。
少年の身体は四肢を中心に、透明感のある水色の宝石の様な鱗に覆われていた。
体幹部分の覆われ方はそれほど手足ほど密ではなく、場所によっては白い肌がのぞいている。
そんな状態ではあるが、少年の姿はは虫類めいた印象はなく、ただ美しい。
少年は少女を見つめてにこりと笑った。年相応の、屈託のない笑顔で。
「イーリア、どうしたの?そんな怖い顔して」
小首を傾げ、少女の頬へと手を伸ばす。
ひんやりとした指先で、少女の柔らかな頬に触れ、ゆっくりと身を寄せる。
明らかに人とは違う腕に抱き寄せられても、少女は嫌悪する様子も見せず、むしろ嬉しそうに少年の胸へと身体を寄せた。
「アスラン・・・・・・」
「村で、なにかあった?」
耳元で聞こえる少年の問いに、少女は軽く顎をひいて頷く。
「村に、変な奴らが来たの」
「変なやつら?」
「外の人間よ。村長が霧の外へ出そうとした使者を助けて自分達を売り込んだみたい。村長は、そいつ等に何かをさせるつもりよ」
「ふうん。どんな人達?」
「大人の男が3人と、女が2人。それと何故か10歳くらいにしか見えない子供が1人」
「なんか、変な組み合わせだね?荒事に向いているようには見えないけど」
「私も最初はそう思ったんだけど、以外と子供が強くて。今日森でセアがなり損ないの群に襲われたんだけど……」
「セアが?あの子は無事なの?」
「大丈夫。怪我ひとつしてない。本当は私が助けに入ろうと思ったんだけど、その前に・・・・・・」
「その、外から来た子供がセアを助けてくれたんだね?」
「そう。あっという間に」
「良い人じゃないか」
「悪い人間じゃなさそうだけど、でも村長の奴はきっと、あんたを倒すように依頼するわよ?いくらいい子そうでも子供だもん。大人達が依頼を受けちゃったら言いなりになるしかないだろうし。やっぱり、私とアスランの敵だわ」
「そうかな?」
「そうよ」
きっぱりと言い切る少女の様子にアスランは苦笑を浮かべる。
仕方ないとは思うが、彼女はアスランに対して少々過保護だ。
だが、彼女の世話になっている事実がある為、アスランもその扱いを甘んじて受け入れていた。
まあ、彼女の事が好きだからという純粋な理由もあるのだが。
アスランは、彼女がもたらした情報が妙に気になった。外から来た、変な人達の事が。
中でも、セアを助けてくれたという幼い人物が気になっていた。
会ってみたいと言ったらイーリアは反対するだろうか?ーそんな風に思いながら、幼なじみの少女の顔をそっと伺う。
その目線に気づき、なに?ーと目線を返してくる彼女に微笑みかけ、
「でも、もしかしたら味方になってくれるかもしれないよ?」
そんな言葉を投げかけてみた。
イーリアはちょっと考えて、やっぱり首を横に振る。
「そんな風に都合良くいくとは思えないわ。知らない人間を、そこまで信用できない。村の人でさえ、信用しきれないのに」
「だけど、その子は村長の依頼で僕を殺しに来るかもしれないんだろう?僕の力はまだ弱いし、逃げられないよ?その子が敵なら、僕は死ぬしかない」
「そいつがここに来る前に、私が殺すわ。弓矢で、遠くから。矢に毒を塗ればきっと殺せる」
「イーリアに、そんな事させたくないよ」
アスランは、再び少女のしなやかな肢体を抱きしめた。
少女も彼のひんやりした身体を抱き返し、強い眼差しでアスランを見上げた。
「それでも、やるわ。アスランの為なら、私はなんでも出来るわ」
「僕がそれを望んでいなくても?」
「ええ。たとえあんたが望まなくても」
少女が微笑む。
そんな少女の顔を見つめながら、アスランは哀しそうな顔をした。
「僕は大丈夫だから、イーリアは村に帰りなよ。僕はもう、化け物なんだよ?」
「なにいってんのよ。人一倍寂しがり屋の弱虫のくせに。それに、アスランは化け物なんかじゃないわ」
「でも、人間でもない」
寂しそうに、アスランが笑う。
イーリアは、怒ったような顔でアスランを睨んだ。
そして激情のままに、アスランを引き寄せて唇を奪う。
きつく唇を押し当てるだけのキス。だが、生まれて初めてのキスは甘く甘美だった。
「イーリア・・・・・・」
顔を赤く染めて、少年は少女の名を呼ぶ。
少女は照れくさそうに顔をそらし、
「人間でも人間じゃなくてもアスランは私の幼なじみで、その・・・・・・恋人、なんだから。そ、それでいいじゃない」
だがはっきりとそう宣言する。
「こ、恋人・・・・・・」
更に赤くなった少年がそう呟くと、
「なによ、イヤなの!?」
叫ぶように少女が返す。
アスランは思わず微笑んで、少女を腕の中に引き寄せた。
そしてその耳元でそっとささやく。
「イヤじゃないよ。すごく嬉しい。でも・・・・・・」
「で、でも?」
「出来れば僕から伝えたかったな。イーリアに、恋人になってくださいって。それからキスも」
間近から瞳をのぞき込み、からかうようにそう言うと、
「それはアスランが悪いのよ。中々言ってくれないんだもん。私は待ってたのに」
唇をとがらせて反論してくる。
「待っててくれたの?」
「そ、そうよ」
「待たせてごめんね?」
「べ、別に良いけど」
ぷいっと瞳をそらせる様子が可愛くて、アスランはその頬へちゅっと軽くキスをする。
「なっ!!」
「大好きだよ、イーリア。お願いだから、僕の恋人になって下さい」
びっくりした顔のイーリアに、アスランは真摯な顔で愛を告げる。
イーリアはぽかんとした顔でアスランを見上げた後、言葉の意味がしみこんできたのかじわじわと赤くなり、それから花が綻ぶように微笑んだ。
「いいわ。なってあげる、恋人に」
そう応えた愛しい少女を、アスランはもう一度抱きしめる。そして、
「キス、してもいい?」
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