TS転生ド田舎ネクロマンサー聖女

ドクイモ

文字の大きさ
45 / 68
第4章 師弟関係と死霊術師

第44話 宴~翌日~

しおりを挟む
『我が神から、ここを壊せと神託が下った。
 所詮片田舎の小教会ごとき、我の力で一ひねりだと思っていた。
 今は後悔しかない』

さて、件の吸血鬼竜を討伐後、当然のごとく吸血鬼に操魂術を行使し、容疑者に事情聴取を開始する。
残念ながら、魂そのものは、こいつの邪神信仰が重かったせいか、魂一本釣とまではいかなかったが、残留思念程度は引き起こすことには成功。
それにより、今回の事件の背景をこの残留思念から聞き出したというわけだ。

「つまり、おまえは、邪神から教会ができたから潰せっていう神託だけで、ここに特攻しに来た愚かな吸血鬼だと」

「所詮、魔王軍や邪神に首を垂れる弱者だな。
 数十年生きた吸血鬼と言えど、心まで闇に染まってしまえばこうなってしまうといういい例だな」

なお、事情聴取の結果、この吸血鬼の年齢は大体吸血鬼歴30前後だという事が分かった。
(吸血鬼の中では)若くして強大な力を持ち、邪神の加護により強大な力を手に入れて、魔王軍でもそれなりの地位にいたとかなんとか。

「でも魔王ってすでに滅んでいるんでしょ?
 なら、その称号もあってないようなもんだよね」

『違う違う!我らは未だ滅びず!
 魔王が死んでも、我らという軍勢は未だ……』

「つまりは、魔王軍の残党と」

例えるなら、経営者を失った店で、人材不足から役員に押しあがったみたいなものか。
それなら、10人以下の少数非精鋭でここに攻め入ったのも、戦い方がやけにお粗末なのも納得いくというものだ。

『いうて、これは俺様が弱いのではなくお前らがおかしいだけだからな?
 なんで、開拓地のド田舎に、このレベルの司祭と教会があるんだよ。
 ここよりでかい開拓村なんぞ、いくらでも滅ぼしてきたが、ここまで強力な教会は、先の大戦でもほとんど見なかったレベルだぞ』

まぁ、言うて神築ですし、さもあらんといった所か。
それと、どうやら今回の祭りの参加者に、こいつに村を滅ぼされた被害者がいたらしく、こいつの遺灰にむけて全力で罵倒やら慰み者にしている途中である。
へ~、開拓団一つブレスで焼き払ったんだ。
めっちゃ邪悪やん。

『おのれ忌々しい!!!!
 この偽りの教会さえ潰せれば、我が龍神様から新たな竜骨を授かれたというのに!?
 脆弱で卑怯な人間どもに呪いあれ!!
 それを庇護する、偽りの神々も……ぎゃあぁああああ!!!』

「はいはい、これ以上は危険だから浄化しちゃいましょうね~」

「うむ、わずかだが邪神の気配もしていたからな。
 やはり邪神官クラスともなれば、残留思念と言えどあまり長時間使役するのは危険だな。
 邪神側からの干渉を防ぐには、もう少し準備が欲しかったな」

でもまぁ、今回の事件では大きな裏はなく、ただの勘違いした雑魚狩りのプロが、逆に狩り返された。
それだけの話だと分かれば、十分な収穫といえるだろう。

「これなら、また明日以降ストロング村に戻っても大丈夫そうだね」

「だな、あまり長時間患者たちを任せるわけにもいかんからな」

「「「いやいやいや!ちょっとまって!?」」」

なお、どうやら話はそれで済まなさそうな模様。

「流石にあのレベルの化け物が再びこの村に襲いに来たら、ワシらだけではどうにもできないからな!?」

「故郷の敵を討ってくれて、助かりましたが……。
 せめて、こう、周囲の安全が確保できるまで……」

「なぁ、もう少しだけこの村に残り続けることはできないか?
 正直、あのレベルの敵がもう一回ここに来たら、お前らなしだと厳しいのが本音だ。
 せめて、数日混乱が収まるまで、な?」

どうやら、今回こちらに襲撃してきたこの吸血鬼竜は、そのビジュアルと戦闘の派手さから、予想以上に村人たちに不安を与えてしまったらしい。
まぁ、確かにコイツの強さは、もし教会がなければこの村の人がほとんど死んでいただろう強さだが、それでもまぁあっさりと倒せただから問題ない気もする。

「でも、君たちがこの村から出て行った瞬間、このレベルの敵がまたここに来たら?」

「……神の加護さえあれば」

「それ遠まわしに、無理って言ってるよね?
 というか、今回はコイツを無理なく倒したけど、こいつが魔王大幹部なら、こいつの知り合いとか仲間が追撃に来る可能性もあるんじゃない?」

「そ、そうですよぉ!
 今回は教会があったから、大丈夫だと言ったら、もし敵がイオさんの移動中に襲撃してきたら、どうするつもりですか!?
 イオさんの身の安全も考えて、しばらくはこの教会で身の安全を固めるべきです!」

どうやら自分たちの言い分は、村の人やヴァルター達には通用せず。
村の安全だけではなく、こちらの身の安全まで気を使ってくれている発言も多く、正直バッサリと切り捨てるには、心苦しいのも本音だ。
しかしそれでも、ストロング村にいる治療待ちの吸血鬼たちは、時間をかければかけるほど治療困難であり。
此方としても、できる限りに治療のために早く戻りたいのが本音なのだ。

「そもそも、こんな事件を起こす可能性の高い吸血鬼は、治療云々の前にさっさと殺すべきでは?」

「そうよそうよ!今村にいるエドガーさんみたいなダンピールだったら、神に認められた種族だから問題ないけど、ただの吸血鬼は基本的に害悪なんでしょ?
 せめて、この街に自力で移動できる程度の自制心のない吸血鬼なんてもうさっさと滅ぼすべきよ!」

「やはり、太陽神の聖典は正しかった。
 イオ様たちは素晴らしいけど、優しすぎるからなぁ。
 ここはストロング村を焼き討ちしてでも、情勢の安定化を……!!」

まぁ、それでもこのままでは意見は平行線であるし。
さらに言えば、一部の吸血鬼に恨みのある村人や疎開民が過激な思考に移行しつつある。
正直、親兄弟の恨みとして吸血鬼を憎んでいるものもいる中で、あまり彼らを庇いすぎる発言をすると、周りにいらない被害が出る可能性がある。

「ま、まぁまぁ!と、とりあえずこの議論の続きは、一端寝て起きてから!
 特に今回は、教会の新築祝いなんだからね!」

「そうだな、そもそも今回の騒動はある意味では、冒険神は導きによるものだとも考える。
 ともすれば、その試練を乗り越えた我々には、それなりに恩恵も受けられるはずだ」

ゆえに、その日は(もはや早朝ではあるが)いったんその協議を打ち切ることにして、教会の新築祝いを続けるとともに、神への祈りを通して、結論を後回しにするのでした。

「(まったく、せめて神様が本当に見ているのなら、この問題を何とかしてほしいよ。
 まったく)」



☆★☆★



――なお、翌朝。


「で、これはなに?」

「……ワープポータルだね。
 数ある聖具のなかでも、えげつない現世利益の1つ」

かくして、神からの新築祝いという名の、討伐祝いの贈り物により、ストロング村とギャレン村の交通問題が、一瞬で解決することになったのでしたとさ。
さもあらん。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...