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3 距離
夕日
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渡辺をそこらへんの椅子に座らせ、湿布や包帯、テーピングなどを持ってきた。
「んーっ!」
俺はしゃがんで、渡辺の靴や靴下を脱がせた。怪我したところをゆっくりと持ち上げるだけで痛そうだ。
「痛い?」
何もしゃべらず、少し目をうるうるさせながらうなづく。
すぐに手当てを施した。俺の手際の良さに驚いたのか、不思議そうにこちらを見ている視線を感じた。
「翔くん、上手だね」
「うん」
「前に運動部とか、入ってたの?」
「陸上部だった」
「え?じゃあどうして高校では入らないの?」
「それは・・・言えない」
そんなこと、言えるわけがない。俺が陸上部をやめたのは、どうしても目立ってしまうから。目立ちたくなくなってしまったのは・・・いつからだっただろうか。思い出したい気持ちと、思い出してはいけない気持ちが押し合っている。
「それより、なんて書いてあったの」
「・・・えとー、わ、忘れた!」
「ポケットから見えてるけど」
渡辺のポケットからは、お題の書いてある紙が出ていた。わかりやすい嘘だ。
「・・・怒らない?」
黙ってうなづくと、しぶしぶと口を動かした。
「赤ハチマキの男子」
「別に怒ることじゃないけど」
「だ、だって、翔くん、あんまり目立ちたくなさそうな顔してたから・・・」
俺はそんなに顔に出るタイプだっただろうか?初めてこんなことを言われた。図星だった。俺の闇に少し触れられてしまった。だから、渡辺に、少し近いところを感じた。なんだか似ているのかもしれない、そう思った。
「それに、亮介くんも、いなかったし」
その一言がガツンと心に刺さった。そうか、そうだよ。俺は何を期待していたんだ。亮介がいたら亮介に頼んでいたに決まっているじゃないか。
「亮介がいなかったから、俺にしたんだ」
そう言った。冷たく言ってやった。闇の隙間を見られた奴には冷たく接したい。俺は今までそうしてきた。理解のない奴とは関わらない。闇を暴かれたくない。だから距離を置く。それが俺のやり方。
「ううん、私は亮介くんがいても翔くんを選ぶよ」
えっ?なんだそれ?意味がわからない。
「でもさっき亮介がいなかったからって」
「うん。亮介くんがいたら翔くん、恥ずかしがっちゃうかなって。だから亮介くんがいなくて、よかった。って思っちゃったの!」
「渡辺は、俺が目立ちたくないって知ってて連れて行ったわけ?」
「うん。翔くんを借りたかったから」
「俺を、借りる?」
「うん。翔くん、私に、力を貸して・・・ください」
俺は黙って頭を軽く撫でた。普段の俺なら絶対にしない。だけど、目の前にいる人が涙をこらえているのを見ると、こうせずにはいられなかった。
頭を撫でると、渡辺は涙腺が壊れたのだろうか、ぽろぽろと涙が出てきた。涙の雫が、夕日に照らされて、キラキラと光っていた。
「んーっ!」
俺はしゃがんで、渡辺の靴や靴下を脱がせた。怪我したところをゆっくりと持ち上げるだけで痛そうだ。
「痛い?」
何もしゃべらず、少し目をうるうるさせながらうなづく。
すぐに手当てを施した。俺の手際の良さに驚いたのか、不思議そうにこちらを見ている視線を感じた。
「翔くん、上手だね」
「うん」
「前に運動部とか、入ってたの?」
「陸上部だった」
「え?じゃあどうして高校では入らないの?」
「それは・・・言えない」
そんなこと、言えるわけがない。俺が陸上部をやめたのは、どうしても目立ってしまうから。目立ちたくなくなってしまったのは・・・いつからだっただろうか。思い出したい気持ちと、思い出してはいけない気持ちが押し合っている。
「それより、なんて書いてあったの」
「・・・えとー、わ、忘れた!」
「ポケットから見えてるけど」
渡辺のポケットからは、お題の書いてある紙が出ていた。わかりやすい嘘だ。
「・・・怒らない?」
黙ってうなづくと、しぶしぶと口を動かした。
「赤ハチマキの男子」
「別に怒ることじゃないけど」
「だ、だって、翔くん、あんまり目立ちたくなさそうな顔してたから・・・」
俺はそんなに顔に出るタイプだっただろうか?初めてこんなことを言われた。図星だった。俺の闇に少し触れられてしまった。だから、渡辺に、少し近いところを感じた。なんだか似ているのかもしれない、そう思った。
「それに、亮介くんも、いなかったし」
その一言がガツンと心に刺さった。そうか、そうだよ。俺は何を期待していたんだ。亮介がいたら亮介に頼んでいたに決まっているじゃないか。
「亮介がいなかったから、俺にしたんだ」
そう言った。冷たく言ってやった。闇の隙間を見られた奴には冷たく接したい。俺は今までそうしてきた。理解のない奴とは関わらない。闇を暴かれたくない。だから距離を置く。それが俺のやり方。
「ううん、私は亮介くんがいても翔くんを選ぶよ」
えっ?なんだそれ?意味がわからない。
「でもさっき亮介がいなかったからって」
「うん。亮介くんがいたら翔くん、恥ずかしがっちゃうかなって。だから亮介くんがいなくて、よかった。って思っちゃったの!」
「渡辺は、俺が目立ちたくないって知ってて連れて行ったわけ?」
「うん。翔くんを借りたかったから」
「俺を、借りる?」
「うん。翔くん、私に、力を貸して・・・ください」
俺は黙って頭を軽く撫でた。普段の俺なら絶対にしない。だけど、目の前にいる人が涙をこらえているのを見ると、こうせずにはいられなかった。
頭を撫でると、渡辺は涙腺が壊れたのだろうか、ぽろぽろと涙が出てきた。涙の雫が、夕日に照らされて、キラキラと光っていた。
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