【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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14歳の助走。

採石場の打ち合わせ。

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 翌朝いちど港側の現場に顔を出し、チャンシルバへ採石の目処が立ちそうだと報せると、彼は鰭を軽く揺らして頷いた。

「承りました。では明日までに正式図面をまとめ、その財務の方と獣人隊商との打ち合わせに同席いたします」

 約束の翌日。僕らは採石場へ向かった。山肌の白が朝日に冴え、積み残しの花崗岩が段々に光る。アールとミレイユは思わず息を呑む。

「すごい……これだけの量が動かずに眠っていたなんて」
「目盛りを揃えれば、骨材から基礎石まで一気に回せます」

 エメイラは周囲の粉塵に目を細めた。

「ここには医の手当が必要だわ。石の粉は長く吸えば肺を傷める。作業場は水を撒いて粉を落とす、鼻と口を覆う布を常備、洗眼用の清水桶と薬箱、うがい場もね。交代の休みも刻んで」

「分かった。救護の棚と手当の札、すぐ用意する」

 チャンシルバは携えてきた巻図を広げ、石の使い口を指で示す。

「港の基礎は『一尺立方』と『半尺二段』が主。王国標準度量衡と六種族標準度量衡の二重表記で検収します。例えば『一尺立方(王国)=十六小人寸立方(六種族)』。採石は拝領後からにしても、規格で山を揃えておけばすぐに使える石になります」

 そこへ獣人隊商のジレイガの部下と、財務のドニーズが到着した。背に帳面を負い、足取り軽い。村の長ゴザムと若い衆を呼び、円になって腰を下ろす。

「本題に入りましょう」とドニーズ。「石は規格ごとに値段を決めます。『一尺立方』『一尺×半尺×半尺』『敷石用薄板』など、型が揃っているほど単価は良くする。片付け、道の整備、広場均し、排水溝切りといった別作業は作業ごとの日当で支払う。これが原案です」

 若い衆が顔を上げる。ゴザムが確かめるように問う。

「ただ働きは、ない」

「約束する」と僕。「支払いの取りまとめは王都のカレルが担当する。現場では小人の書記が丁場(現場詰所)を設け、受払と検収、札の整理を行う。週に一度、帳場の写しを王都へ飛ばす。現金の手渡しは詰所で、理由のない持ち越しはしない」

 ジレイガの部下が地図の上に指を滑らせる。

「運びは二筋でやるのがいい。山から新街予定地へ直送する『街筋』と、港へ落とす『海筋』。荷姿は二尺角までなら駄馬車でもいけます。路幅は三台分、すれ違い場を七か所。雨の日は足を止める札を立てる」

 トーマスが頷いた。

「騎士の見回りを毎日一度、定刻で回す。槍は袋に、歩幅は小さく。ついでに耳役の札を回収し、丁場へ束ねて戻す役も兼ねる。揉め事は耳の席へ。止める言葉は短く」

 ミレイユが素早く原案を清書し、二重表記で規格一覧を引く。王国標準の尺・寸の列の隣に六種族標準の列。小人寸、獣人寸、エルフ尺の対照も最下段に小さく付す。検収印は二つ、王国印と六種族印。アールが読み上げず、板に掲げた。誰が見ても同じ動きになる短さで。

 エメイラは救護の欄をさらさらと追記する。

「粉塵の多い作業は必ず濡らしてから。鼻口布は丁場で配る。目に入ったら無理にこすらない、ここで洗う。胸が痛んだら休む。……これも二重表記で」

 村の若い衆がほっと笑う。「やれる。やれるぞ」

 チャンシルバが石の山に目を遣る。

「この段の積み残しは『一尺立方』が多い。刻印が残っているので、検印の上書きで通せます。崩れ筋は縄で囲って番号を振る。掘削は拝領後。今は道と広場、仕分け、そして規格札の貼り替えだけ」

「順でいこう」と僕。「今日は丁場設置、救護棚、掲示。明日は路面の水はけを直し、すれ違い場を確保。帳場の試し運用は明後日から。採石そのものは拝領ののち。焦らない」

 ドニーズが支払の流れを示す。「受領札は三枚綴り。現場控え、詰所控え、王都控え。週一で集計、月の頭に締めて王都払い。不足が出れば翌週で調整。値は動かさない。動かすのは規格だけ」

 ジレイガの部下が笑って立ち上がる。「道の目印は今日のうちに打っておきます。明日には隊商の見習いに歩かせて、踊り場の数を出しましょう」

 トーマスは若い騎士を一人連れ、見回りの足を刻んでいく。袋に収まった槍の穂先が朝風に鈍く揺れ、人の歩幅に合わせて道の角が柔らかくなった。

 午後、丁場が立つ。小人の書記が低い卓を据え、秤台の横に二重表記の定規を置く。検印型板が木箱に収まっている。耳役の机はその隣、椅子は少し高め、紙は大きめ。ゴザムが最初の札を持ってきた。

「排水の溝、上の段で一か所詰まり。明朝、手を入れる」

 札は二行。要点が立つ。アールがそのまま掲示に写し、ミレイユが控えに綴じた。エメイラは救護棚の薬瓶の並びを整え、洗眼の桶の水を替える。若い衆は鼻口布を受け取り、鼻梁に指を当てて結び目を覚える。誰も大きな声を出さない。短く頷き、短く働き、短く報告する。

 日が傾くころ、チャンシルバがもう一度図面を見せた。港の基礎段、岸壁の目地、石の配置が簡潔な線で重ねられている。

「石が規格で揃えば、港は息を始める。街も同じです。骨と血の回りは、目盛りが決める」

「その目盛りは、もうここにある」

 僕は石の山を見上げた。眠っていた重さが、ゆっくりと行き先を得ていく気配がする。丁場の灯がともり、帳場の紙が乾く音が静かに続く。拝領の日が来れば、合図は短い。そこから先は、今日決めた通りに回すだけだ。二重の目盛りで、同じ速さで。
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