【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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8歳の旅回り。

小人族領へ向かう。

 潮と水の街の水辺は、朝日に銀色に輝いていた。僕はナビを肩に乗せて、カリュゼル伯の案内で水上の遊覧船(ゴンドラ)に乗った。

「リョウエスト君、こちらが水の民の遊覧船、ゴンドラです」

 水竜人伯がにこりと微笑む。

「すごい…まるで水面に浮かぶ小さな船だね」

 僕が言うと、ナビは翼をはばたかせて「にゃ!」と鳴いた。

 潮風に吹かれながら、水路をゆっくり進む。両岸には海藻の緑、漁師小屋、赤い魚油ランタン。僕は景色に見とれながら馬車から離れた解放感を味わっていた。

「心地良いですね、水竜人の街は」

 エメイラが呟く。

「うん、でも…この中で感じるのは『裏』の気配じゃなくて、『楽しさ』だけだな」

 ほどなくして戻った館前。だが、広場には異様な静けさがあった。護衛の陽炎隊の隊長エルグナと青の技たちの姿を見て、僕はすぐに気づいた。

「エルグナさん、顔色が悪い……」

 僕が駆け寄ると、彼女は力なく微笑んだ。

「リョウエスト様…少し疲れました。昨夜、隊に対して不審な動きがありまして」
「青の技の皆さんも……?」

 僕が見ると、六人も皆目にクマを作っている。

「ええ。何か…水竜人とは別の勢力が動いていた気配がありやす」

 僕はキュッと手を握った。

「わかった。急ぎ、小人族の自治区へ向かおう。不穏な影があるなら、先に防御を固めたい」

 アインスはうなずいた。

「青の技と陽炎隊が守りやす。どうかこの旅を続けてください」
「ありがとう。そのためにも、次の地でも力を合わせよう」

 僕たちはそのまま馬車に乗り込み、小人族の自治領へ向けて出発した。潮風と波の音は、一時の安らぎをくれたが、未来への緊張も同時に運んできた。

 馬車は潮の街の門を抜け、川岸の道を進む。水車を横目に、湿地帯を越えて山麓へと向かう。風景は次第に変化し、緑の丘と石畳が現れた。

「小人族の領地は山の斜面にあるから、道は滑りやすいかも」

 隊長エルグナが注意を促す。

「了解。ナビ、君は天井から石が飛ぶと危ないから下りててね」

 ナビは「にゃっ」と跳ねながら馬車床に降りた。

「ねえ、リョウエスト様は『小人族の光』とも呼ばれているんだって?」

 フィアが小声で教えてくれた。

「『先を照らすもの』って意味なんだって。リョウエスト様は、いつも未来を見据えて動いてるから」

 ゼクスが目を輝かせる。
 僕は微かに照れ、だけどどこか胸を突かれる気がした。

「ありがとう。でも、僕はただ、小人族の力を信じているだけだよ」

 馬車が山道を越えて森を抜けると、遠くに石造りの橋と、低く連なる小人族の領都が見えてきた。塔が短く、窓が細やかで、まるで繊細な宝箱が並ぶかのようだった。

「着いたな」
 
 川渡しを終えると、馬車は小人領の門前に停まった。門をくぐると、小人族の代表がすぐに挨拶に現れた。

「ようこそ、小人族の領都へ。先を照らす者よ」

 その声は高く愛嬌があり、小人族らしい明るさで満ちていた。

「僕がリョウエストです。王命により、異種族交流の旅を続けています」

 僕が答えると、小人の青年は両手を合わせてお辞儀した。

「小人伯が既に待っていらっしゃいます。どうぞこちらへ」

 僕は護衛たちに目配せすると、静かに頷いた。エルグナも青の技たちも、守りの姿勢を崩さずに僕を先導してくれる。馬車の扉を開け、自ら歩を進めた。



 石造りの館に案内されると、中は細密な彫刻と木製の家具で彩られており、手先の器用な種族らしさが漂った。香炉から漂うハーブの香りが、館中に柔らかな空気を作り出している。

 扉が開き、小柄な男が軽快に駆け寄ってきた。

「おー…『先を照らす者』とは、リョウエスト君じゃん!」

 小人伯は両手を胸元に揃えて飛びつくように喜び、声はまるで子供のように明るい。

「ぼくはそのお名前、嬉しいよっ。未来に向けて働く人にふさわしいよねっ!」

 伯爵の話し方は可愛らしく、だけどどこか誠実な響きがあった。

「大変な依頼中だけど大丈夫?ほんとにがんばってくれてありがとね。館をご案内するねっ」

 伯爵は微笑みながら言った。

「ありがとうございます。小人族の暮らしやものづくりについて、ぜひ教えてください」

 僕は丁寧に頭を下げた。
 伯爵はぱっと手を叩き、館の従者に合図を送った。

「まずは、ぼくたちの族の工房を見てきてねっ。小人族は工具、錬金具、精密機械、すべてがんばってる!君のカカオ事業にもきっと役立つよっ」

 館の奥には、歯車の回る音金属の匂い、そして木の湿り気が混じった工房が広がっていた。小人族の職人たちは、僕を見つけると作業を止めて笑顔で迎えてくれた。

「『先を照らすもの』が来た! どうぞ手に取ってみてください」

 手先の器用さと好奇心にあふれた種族だと、ここに来て改めて思う。

 僕は小さな歯車装置や、水源制御のパーツ、錬金術用の細かい瓶などを手に取りながら話をした。

「必要があれば、商会と協力して輸送や資材の手配もできます。異種族同士で補い合う、未来の形ですね」

 伯爵はにこにこと頷いた。

「すごく頼りになるね!君のような『光』があるから、ぼくらも進化しようと思うんだっ」

 その言葉に、僕は言葉を返した。

「ありがとうございます。光というより、ただ、繋ぎたいんです。人間も魔法や魔術も知恵も、異なる立場の人々をつなげたい」

 小人伯は目を細めた。

「君には、手を貸したい者がたくさんいるよ。工房、研究所、商会…みんなが君をみとめてるね。だけど君自身の体調と波の気配にも気をつけて!護衛たちは、君を守るためにいるのだからねっ」

 僕は胸を打たれて深く頷いた。

「はい。護衛の皆と共に動きます」

館の庭で、小さなランタンが灯り始めた。その灯りとともに、異種族の新しい時代が語られていたのだった。
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