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エキシビジョンマッチ
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《皆様、お待たせいたしました!本日のメインイベント――デュラテス様、アルステルス様によるエキシビジョンマッチの開催です!まずは観戦ルールについてご説明いたします》
リューネたちが会場へ到着した頃には、すでに観覧席は満員だった。
学園生たちはクラスごとに席が割り当てられており、リューネたちは慌てることなくゆっくりと会場入りすることができた。クラスメイトたちのさりげない気遣いにより、リューネは最前列、魔道場の目の前という特等席を譲ってもらえた。両脇には、念のためという名目で屈強なゴリ君と、しっかり者のマリールゥが陣取っている。
魔道場を挟んだ反対側には、特別な招待席が設けられていた。そこには王国の重要な来賓であるレステュユルニとジュウトの姿も見える。
《ルールはきわめてシンプルです。戦闘不能になった時点で敗北となり、魔力を使い果たした場合も同様です。また、両者には転移護符を事前に渡してあります。この護符の力により、命の危険を感じたり、回避が不可能と判断された場合、自動的に安全な場所へ転移されます。なお、戦闘区域である魔道場の外へ転移した場合、それは敗北と見なされます!》
アナウンスの声が続く。
《さらに、最高峰の回復術師を待機させておりますので、両者ともに存分に戦ってください!制限時間は半刻。時間内に勝負がつかなければ、引き分けとし、延長戦は行いません》
観客席に向けて、注意事項も告げられる。
《観覧席の皆様へのお願いです!戦闘の妨げとなる行為は厳禁です。身を乗り出さず、落ち着いて観戦してください。また、学園内では魔道場以外での攻撃魔術の使用は禁止されております。戦闘中の加勢や妨害は絶対にお控えください!観覧席は強固な防御シールドで守られておりますので、安全に試合を楽しんでいただけます。なお、観覧席での飲食は禁止ですので、ご協力をお願いいたします》
言葉を締めくくるように、場内の照明が一段と明るくなる。
《それでは――デュラテス様、アルステルス様、入場をお願いいたします!》
瞬間、場内の熱気が爆発した。
テスとアルが姿を現した途端、観客席は総立ちとなり、場内は歓声と興奮に包まれる。至る所から名前を呼ぶ声が飛び交い、試合開始前にも関わらず、すでに圧倒的な盛り上がりを見せていた。
ふたりの人気は計り知れない――その熱狂が、この場を支配している。
アルは一度だけ、リューネへと視線を向ける。
その一瞬の目線に、リューネは自分の胸の前でそっと手を握った。
(アル、どうか怪我だけはしないで……)
リューネはそっと胸の前で手を組み、祈るように呟いた。
《デュラテス様、アルステルス様、準備は宜しいですか?それでは…レディー、ゴー!》
司会の高らかな声が響き渡るや否や、アルは目前に厚い土壁を瞬時に生成した。その土壁からは、鋭利な三日月型の刀身が無数に飛び出し、嵐のようにテスへと殺到する。しかし、刀身がテスに到達する直前、彼の周囲に展開された強固な魔力の防壁に触れると、まるで幻のように全てが霧散していった。
その間もテスの攻撃は止まらない。アルの周囲を巨大な火柱が取り囲み、その中心から灼熱の業火がアル目掛けて降り注ぐ。アルは冷静に防御の魔法陣を幾重にも展開し、同時に冷気を凝縮させた巨大な氷の大剣を創造。一閃で火柱を薙ぎ払い、迫りくる炎の渦を切り裂いた。魔道場の床には熱気と冷気がぶつかり合い、白い蒸気が濛々と立ち込める。
「ふうん、3年も放浪してた割には衰えてないじゃん」
テスは楽しげにニィと笑うと、間髪入れずに無数の魔法陣を繰り出した。それらの魔法陣はまるで生き物のようにうねりながら、魔道場の床へと吸い込まれていく。不穏な気配を察知したアルは、直感的に行動した。
「させるかっ」
アルは手にした氷の大剣を勢いよく大地に突き刺す。その瞬間、魔道場の床に轟音と共に地割れが走り、大量の礫が舞い上がった。吸い込まれようとしていた魔法陣は、その衝撃と魔力によって光を放ち、跡形もなく消滅する。しかし、テスの表情には余裕があった。
「甘いよ、アル」
テスの言葉と同時に、彼の頭上には既に眩いばかりの光の矢が生成されていた。無数の光の矢が、標的を捉えたかのようにアル目掛けて次々と放たれる。アルは咄嗟に防御の魔法陣を展開したが、一歩及ばず、矢のいくつかはアルを捉えたかのように見えた。アルは間一髪のところで転移したが、光の矢は転移した先にも執拗に追随する。紙一重で躱したアルのローブの裾に矢が突き刺さり、音もなく消え去った。
「追撃アシスト付きなんだ、まだ実験段階の魔術なんだけどね。ふふっ」
テスは涼しい顔でそう告げると、手を休めることなく新たな光の矢をアルに向け放ち続けた。アルは防御の魔法陣を展開しながら、テスの真後ろに転移し、彼を盾に躱そうと試みる。しかし、矢が到達する直前、テスもまた素早く転移した。躱しきれなかった矢がアルの頬をかすめる。場内からは悲鳴にも似た声が上がり、アルの頬には鮮血が筋となって弧を描いた。さすがは一国の筆頭魔道士、テスの魔術は正確無比で、その発動速度も群を抜いていた。
アルは傷ついた頬を気にも留めず、テスを睨みつける。テスは余裕の笑みを崩さず、右手を大きく振りかぶった。次の瞬間、アルの足元から巨大な氷の槍が突き出し、同時にテスの背後には雷の球が形成される。アルは槍を跳躍で避け、雷の球に向けて氷の魔力を込めた掌を突き出した。雷の球は霧散したが、テスは既に別の魔法陣を展開していた。
「そろそろお遊びはお仕舞いだよ、アル」
テスの言葉に、アルの瞳の奥に鋭い光が宿る。
「そうだな、終わりにしようぜ、テス」
アルが地に刺した大剣から、まるで生き物のように霧が立ち込め始めた。その霧は瞬く間に濃度を増し、見る見るうちに魔道場全体を埋め尽くしていく。観客席からも魔道場の様子は完全に遮断され、ざわめきが起こる。
(そんな子供騙し、俺には通用しないよ、アル)
テスは霧の向こうで不敵な笑みを浮かべ、自身に可能な限りの防御魔法を幾重にも重ねがけた。同時に、魔道場全体に炎をまとった巨大な隕石の雨を降らせる術を発動する。隕石は轟音を立てて霧の中に降り注ぎ、着弾のたびに爆炎と衝撃波を生み出した。
しかし、その瞬間だった。
突如、濃密な霧が眩いほどの光を放った。その光は、テスが放った全ての隕石を、そして彼の防御魔法さえも強制的に霧散させていく。光の奔流はテスの意識を奪い、彼の動きをほんの一瞬、本当にほんの一瞬だけ止めた。その隙をアルは見逃さない。光が収束する刹那、テスの真後ろに転移したアルが、手にしていた氷の大剣を渾身の力で振り下ろした。
ザンッ、という、空間を切り裂くような鋭い音。
そして、一房の、長い、美しい髪だけが宙を舞い、地に落ちる。
テスの姿は、まるで最初からそこにいなかったかのように魔道場から完全に消え去っていた。
会場内は、まさに水を打ったように静まり返る。あまりに一瞬の出来事すぎて、誰もがその事態を完全に把握できずにいた。
リューネたちが会場へ到着した頃には、すでに観覧席は満員だった。
学園生たちはクラスごとに席が割り当てられており、リューネたちは慌てることなくゆっくりと会場入りすることができた。クラスメイトたちのさりげない気遣いにより、リューネは最前列、魔道場の目の前という特等席を譲ってもらえた。両脇には、念のためという名目で屈強なゴリ君と、しっかり者のマリールゥが陣取っている。
魔道場を挟んだ反対側には、特別な招待席が設けられていた。そこには王国の重要な来賓であるレステュユルニとジュウトの姿も見える。
《ルールはきわめてシンプルです。戦闘不能になった時点で敗北となり、魔力を使い果たした場合も同様です。また、両者には転移護符を事前に渡してあります。この護符の力により、命の危険を感じたり、回避が不可能と判断された場合、自動的に安全な場所へ転移されます。なお、戦闘区域である魔道場の外へ転移した場合、それは敗北と見なされます!》
アナウンスの声が続く。
《さらに、最高峰の回復術師を待機させておりますので、両者ともに存分に戦ってください!制限時間は半刻。時間内に勝負がつかなければ、引き分けとし、延長戦は行いません》
観客席に向けて、注意事項も告げられる。
《観覧席の皆様へのお願いです!戦闘の妨げとなる行為は厳禁です。身を乗り出さず、落ち着いて観戦してください。また、学園内では魔道場以外での攻撃魔術の使用は禁止されております。戦闘中の加勢や妨害は絶対にお控えください!観覧席は強固な防御シールドで守られておりますので、安全に試合を楽しんでいただけます。なお、観覧席での飲食は禁止ですので、ご協力をお願いいたします》
言葉を締めくくるように、場内の照明が一段と明るくなる。
《それでは――デュラテス様、アルステルス様、入場をお願いいたします!》
瞬間、場内の熱気が爆発した。
テスとアルが姿を現した途端、観客席は総立ちとなり、場内は歓声と興奮に包まれる。至る所から名前を呼ぶ声が飛び交い、試合開始前にも関わらず、すでに圧倒的な盛り上がりを見せていた。
ふたりの人気は計り知れない――その熱狂が、この場を支配している。
アルは一度だけ、リューネへと視線を向ける。
その一瞬の目線に、リューネは自分の胸の前でそっと手を握った。
(アル、どうか怪我だけはしないで……)
リューネはそっと胸の前で手を組み、祈るように呟いた。
《デュラテス様、アルステルス様、準備は宜しいですか?それでは…レディー、ゴー!》
司会の高らかな声が響き渡るや否や、アルは目前に厚い土壁を瞬時に生成した。その土壁からは、鋭利な三日月型の刀身が無数に飛び出し、嵐のようにテスへと殺到する。しかし、刀身がテスに到達する直前、彼の周囲に展開された強固な魔力の防壁に触れると、まるで幻のように全てが霧散していった。
その間もテスの攻撃は止まらない。アルの周囲を巨大な火柱が取り囲み、その中心から灼熱の業火がアル目掛けて降り注ぐ。アルは冷静に防御の魔法陣を幾重にも展開し、同時に冷気を凝縮させた巨大な氷の大剣を創造。一閃で火柱を薙ぎ払い、迫りくる炎の渦を切り裂いた。魔道場の床には熱気と冷気がぶつかり合い、白い蒸気が濛々と立ち込める。
「ふうん、3年も放浪してた割には衰えてないじゃん」
テスは楽しげにニィと笑うと、間髪入れずに無数の魔法陣を繰り出した。それらの魔法陣はまるで生き物のようにうねりながら、魔道場の床へと吸い込まれていく。不穏な気配を察知したアルは、直感的に行動した。
「させるかっ」
アルは手にした氷の大剣を勢いよく大地に突き刺す。その瞬間、魔道場の床に轟音と共に地割れが走り、大量の礫が舞い上がった。吸い込まれようとしていた魔法陣は、その衝撃と魔力によって光を放ち、跡形もなく消滅する。しかし、テスの表情には余裕があった。
「甘いよ、アル」
テスの言葉と同時に、彼の頭上には既に眩いばかりの光の矢が生成されていた。無数の光の矢が、標的を捉えたかのようにアル目掛けて次々と放たれる。アルは咄嗟に防御の魔法陣を展開したが、一歩及ばず、矢のいくつかはアルを捉えたかのように見えた。アルは間一髪のところで転移したが、光の矢は転移した先にも執拗に追随する。紙一重で躱したアルのローブの裾に矢が突き刺さり、音もなく消え去った。
「追撃アシスト付きなんだ、まだ実験段階の魔術なんだけどね。ふふっ」
テスは涼しい顔でそう告げると、手を休めることなく新たな光の矢をアルに向け放ち続けた。アルは防御の魔法陣を展開しながら、テスの真後ろに転移し、彼を盾に躱そうと試みる。しかし、矢が到達する直前、テスもまた素早く転移した。躱しきれなかった矢がアルの頬をかすめる。場内からは悲鳴にも似た声が上がり、アルの頬には鮮血が筋となって弧を描いた。さすがは一国の筆頭魔道士、テスの魔術は正確無比で、その発動速度も群を抜いていた。
アルは傷ついた頬を気にも留めず、テスを睨みつける。テスは余裕の笑みを崩さず、右手を大きく振りかぶった。次の瞬間、アルの足元から巨大な氷の槍が突き出し、同時にテスの背後には雷の球が形成される。アルは槍を跳躍で避け、雷の球に向けて氷の魔力を込めた掌を突き出した。雷の球は霧散したが、テスは既に別の魔法陣を展開していた。
「そろそろお遊びはお仕舞いだよ、アル」
テスの言葉に、アルの瞳の奥に鋭い光が宿る。
「そうだな、終わりにしようぜ、テス」
アルが地に刺した大剣から、まるで生き物のように霧が立ち込め始めた。その霧は瞬く間に濃度を増し、見る見るうちに魔道場全体を埋め尽くしていく。観客席からも魔道場の様子は完全に遮断され、ざわめきが起こる。
(そんな子供騙し、俺には通用しないよ、アル)
テスは霧の向こうで不敵な笑みを浮かべ、自身に可能な限りの防御魔法を幾重にも重ねがけた。同時に、魔道場全体に炎をまとった巨大な隕石の雨を降らせる術を発動する。隕石は轟音を立てて霧の中に降り注ぎ、着弾のたびに爆炎と衝撃波を生み出した。
しかし、その瞬間だった。
突如、濃密な霧が眩いほどの光を放った。その光は、テスが放った全ての隕石を、そして彼の防御魔法さえも強制的に霧散させていく。光の奔流はテスの意識を奪い、彼の動きをほんの一瞬、本当にほんの一瞬だけ止めた。その隙をアルは見逃さない。光が収束する刹那、テスの真後ろに転移したアルが、手にしていた氷の大剣を渾身の力で振り下ろした。
ザンッ、という、空間を切り裂くような鋭い音。
そして、一房の、長い、美しい髪だけが宙を舞い、地に落ちる。
テスの姿は、まるで最初からそこにいなかったかのように魔道場から完全に消え去っていた。
会場内は、まさに水を打ったように静まり返る。あまりに一瞬の出来事すぎて、誰もがその事態を完全に把握できずにいた。
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