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お祭り余談
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「私のアルが負けるはずないもの」
リューネは静かに微笑むと、稼いだチップを手に賭博場の元締めへと足を向けた。
「アルステルス様に、全額お願いします」
揺るぎない口調だった。
リューネの迷いのない瞳に、周囲のBクラスの生徒たちも次々と元締めに殺到し始めた。
「皆は賭けなくても…」
リューネは一瞬言い淀んだが、クラスメイトたちは笑って首を振る。それぞれが持ち金を全てアルに賭けた。
やがて試合が終わる。勝者はアル。
歓声と熱気が魔道場から押し寄せるように場内に広がり、掛け金は六倍にも膨れ上がった。
Bクラスの生徒たちは歓喜に沸き、跳ね、抱き合い、涙すら浮かべていた。
その中心で、リューネもきっちりと換金を済ませ、淡い笑みを浮かべていた。
◇ ◇ ◇
「おい、テス。なんでお前、その髪型にしてるんだよ」
アルは訝しげに眉をひそめながら、目の前のテスをじっと見つめる。
「アルとお揃いなのもいいかなーって思ってさ。暫くはこの髪型で過ごすよ」
テスは上機嫌で、シャララと指先で自分の髪を撫でる。
アルの大剣によって一房の髪を切り取られたテスは、これ見よがしにアルと全く同じ髪型へと整えていた。
渋面を浮かべるアルとは対照的に、テスはどこか楽しそうだ。
眉間の皺さえなければ、ぱっと見でどちらがどちらか分からないほどだった。
「……同じ髪型にしたところで、リューネは騙せないぞ」
アルはため息混じりに言う。
「えー?マジで?今度ちょっと試してみない?どっちがどっちか、リューネちゃんに当ててもらうの。愛の深さが試されるってやつだよ!」
テスはニヤリと笑い、挑戦的な視線を向けてくる。
アルはその顔を見て、心底うんざりした表情を浮かべた。
「そうそう、ジュウト君だっけ? リューネちゃんの従者。やっぱりあの子、魔力量多いね。アルも気付いてたんでしょ?」
唐突に話題を変えたテスの問いに、アルは鋭く視線を向ける。
「お前、まさかとは思うが、迷路を作った一番の目的って」
「魔力が多そうだなとは思ってたけど、ちゃんとデータとして確認したくてね。レステュユルニ殿がジュウト君を祭りに連れてくるかどうかは賭けだったけど」
「魔術バカもいい加減にしろよ……リューネの従者だから俺は何も言わずにいたのに」
アルは呆れ混じりに肩をすくめる。
「でもさ、アルとリューネちゃんが結婚したら、ジュウト君フリーになるじゃん? いや、ならないかもだけど、引き抜くチャンスかなって思ってさ」
「……で?」
「今はジュウト君の返事待ち。話を持ちかけた時の感触は悪くなかったよ。ただ、魔術指導はゼロからになるから、モノになるかは分からないね。彼のセンス次第かな? それに、レステュユルニ殿もジュウト君の意思に任せるって言ってくれてるし」
「リューネに伝えとく。吃驚するだろうがな」
アルは思案しながら呟いた。
「アルがリューネちゃんと結婚するお陰で、魔術の発展までするのは嬉しい誤算だよね! さ、俺は今日も魔術研究に忙しいんだ。書類整理頼んだよ、マイブラザー!」
テスは投げキッスをひとつ送り、転移の光とともに姿を消す。
アルは呆然としながらも、ふと不吉な考えが頭をよぎる。
(……同じ髪型にしたのって……テスの身代わりにされてねぇか、俺?)
「クソッ……」
デュラテスの机に積み上げられた書類の山を一瞥し、呆れと諦めを滲ませながら、アルは書類を手に取り、魔道塔の静寂の中へと溶け込んでいった。
リューネは静かに微笑むと、稼いだチップを手に賭博場の元締めへと足を向けた。
「アルステルス様に、全額お願いします」
揺るぎない口調だった。
リューネの迷いのない瞳に、周囲のBクラスの生徒たちも次々と元締めに殺到し始めた。
「皆は賭けなくても…」
リューネは一瞬言い淀んだが、クラスメイトたちは笑って首を振る。それぞれが持ち金を全てアルに賭けた。
やがて試合が終わる。勝者はアル。
歓声と熱気が魔道場から押し寄せるように場内に広がり、掛け金は六倍にも膨れ上がった。
Bクラスの生徒たちは歓喜に沸き、跳ね、抱き合い、涙すら浮かべていた。
その中心で、リューネもきっちりと換金を済ませ、淡い笑みを浮かべていた。
◇ ◇ ◇
「おい、テス。なんでお前、その髪型にしてるんだよ」
アルは訝しげに眉をひそめながら、目の前のテスをじっと見つめる。
「アルとお揃いなのもいいかなーって思ってさ。暫くはこの髪型で過ごすよ」
テスは上機嫌で、シャララと指先で自分の髪を撫でる。
アルの大剣によって一房の髪を切り取られたテスは、これ見よがしにアルと全く同じ髪型へと整えていた。
渋面を浮かべるアルとは対照的に、テスはどこか楽しそうだ。
眉間の皺さえなければ、ぱっと見でどちらがどちらか分からないほどだった。
「……同じ髪型にしたところで、リューネは騙せないぞ」
アルはため息混じりに言う。
「えー?マジで?今度ちょっと試してみない?どっちがどっちか、リューネちゃんに当ててもらうの。愛の深さが試されるってやつだよ!」
テスはニヤリと笑い、挑戦的な視線を向けてくる。
アルはその顔を見て、心底うんざりした表情を浮かべた。
「そうそう、ジュウト君だっけ? リューネちゃんの従者。やっぱりあの子、魔力量多いね。アルも気付いてたんでしょ?」
唐突に話題を変えたテスの問いに、アルは鋭く視線を向ける。
「お前、まさかとは思うが、迷路を作った一番の目的って」
「魔力が多そうだなとは思ってたけど、ちゃんとデータとして確認したくてね。レステュユルニ殿がジュウト君を祭りに連れてくるかどうかは賭けだったけど」
「魔術バカもいい加減にしろよ……リューネの従者だから俺は何も言わずにいたのに」
アルは呆れ混じりに肩をすくめる。
「でもさ、アルとリューネちゃんが結婚したら、ジュウト君フリーになるじゃん? いや、ならないかもだけど、引き抜くチャンスかなって思ってさ」
「……で?」
「今はジュウト君の返事待ち。話を持ちかけた時の感触は悪くなかったよ。ただ、魔術指導はゼロからになるから、モノになるかは分からないね。彼のセンス次第かな? それに、レステュユルニ殿もジュウト君の意思に任せるって言ってくれてるし」
「リューネに伝えとく。吃驚するだろうがな」
アルは思案しながら呟いた。
「アルがリューネちゃんと結婚するお陰で、魔術の発展までするのは嬉しい誤算だよね! さ、俺は今日も魔術研究に忙しいんだ。書類整理頼んだよ、マイブラザー!」
テスは投げキッスをひとつ送り、転移の光とともに姿を消す。
アルは呆然としながらも、ふと不吉な考えが頭をよぎる。
(……同じ髪型にしたのって……テスの身代わりにされてねぇか、俺?)
「クソッ……」
デュラテスの机に積み上げられた書類の山を一瞥し、呆れと諦めを滲ませながら、アルは書類を手に取り、魔道塔の静寂の中へと溶け込んでいった。
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