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楓の声が静かな部屋に柔らかく響いた。
「お湯溜めてきたから、お風呂入る?」
身体に力の入りづらい柊は、少し頼りなげに答えた。
「入りたいけど…動けない……」
その言葉に楓はすぐさま動き、柊をそっとお姫様抱っこした。
「え?!楓、ちょっ…」
腕の中に収められた柊の体は微かな熱を帯び、楓の吐息が頬をかすめるたびに甘い火花が散った。
楓の唇は、抱き上げた柊の首筋や耳の裏を飽かず追い、絡みつくように触れ合う。
湯気の立つ浴室に運ばれ、浴槽の温かい湯が二人を迎える。
「洗うの手伝うね」
たっぷりの泡を手に楓がそっと柊の背中を撫で、腕を滑らせると、柊は無意識に甘く震える声を零した。
楓の手が柊の身体を撫でるたびに彼の頬は柔らかな紅に染まり、まだ蕩けるように敏感な身体が呼応する。
「柊の身体…こんなに敏感なんだ…」
楓の言葉に含まれた愛おしさが、静かな空気を満たした。
柊は恥じらいながらも、楓の指先が肌を這うのを感じて、心の奥底からじわりと熱くなっていくのを覚えた。
やがて、楓は柊をそっと抱き寄せ、背後からしっかりと抱き締める。
「ごめん、俺…我慢出来ない…」
楓の熱が柊の最も敏感な場所に触れ、ゆるやかな波のように身体が揺れ始めた。
立っている事もままならない柊は浴室の壁に手をつき、小さな吐息と共に甘くもどかしい声を漏らす。
「ん…っ……あ…あ…」
その声に楓の胸は締め付けられ、支えながらも確かなリズムで腰を打ち続けた。
たまらず柊が小声で呟く。
「楓…はげしっ…」
楓は優しく唇を重ねながら囁いた。
「だって、柊が可愛すぎて……許して?」
その言葉に、柊は蕩けた表情を浮かべつつも小さな抵抗を試みるが力が入らない。
「も…う…っ……」
絶頂を迎えた二人は熱を残したまま湯船へと向かい、ゆっくりとお湯に浸かった。
柊は楓の胸に全てを委ね、身体を預けるように甘える。
楓はそんな彼の柔らかな背中を抱きしめ、胸いっぱいに幸福を噛みしめた。
◇ ◇ ◇
湯上がりの柊は、楓が用意してくれた大きめのバスローブに包まれ、まだ火照りの残る身体をソファへと預けていた。
ふわりと肩を覆う布地から、湯気とともに柔らかな香りが漂う。
その隣で、楓がタオルを手に髪を乾かそうと腰を下ろす。
「楓?」
「ん…?」
「どうして、こんなことになったのか…ちゃんと、聞いてもいい?」
少しの沈黙が落ち、楓はゆっくりと柊の方へ身体を向けた。
瞳の奥には、かすかな罪悪感と、それでも言わずにはいられない覚悟が宿っている。
「昨日…、街でお前を見たんだ」
「え?」
「本屋に用事があってさ。偶然、歩道の向こうで…お前が誰かと歩いてるのを見た」
柊は一瞬言葉を失い、やがて小さく首を振った。
「それ、従弟だよ。昨日、俺の誕生日でサプライズで服とか選んでくれたんだ…」
「そうか、誕生日……」
楓はそこで言葉を切り、唇を噛む。
「お前の誕生日だったのか…知らなかった」
楓はがっくりと項垂れる。
「柊が知らない奴とな仲良さそうに歩いているのを見たら勝手に胸がざわついて……」
「楓…」
「…お前があんな顔するの、初めて見たんだ。誰かに向けて、あんなに柔らかい笑顔を。…俺には、一度も見せてくれなかった笑顔で」
声が震え、苦笑の奥に切なさが滲む。
「それだけで、胸の奥がぐちゃぐちゃになった。頭冷やそうとしても全然冷えなくて、心臓が焼けるみたいに熱くて。…気づいたら、息も乱れて、まともに眠れなくて。身体までおかしくなってきて…発情期に似た症状になってた」
柊は目を瞬き、息を呑む。
「嫉妬で、発情したって事…?」
楓は恥じるように視線を伏せ、けれど真っ直ぐに頷いた。
「そう。…情けないだろ、αのくせに。…でも、もしお前が誰かに取られるかもしれないって思ったら、もうどうしようもなくて。辛くて、悲しくて、怖かったんだ」
その言葉に、柊の胸の奥がじんわりと熱を帯びる。
あの飄々として隙を見せない男が、自分のことでこんなにも乱され、怯えていたこと。
その想いに、喉の奥がつまるような感情が押し寄せた。
その時ふいに、部屋に二つの軽快な音が響いた。
同時に鳴ったスマホの通知音。
画面を見なくても、研究室のグループチャットからだとすぐにわかる。
(あ…!)
その音で柊は、はっと思い出す。
――今日、自分が楓の部屋を訪れた理由。
しかも、あれから誰にも連絡を入れていなかったから、きっと、皆が心配している。
「楓…研究室のみんな、心配してると思う。今日、来なかったし…連絡もなかったから」
そう告げると、楓は少し目を丸くした。
「そういえば…」
スマホを手に取り、画面を開いた瞬間――
「うわぁ、やっば」
と素直な声が漏れる。
グループチャットは未読で溢れ、個別メッセージや着信履歴が並んでいる。
それでも楓は、どこか悪戯を思いついた子供のような顔になって、柊の横に腰を下ろした。
「ちゃんと無事だって返してあげて」
柊がそう促すと、“まかせて~”なんて軽く返事をしながら楓は親指をぽちぽちと動かす。
そして、送られた短い一文――
『柊の彼氏になりました』
送信を確認する間もなく、楓はスマホの電源を落とした。
直後、柊のスマホが軽快な着信音を立てる。
グループチャットに送信されたその一文が、すぐさま自分の画面にも表示されていた。
「ふふ、言っちゃった。柊の彼氏になったって」
満足げに笑う楓の横で、柊は頬が熱くなるのを止められない。
もう研究室の全員に知られてしまった――そう思うだけで、胸の奥がわたわたと音を立てる。
一方の楓は、そんな反応さえ愛おしいというように、目を細めていた。
「お湯溜めてきたから、お風呂入る?」
身体に力の入りづらい柊は、少し頼りなげに答えた。
「入りたいけど…動けない……」
その言葉に楓はすぐさま動き、柊をそっとお姫様抱っこした。
「え?!楓、ちょっ…」
腕の中に収められた柊の体は微かな熱を帯び、楓の吐息が頬をかすめるたびに甘い火花が散った。
楓の唇は、抱き上げた柊の首筋や耳の裏を飽かず追い、絡みつくように触れ合う。
湯気の立つ浴室に運ばれ、浴槽の温かい湯が二人を迎える。
「洗うの手伝うね」
たっぷりの泡を手に楓がそっと柊の背中を撫で、腕を滑らせると、柊は無意識に甘く震える声を零した。
楓の手が柊の身体を撫でるたびに彼の頬は柔らかな紅に染まり、まだ蕩けるように敏感な身体が呼応する。
「柊の身体…こんなに敏感なんだ…」
楓の言葉に含まれた愛おしさが、静かな空気を満たした。
柊は恥じらいながらも、楓の指先が肌を這うのを感じて、心の奥底からじわりと熱くなっていくのを覚えた。
やがて、楓は柊をそっと抱き寄せ、背後からしっかりと抱き締める。
「ごめん、俺…我慢出来ない…」
楓の熱が柊の最も敏感な場所に触れ、ゆるやかな波のように身体が揺れ始めた。
立っている事もままならない柊は浴室の壁に手をつき、小さな吐息と共に甘くもどかしい声を漏らす。
「ん…っ……あ…あ…」
その声に楓の胸は締め付けられ、支えながらも確かなリズムで腰を打ち続けた。
たまらず柊が小声で呟く。
「楓…はげしっ…」
楓は優しく唇を重ねながら囁いた。
「だって、柊が可愛すぎて……許して?」
その言葉に、柊は蕩けた表情を浮かべつつも小さな抵抗を試みるが力が入らない。
「も…う…っ……」
絶頂を迎えた二人は熱を残したまま湯船へと向かい、ゆっくりとお湯に浸かった。
柊は楓の胸に全てを委ね、身体を預けるように甘える。
楓はそんな彼の柔らかな背中を抱きしめ、胸いっぱいに幸福を噛みしめた。
◇ ◇ ◇
湯上がりの柊は、楓が用意してくれた大きめのバスローブに包まれ、まだ火照りの残る身体をソファへと預けていた。
ふわりと肩を覆う布地から、湯気とともに柔らかな香りが漂う。
その隣で、楓がタオルを手に髪を乾かそうと腰を下ろす。
「楓?」
「ん…?」
「どうして、こんなことになったのか…ちゃんと、聞いてもいい?」
少しの沈黙が落ち、楓はゆっくりと柊の方へ身体を向けた。
瞳の奥には、かすかな罪悪感と、それでも言わずにはいられない覚悟が宿っている。
「昨日…、街でお前を見たんだ」
「え?」
「本屋に用事があってさ。偶然、歩道の向こうで…お前が誰かと歩いてるのを見た」
柊は一瞬言葉を失い、やがて小さく首を振った。
「それ、従弟だよ。昨日、俺の誕生日でサプライズで服とか選んでくれたんだ…」
「そうか、誕生日……」
楓はそこで言葉を切り、唇を噛む。
「お前の誕生日だったのか…知らなかった」
楓はがっくりと項垂れる。
「柊が知らない奴とな仲良さそうに歩いているのを見たら勝手に胸がざわついて……」
「楓…」
「…お前があんな顔するの、初めて見たんだ。誰かに向けて、あんなに柔らかい笑顔を。…俺には、一度も見せてくれなかった笑顔で」
声が震え、苦笑の奥に切なさが滲む。
「それだけで、胸の奥がぐちゃぐちゃになった。頭冷やそうとしても全然冷えなくて、心臓が焼けるみたいに熱くて。…気づいたら、息も乱れて、まともに眠れなくて。身体までおかしくなってきて…発情期に似た症状になってた」
柊は目を瞬き、息を呑む。
「嫉妬で、発情したって事…?」
楓は恥じるように視線を伏せ、けれど真っ直ぐに頷いた。
「そう。…情けないだろ、αのくせに。…でも、もしお前が誰かに取られるかもしれないって思ったら、もうどうしようもなくて。辛くて、悲しくて、怖かったんだ」
その言葉に、柊の胸の奥がじんわりと熱を帯びる。
あの飄々として隙を見せない男が、自分のことでこんなにも乱され、怯えていたこと。
その想いに、喉の奥がつまるような感情が押し寄せた。
その時ふいに、部屋に二つの軽快な音が響いた。
同時に鳴ったスマホの通知音。
画面を見なくても、研究室のグループチャットからだとすぐにわかる。
(あ…!)
その音で柊は、はっと思い出す。
――今日、自分が楓の部屋を訪れた理由。
しかも、あれから誰にも連絡を入れていなかったから、きっと、皆が心配している。
「楓…研究室のみんな、心配してると思う。今日、来なかったし…連絡もなかったから」
そう告げると、楓は少し目を丸くした。
「そういえば…」
スマホを手に取り、画面を開いた瞬間――
「うわぁ、やっば」
と素直な声が漏れる。
グループチャットは未読で溢れ、個別メッセージや着信履歴が並んでいる。
それでも楓は、どこか悪戯を思いついた子供のような顔になって、柊の横に腰を下ろした。
「ちゃんと無事だって返してあげて」
柊がそう促すと、“まかせて~”なんて軽く返事をしながら楓は親指をぽちぽちと動かす。
そして、送られた短い一文――
『柊の彼氏になりました』
送信を確認する間もなく、楓はスマホの電源を落とした。
直後、柊のスマホが軽快な着信音を立てる。
グループチャットに送信されたその一文が、すぐさま自分の画面にも表示されていた。
「ふふ、言っちゃった。柊の彼氏になったって」
満足げに笑う楓の横で、柊は頬が熱くなるのを止められない。
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