NONO.s

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1 排斥された者たち

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   朝が来て、光が都市を照らす。人々の活気があふれる場所も、望まれぬ者達が身を寄せ合って静かに暮らす場所も
何一つ例外はない。

「アニキ!起きろ!朝だぞ!」
「クロ兄早く起きないと先生に怒られちゃうよ!」

   いつものように二人に大声で起こされ目を覚ます。目を擦りながら布団から起き上がり素早く着替えを済ませる。
そして音が鳴り止まない部屋のドアを急いで開ける。

「おはようナツ、ミツキ、いつも悪いな。」

   案の定ドアの前の二人は飽きれた顔をしながら立っていた。ただ、時間に余裕があまりなく朝食をとるために急ぎ足で食堂に向かう。

「クロ兄さあ、私達より年上なんだからちゃんと一人で起きられるようになってよ~」

   ミツキと呼ばれた少女は少し不満そうだ。

「まあ、その分アニキが多めに仕事を受け持ってくれてるんだしちょっとくらい許してもいいんじゃないか?」

   ナツと呼ばれた少年はいつもと変わらず柔らかい表情で会話を続ける。

   こうしてこの孤児院の一日は始まるのだ。

   朝食を食べ終わった後は小さな教室での授業が始まる。と言っても孤児院の先生は2人しかいないため
小規模なものになっている。教育担当はアリサ先生で、もともとここの孤児院の出身だ。授業内容は簡単な読み書き計算と簡易な科学の実験、そして現在の世情についてのがメインとなっている。

「アニキ~ここどうやればいいのか分かんないよ~」
「これはココをこうすればこんな感じで出来る」
「え~?こんなの簡単じゃない?どうしてわからないのよ」

   と、こんな感じでいつも俺かミツキが頭を抱えるナツを助けながら授業を進めている。

「正解はしてるけど、今度はナツ一人で解けるようになろうね。」
「はぁ~い」

   先生はいつも通り苦笑いをしながらナツの問題集に答え合わせをしている。当の本人は頭を使うことがあまり得意ではなくクタクタになっている。
   逆にミツキは余裕を持て余しているようだ。見ての通り読み書き計算はミツキの得意分野だ。ナツは勉強こそ苦手だが運動能力は眼を見張るものがある。俺は両方を凡庸にはこなせる方だが、むしろ科学や世情の方に強く興味を惹かれる。ちょうどその授業が始まるところだ。

   『人口海上国家ノアについて』約1000年近く前に海の水位が上がり全ての国が洪水による危機に見舞われた。この危機に対抗するためすべての人間が手を組み、海に沈まぬ国を作るというノア計画を考案した。これにより作られた人工島全てにノアの名前が付けられたが、多くの島が様々な自然災害に耐えられず崩壊していった。唯一残ったこの島は、災害に強い建物を立てる技術を持っていたのではないかと考察されている。

   現在のノアの通貨はC『クレジット』と呼ばれるものが使われていて、後述する技術を使うことで金銭を盗まれるといった被害を大幅に抑えることに成功している。

   そして国が管理するナンバーと呼ばれるものは、正確にはバイオナノマシン技術という先進技術が使われていて、このナノマシンは遺伝子に結合するという性質を持ち、ここからネットワークを通じて生体情報を入手し管理するというものだ。これは出生時に投与される物であり、正規の手段で生まれなかった者はこのナノマシンを持たない。
   この国ではナンバーを付与された者だけが社会の構成員として扱われるため、ナンバーを持たぬものは社会システムの恩恵を一部を除いて一切享受することが出来ない。学校にも行けず、仕事も就けないし、社会福祉を受けることすらもできない。もちろん人権すらも付与されていないのだ。

   そんな社会から排斥された者たちを人々はNONO.と呼んだ。




    

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