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俺とお前の関係は
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豊崎海星は静かな部屋に響く時計の秒針の音だけを聞いていた。
約束の時間を2時間過ぎているのに来ないあの男を、来ると信じて待っている。が、そろそろ眠くなって来た。
(ナオキの奴、遅いなぁ)
1人で開けてしまった缶チューハイはとっくに飲み終えてしまい、空き缶だけが机の上に転がる。
そのカラカラという乾いた音は、いつもより虚しく聞こえる。
(2週間前から約束してたんだから、すっぽかすなんて事は無いよな?)
何の通知も来ないスマホを見ながらローテーブルに突っ伏していると、やっと、ティロンッという着信音が鳴った。
勢い良く身体を起こし、スマホに飛び付く。
【ごめん、飲み会に無理矢理連れてかれてた。今から行く~】
2時間待たされたとか、料理が冷えたとか、そんなのがどうでも良くなるくらいの嬉しい知らせに、海星は立ち上がった。
大慌てで冷えた料理を電子レンジに放り込み温め直す。
数十分してチャイムが鳴った。
「ナオキ!いらっしゃ………」
スキップしながら玄関に向かい、ご機嫌で出迎えると、ナオキ───斎藤直樹は女性モノの香水の匂いをプンプンさせていた。
海星の心に、ぐさりと鋭いものが突き刺さる。現実という名の凶器だ。
「海星久しぶり、テスト前ぶり~かな?」
髪を明るく染めたいかにもチャラそうな男は、海星に向かって手を広げる。
香水の匂いがしようがしまいが、ナオキに手を広げられたら飛び込む。それが海星のルーティンだ。
抱き締められたらもっと強くなった匂いが海星の心を抉るけれど、それ以上に彼の腕の中にいることが幸せだった。
「ご飯あるけど、飲み行ってたならいらないか?」
「海星のご飯が食べたくてほとんど食べなかったんだよ。お酒だってちょっとだけ」
「……そっか。じゃあ食べよ」
「やった~。2週間ぶりの海星の手作り!」
分かりやすく喜ぶナオキを見て、海星は心がほわりと温まる。
(好物ばっか作っといて良かった)
そう思いながらナオキの向かいに座って、唐揚げをちびちびと食べる。
目の前で料理にがっつくナオキを見て、幸せで胸がいっぱいなのだ。
「美味い!も~~、海星の料理が1番美味い!」
いつもは嬉しい褒め言葉なのに、何故かモヤッとした感情を抱いてしまうのは、きっとナオキについた香水のせいだ。
誰と比べてるんだ?
1番ってことは、2番がいるのか?
そんな疑問を心の中に押し留め、「だろ?」と言って笑う。
ナオキが嬉しそうならそれで良いじゃないか。そうやって自分に言い聞かせる。
(俺の気持ちを知ってても、こんな風に友達として接してくれてるんだから)
▷▶︎▷
海星は、自分の恋愛対象が女性では無いことに中学生の頃気が付いた。そして、そのきっかけとなったのは他でもない、ナオキの存在だ。
近隣の小学校に通っていた子どもが中学校で一緒になる。2人は中学2年の時同じクラスになった。
中学の頃からずば抜けてイケメンなのと、ふんわりとした独特の雰囲気で人気者だったナオキ。
人見知りで一定の友達としか話さない海星。
海星はいつも、きゃあきゃあ騒ぐ女子グループと同じで、ナオキを見ていた。
「ナオキくん格好良い」と話している女子たちに密かに頷き、遠くから見ていた。
遠くから見ていただけなのに───何の偶然か、高校でまた同じクラスになった。
それからちょくちょく話すようになり、同じ大学に受かったと分かってからは更に仲が深まった。ナオキのコミュ力とおおらかな性格のお陰だ。
そして去年、海星のナオキへの気持ちがバレた。試しに飲んだ酒で悪酔いし、泣きながら告白したのだそう。海星は酔っていて記憶にないが、その日からだ。
2人が、おかしな関係になったのは。
現在、大学2年生。
海星とナオキは倫理的によろしくないのでは、と言われそうな関係にある。名前があるとすれば、そう、「セフレ」である。
「かーいせい、そろそろお風呂入る?」
食事を終えたナオキは、キッチンで皿を洗う海星の背後でそう聞いた。
「あぁ、洗い物したらな」
「俺待てないよ、早く~」
ナオキはそう言って、洗い物中の海星の肩に顎を乗せる。にやりと意地悪そうに笑う時は、何かを企んでいる時だ。
「……ちょっ、………ナオキ」
海星は一瞬高い声をあげ、ナオキを睨んだ。スウェットの中に入り込んでくる手に気付いた海星は、身をよじって抵抗する。しかし、泡だらけの手では抑えられない。
ナオキの大きくて暖かい手がするりするりと侵入してきてくすぐったい。
「ナオキくすぐったい。止めろ」
「くすぐったいだけ~?」
ナオキはそう言いながら、海星の乳首を触りだした。最初に軽く触れ、海星があまり反応しないのに気付いて、きゅっとつまんだ。
「……っ!?」
海星の身体がびくんと揺れる。
ナオキは満足そうに笑い、更に力を加える。
「なお………っふ、ざけんなよ。皿割れたらどーすんだっ…………よ」
途切れ途切れに言う海星の顔はすでに真っ赤だ。
ナオキはふっと笑って、海星の手に着いた泡を洗い流す。
「後で俺洗っとくから、早く風呂入ろう?」
「……分かったから、離せ!」
自分とナオキをべりっと剥がし、諦めた様子で風呂場へ向かう。香水の匂いが自分にも移っていたから丁度良かったと思うことにして、ナオキを待たずにシャワーを出し始める。
しかし、どんなに早く洗い始めたとて、ナオキからは逃げられない。
カラカラと扉が開き、ナオキが入って来たかと思ったらシャワーを奪われた。
「海星を洗うのは俺の役目じゃーん。……何か今日、機嫌悪い?俺が遅かったから?」
「別に悪くないけど………シャワー返せよ」
取り返そうと手を伸ばしたが、身長差15センチの壁は高い。かすりもせずに、海星にお湯がかけられる。
そしてシャワーが止まったかと思えば、にゅるりとした感覚が海星を包む。
「……ん、」
首、腕、脇を撫でるように洗われ、つい声が出てしまう。
「ん、……ま、待ってナオキ。ベッドでいくらでも、できる…………んぅっ」
ナオキは海星の唇を、唇で塞いだ。それに合わせて海星の1番敏感な場所に触れ始める。
「なお……、ナオキ!待てって、それ以上は出てからっ……。な?」
上目遣いでそう言う海星に、ナオキは微笑んだ。
「2週間ぶりなのに待てると思う?」
「え」
ナオキは海星の前を扱きながら、後ろを解し始めた。前と後ろ、同時に触れられて海星は動揺する。
「……ん、う…。ふろ、でてからってぇ………言ってるだろ!?………なんで…んぁ、あ…」
後ろの指を増やされ、だんだんと快楽に勝てなくなってくる。声は高く、甘くなり、呂律が回らなくなってきた海星に、ナオキは目を細める。
「可愛いねぇ、海星。………でも、不思議だよね。久しぶりなのにもうこんなに柔らかいって。……テスト期間中に俺以外と……なんて事は無いよね?」
後ろを触るナオキの指が激しくなる。ぐちゅっ、ぐちゅっと卑猥な音をたて掻き回される。
「ん?何で答えないの、海星。あ、気持ち良すぎて答えられないのか……。うーん、じゃあ挿入れるけど後でちゃんと理由教えて…………ねっ」
「……あっ、!?」
勢い良くナオキのモノが海星の中に入る。
遠慮無くごりっと奥まで突かれ、海星はすぐに射精してしまった。
正面にある、すっかり曇っている鏡に自分の精液がドロリと付く。あまり良い気分では無いが、そんなことお構い無しに快楽が海星を襲う。
「まっ……て、何で、はげし…」
トントントン、と、子気味よく突かれると気持ち良すぎて腰が砕けそうになる。しかしナオキは「もうちょい頑張れー」と言って、海星の腰を持ち上げる。
角度を変えられ、ビリッとした刺激に貫かれた。
「んぁっ!?」
結局ナオキは、海星がぐったりと動けなくなるまで風呂場での行為を止めなかった。
それが、単なる性欲処理だと、海星は知っている。この行為に愛はないということを、知っている。
でも、それでも。
好きな人に抱かれているという事実だけは揺るがなかった。海星がナオキを好きでいる限り、海星にとっては幸せな行為だ。
(ナオキごめん……)
女性によくモテて、恋人がいない時期など滅多にないナオキにとって海星を抱くというのは、ただのボランティアだ。
海星が1年前、酔って好きだと伝えてしまったから。優しい性格のナオキは、海星を突き放せないから。
様々な理由が重なって、海星は一時的な多福感を得ることができているのだ。
ナオキの腕の中で甘い声を出しながら、今夜も海星は心の中で謝るのだった。
▷▶︎▷
風呂から出た2人は、その流れでベッドへ向かう。ナオキは海星の濡れた髪の毛にキスを落とし、顔、頬、首と下がっていく。
「俺以外とヤッてないよね?」
海星のモノを扱きながら、耳元で低く囁く。海星はビクッと身体を震わせながら首を縦に振った。
しつこく疑われるほど、自分の尻が簡単にナオキを飲み込んでいるのかと思うと恥ずかしすぎる。
「じ、ぶんで………解してたっ……んぁ」
とうとう、白状してしまった。
2週間も会えなくて我慢できなかった、とは言わなかったが、ナオキ以外なんて有り得ないということだけは伝えたかった。
海星が羞恥で顔を隠すと、ナオキは何も言わずに一気に彼のナカに入った。
「は!?ふっざけん……なぁ、風呂場で何回したと思って……!?」
「あー、海星。ちょっと君可愛すぎ」
ナオキのその一言は、海星には聞こえていない。
ほとんど意識が飛んでいるからだ。
そうして、何回、いや何十回イッたのだろう。海星が目覚めた頃、時計の針は昼の12時を指していた。
辺りを見回すと、ナオキはいない。LIMEにはメッセージもない。いつもの事だ。
疲れた海星を起こさないようにと、ナオキなりの配慮なのかもしれないが。
夜は散々海星のことをめちゃくちゃにしておいて、起きたらすっかりいなくなっている。恋人のように添い寝をすることなど無い。
当たり前のことなのに、何故か今日は特に、寂しいと思ってしまった。ナオキとヤッたのが久しぶりだったからだろう。
(少しくらい声掛けてくれても良いじゃんか)
海星は1人、口を尖らせた。
約束の時間を2時間過ぎているのに来ないあの男を、来ると信じて待っている。が、そろそろ眠くなって来た。
(ナオキの奴、遅いなぁ)
1人で開けてしまった缶チューハイはとっくに飲み終えてしまい、空き缶だけが机の上に転がる。
そのカラカラという乾いた音は、いつもより虚しく聞こえる。
(2週間前から約束してたんだから、すっぽかすなんて事は無いよな?)
何の通知も来ないスマホを見ながらローテーブルに突っ伏していると、やっと、ティロンッという着信音が鳴った。
勢い良く身体を起こし、スマホに飛び付く。
【ごめん、飲み会に無理矢理連れてかれてた。今から行く~】
2時間待たされたとか、料理が冷えたとか、そんなのがどうでも良くなるくらいの嬉しい知らせに、海星は立ち上がった。
大慌てで冷えた料理を電子レンジに放り込み温め直す。
数十分してチャイムが鳴った。
「ナオキ!いらっしゃ………」
スキップしながら玄関に向かい、ご機嫌で出迎えると、ナオキ───斎藤直樹は女性モノの香水の匂いをプンプンさせていた。
海星の心に、ぐさりと鋭いものが突き刺さる。現実という名の凶器だ。
「海星久しぶり、テスト前ぶり~かな?」
髪を明るく染めたいかにもチャラそうな男は、海星に向かって手を広げる。
香水の匂いがしようがしまいが、ナオキに手を広げられたら飛び込む。それが海星のルーティンだ。
抱き締められたらもっと強くなった匂いが海星の心を抉るけれど、それ以上に彼の腕の中にいることが幸せだった。
「ご飯あるけど、飲み行ってたならいらないか?」
「海星のご飯が食べたくてほとんど食べなかったんだよ。お酒だってちょっとだけ」
「……そっか。じゃあ食べよ」
「やった~。2週間ぶりの海星の手作り!」
分かりやすく喜ぶナオキを見て、海星は心がほわりと温まる。
(好物ばっか作っといて良かった)
そう思いながらナオキの向かいに座って、唐揚げをちびちびと食べる。
目の前で料理にがっつくナオキを見て、幸せで胸がいっぱいなのだ。
「美味い!も~~、海星の料理が1番美味い!」
いつもは嬉しい褒め言葉なのに、何故かモヤッとした感情を抱いてしまうのは、きっとナオキについた香水のせいだ。
誰と比べてるんだ?
1番ってことは、2番がいるのか?
そんな疑問を心の中に押し留め、「だろ?」と言って笑う。
ナオキが嬉しそうならそれで良いじゃないか。そうやって自分に言い聞かせる。
(俺の気持ちを知ってても、こんな風に友達として接してくれてるんだから)
▷▶︎▷
海星は、自分の恋愛対象が女性では無いことに中学生の頃気が付いた。そして、そのきっかけとなったのは他でもない、ナオキの存在だ。
近隣の小学校に通っていた子どもが中学校で一緒になる。2人は中学2年の時同じクラスになった。
中学の頃からずば抜けてイケメンなのと、ふんわりとした独特の雰囲気で人気者だったナオキ。
人見知りで一定の友達としか話さない海星。
海星はいつも、きゃあきゃあ騒ぐ女子グループと同じで、ナオキを見ていた。
「ナオキくん格好良い」と話している女子たちに密かに頷き、遠くから見ていた。
遠くから見ていただけなのに───何の偶然か、高校でまた同じクラスになった。
それからちょくちょく話すようになり、同じ大学に受かったと分かってからは更に仲が深まった。ナオキのコミュ力とおおらかな性格のお陰だ。
そして去年、海星のナオキへの気持ちがバレた。試しに飲んだ酒で悪酔いし、泣きながら告白したのだそう。海星は酔っていて記憶にないが、その日からだ。
2人が、おかしな関係になったのは。
現在、大学2年生。
海星とナオキは倫理的によろしくないのでは、と言われそうな関係にある。名前があるとすれば、そう、「セフレ」である。
「かーいせい、そろそろお風呂入る?」
食事を終えたナオキは、キッチンで皿を洗う海星の背後でそう聞いた。
「あぁ、洗い物したらな」
「俺待てないよ、早く~」
ナオキはそう言って、洗い物中の海星の肩に顎を乗せる。にやりと意地悪そうに笑う時は、何かを企んでいる時だ。
「……ちょっ、………ナオキ」
海星は一瞬高い声をあげ、ナオキを睨んだ。スウェットの中に入り込んでくる手に気付いた海星は、身をよじって抵抗する。しかし、泡だらけの手では抑えられない。
ナオキの大きくて暖かい手がするりするりと侵入してきてくすぐったい。
「ナオキくすぐったい。止めろ」
「くすぐったいだけ~?」
ナオキはそう言いながら、海星の乳首を触りだした。最初に軽く触れ、海星があまり反応しないのに気付いて、きゅっとつまんだ。
「……っ!?」
海星の身体がびくんと揺れる。
ナオキは満足そうに笑い、更に力を加える。
「なお………っふ、ざけんなよ。皿割れたらどーすんだっ…………よ」
途切れ途切れに言う海星の顔はすでに真っ赤だ。
ナオキはふっと笑って、海星の手に着いた泡を洗い流す。
「後で俺洗っとくから、早く風呂入ろう?」
「……分かったから、離せ!」
自分とナオキをべりっと剥がし、諦めた様子で風呂場へ向かう。香水の匂いが自分にも移っていたから丁度良かったと思うことにして、ナオキを待たずにシャワーを出し始める。
しかし、どんなに早く洗い始めたとて、ナオキからは逃げられない。
カラカラと扉が開き、ナオキが入って来たかと思ったらシャワーを奪われた。
「海星を洗うのは俺の役目じゃーん。……何か今日、機嫌悪い?俺が遅かったから?」
「別に悪くないけど………シャワー返せよ」
取り返そうと手を伸ばしたが、身長差15センチの壁は高い。かすりもせずに、海星にお湯がかけられる。
そしてシャワーが止まったかと思えば、にゅるりとした感覚が海星を包む。
「……ん、」
首、腕、脇を撫でるように洗われ、つい声が出てしまう。
「ん、……ま、待ってナオキ。ベッドでいくらでも、できる…………んぅっ」
ナオキは海星の唇を、唇で塞いだ。それに合わせて海星の1番敏感な場所に触れ始める。
「なお……、ナオキ!待てって、それ以上は出てからっ……。な?」
上目遣いでそう言う海星に、ナオキは微笑んだ。
「2週間ぶりなのに待てると思う?」
「え」
ナオキは海星の前を扱きながら、後ろを解し始めた。前と後ろ、同時に触れられて海星は動揺する。
「……ん、う…。ふろ、でてからってぇ………言ってるだろ!?………なんで…んぁ、あ…」
後ろの指を増やされ、だんだんと快楽に勝てなくなってくる。声は高く、甘くなり、呂律が回らなくなってきた海星に、ナオキは目を細める。
「可愛いねぇ、海星。………でも、不思議だよね。久しぶりなのにもうこんなに柔らかいって。……テスト期間中に俺以外と……なんて事は無いよね?」
後ろを触るナオキの指が激しくなる。ぐちゅっ、ぐちゅっと卑猥な音をたて掻き回される。
「ん?何で答えないの、海星。あ、気持ち良すぎて答えられないのか……。うーん、じゃあ挿入れるけど後でちゃんと理由教えて…………ねっ」
「……あっ、!?」
勢い良くナオキのモノが海星の中に入る。
遠慮無くごりっと奥まで突かれ、海星はすぐに射精してしまった。
正面にある、すっかり曇っている鏡に自分の精液がドロリと付く。あまり良い気分では無いが、そんなことお構い無しに快楽が海星を襲う。
「まっ……て、何で、はげし…」
トントントン、と、子気味よく突かれると気持ち良すぎて腰が砕けそうになる。しかしナオキは「もうちょい頑張れー」と言って、海星の腰を持ち上げる。
角度を変えられ、ビリッとした刺激に貫かれた。
「んぁっ!?」
結局ナオキは、海星がぐったりと動けなくなるまで風呂場での行為を止めなかった。
それが、単なる性欲処理だと、海星は知っている。この行為に愛はないということを、知っている。
でも、それでも。
好きな人に抱かれているという事実だけは揺るがなかった。海星がナオキを好きでいる限り、海星にとっては幸せな行為だ。
(ナオキごめん……)
女性によくモテて、恋人がいない時期など滅多にないナオキにとって海星を抱くというのは、ただのボランティアだ。
海星が1年前、酔って好きだと伝えてしまったから。優しい性格のナオキは、海星を突き放せないから。
様々な理由が重なって、海星は一時的な多福感を得ることができているのだ。
ナオキの腕の中で甘い声を出しながら、今夜も海星は心の中で謝るのだった。
▷▶︎▷
風呂から出た2人は、その流れでベッドへ向かう。ナオキは海星の濡れた髪の毛にキスを落とし、顔、頬、首と下がっていく。
「俺以外とヤッてないよね?」
海星のモノを扱きながら、耳元で低く囁く。海星はビクッと身体を震わせながら首を縦に振った。
しつこく疑われるほど、自分の尻が簡単にナオキを飲み込んでいるのかと思うと恥ずかしすぎる。
「じ、ぶんで………解してたっ……んぁ」
とうとう、白状してしまった。
2週間も会えなくて我慢できなかった、とは言わなかったが、ナオキ以外なんて有り得ないということだけは伝えたかった。
海星が羞恥で顔を隠すと、ナオキは何も言わずに一気に彼のナカに入った。
「は!?ふっざけん……なぁ、風呂場で何回したと思って……!?」
「あー、海星。ちょっと君可愛すぎ」
ナオキのその一言は、海星には聞こえていない。
ほとんど意識が飛んでいるからだ。
そうして、何回、いや何十回イッたのだろう。海星が目覚めた頃、時計の針は昼の12時を指していた。
辺りを見回すと、ナオキはいない。LIMEにはメッセージもない。いつもの事だ。
疲れた海星を起こさないようにと、ナオキなりの配慮なのかもしれないが。
夜は散々海星のことをめちゃくちゃにしておいて、起きたらすっかりいなくなっている。恋人のように添い寝をすることなど無い。
当たり前のことなのに、何故か今日は特に、寂しいと思ってしまった。ナオキとヤッたのが久しぶりだったからだろう。
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