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士官学校編
桜色の瞳と新たな希望【1章完】
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ファラスが滅び、士官学校自体なくなってしまった。
今の私たちは反逆者でレジスタンス。
イレーネの呪いが解けるまでイレーネを守ってもらう場所も必要だし、神官の手も借りたいのだ。
その神官は、というと高位の神官の生き残りは少ない。
アールクドットの国教は亜神を王として崇拝するらしく、ファラスにいた神官達は改宗か死を選ばされ、たまたま外に出ていた神官が生き残ったが階級の高くない者ばかりだった。
2ヶ月ほどが経ち、イレーネが隠れ家の中でなら動けるようになった時に
「ひとまず無事だということを家族には伝えたい」
と言い出した。
しょうがないのでロペスと私で旅をしてきた風を装ってイレーネの実家に行って手紙を渡し、できたら返事をその場で書いてもらう。
イレーネの代筆をして、母からもらったというペンダントを借りる。
常駐の兵に男女の旅装を手に入れてもらい、ロペスと二人でだれにも見られないようエルカルカピースを出てから入り直す。
旅費が心許なくなってきたのでお貴族様に買い取ってもらいたい物があるのだが、どこにいけばいいかと、門に入る順番待ち中に地元の人に聞いてみると、珍しい物ならモンテーロ様がいいと言っていた。
プライドが高く、珍しい物を自慢したい人だとイレーネが言っていたので間違いないだろう。
イレーネから聞いた場所とは違う場所に家があったが、何年も帰ってないんだし何か事情があるのかもしれないな、と考えるのは後回しにした。
教えてくれた場所に行くと、エルカルカピースの領主の屋敷だった。
「なあ、カオル」
「私も同じことを言おうとしてるんだが」
「聞いている話と違うな」
「これは門前払いを食らってもおかしくない」
門番なんている貴族じゃないからすぐにお父様かお母様に会えると言っていたはずだが、2人の門番がばっちり目を光らせて封鎖している門に近づいた。
「すみません、旅のものなのですが、モンテーロ様は珍しい品物を集めていると聞きまして、是非見ていただきたい物があるのですがお目通りできますか」
そう言ってイレーネから預かったペンダントを見せた。
目線だけで私を一瞥し、私が愛想笑いで答えるともう1人の門番に行かせて、門の前で私たちが不審な動きをしないよう見張った。
しばらく待つとお会いになるそうだ、と言われ、応接室に通された。
それからまたしばらく待たされ、イレーネの父と母が現れた。
父は50代、母は30代といったところか。
「で、珍しいものとはなんだね、見せなさい」
挨拶をしようとすると手で止められ、要件だけを言われ、ペンダントと手紙を差し出した。
イレーネの父は手紙を読むと
「で、イレーネは無事ではないのか、どこにいるんだ」
と娘の安否を確認するので、なんだいうよりちゃんとしたお父さんじゃないか、とイレーネの評価に文句を付けつつ現状を伝えた。
「アールクドットの戦士の攻撃により目と手足に呪いがかけられてしまい、日常生活にはなんとか支障はないのですが」
「そうか、子どもが産めるならそれでいい、どこにいる」
「ん? え? どういうことですか」
「もう戦えないのだろう? なら十分じゃないか、私はこの家のためにアールクドットの上級戦士と親族になるのだ、イレーネはどこだ」
「今治療中ですので、場所はちょっと」
「娘の友だちだというから優しくしてやればいちいち反抗しおって! 先生! ファラスの生き残りです!」
この言葉に血の気が引き、ロペスの方を見ると顔色をなくして青ざめていた。
「生き残りだ~?」
そう言いながら入ってきた男は見覚えがあった。
20代なかばの背の高いひょろりとした男。
「あいつは、オレが殺したはず」
ロペスが小声で言った。
「お? てめえ、おれを殺したガキじゃねえか、じゃあもう1人はショウを氷漬けにした女のどっちかだな」
魔力が膨れ上がるのを感じ、慌てて身体強化を掛けて窓を破って逃げ出した。
エルカルカピースの街の外まで走りながら祝詞を唱えアーテーナとイーマスの祝福を得て、街の外まで戦士を誘導した。
「ショウ怒ってたぜ~? 凍らされるわ逃げられるわでな~ お? おれか? おれは色々あって生き返ったのよ。で、反抗的な領主を殺して空いた領主の席に座ろうかな? って思ったらここってつまんないでしょ? なーんにもなくって。管理するのも面倒だから代官を立てようかなって思ったら下位貴族がすり寄ってくるのよ、ぜひ代官に代わりに娘を差し出しますってさ」
なんて父親だ! イレーネから聞いていた話より酷い!
「でもしばらくは暇潰せそうで良かったよ、さっさと潰して生き残りのいる場所吐いてもらわないとね。我慢するか吐かせられるかって勝負っぽくて燃えるでしょ、2人とも順番に遊んであげるから死なないでね。あ、そっちの君とは初めてだったね、第5階戦士ジャック・ヴァルタン、行くよ」
剣を構えたジャックは一気に飛び出しロペスに斬りかかった。
「こいつ! 前より強いぞ!」
「でしょ? これが生き返った秘密さ」
今の私が近接戦闘を挑んでも足を引っ張ることにしかならなそうだが魔法で支援も難しい、ともなると闇雲に当たって隙を作れれば御の字か、と考え二刀流で飛びかかり、ロペスのじゃまにならない位置から剣とヌリカベスティックを叩きつけた。
当たればダメージにはなりそうだがロペスを処理しながら私の二刀流を龍鱗と剣で対応した、一撃が重くなければ龍鱗を貫通しないと思われたか。
実際そうなのだがイレーネがいないのが辛い。
疲れを装い段々と私が繰り出す攻撃回数を減らして私への警戒が薄まるようにしながら隙を伺う。
戦いながらロペスにシャープエッジを掛け剣の威力を上げることで警戒心がギリギリまで薄くなった所でヌリカベスティックでジャックを打ち上げた。
やっぱり身体強化がかかっているとヌリカベスティックのGで気絶させることはできないようで、上空から時間稼ぎにしかならないことされるのはイラっとするんだよね、という叫び声を聞きながら詠唱を始めた。
「神よ悪魔よ我が声を聴け! 炎よ炎! 我が前に立つ愚かなる暗黒の使徒達に
その赤き腕の抱擁を! 火炎球!」
打ち上がったジャックをぽかんと見ていたロペスが詠唱を聞いてニヤリと笑った。
「破壊と再生を司る大神よ!
誉れ高い我が神よ!
宇宙の真理たる御身より出ずる力を我に貸し給え!
吠え猛る御身が力! 捧ぐるは我が魔力!
求むは我らが敵の破壊を! 破壊の輝き!」
上空からスパークランスや炎の矢の様な魔法を打ち込んでくるが魔法障壁にあたって散った破片は受ける覚悟さえすればなんてことはない、多少の怪我のために飲み薬も用意しているのだから。
私達の魔法をみて悲鳴を上げながら落ちてきたジャックに向かって私の火炎球とロペスの破壊の輝きの光弾を解き放ち、破壊と炎が渦巻いてジャックを飲み込んだ。
ロペスの破壊の輝きは私が使った時と違って家1軒を跡形もなく消し飛ばす程度の威力しかでておらず、なるほどこれが丁度いい破壊力か、と感心した。
火柱と破壊の光弾に飲み込まれたジャックは跡形もなく消失した。
「これで生き返ってくることもないだろう」
「イレーネがいないと近接戦闘できないのは辛いわ、隠れ家に帰ろうか」
ロペスとイリュージョンボディをかけてこっそりとエルカルカピースに侵入し、イレーネに今日あったことを報告しようとイレーネの部屋を開ける。
「目が戻ったの!」
元の桜色の瞳に戻ったイレーネが明るい笑顔で迎えてくれた。
イレーネが手を広げて近づいてきた所で、一瞬悩んでから抱きついてきたので受け止めた。
「やっぱりカオルはこっちだよね、でもなんで急に治ったのかな?」
イレーネに今日あったことをかいつまんで報告した。
「戦士に嫁がせるとかとか、昔より酷くなってて落ち込むわ。でも端っこに引っかかってただけの貴族から領主の代官になれると思えば、あの人ならそれくらいは……。
まあ、それはいいわ、殺したはずの戦士が生きていて、殺したらあたしの目が治ったってことは」
「イレーネから削った魂を使って復活したってことなんだろうな」
「殺したはずの戦士の行方と、他の街にいないか調べてもらって、全員倒したらあたし復活ってことね」
「簡単じゃないだろうけどね」
そう言ってイレーネと抱きついた片側の腕を広げ、ロペスを輪に入れてイレーネの魂を取り戻す決意をした。
「頼りにしてるよ!二人とも!」
士官学校編 完
次章へ続く
今の私たちは反逆者でレジスタンス。
イレーネの呪いが解けるまでイレーネを守ってもらう場所も必要だし、神官の手も借りたいのだ。
その神官は、というと高位の神官の生き残りは少ない。
アールクドットの国教は亜神を王として崇拝するらしく、ファラスにいた神官達は改宗か死を選ばされ、たまたま外に出ていた神官が生き残ったが階級の高くない者ばかりだった。
2ヶ月ほどが経ち、イレーネが隠れ家の中でなら動けるようになった時に
「ひとまず無事だということを家族には伝えたい」
と言い出した。
しょうがないのでロペスと私で旅をしてきた風を装ってイレーネの実家に行って手紙を渡し、できたら返事をその場で書いてもらう。
イレーネの代筆をして、母からもらったというペンダントを借りる。
常駐の兵に男女の旅装を手に入れてもらい、ロペスと二人でだれにも見られないようエルカルカピースを出てから入り直す。
旅費が心許なくなってきたのでお貴族様に買い取ってもらいたい物があるのだが、どこにいけばいいかと、門に入る順番待ち中に地元の人に聞いてみると、珍しい物ならモンテーロ様がいいと言っていた。
プライドが高く、珍しい物を自慢したい人だとイレーネが言っていたので間違いないだろう。
イレーネから聞いた場所とは違う場所に家があったが、何年も帰ってないんだし何か事情があるのかもしれないな、と考えるのは後回しにした。
教えてくれた場所に行くと、エルカルカピースの領主の屋敷だった。
「なあ、カオル」
「私も同じことを言おうとしてるんだが」
「聞いている話と違うな」
「これは門前払いを食らってもおかしくない」
門番なんている貴族じゃないからすぐにお父様かお母様に会えると言っていたはずだが、2人の門番がばっちり目を光らせて封鎖している門に近づいた。
「すみません、旅のものなのですが、モンテーロ様は珍しい品物を集めていると聞きまして、是非見ていただきたい物があるのですがお目通りできますか」
そう言ってイレーネから預かったペンダントを見せた。
目線だけで私を一瞥し、私が愛想笑いで答えるともう1人の門番に行かせて、門の前で私たちが不審な動きをしないよう見張った。
しばらく待つとお会いになるそうだ、と言われ、応接室に通された。
それからまたしばらく待たされ、イレーネの父と母が現れた。
父は50代、母は30代といったところか。
「で、珍しいものとはなんだね、見せなさい」
挨拶をしようとすると手で止められ、要件だけを言われ、ペンダントと手紙を差し出した。
イレーネの父は手紙を読むと
「で、イレーネは無事ではないのか、どこにいるんだ」
と娘の安否を確認するので、なんだいうよりちゃんとしたお父さんじゃないか、とイレーネの評価に文句を付けつつ現状を伝えた。
「アールクドットの戦士の攻撃により目と手足に呪いがかけられてしまい、日常生活にはなんとか支障はないのですが」
「そうか、子どもが産めるならそれでいい、どこにいる」
「ん? え? どういうことですか」
「もう戦えないのだろう? なら十分じゃないか、私はこの家のためにアールクドットの上級戦士と親族になるのだ、イレーネはどこだ」
「今治療中ですので、場所はちょっと」
「娘の友だちだというから優しくしてやればいちいち反抗しおって! 先生! ファラスの生き残りです!」
この言葉に血の気が引き、ロペスの方を見ると顔色をなくして青ざめていた。
「生き残りだ~?」
そう言いながら入ってきた男は見覚えがあった。
20代なかばの背の高いひょろりとした男。
「あいつは、オレが殺したはず」
ロペスが小声で言った。
「お? てめえ、おれを殺したガキじゃねえか、じゃあもう1人はショウを氷漬けにした女のどっちかだな」
魔力が膨れ上がるのを感じ、慌てて身体強化を掛けて窓を破って逃げ出した。
エルカルカピースの街の外まで走りながら祝詞を唱えアーテーナとイーマスの祝福を得て、街の外まで戦士を誘導した。
「ショウ怒ってたぜ~? 凍らされるわ逃げられるわでな~ お? おれか? おれは色々あって生き返ったのよ。で、反抗的な領主を殺して空いた領主の席に座ろうかな? って思ったらここってつまんないでしょ? なーんにもなくって。管理するのも面倒だから代官を立てようかなって思ったら下位貴族がすり寄ってくるのよ、ぜひ代官に代わりに娘を差し出しますってさ」
なんて父親だ! イレーネから聞いていた話より酷い!
「でもしばらくは暇潰せそうで良かったよ、さっさと潰して生き残りのいる場所吐いてもらわないとね。我慢するか吐かせられるかって勝負っぽくて燃えるでしょ、2人とも順番に遊んであげるから死なないでね。あ、そっちの君とは初めてだったね、第5階戦士ジャック・ヴァルタン、行くよ」
剣を構えたジャックは一気に飛び出しロペスに斬りかかった。
「こいつ! 前より強いぞ!」
「でしょ? これが生き返った秘密さ」
今の私が近接戦闘を挑んでも足を引っ張ることにしかならなそうだが魔法で支援も難しい、ともなると闇雲に当たって隙を作れれば御の字か、と考え二刀流で飛びかかり、ロペスのじゃまにならない位置から剣とヌリカベスティックを叩きつけた。
当たればダメージにはなりそうだがロペスを処理しながら私の二刀流を龍鱗と剣で対応した、一撃が重くなければ龍鱗を貫通しないと思われたか。
実際そうなのだがイレーネがいないのが辛い。
疲れを装い段々と私が繰り出す攻撃回数を減らして私への警戒が薄まるようにしながら隙を伺う。
戦いながらロペスにシャープエッジを掛け剣の威力を上げることで警戒心がギリギリまで薄くなった所でヌリカベスティックでジャックを打ち上げた。
やっぱり身体強化がかかっているとヌリカベスティックのGで気絶させることはできないようで、上空から時間稼ぎにしかならないことされるのはイラっとするんだよね、という叫び声を聞きながら詠唱を始めた。
「神よ悪魔よ我が声を聴け! 炎よ炎! 我が前に立つ愚かなる暗黒の使徒達に
その赤き腕の抱擁を! 火炎球!」
打ち上がったジャックをぽかんと見ていたロペスが詠唱を聞いてニヤリと笑った。
「破壊と再生を司る大神よ!
誉れ高い我が神よ!
宇宙の真理たる御身より出ずる力を我に貸し給え!
吠え猛る御身が力! 捧ぐるは我が魔力!
求むは我らが敵の破壊を! 破壊の輝き!」
上空からスパークランスや炎の矢の様な魔法を打ち込んでくるが魔法障壁にあたって散った破片は受ける覚悟さえすればなんてことはない、多少の怪我のために飲み薬も用意しているのだから。
私達の魔法をみて悲鳴を上げながら落ちてきたジャックに向かって私の火炎球とロペスの破壊の輝きの光弾を解き放ち、破壊と炎が渦巻いてジャックを飲み込んだ。
ロペスの破壊の輝きは私が使った時と違って家1軒を跡形もなく消し飛ばす程度の威力しかでておらず、なるほどこれが丁度いい破壊力か、と感心した。
火柱と破壊の光弾に飲み込まれたジャックは跡形もなく消失した。
「これで生き返ってくることもないだろう」
「イレーネがいないと近接戦闘できないのは辛いわ、隠れ家に帰ろうか」
ロペスとイリュージョンボディをかけてこっそりとエルカルカピースに侵入し、イレーネに今日あったことを報告しようとイレーネの部屋を開ける。
「目が戻ったの!」
元の桜色の瞳に戻ったイレーネが明るい笑顔で迎えてくれた。
イレーネが手を広げて近づいてきた所で、一瞬悩んでから抱きついてきたので受け止めた。
「やっぱりカオルはこっちだよね、でもなんで急に治ったのかな?」
イレーネに今日あったことをかいつまんで報告した。
「戦士に嫁がせるとかとか、昔より酷くなってて落ち込むわ。でも端っこに引っかかってただけの貴族から領主の代官になれると思えば、あの人ならそれくらいは……。
まあ、それはいいわ、殺したはずの戦士が生きていて、殺したらあたしの目が治ったってことは」
「イレーネから削った魂を使って復活したってことなんだろうな」
「殺したはずの戦士の行方と、他の街にいないか調べてもらって、全員倒したらあたし復活ってことね」
「簡単じゃないだろうけどね」
そう言ってイレーネと抱きついた片側の腕を広げ、ロペスを輪に入れてイレーネの魂を取り戻す決意をした。
「頼りにしてるよ!二人とも!」
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