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あ
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LSDを3枚摂取してから2時間が経った。もう現実が分からない。景色は全てぐにゃぐにゃと曲がりくねっていて俺はただじっとして動けずにいた。
こんなことをした経緯はなんだろう。目を瞑りやかましい世界を遮断して考えた。そうだ、俺は死にたかった。鬱病で会社に行けなくなり退社。全てが嫌になり、このトリップの勢いで自殺しようとしたのだ。肝心なことを忘れていた。飼い猫の後ろからは後光が刺していて派手な演出のようだった。心配そう、というより恐怖の目をこちらに向けて、近づくと逃げた。きっと今の自分は猫から見てもおかしいのだろう。まあいい。
「さてさてさてさてさてさて。どうするか」
正直今はハイになって自殺したいという気持ちがそこまで無い。どうしようか、と目を開けると左右に自分が2人居た。
「なんだ」
「僕達は君にある善と悪心が姿を持ったものだよ」
「ちなみにオレは悪」
自分と瓜二つの人間がそう言って笑った。片方は優しく包み込むような笑顔、もう片方は人でも殺してそうな汚らしく気味の悪い笑顔だった。
「場所を変えようか」
善の俺がその言葉を皮切りに指を立てる。すると自室だったはずの場所が真っ白な空間に移り代わった。真ん中には大きな四角い机と椅子がある。
「なんだ、これ」
「まあまあ焦らないで。こっちの方が話しやすいでしょ」
現実を受け入れられないながらも俺は椅子に座ることにした。悪の俺は背もたれを前にしてそこに腕を組むようにして大股でどすん、と座った。善の俺は静かに、音も立てず座って俺の方を向いた。
「君は死にたいんだ」
「まあ……うん」
「死ぬより殺す方がいいだろ。楽しいぞ。お前スプラッター映画好きなんだから興味あるだろ」
「……そんな勇気はない」
「でも今なら出来そうだろ」
「………分からない」
「殺すなんてダメだよ。自分を殺すのもダメだ。君は本当は生きたいんだろう?家族や友達と楽しく過ごしたい気持ちがあるはずだよ」
どちらの言い分も分かる。まあ俺から生まれたのだから当然か。
「まあどっちか選べや。オレを選んだら最高に刺激的な舞台を用意してやるよ」
「僕を選んで欲しい。君の本心は優しく、平和でありたいはずなんだ。こいつを選んだら大変なことになる」
選ばなくちゃいけないのか。選んでどうなるのか想像もつかないが、普通に考えたら「善」を選ぶべきなのだろう。しかし今の俺としてはもう人生などどうでもいい。楽しい方に導かれたい。
「ちなみに善の俺を選んだらどうなるんだ?」
「君をまともな人間に導く。道を外さないようにするし、そうしていった未来は絶対に明るいよ」
善の俺が少し熱くなって語る。なるほど。コイツを選択すれば俺はようやくまともな人間として生きることが出来るのか。惹かれる。
「悪の場合は?」
「お前が心の奥底で思ってた暗く暴力的な心が全て満たせる。今までのクソみたいな人生なんて忘れるくらいの快楽をくれてやる」
悪の俺は愉快につらつらと語った。こちらも非常に惹かれる。自分はネガティブな性格で昔から暗い気持ちでいることがほとんどだった。それらを綺麗さっぱり満たしてくれるのか。
「本当にそんなことできるのか?」
「できるさ。オレを信じろ」
「ダメだ!僕を選ぶべきだ」
「……いや、俺は悪を選ぶよ。こんな世界で平和に生きたところで何があるんだ。元々自殺するつもりでLSD食ってこんなことになってんだよ。そうだ、迷うまでもなかった」
悪の俺が唾を飛ばし手を叩いて笑う。善の俺は失望しきった顔で俯いた。
「そうか……きっと後悔するよ、君は。そうなってからじゃ遅いことを忠告しておくよ」
「馬鹿は黙ってろッ!!」
悪の俺は怒号を発した直後、口の中から鎌を出してそれを持ち、ブン、と大きく振りかぶった。一瞬時が止まったように感じた後、善の俺の首がポンッと飛んで首から真っ赤な血液が噴き出した。真っ白な空間が次第に赤に染まっていく。
「ギャハハ!なーにが善だよ!死ね!死ね!死ね!」
「綺麗だ……」
自分と全く同じ顔が吹き飛んで血をばら撒く様はなんとも言えない美しさがあった。まるで自分も死んだかのように感じられて脳の奥からドーパミンが押し寄せてくる。
善の俺は倒れると光に包まれて姿を消した。死んだのだろうか。そもそも俺の心の具現化が出て、今殺されてさして驚かずにいる自分のおかしさが凄まじい。LSDが効きすぎている。
「さてと、ゲームをしようか」
場所が自室に戻った。
「今から外に出てモンスターを殺しに行こう」
「モンスター?」
何を言っているんだコイツは。現実にはモンスターなんて居ないはずだ、多分。錯乱してよく分からなくなってきているがそれは分かる。
「見りゃわかる。武器を持っていけ。包丁あるだろ」
はぁ、と納得のいかないままフラフラしながら台所に向かい、普段使っている牛刀包丁を手に取った。
「殺せるだけ殺せ!んじゃ、クエストスタート!」
悪の俺がケタケタ笑いながら玄関の扉を開ける。意味不明なまま包丁片手に外へ出た。今は昼過ぎだと思っていたが、もう夜に近い夕暮れで黒い何かが飛んでいるのが見えた。多分カラスだろう。分からない。もしかしたら頭がおかしくなってるだけで今は朝なのかもしれない。
「こっちだ」
手招く方へただただ向かう。少し歩いたが人を1度も見なかった。余計人気の無さそうな路地に付いた。悪の俺はキョロキョロしている。
俺は何をしているのだろう。そういえば包丁を持って外に出てもよいのだろうか。そもそもここは現実世界なのか? あまりに曖昧で頭がごちゃつく。地面を見るとどんよりと動いていてエスカレーターに乗っているような気分になった。
「お、いたぞッ!!!」
意識を地面から外し、悪の俺が指さした方をむく。するとそこには自分より少し小さいくらいの人間"らしき"モノがいた。 片目が肥大化しすぎて顔を覆うようになっている。スカートから覗く膝からは手が生えていて、何かを探るようにせわしなく動き続けていた。
「なんだよ、あれ」
あまりの気持ち悪さにその場で嘔吐した。虹色だ。虹色の食べ物を食べた記憶はない。
「まだ俺達に気づいてないな。アレ、殺せ」
「殺していいのかよ。ってか逆に俺が殺されないか」
ホラー映画に出てくるバケモノのような姿に流石に恐れ慄いてしまう。
「殺していいやつだよ!それに反撃は絶対してこない!今がチャンスだからいけ!」
背中をドンと押された。その勢いでまた吐きそうになる。もう何がどうなっているんだ。頭が回らない。これは夢か?
「やればいいんだろ、やれば!」
そのバケモノの元へ走り出す。途中で俺に気づいたバケモノはただひたすらに逃げ出した。しかし足が遅い。ものの数秒で後ろ髪を掴んだ。
「ねq6J活オ!?」
振り向いて意味不明な言語を使い出した。見た目も相まって余計に奇妙さが増す。
「死ね!!!」
視界に入れたくないほどの醜態に耐えられず、左手の包丁を振り上げて大きな目玉に突き刺す。緑色の液体がどっと溢れ出る。その瞬間心臓が強く鼓動した。脳からつま先まで得も言えぬ気持ちよさが全身に駆け巡る。
「アッハッハッハッハッ!なんだこれ!」
地を這うように逃げようとしたバケモノの膝の裏にもう一度包丁を深く刺し込む。鉄が肉を分けて奥に進んでいく感覚がこれでもかと感じられる。
「いいねえ!お前はずっとこうしたかったんだよ!」
悪の俺を無視してひたすら刺す。肉を抉る。殴る。
ああ、なんて幸せなのだろう!見るに堪えないバケモノを殺すのは今まで得てきたどんな刺激より強烈で、美しくて、愛を感じた。
「魑jwpm……ネ覺壆……」
その言葉を最後にバケモノは動かなくなった。地面と自分の服には緑色の液体がこれでもかと付着していた。
「どうだ、気持ちいいか?」
手で顔を覆ってほくそ笑んでいると悪の俺が近づいて聞いてきた。
「最高に決まってんだろ。お前も俺なんだから分かるだろ」
「それはよかった」
俺らは2人して唾を飛ばして笑い合った。幸せとはこういうことなのだろう。気づけなかった。
それから腹が減ったのでそのバケモノの肉を少し食べた。血の味が広がって不味かったが滾るものがあった。
「どうする?帰って自殺するか?」
「そうする」
もう思い残したことはない。満足しきって悪の俺と手を繋いで家まで向かった。空は青い気がした。
「準備おっけ」
ロープを部屋の電灯に吊るして縛った。椅子を持ってきた。もういつでも死ねる。
「そういえばバケモノの血みたいなやつ、赤色になってるけど」
途中で気づいた。服に付着していたくすんだ緑色だった血は綺麗な赤色に変わっている。
「ああ、だってお前が殺したの人だもん」
悪の俺は寝っ転がりながらあっけらかんと答えた。
「ああ、だからあんなに気持ちが良かったのか」
記憶を辿ると確かに自分は人間を殺していた。制服を着た、黒髪の女子高生だ。
「大人しそうなJK。お前の好みもちゃんと考えたよ」
「やるじゃん」
拳をくっつける。その刹那、玄関の扉をドンドンと叩く音が聞こえた。男らしき声が俺を呼んでいるような気がした。
「あ、早く死なないとだ」
急いで椅子に足を乗せてロープを首にくくる。
「行ってらっしゃい」
悪の俺がニカッと笑った。その笑みは聖人のように優しかった。
「行ってきます」
力を入れて椅子を蹴飛ばす。視界がグラグラする。苦しいがなんだか気持ちいい。玄関のドアが壊れるような音がした。
いい人生だった。悪を選んでよかった。
こんなことをした経緯はなんだろう。目を瞑りやかましい世界を遮断して考えた。そうだ、俺は死にたかった。鬱病で会社に行けなくなり退社。全てが嫌になり、このトリップの勢いで自殺しようとしたのだ。肝心なことを忘れていた。飼い猫の後ろからは後光が刺していて派手な演出のようだった。心配そう、というより恐怖の目をこちらに向けて、近づくと逃げた。きっと今の自分は猫から見てもおかしいのだろう。まあいい。
「さてさてさてさてさてさて。どうするか」
正直今はハイになって自殺したいという気持ちがそこまで無い。どうしようか、と目を開けると左右に自分が2人居た。
「なんだ」
「僕達は君にある善と悪心が姿を持ったものだよ」
「ちなみにオレは悪」
自分と瓜二つの人間がそう言って笑った。片方は優しく包み込むような笑顔、もう片方は人でも殺してそうな汚らしく気味の悪い笑顔だった。
「場所を変えようか」
善の俺がその言葉を皮切りに指を立てる。すると自室だったはずの場所が真っ白な空間に移り代わった。真ん中には大きな四角い机と椅子がある。
「なんだ、これ」
「まあまあ焦らないで。こっちの方が話しやすいでしょ」
現実を受け入れられないながらも俺は椅子に座ることにした。悪の俺は背もたれを前にしてそこに腕を組むようにして大股でどすん、と座った。善の俺は静かに、音も立てず座って俺の方を向いた。
「君は死にたいんだ」
「まあ……うん」
「死ぬより殺す方がいいだろ。楽しいぞ。お前スプラッター映画好きなんだから興味あるだろ」
「……そんな勇気はない」
「でも今なら出来そうだろ」
「………分からない」
「殺すなんてダメだよ。自分を殺すのもダメだ。君は本当は生きたいんだろう?家族や友達と楽しく過ごしたい気持ちがあるはずだよ」
どちらの言い分も分かる。まあ俺から生まれたのだから当然か。
「まあどっちか選べや。オレを選んだら最高に刺激的な舞台を用意してやるよ」
「僕を選んで欲しい。君の本心は優しく、平和でありたいはずなんだ。こいつを選んだら大変なことになる」
選ばなくちゃいけないのか。選んでどうなるのか想像もつかないが、普通に考えたら「善」を選ぶべきなのだろう。しかし今の俺としてはもう人生などどうでもいい。楽しい方に導かれたい。
「ちなみに善の俺を選んだらどうなるんだ?」
「君をまともな人間に導く。道を外さないようにするし、そうしていった未来は絶対に明るいよ」
善の俺が少し熱くなって語る。なるほど。コイツを選択すれば俺はようやくまともな人間として生きることが出来るのか。惹かれる。
「悪の場合は?」
「お前が心の奥底で思ってた暗く暴力的な心が全て満たせる。今までのクソみたいな人生なんて忘れるくらいの快楽をくれてやる」
悪の俺は愉快につらつらと語った。こちらも非常に惹かれる。自分はネガティブな性格で昔から暗い気持ちでいることがほとんどだった。それらを綺麗さっぱり満たしてくれるのか。
「本当にそんなことできるのか?」
「できるさ。オレを信じろ」
「ダメだ!僕を選ぶべきだ」
「……いや、俺は悪を選ぶよ。こんな世界で平和に生きたところで何があるんだ。元々自殺するつもりでLSD食ってこんなことになってんだよ。そうだ、迷うまでもなかった」
悪の俺が唾を飛ばし手を叩いて笑う。善の俺は失望しきった顔で俯いた。
「そうか……きっと後悔するよ、君は。そうなってからじゃ遅いことを忠告しておくよ」
「馬鹿は黙ってろッ!!」
悪の俺は怒号を発した直後、口の中から鎌を出してそれを持ち、ブン、と大きく振りかぶった。一瞬時が止まったように感じた後、善の俺の首がポンッと飛んで首から真っ赤な血液が噴き出した。真っ白な空間が次第に赤に染まっていく。
「ギャハハ!なーにが善だよ!死ね!死ね!死ね!」
「綺麗だ……」
自分と全く同じ顔が吹き飛んで血をばら撒く様はなんとも言えない美しさがあった。まるで自分も死んだかのように感じられて脳の奥からドーパミンが押し寄せてくる。
善の俺は倒れると光に包まれて姿を消した。死んだのだろうか。そもそも俺の心の具現化が出て、今殺されてさして驚かずにいる自分のおかしさが凄まじい。LSDが効きすぎている。
「さてと、ゲームをしようか」
場所が自室に戻った。
「今から外に出てモンスターを殺しに行こう」
「モンスター?」
何を言っているんだコイツは。現実にはモンスターなんて居ないはずだ、多分。錯乱してよく分からなくなってきているがそれは分かる。
「見りゃわかる。武器を持っていけ。包丁あるだろ」
はぁ、と納得のいかないままフラフラしながら台所に向かい、普段使っている牛刀包丁を手に取った。
「殺せるだけ殺せ!んじゃ、クエストスタート!」
悪の俺がケタケタ笑いながら玄関の扉を開ける。意味不明なまま包丁片手に外へ出た。今は昼過ぎだと思っていたが、もう夜に近い夕暮れで黒い何かが飛んでいるのが見えた。多分カラスだろう。分からない。もしかしたら頭がおかしくなってるだけで今は朝なのかもしれない。
「こっちだ」
手招く方へただただ向かう。少し歩いたが人を1度も見なかった。余計人気の無さそうな路地に付いた。悪の俺はキョロキョロしている。
俺は何をしているのだろう。そういえば包丁を持って外に出てもよいのだろうか。そもそもここは現実世界なのか? あまりに曖昧で頭がごちゃつく。地面を見るとどんよりと動いていてエスカレーターに乗っているような気分になった。
「お、いたぞッ!!!」
意識を地面から外し、悪の俺が指さした方をむく。するとそこには自分より少し小さいくらいの人間"らしき"モノがいた。 片目が肥大化しすぎて顔を覆うようになっている。スカートから覗く膝からは手が生えていて、何かを探るようにせわしなく動き続けていた。
「なんだよ、あれ」
あまりの気持ち悪さにその場で嘔吐した。虹色だ。虹色の食べ物を食べた記憶はない。
「まだ俺達に気づいてないな。アレ、殺せ」
「殺していいのかよ。ってか逆に俺が殺されないか」
ホラー映画に出てくるバケモノのような姿に流石に恐れ慄いてしまう。
「殺していいやつだよ!それに反撃は絶対してこない!今がチャンスだからいけ!」
背中をドンと押された。その勢いでまた吐きそうになる。もう何がどうなっているんだ。頭が回らない。これは夢か?
「やればいいんだろ、やれば!」
そのバケモノの元へ走り出す。途中で俺に気づいたバケモノはただひたすらに逃げ出した。しかし足が遅い。ものの数秒で後ろ髪を掴んだ。
「ねq6J活オ!?」
振り向いて意味不明な言語を使い出した。見た目も相まって余計に奇妙さが増す。
「死ね!!!」
視界に入れたくないほどの醜態に耐えられず、左手の包丁を振り上げて大きな目玉に突き刺す。緑色の液体がどっと溢れ出る。その瞬間心臓が強く鼓動した。脳からつま先まで得も言えぬ気持ちよさが全身に駆け巡る。
「アッハッハッハッハッ!なんだこれ!」
地を這うように逃げようとしたバケモノの膝の裏にもう一度包丁を深く刺し込む。鉄が肉を分けて奥に進んでいく感覚がこれでもかと感じられる。
「いいねえ!お前はずっとこうしたかったんだよ!」
悪の俺を無視してひたすら刺す。肉を抉る。殴る。
ああ、なんて幸せなのだろう!見るに堪えないバケモノを殺すのは今まで得てきたどんな刺激より強烈で、美しくて、愛を感じた。
「魑jwpm……ネ覺壆……」
その言葉を最後にバケモノは動かなくなった。地面と自分の服には緑色の液体がこれでもかと付着していた。
「どうだ、気持ちいいか?」
手で顔を覆ってほくそ笑んでいると悪の俺が近づいて聞いてきた。
「最高に決まってんだろ。お前も俺なんだから分かるだろ」
「それはよかった」
俺らは2人して唾を飛ばして笑い合った。幸せとはこういうことなのだろう。気づけなかった。
それから腹が減ったのでそのバケモノの肉を少し食べた。血の味が広がって不味かったが滾るものがあった。
「どうする?帰って自殺するか?」
「そうする」
もう思い残したことはない。満足しきって悪の俺と手を繋いで家まで向かった。空は青い気がした。
「準備おっけ」
ロープを部屋の電灯に吊るして縛った。椅子を持ってきた。もういつでも死ねる。
「そういえばバケモノの血みたいなやつ、赤色になってるけど」
途中で気づいた。服に付着していたくすんだ緑色だった血は綺麗な赤色に変わっている。
「ああ、だってお前が殺したの人だもん」
悪の俺は寝っ転がりながらあっけらかんと答えた。
「ああ、だからあんなに気持ちが良かったのか」
記憶を辿ると確かに自分は人間を殺していた。制服を着た、黒髪の女子高生だ。
「大人しそうなJK。お前の好みもちゃんと考えたよ」
「やるじゃん」
拳をくっつける。その刹那、玄関の扉をドンドンと叩く音が聞こえた。男らしき声が俺を呼んでいるような気がした。
「あ、早く死なないとだ」
急いで椅子に足を乗せてロープを首にくくる。
「行ってらっしゃい」
悪の俺がニカッと笑った。その笑みは聖人のように優しかった。
「行ってきます」
力を入れて椅子を蹴飛ばす。視界がグラグラする。苦しいがなんだか気持ちいい。玄関のドアが壊れるような音がした。
いい人生だった。悪を選んでよかった。
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