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遺書
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田舎とも都会とも言えない中途半端な町で生まれた。親によると幼少期は好奇心が旺盛でデパートで勝手にフラフラ興味がある方へ行ってしまい度々困らせたという。小学生の頃も明るい性格で友人も多く居た。体重が50キロ以上あって丸々と太っていたが、自分で言うのも気が引けるが優しい性格故に異性に好かれることもしばしばあった。
ところが中学生になると打って変わって暗い人間性が構築されていった。人と話すのがなんだが怖く、夜遅くまでネットに入り浸って下を向く回数が著しく増えた。仲がいい人とはそれまで通り明るく話すのに、塾やクラスのあまり仲の良くない人の前では返事すらしない始末だった。それでも虐められることなどはなく、みんな優しく接してくれた。この頃から異性に恐怖を抱き、どう話せばいいのか分からなくなっていた。
高校時代は男子が圧倒的に多い3年同じ面子のクラスで、わりかしやっていくのが楽だった記憶がある。しかし家庭内でのストレスが多くあった。兄が居るのだが彼女を家に頻繁に連れてくる。自分と兄の部屋は1つの部屋をプラスチックの安っぽい板で遮られたもので、物音や話し声は丸聞こえである。俺は自分の1番落ち着く空間である自室に他人同然の人間が入ってくるのがこの上なく不快で気持ちが悪かった。家族でさえ部屋に入ってきたら睨みつけるようにして明らかに不愉快そうな表情を向けていた。そんな中兄はお構い無しに彼女とイチャイチャして、性行為に及ぶことさえあった。イヤホンをつけて無理やりかき消していたが発狂しそうなほどだった。この時から自分の精神は狂い始める速度を上げていったと思う。
また、昔から大型犬がとてつもなく苦手なのだが、ある日兄がゴールデンレトリバーを2匹無断で飼い始めた。これはまだ大人しいからなんとか許容できたのだが、日が経って今度は臆病なメスのドーベルマンを飼いだした。その犬は外の小さな物音にも脅えてこの世で1番耳障りな鳴き声をあげる。初めて家に来た日、どこまでも着いてくるその犬に耐えきれず家のものを破壊して床に向かってひたすら叫んだ。
高校2年だか3年だか曖昧だが、そんな毎日にまともな状態で過ごせる気がせず、安心するために眠剤や風邪薬を飲み始めた。作用よりも薬を飲むことによって「自分は落ち着いていられる」と信じ込むために及んだものだ。毎日夜泣きながらそんな最低な時間を送り、ある日気づいたら風邪薬を1瓶全部飲んでしまった。地獄のような吐き気と頭痛が襲い5、6時間嘔吐し続けた。それに気づいた母親が真夜中に起きて、自分の体をさすり続けた。それがなんとか収まった朝方、包み隠さず全てを話した。母親が涙ぐみながら「辛かったんだね、そんなに苦しめてたんだね」と放った言葉は未だに鮮明に思い出せる。こんな辛いのは全て自分のせいだと責め続けていた。それから兄が自分に優しくなったような気がする。
推薦で夜間の文系大学に入学が決まった頃、それに合わせるように父親に1000万余りの借金があり、住んでいる家をうらなければならなくなったことが告げられた。結果離婚することになり父親からは「こんな親でごめんな」と謝罪された。生まれなければよかったと最も強く思ったのはその時かもしれない。父親はその後行方不明になって森で発見されたらしいが、それからどうなったかは分からない。
新しい家に引っ越してからあるウイルスのせいで講義はほぼ全部オンラインになった。なんとなく選んだ学部の内容にさして興味もわかず、適当に受けて退屈な日々を送っていた。家族に嫌われている父親にこれ以上似たくないとただ思っていた。自分は性格も顔も父親似で、母親にも兄にもどこか嫌われているような気がしていた。家にさえ居場所がないと塞ぎ込んでいた。
大学2年生の春、高校時代にオーバードーズをしたのを思い出して風邪薬をまた買った。それから一時の幸福と現実逃避にはまり込み、転売で稼いだ汚い金を全て使い果たした。市販薬に留まらず個人輸入で処方箋で貰えるような強い作用の鎮痛剤や、合法で精神作用のある大麻、LSDの類似成分に溺れた。当時は薬で性格の変わった自分が普通になって元の自分を見失っていた。体重が7.8キロ減って顔は薬物中毒者らしい可哀想な痩せこけた形に変わっていた。鏡を見るのが余計に嫌いになって、ただこの現実から逃げ続けていた。
大学3年生の夏休みの終わり頃、自分の腕や足を切る様になった。小学生の時愛用していたハサミはびっしりと黒い血が付いていてなんだか虚しくなった。高校時代から腕を殴ったり頭をうちつけたりしていたのでそんなに危ない行為とも思わなかった。今思えばこの行為がもう自分の許容範囲を超えた赤信号であった気がする。
リストカットをした数日後、鎮痛剤を50錠、風邪薬を1瓶飲み、合法大麻を数十回吸い、合法のLSDを半枚ほど食べて、過呼吸になりながら発狂して体を切り刻んだ。優しい人が通話でずっと声をかけてくれたが、それを無視して「早く殺せ」だの「死ね」だの叫び続けていた。朝になってトイレで嘔吐して狂っていたら母親が来て、白目の自分の体を強く揺すって「なんか飲んだの」「大丈夫?」と尋ね続けていた。
そこでやっとオーバードーズに依存していることを告白した。「生まれるか生まれないか選べるなら生まれない方を選ぶくらい辛くて仕方がない」としどろもどろな頭で呟いたら「そっかぁ。それは辛いこと言うね」とまた母親は泣きそうになっていた。自分はどれだけ家族を苦しませれば気が済むのだろうと考えた。
それから数日は歩くのもやっとで、手が異常に震えてフラッシュバックで過呼吸になることが何回かあった。親が心療内科に予約をしてくれて行った結果鬱病だと診断された。医師はとりあえず薬をやめて今の状況をどうにかしよう、と淡々と話して薬を処方された。
そこから2ヶ月半が経って現在に至るのだが、鬱病が治る気配は全くしなかった。医師に相談しても当たり障りのないことを言われて処方箋も変わらない。また風邪薬のオーバードーズに手を出してしまい、今は親に隠れてそこそこの頻度で飲んでしまっている。
自分はそう遠くない内に自殺をしてしまうと思う。楽しいこともあるにはあるが、辛さがそれを上回って影のようにずっと着いてくる。好きな人ができたが、その人は自分に対して好意を抱くことはほぼほぼ無いことが分かっているから諦めて忘れるのが善だと考える。来年には大学を卒業するので就職先を決めなければならないのだが、今の惨状の中でバイトすらしていないのに職業など決められる気もしない。死ねたら楽だと思うし、最近は死後の世界が気になって仕方がないのだ。
やはり生まれなければよかったという結論になってしまう。ただ感情を吐き出すために書く小説は陳腐で評価されない。悲しいことに才能が全くない。このまま無能として苦しみ続けながら生きるのにも限界が来るだろう。
自殺をするなら突発的に済ませると思うので、これを遺書として書き残しておく。家族と10年以上関わってくれた友人、そして好きな人には感謝の気持ちがある。こんな自分に楽しい時間をくれて、辛い時は助けてくれて、不幸ばかりだと思い込んでいたが、自分はそれなりに幸せな人間だとも思う。きっと死んだら悲しんでくれるだろう。だがその存在を持ってしてもこの世界から姿を消し去りたい感情があるため仕方の無いことだ。
自分のような醜く可哀想な人間が生まれない世界を望む。
ところが中学生になると打って変わって暗い人間性が構築されていった。人と話すのがなんだが怖く、夜遅くまでネットに入り浸って下を向く回数が著しく増えた。仲がいい人とはそれまで通り明るく話すのに、塾やクラスのあまり仲の良くない人の前では返事すらしない始末だった。それでも虐められることなどはなく、みんな優しく接してくれた。この頃から異性に恐怖を抱き、どう話せばいいのか分からなくなっていた。
高校時代は男子が圧倒的に多い3年同じ面子のクラスで、わりかしやっていくのが楽だった記憶がある。しかし家庭内でのストレスが多くあった。兄が居るのだが彼女を家に頻繁に連れてくる。自分と兄の部屋は1つの部屋をプラスチックの安っぽい板で遮られたもので、物音や話し声は丸聞こえである。俺は自分の1番落ち着く空間である自室に他人同然の人間が入ってくるのがこの上なく不快で気持ちが悪かった。家族でさえ部屋に入ってきたら睨みつけるようにして明らかに不愉快そうな表情を向けていた。そんな中兄はお構い無しに彼女とイチャイチャして、性行為に及ぶことさえあった。イヤホンをつけて無理やりかき消していたが発狂しそうなほどだった。この時から自分の精神は狂い始める速度を上げていったと思う。
また、昔から大型犬がとてつもなく苦手なのだが、ある日兄がゴールデンレトリバーを2匹無断で飼い始めた。これはまだ大人しいからなんとか許容できたのだが、日が経って今度は臆病なメスのドーベルマンを飼いだした。その犬は外の小さな物音にも脅えてこの世で1番耳障りな鳴き声をあげる。初めて家に来た日、どこまでも着いてくるその犬に耐えきれず家のものを破壊して床に向かってひたすら叫んだ。
高校2年だか3年だか曖昧だが、そんな毎日にまともな状態で過ごせる気がせず、安心するために眠剤や風邪薬を飲み始めた。作用よりも薬を飲むことによって「自分は落ち着いていられる」と信じ込むために及んだものだ。毎日夜泣きながらそんな最低な時間を送り、ある日気づいたら風邪薬を1瓶全部飲んでしまった。地獄のような吐き気と頭痛が襲い5、6時間嘔吐し続けた。それに気づいた母親が真夜中に起きて、自分の体をさすり続けた。それがなんとか収まった朝方、包み隠さず全てを話した。母親が涙ぐみながら「辛かったんだね、そんなに苦しめてたんだね」と放った言葉は未だに鮮明に思い出せる。こんな辛いのは全て自分のせいだと責め続けていた。それから兄が自分に優しくなったような気がする。
推薦で夜間の文系大学に入学が決まった頃、それに合わせるように父親に1000万余りの借金があり、住んでいる家をうらなければならなくなったことが告げられた。結果離婚することになり父親からは「こんな親でごめんな」と謝罪された。生まれなければよかったと最も強く思ったのはその時かもしれない。父親はその後行方不明になって森で発見されたらしいが、それからどうなったかは分からない。
新しい家に引っ越してからあるウイルスのせいで講義はほぼ全部オンラインになった。なんとなく選んだ学部の内容にさして興味もわかず、適当に受けて退屈な日々を送っていた。家族に嫌われている父親にこれ以上似たくないとただ思っていた。自分は性格も顔も父親似で、母親にも兄にもどこか嫌われているような気がしていた。家にさえ居場所がないと塞ぎ込んでいた。
大学2年生の春、高校時代にオーバードーズをしたのを思い出して風邪薬をまた買った。それから一時の幸福と現実逃避にはまり込み、転売で稼いだ汚い金を全て使い果たした。市販薬に留まらず個人輸入で処方箋で貰えるような強い作用の鎮痛剤や、合法で精神作用のある大麻、LSDの類似成分に溺れた。当時は薬で性格の変わった自分が普通になって元の自分を見失っていた。体重が7.8キロ減って顔は薬物中毒者らしい可哀想な痩せこけた形に変わっていた。鏡を見るのが余計に嫌いになって、ただこの現実から逃げ続けていた。
大学3年生の夏休みの終わり頃、自分の腕や足を切る様になった。小学生の時愛用していたハサミはびっしりと黒い血が付いていてなんだか虚しくなった。高校時代から腕を殴ったり頭をうちつけたりしていたのでそんなに危ない行為とも思わなかった。今思えばこの行為がもう自分の許容範囲を超えた赤信号であった気がする。
リストカットをした数日後、鎮痛剤を50錠、風邪薬を1瓶飲み、合法大麻を数十回吸い、合法のLSDを半枚ほど食べて、過呼吸になりながら発狂して体を切り刻んだ。優しい人が通話でずっと声をかけてくれたが、それを無視して「早く殺せ」だの「死ね」だの叫び続けていた。朝になってトイレで嘔吐して狂っていたら母親が来て、白目の自分の体を強く揺すって「なんか飲んだの」「大丈夫?」と尋ね続けていた。
そこでやっとオーバードーズに依存していることを告白した。「生まれるか生まれないか選べるなら生まれない方を選ぶくらい辛くて仕方がない」としどろもどろな頭で呟いたら「そっかぁ。それは辛いこと言うね」とまた母親は泣きそうになっていた。自分はどれだけ家族を苦しませれば気が済むのだろうと考えた。
それから数日は歩くのもやっとで、手が異常に震えてフラッシュバックで過呼吸になることが何回かあった。親が心療内科に予約をしてくれて行った結果鬱病だと診断された。医師はとりあえず薬をやめて今の状況をどうにかしよう、と淡々と話して薬を処方された。
そこから2ヶ月半が経って現在に至るのだが、鬱病が治る気配は全くしなかった。医師に相談しても当たり障りのないことを言われて処方箋も変わらない。また風邪薬のオーバードーズに手を出してしまい、今は親に隠れてそこそこの頻度で飲んでしまっている。
自分はそう遠くない内に自殺をしてしまうと思う。楽しいこともあるにはあるが、辛さがそれを上回って影のようにずっと着いてくる。好きな人ができたが、その人は自分に対して好意を抱くことはほぼほぼ無いことが分かっているから諦めて忘れるのが善だと考える。来年には大学を卒業するので就職先を決めなければならないのだが、今の惨状の中でバイトすらしていないのに職業など決められる気もしない。死ねたら楽だと思うし、最近は死後の世界が気になって仕方がないのだ。
やはり生まれなければよかったという結論になってしまう。ただ感情を吐き出すために書く小説は陳腐で評価されない。悲しいことに才能が全くない。このまま無能として苦しみ続けながら生きるのにも限界が来るだろう。
自殺をするなら突発的に済ませると思うので、これを遺書として書き残しておく。家族と10年以上関わってくれた友人、そして好きな人には感謝の気持ちがある。こんな自分に楽しい時間をくれて、辛い時は助けてくれて、不幸ばかりだと思い込んでいたが、自分はそれなりに幸せな人間だとも思う。きっと死んだら悲しんでくれるだろう。だがその存在を持ってしてもこの世界から姿を消し去りたい感情があるため仕方の無いことだ。
自分のような醜く可哀想な人間が生まれない世界を望む。
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