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第一章 第1話 出会い
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ここ最近の出来事により、僕の頭の中は鈴谷さんの事でいっぱいになっていた。
「あー今日はなんか調子悪いな。ぜんぜんだわ」
そんな気持ちをどうにかしようと久々のゲーム配信をすることにした。
だが全く集中が出来ずに何でもないところでやられたり、普段はしないミスばかりしてしまった。
「でもここからが本番だからな」
と自分に言い聞かせつつ配信を続けるも、やはり結果は芳しくなかった。
「みんな、なんか今日はごめんねぇ。次回までにまた強くなってくるから」
そういうことで配信を終えようとした時、オープンチャットで質問が飛んできた。
「最近か…… そうだね。これは僕の友人の話なんだけど―」
その質問は僕の最近の悩みというか、そんなものに近い内容だったので答えつつ逆にリスナーへ質問をしてみる事にした。
すると思ったよりも多くの回答が来た。
しかし大体はみんな似たような回答ばかりで結果としては解決とまではいかなかった。
「それじゃ、みんな。今日もありがとうね。これで本当に閉じるから、ではまた」
配信を終えるとベランダに出て煙草に火を点けた。
曇り空の下、ちりちりと煙草の先が燃えていく音だけが聞こえた。
頭上の雲は分厚く、無駄だとは分かっているけれど少しでも星空が見えないものだろうかと口に含んだ煙を上空へ吹き上げてその雲をどけようとする。
だが結局はその雲が余計に分厚くなったように感じただけだった。
「やっぱり鈴谷さんは僕の事が……」
鷹谷の言葉といい、鈴谷さん本人の様子といい、だからと言って賢木との会話もあってすっかり訳が分からなくなっていた。
さっきのリスナーのみんなの答えもそうだ。
その大体は鷹谷のように『鈴谷さんは僕が好きである』という答えに通じるものだった。
確かに顔は可愛い。年上には見えない。
自分で言うのもあれだが、やはり僕は美人や可愛いといったように見た目が良い人が好きだ。
だがそれで何度も傷ついただろう。
ふと賢木の言葉が脳裏に蘇る。
「見た目がいい人には大体何かがあるんだよな……」
それが許せる範囲の事なら一向に構わない。
だがそうでないなら、きっと僕はまた同じように落胆し勝手に傷ついて別れる事になるだろう。
今度は先日の芹乃さんとの会話を思い出す。
僕に合う人は本当に少ないのかもしれないな。
短くなった煙草を用意していた水の入った缶コーヒーの空き缶へ捨てる。
僕自身の気持ちは実際はどうなんだ?
好きなのか、嫌いなのか。その答えに至らなくても鈴谷さんをどう思っているのかは分かるはずだ。
もう少しだけこの静かな曇り空の下で考えてみることにし、新しい煙草に火を点けた。
鈴谷さんは口数は少ないながらも清楚感があり、どこか不思議な雰囲気を纏っている。
それでいてどこかほっとけないような、時折危なっかしいような、気になることが多々ある。
たまに憂いにも似た表情を見せる事がある。
それがどことなく薄幸の少女のように儚げに見えることがある。
元々の可愛らしいく童顔という外見も相まって、たまに魅了のような感覚に陥ることだってあった。
そんな大人しい印象の鈴谷さん。
内面としても遠慮がちで自分から何かをするような感じではない。
うーん。なんだろう。
素直に考えていたら、悪いというか僕にとって都合の悪い所が見当たらないな。
どうしたものか。
気にするあまり、いつの間にか鈴谷さんの事が本当に気になって仕方がなくなっていた。
僕はまさか……
その時、ほんの少しだけ、ほんの一瞬だけ、今まで美味しくなかった煙草に美味さ感じた。
「あー今日はなんか調子悪いな。ぜんぜんだわ」
そんな気持ちをどうにかしようと久々のゲーム配信をすることにした。
だが全く集中が出来ずに何でもないところでやられたり、普段はしないミスばかりしてしまった。
「でもここからが本番だからな」
と自分に言い聞かせつつ配信を続けるも、やはり結果は芳しくなかった。
「みんな、なんか今日はごめんねぇ。次回までにまた強くなってくるから」
そういうことで配信を終えようとした時、オープンチャットで質問が飛んできた。
「最近か…… そうだね。これは僕の友人の話なんだけど―」
その質問は僕の最近の悩みというか、そんなものに近い内容だったので答えつつ逆にリスナーへ質問をしてみる事にした。
すると思ったよりも多くの回答が来た。
しかし大体はみんな似たような回答ばかりで結果としては解決とまではいかなかった。
「それじゃ、みんな。今日もありがとうね。これで本当に閉じるから、ではまた」
配信を終えるとベランダに出て煙草に火を点けた。
曇り空の下、ちりちりと煙草の先が燃えていく音だけが聞こえた。
頭上の雲は分厚く、無駄だとは分かっているけれど少しでも星空が見えないものだろうかと口に含んだ煙を上空へ吹き上げてその雲をどけようとする。
だが結局はその雲が余計に分厚くなったように感じただけだった。
「やっぱり鈴谷さんは僕の事が……」
鷹谷の言葉といい、鈴谷さん本人の様子といい、だからと言って賢木との会話もあってすっかり訳が分からなくなっていた。
さっきのリスナーのみんなの答えもそうだ。
その大体は鷹谷のように『鈴谷さんは僕が好きである』という答えに通じるものだった。
確かに顔は可愛い。年上には見えない。
自分で言うのもあれだが、やはり僕は美人や可愛いといったように見た目が良い人が好きだ。
だがそれで何度も傷ついただろう。
ふと賢木の言葉が脳裏に蘇る。
「見た目がいい人には大体何かがあるんだよな……」
それが許せる範囲の事なら一向に構わない。
だがそうでないなら、きっと僕はまた同じように落胆し勝手に傷ついて別れる事になるだろう。
今度は先日の芹乃さんとの会話を思い出す。
僕に合う人は本当に少ないのかもしれないな。
短くなった煙草を用意していた水の入った缶コーヒーの空き缶へ捨てる。
僕自身の気持ちは実際はどうなんだ?
好きなのか、嫌いなのか。その答えに至らなくても鈴谷さんをどう思っているのかは分かるはずだ。
もう少しだけこの静かな曇り空の下で考えてみることにし、新しい煙草に火を点けた。
鈴谷さんは口数は少ないながらも清楚感があり、どこか不思議な雰囲気を纏っている。
それでいてどこかほっとけないような、時折危なっかしいような、気になることが多々ある。
たまに憂いにも似た表情を見せる事がある。
それがどことなく薄幸の少女のように儚げに見えることがある。
元々の可愛らしいく童顔という外見も相まって、たまに魅了のような感覚に陥ることだってあった。
そんな大人しい印象の鈴谷さん。
内面としても遠慮がちで自分から何かをするような感じではない。
うーん。なんだろう。
素直に考えていたら、悪いというか僕にとって都合の悪い所が見当たらないな。
どうしたものか。
気にするあまり、いつの間にか鈴谷さんの事が本当に気になって仕方がなくなっていた。
僕はまさか……
その時、ほんの少しだけ、ほんの一瞬だけ、今まで美味しくなかった煙草に美味さ感じた。
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