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謎の多き彼女

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「おかえりなさい」

 今日も残業があり21時に家に着いた。ブラック企業というには過酷ではないが、毎日数時間の残業があり21時に家に着くのはいつものことである。そして、家に帰ると美人な女性が迎えてくれる。

「ご飯にする?お風呂にする?」

 こんなことを聞いてくるが俺たちは付き合っているわけではない。ある日突然、俺の家の家事をさせてほしいと家の前に立っていたのである。いつも若干疲れているため、考えるのがめんどくさく二つ返事で了解した。

「ご飯にするよ」

 なぜこんなことをしてくれているのか俺には全く理解できない。そして、今の環境が気に入っているので、彼女との関係を崩すわけにはいかない。しかし、あまりにも謎が多すぎるのである。

「今日もお疲れだね、マッサージでもしてあげようか?」
「い、いや、そこまでは大丈夫だよ」

 いつもこの調子である。料理とかを作ってくれていることはすごくうれしいが、さすがにスキンシップが多いとこっちも耐え難いものがある。

「まあまあ、そんなこと言わずに」

 困ったものである、さすがに名前以外にほとんど彼女のことを知らないのにそこまでしてもらうのは気が引けるし、我慢ができない。いや、今の状況もいろいろとおかしいか。

「わかったよ、肩だけお願いしようかな」
「お願いされた!」

 そう言って彼女は俺の肩を揉んでくれる。

「どうですかお客さん?」
「いい感じ」

 程よい力加減のため結構気持ちがいい。
 数分間のマッサージにより固まっていた俺の肩はだいぶ軽くなったような気がした。
 さすがにやってもらいすぎなような気がするのでこちらも何かしないことにはモヤモヤする。

「ありがとう、その~、お礼に肩を揉むよ」
「えっ」

 彼女は少し動揺したのか呆気に取られた顔をしてる。なにをそんなに動揺する必要があるのだ?

「どうした急に?」
「いや~えっとその、お気遣いなく…」

 彼女は少しモジモジとしながら距離を置いているような気がする
 さすがにあまり知らない男性に体を触られるのは少し抵抗があるよな、これ以上はやめておくか。
 
「わかった、やめておくよ」
「あっ、えっと、じゃあ少しだけやってもらおうかな…」
「どっちなんだよ」
「少しだけならいいよって言ってるでしょ!」

 なぜ怒っているのかがよくわかないが、これはやれと言っているんだろう。彼女と出会ってからそんなに時間はたっていないがこの程度のことならわかる。多分。

「じゃあ失礼します」
「ど、どうぞ…」

 彼女は背を向けるように座りなおした。俺も肩を揉むために彼女の背中を正面するように座る。改めて彼女を見ると華奢なんだなと実感する。彼女は長身とまではいかないが、小柄というわけではない。しかし、スタイルはすごく良く、出るところはしっかり出ており、引っ込むところはしっかりと引っ込んでいる。正直痩せているほうとは思っている。
 そんなことを考えていたが、肩を揉むといったんだから早くしないといけないな。そう思い肩に触れる。

「ひゃっ!」
「なんだよ!」
「ごめん、気にしないで続けて」
「びっくりさせるな」

 肩に触れた瞬間、彼女は肩をビクッっとさせながら大声を出したので、驚いてしまう。何をそんなに驚くことがあるんだよ。しかし、彼女は続けてというので再開する。

「んっ…」

 なんでそんな声を出すんだよ。なんか悪いことをしているみたいだろ。てか、よく考えたら彼女に対してこんなにしっかりを触れたのは初めてではないか。
 生活していて不意に触れてしまうことはあるが、こんなにも意図して触れることはなかった。
 いろいろと考えているうちに自分のしていることがあまりよろしくないものではないかと思い始めた。
 やばい、急になんか恥ずかしくなってきた。

「こ、ここまでにしよう」
「そうだね、自分のやってることがよくわかった?」
「はい…申し訳ございませんでした。」
「わかればよろしい。」

 彼女は俺が恥ずかしくなったことに勘づいたのだろう。本当に申し訳ないことをした。

「まあ、気持ちよかったし、罰ゲームとして今度もう一回やってもらおうかな」
「なっなんでそうなるんだよ!」
「さてと、今日は帰ろうかな」

 彼女は急に立ち上がり、帰る準備をする。
 しかし、準備をしている間はなぜかずっと背を向けている。怒らせてしまったかもしれない。

「もしかして怒ってる?」
「どうだろうね。けど、これがわからないならまだまだだね」

 何がまだまだなんだよ。
 そうこうしているうちに、彼女は帰る準備ができており、玄関に向かう。俺は玄関まで送るため立ち上がろうとする。すると彼女は、

「送らなくていい、今日は振り向ける気がしないから」
「えっ…」

 俺は彼女の言っていることがわからず、その背中を見ることしかできなかった。
 今年で26になるが、女性の気持ちを理解できるようになるには一生をかけるしかないと感じた。
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